インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第41話

「まさか本音……織斑さんの部屋に入る、つもり?」

 

 本音の言葉に簪はジト目で見る。彼女の性格上、知っていたからだ。彼女はのほほんとした性格であるが気になる事があれば、知りたいのだろう。

 否、気になると言い替えればいいのかもしれない。一夏は一応、従者の立場であるが本音の仲間でもあるのだ。彼は男性でもあるが異性であり、異性の部屋ならば気になるのだろう。

 本音は、この数週間、一夏の部屋に入った事がない。理由は半蔵のお見舞いがそうであるが従者達は一夏を入れる事に反対している者が多かったからだ。

 大半の従者は彼のせいで喪い、更には彼を仲間にするのはジェイソンも仲間にする事だったからだ。化物を此方側に付かせる事は、更識家その物を化物の巣窟とするような物であるからだ。

 そのせいで一夏の部屋に入る事は、否、一夏に断って入ろうとしても拒まれ、勝手に入ろうとすれば何故か、楯無や虚にダメだと言われた。

 二人も部屋の事を気にしていたが一夏にきつく言われた為に、出来なかったのだ。楯無は納得出来なかった物の、勝手に入ろうとしたが彼は自分の影の側近である為、出来なかったのだ。

 

「本音、入っちゃダメだよ? 織斑さんは一応、仲間だから……」

 

 簪は一夏の事を気遣い、本音に止すように釘を刺すが、本音は頬を膨らませす。

 

「え〜〜っ、別にいいでしょ? 〜」

「ダメだよ? 気になると言っても……織斑さんは納得しないよ?」

「大丈夫だって〜部屋の掃除をしたかったと言えば、いいからさ〜」

 

 本音はそう言うと、襖の引き手に手を掛ける。簪は慌てて止める。

 

「ダメだよ本音……! 勝手に入るのは、ダメ!」

「大丈夫だよかんちゃん〜少しだけだから〜」

「そう言っても、……ダメな物はダメ……!」

 

 簪と本音は軽く言い合う。簪は一夏を気遣い、本音は好奇心から部屋の中を覗こうとした。一夏の事だから、思春期の青年は何処かにエロ本を隠しているか、趣味で何かを集めていると思っているからだ。

 簪は困惑する中、本音は気になるがあまり、簪の制止を振り切り、襖を開けてしまった。

 

「ひっ!?」

「うわっ!?」

 

 刹那、簪と本音は驚きの余り、声を上げた。何故なら、襖を開けた直後、部屋にはジェイソンがいたのだ。それも、二人と位置を合わせるように屈んでいて、襖の近くにいたのだ。

 それだけではない、彼女等とは顔が近かった。息がかかる程ではないが、白いホッケーマスクが目に入る。

 二人はジェイソンのマスクが近くもなく離れていない事に驚き、声を上げそうになった。

 しかし、不意に何者かに口を塞がれ、後ろへと引き寄せられる。同時に何かの落ちる音が聞こえた。二人は突然の事で驚く中、誰かの声が囁かれる。

 

「……騒ぐな」

 

 その声に二人は瞠目した。が、その声の主は誰かは判った。二人を引き寄せたのは、一夏であった。簪と本音は自分達の口を塞ぎ、引き寄せたのも彼だった。

 しかし、口調には怒りを感じさせる。

 どこか不機嫌である事にも気づいた。そんな二人に一夏は何も言わなかった。二人は後ろから引き寄せられているが冷や汗を流していた。

 何かをされる。そう思ったのだ。後ろには一夏、目の前にはジェイソン。逃げ場がない、そう感じていたのだ……。

 

 

「……で、何か言い訳はあるのか?」

 

 少し経った後、一夏はジェイソンは兎も角、簪と本音を部屋に招き入れていた。二人を正座させているが座布団を敷いている。

 因みに彼の部屋は和室であった。電気は点いているがベッドや本棚、机やイス等、普通に置かれており、窓も設けられている。部屋自体は悪くなく、綺麗であった。

 そして、机には黒の分厚い本が置かれていた。

 別に疾しい物がある訳でもないのに、彼は部屋には誰も入れなかったのだ。理由としては……彼はイスに腰掛けてながら腕を組んでいるが、表情は険しい。

 そんな彼の直ぐ目の前には正座している簪と本音がいるが、何方も冷や汗を流している。一気に湯冷めした感覚に陥るが視線を一夏へと向けていた。

 否、向けようとしていた。隣にはジェイソンがいるのだが佇んでおり、自分達を見ている。

 二人からの威圧に身震いしているのだが、部屋に入ろうとした本音は兎も角、簪は、とばっちりを食らっていたのだ。

 そんな二人に一夏は溜め息を書くと、隣にいるジェイソンを指す。

 

「……最初に言っとくが、コイツは何時も部屋にいる。と言っても、俺が留守の間だけだがな?」

 

