インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第42話

「と、言う訳だ……刀奈と虚ちゃん、お前達には一夏君が従者としても、仲間としても学園を共にする事になる」

 

 源次の部屋では源次が腕を組みながら正座していた。彼の表情は険しい物であるが口調も険しい。

 彼の目の前には私服姿の楯無と虚が正座していた。彼女等も険しい表情をしているが何処か哀しみも漂う。

 楯無は兎も角、虚は未だ入院中の半蔵の代わりに長女として参加している。

 源次が二人に話す形での事であるが、内容は彼、織斑一夏に関係する事であった。彼は、この春、IS学園へと入学する。

 しかし、彼は新入生であるが楯無は二年生であり先輩、虚は三年生で彼女等の先輩に当たる。が、これで良かったと感じていた。

 

「それにしても、私の独断とは言え、IS学園の守備は盤石となった……」

 

 源次は言葉を述べながら瞑目した。彼はIS学園の守備が安定した事に安堵と危機感を抱いていた。一年には一夏、二年には楯無、三年には虚の三人がいる。

 自分の娘である楯無、半蔵の娘である虚、そして千冬の弟である一夏。三人がいればなんとかなるのだ。理由としては更識家が政府直属の傘下である事だろう。

 同時に、自分達の事をIS学園の学長、十蔵も良く理解している。彼は協力者でもあるが学園の安泰を約束するのならば、申し分ない。

 しかし、源次は瞼を開くと不意に哀しそうに目を逸らす。

 

「とは言え……政府の奴等は、一夏君をIS学園に入れる事を、既に決定事項にしている事に怒りを隠しきれない」

 

 源次の言葉に楯無は顔を引き攣らせ、虚は哀しそうに俯く。何故なら政府は一夏の保護を更識家に押し付けたのである。理由は彼等の所なら安全かつ、飼い犬にしか過ぎないと見下しているからだ。

 一夏は暗部に入ったのは良かった物の、政府の飼い犬としても利用されている。今までの任務も政府からの要望であるが全て日本の為でありながらも、危険な国としては認められたくないからであった。

 一夏はその政府の尻拭いをされているがIS学園の件でも、更に最悪な事が起きていた。

 

「政府は男性操縦者である彼をIS学園に入れるとは言え、工作さえもしょうとしている」

 

 源次は微かに怒りを露にする。政府は一夏を裏口入学させようとしていた。彼の知識や実力は兎も角、如何なる理由があろうと彼を強制的に入学させようとしていた。

 これでは彼が不憫だ。飼い犬だけでも酷いのに、最悪だ。源次の言葉に楯無は歯を食い縛り、虚は更に俯く。全員、一夏を気遣っていた。

 彼がこの事を知ったら哀しむだろう。彼は今まで、任務の間を挟んで勉強していたのだ。

 休日も消すように、寝食の時間も削ってでも勉強しているのだ。まるで何かに取り付かれるようにも思えたが彼はそれを喋ろうとはしなかった。

 千冬の事かもしれないが本人の意思も尊重しなければならなかった為、言えずにいた。源次の言葉に更に室内は重苦しい空気に包まれた。

 一夏の事を心配しているのだ。同時に彼を利用している政府にも怒りを感じていた。源次は歯軋りし、楯無は瞑目しているが怒りを隠しきれていない。

 虚も仲間でもあり、後輩的立場の彼を心配している。三人が三人、彼を心配する中、時間だけが過ぎていく。

 

「なる程な……政府は俺を飼い犬としても利用しょうとしているのか?」

 

 刹那、近くから声が聞こえ、三人は驚きのあまり声がした方を見やる。そこには腕を組みながら壁に凭れ掛かっている一夏がいた。

 手には本があるが、表情は険しい。さっきの会話を聞いていた事が理由とも思えるが無言で三人を見ていた。その威圧的な視線は怒りが籠められているようにも感じた。

 

「お、織斑君!? いつからそこに!?」

 

 楯無は一夏がいた事に驚く。会話を聞かれたのではないのかと、焦っていた。

 

「……あんたらが政府の事を話しているところまでだ」

 

 一夏は淡々とした口調で答えた。刹那、三人は微かに震えた。聞かれていた、それも政府が一夏を利用している事にまで。

 だが、彼の気配は一向に感じられなかった。まるで空気のように、幽霊のように気配を殺していたのだ。襖の音は愚か、足音さえも聴こえなかった。

 源次達はその事で驚く中、一夏は問う。

 

「それよりもどうした? 何故、驚いている?」

「い、否、君はつらくないのか?」

 

 源次は答えるが聞き返す。彼が怒っている事を気にしていた。が、一夏はそれを否定するように答えた。

 

「別に。俺は政府のやり方に口出ししない」

「そ、それでは、何しにきたんだい?」

 