 一夏の言葉に簪と本音は目を見開き、互いを見合わせる。一夏の言葉に驚いていたがジェイソンを見やる。ジェイソンは二人を見据え続けていた。

 白いホッケーマスクの向こう側にある彼の素顔の、辺りを見渡す事が出来る両目は簪と本音を捉えていた。

 流石の二人もジェイソンが見ている事に驚いているが恐怖のあまり、一夏に視線を戻す。一夏はいつの間にか机に片方だけ肘を突いていた。

 二人に向ける視線は軽蔑や怒りが見えるが何方でもない。強いて言うならば、後者の方が強いだろう。勝手に入ろうとした本音に非はあるが、簪は巻き添えを食らっただけなのだ。

 本音と簪は互いを見合わせるが怖いとも思っていた。何かをされる。そう思うと、身体の震えが止まらなかった。襖は直ぐ近くなのに遠く感じる。

 動けば、一夏かジェイソンの何方かに何かをされる。そう感じると泣きそうになった。しかし、ここで正直に話さなければ怒り、黙ったままでは怒る。

 それだけでも嫌であるが悪いのは自分達であると思うと、彼に怒られると思うと、ジェイソンが近くにいるだけでも思うと、何も出来ないでいた。

 泣きたい、二人はそう思うと目に涙を浮かべ添そうになる。そんな二人に一夏は無言で凝視し続けていた。すると、彼は何故か呆れると、口を開いた。

 

「もういい……部屋を出ろ」

 

 彼は二人にそう言い放った。これには二人も驚くが一夏は二人を見ると、舌打ちしながら目を逸らす。

 

「早く行け……俺の気が変わらない内にな……!」

「あっ、はい……!」

 

 簪は返事をすると、立ち上がり、本音に対し、立つように促す。本音は泣きそうになりながら立ち上がると、二人は慌てて部屋から出て行った。

 襖を開けたままであるが二人は何処かへと走り去っていった。が、一夏は舌打ちした。襖を閉めないまま行った事に怒りを感じているが立ち上がると、襖を閉めた。

 部屋には自分とジェイソンしかいない。だが、久しぶり、と言うよりも何時もの事であると思っていた。本来は自分達二人で住んでいた事が当たり前のようにも思っていたのだ。

 しかし、今は更識家直属の側近であり、此処が自分の返る場所でもある。本来の場所は別荘となりつつあるが何時でも帰れる為、問題はなかった。

 一夏はそう思いながらも舌打ちすると、再び机の方へと戻る。机の上に置かれている黒の分厚い本を見る。何十、何百もありそうであるが資料集でもあった。

 これを要したのは源次である。源次は一夏の要望に応える形で準備していた物であり、逆に彼は源次に利用される形で暗部の仕事をこなしていた。

 何方も互いの相手を利用しているが、それもまた、互いの利益となるのならば問題はなかった。一夏はそう思いながらも早速本を開いた。 その内容は、一ページ、一ページはどれも数字であるが写真もある。

 しかし、

それは全て被害者達であった。何れも死んでいる。惨い殺され方をする者達もいた。老若男女問わず、中には子供もいた。どれも鬱としか言いようがないが、一夏はこれを欲しがっていた。

 三年前から今日までの間に起きた殺人事件の数々、この資料は本の一部にしか過ぎないがそれでも足りない。彼はそう思いつつも、ページを捲る。

 

「……ん?」

 

 彼は一つ一つ見落とさないように見ていたが不意に手を止めると、凝視した。そのページは、ある事件の内容であった。それは三年前に起きた物であるが被害者は一人の女子高校生。

 顔写真はあるが何処にでもいる普通の女子高生だ。しかし、彼女は自殺したのだ。それも苛めによる物であった。しかし、何故かその内容には不可解な点が有った。

 苛めは噂であるがその証拠となる物が全くないのだ。

 

「……これは」

 

 一夏は顔を引き攣らす。同時に思考を走らせた。女子高生の自殺……苛めによる物、それも揉み消されたような物。どれも不信感しかない内容であるが手を抜いたような捜査である事にも、一夏は気づいた。

 何かがおかしい、そう気付いた。彼は思考を走らせるが不意に、視線をある方へとやる。

 刹那、一夏は眉間に皺を寄せた。同時に、ある日の出来事をも思い浮かべる。それは数週間前に……すると、一夏は眉間に皺を寄せる。

 

「待てよ……まさか……」

 

 一夏は何かに気づいた。あの時も確かにそうであった。あれは青年が謎の変死を遂げた事件であった。しかし、この事件と繋がっているのではないかと感じていた。

 何故なら、あの事件が起こった日と、この女子高生の自殺した日が偶然にも、年と曜日は違うが、全く同じ日であったからだった……。

 偶然とは思えないが、彼はある事にも気づく。

 

「待てよ……確か、アイツはどうだったんだ?」

 

 一夏は更にある事にも気づく。それは、ある人物の事であった……。

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