 源次は一夏の言葉に驚きつつも、一夏は頷くと、彼に歩み寄る。そして彼の近くに片膝を突きながら屈むと、手に持っていた本を開き、それを源次に見せた。

 

「実は……此処の事で話がある」

 

 一夏は開いた本のページを指差しながら訊ねた。源次と楯無、虚は一夏が指差したページを見る。

 

「……これって、三年前に起きた女子高生の飛び降り自殺」

 

 楯無はページの内容を読んだ後、不思議そうに彼に訊ねた。一夏は眉間に皺を寄せるが源次に対して、ある事を言った。

 

「実は源次さん、あなたに頼みたい事がある」

「た、頼みたい事?」

 

 一夏は頷くと、それを話した。

 

「実は、この自殺した女子高生の身辺と、彼女の履歴を調べて欲しい。学業が主にだ」

「えっ? ……それは何故なんだ?」

 

 源次の言葉に一夏はある場所を指差す。そこは事件が起きた日付であった。

 

「それがどうしたんだ? それで何故、この女子高生の事件を調べたいんだ?」

 

 源次は一夏に訊ねる。が、一夏はある事を思い出させるように聞き返した。

 

「思い出さないか? 今年のこの日、ある事件が起きたのを」

 

 一夏は源次に指摘した。が、源次は首を傾げる。それは何かは判らなかった。理由としては、一夏が突然言い出した事であるが、源次はその日に起きた事を思い出す。

 楯無と虚もその日に遭った出来事を思い出そうとした。

 

「……あっ、この日って確か……今年に起きた事件って……!」

 

 虚は何かを思い出した。同時に楯無と源次も思い出すが、一夏は眉間に皺を寄せながら口を開いた。

 

「そうだ……青年が謎の悲惨な変死を遂げた事件だ」

 

 一夏の言葉に楯無、源次、虚は瞠目した。そう、その日に起こった出来事とは、青年が謎の変死を遂げた事件である。

 事件の内容は簡単であるが、悍ましい物であった。あの事件は青年が寝ている間に突然悲鳴を上げながら、起きた事件である。

 しかし、そこまでは良かった物のその後が悲惨であった。青年は突然、身体中から血を噴き出し、両目が突然抉られたのだ。

 あれは何が起きたのかは判らず、周りも悲鳴を上げながら逃げ惑っていた。中には子供もいたがそれが問題でもあった。

 実はあの後、子供は愚か、大人達が皆、精神的ショックを受けてしまったのだ。

 あれは悲惨かつ恐怖な出来事であるのと、それが原因で未だに親に縋り付く子供達や、カウンセリングを受けている子供達も今もいる。

 あの事件はオカルトだと言う者や、何かの伝染病の類いではないかと噂している者達が今もいる。

 何方も非科学的であるが警察も手を上げていたのだ。

 

「確か……あの事件って警察も難航していて、未だ手掛かりも掴めていない」

 

 楯無はあの事件の事を思い出すが不意に表情を険しくする。

 

「……でも、あの事件は未だ解決していないけど、私たちにも捜査の依頼が来たの……」

 

 楯無の言葉に一夏は驚かなかったが視線を楯無の方へと向ける。

 

「でも、私達も手掛かりは掴めなかった……」

 

 楯無はつらそうに言葉を述べた、しかし、その口調には哀しみが籠っているが結果は残念な物だったと、一夏は気づいた。

 それでも彼はその事を訊ねようとはしなかった。彼女の事よりも、この事件、あの事件の共通点がないかを調べたかったのだ。

 もしかしたら、他のプレイヤー達の誰かに関係するのではないかと思っていたからだ。

 だが、これは単なる偶然でもあるがタイミングが良過ぎるからだ。この日に起きた事件は他にもあるが殺人事件なんて大層起こる物ではない。

 起きたら起きたで大問題だ。一夏はそう思いながらも視線を楯無へと向けるが、楯無は一夏を向ける。

 

「でも織斑君、あの事件と、この女子高生の事件はどう関係しているの?」

 

 楯無は二つの事件の事を一夏に訊ねる。単なる偶然ではないかと思っている。虚と源次も一夏を見やるが一夏は視線を楯無へと向け続けていた。

 

「俺にも判らない」

「じゃあ……」

「だが……ある人物の事を思い出した」

 

 楯無が何かを言い終わる前に一夏は言葉で遮る。彼の言葉に楯無は惚ける。

 

「えっ?」

 

 楯無は一夏の言葉で惚けるが、ある人物という言葉を聞いて驚く。しかし、あの人物は誰なのかは楯無には解らなかった。事件に関わる者なのか? そう思っていた。

 楯無の言葉に一夏は黙る。

 

「織斑君?

 

 楯無は一夏の様子に気づく、源次と楯無も一夏の様子に気づくが彼は不意を突くように口を開いた。

 

「実は、あの事件は……あの時、俺も殺害の瞬間を見たからだ……」

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