インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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 今日は十三日の金曜日です。


第44話

「うぐっ、ひぐっ」

「うぐっ、えぐっ」

「「「…………」」」

「簪……」

「本音……」

 

 数分後、大広間では一夏、楯無と源次、嗚咽を上げている簪と本音、その二人を美和と虚が宥めている。二、三人の従者もいるが一夏の少し後ろにはジェイソンがいた。

 しかし、大広間は殺伐とした重苦しい空気に包まれていた。怒りと哀しみが混じっているが簪と本音の嗚咽が更に悪くしている。

 一夏と楯無は睨み合い、源次と従者達はジェイソンを睨み、ジェイソンは無言で彼等を見据え、美和と虚は簪と本音を宥めつつジェイソンを恐ろしい目で見ている。

 殺伐とした空気の原因はそれでもあるが更に悪い事に、原因はジェイソンが簪と本音の前に現れ、二人を怖がらせてしまったのだ。

 それが一番の原因でもあるが楯無と源次、従者達はジェイソンを睨んでいた。家族を、仕えるべき者の仲間であり身内を怖がらせた事に怒りを生んでいる。

 ジェイソンは無言を貫いていた。気にもしていなかった。しかし、ジェイソンが何故、二人の部屋に入ったのかが最大の理由であった。

 それも話す事は出来ない。ジェイソンの口からは無理であり、彼は喋る事は愚か、コミニュケーションさえも出来ない。

 化物が理由でもあるがジェイソンを飼いならしている一夏に訊ねる以外、方法はなかった。

 

「織斑君、ソイツはどういうつもりなの?」

 

 楯無は口を開く。その口調はとても厳しい物であるが、彼女はジェイソンを指差していた。

 

「……何がだ?」

 

 一夏はそれに気づきながらも知らない振りをする。これには楯無の逆鱗に触れたのか彼女は怒った。

 

「惚けないで!! ソイツが簪ちゃんと本音の部屋にいた事よ!?」

 

 楯無の怒っている理由はそれであった。同時に簪と本音が泣いているのもそれが原因であった。ジェイソンは本音の部屋に居たのだ。

 それも、簪と本音の直ぐ近くにいたのだ。簪と本音は悲鳴を上げてしまったが泣くのも無理はない。悲鳴を聞いた楯無達が部屋に駆けつけた時には既に、そのままの状態であったのだ。

 簪と本音は泣きながら駆け寄り、簪は楯無に、本音は虚は抱き着くが楯無と虚はジェイソンを見て驚きと怯えていた。

 楯無はジェイソンの事を一夏に問い質す中、一夏は無言で腕を組むと、視線をジェイソンの方へと向ける。

 ジェイソンは無言であるがその佇まいは不気味さを醸し出している。マスクが理由でもあるが守り人の風格さえも醸し出させている。

 彼は自分の守り人であると尚更、自分の命令がなければ動けない、只の駒としか思えない。

 一夏は彼の佇まいに今日さえも感じていたが今は当たり前として、慣れていた。

 

「……さあな、原因は俺にも判らねぇ……」

「なっ!? そ、それじゃ理由にはならないわよ!?」

 

 楯無は一夏の言葉に怒る。が、標的をジェイソンへと変える。

 

「それにアンタもアンタよ!? 何故本音の部屋に居たの!? 簪ちゃん達に何の怨みがあるのよ!?」

「…………」

「何か答えなさいよ!? 簪ちゃん達に何をするつもりだったの!?」

 

 楯無はジェイソンに問い続ける。しかし、彼は元から無言を貫いているが黙秘権を貫いている訳ではない。が、それが楯無の怒りを更に増させる行為ともなった。

 楯無はジェイソンを見て歯を食い縛ると、ある武器を展開した。ランスである。彼女はランスの切っ先をジェイソンに向ける。

 

「刀奈!?」

「お姉ちゃん……!?」

 

 源次は驚き、簪は泣きながら声を上げる。が、二人の声は楯無には届いていなかった。彼女は今、ジェイソンにしか興味はなかった。

 簪を怖がらせた理由がそうであるが姉としての怒りでもあった。般若のような形相までとはいかないが彼女は確かに怒っている。

 今すぐにでも刺し殺す事は出来るが当主としての重すぎる使命としての覚悟もあった。

 そんな彼女に周りは驚く中、ジェイソンの前に出て、彼女の前に立ちはだかると言う意味で横から割って入る者がいた。

 一夏だ。彼は楯無を睨むが退こうとはしない。

 

「織斑君、そこを退きなさい……私はソイツに問いつめているのよ……!」

 

 楯無は一夏に言う。命令としか捉える事の出来ない口調でもあるが側近の立場である一夏に対してでもあった。

 

「それは出来ない。コイツは俺の背中を預けるに相応しい値だ。コイツを殺すのは、お前を殺す事にもなる」

「何ですって?」

 

 楯無は眉間に皺を寄せる。刹那、一夏は楯無が持ってるランスの切っ先を鷲掴みした。

 

「なっ!?」

「織斑君!?」

 

 楯無は目を見開き、源次は一夏の行動に驚き声を上げる。が、一夏は無言でランスを鷲掴みにしたまま、何も言わない。

 手には力を入れているが血が出始める。朱色であるが誰から見ても血だ。偽りではない、本物の血だ。一夏はランスの切っ先を掴んでいるが口を開いた。

 

「貴様に、コイツは殺せない……否、俺はそれを許さない」

「な、何を言ってんの!? ソイツは化物なのよ!? ソイツは何者かも判らないのよ!?」

 

 楯無は一夏に反論した。が、楯無はジェイソンを化物と認識し、否定していた。彼は腹を刺したのに死ななかったからだ。理由は簪を泣かせた事もそうであるが判断出来ない。

 彼を生かしたままだと、何れ牙を剥く危険がある。楯無はそれを危惧しており、同時に簪を守りたいからでもあった。

 姉としてでもあるが更識家当主としてでもあった。そして、更にある事を言い放った。

 

「ソイツは化物!! それは紛れもない事実! それだけではないわ、貴方も貴方よ!? 何故私達よりも、そんな化物を信用するの!? 何れ殺しに掛かる危険もあるのよ!?」

 

 楯無は一夏に厳しく指摘した。一夏が自分達よりもジェイソンを信用している事に嫉妬さえも感じたのだ。

 化物である事もそうであるが、一夏が自分と行動するよりも、ジェイソンと行動する事が多いからだ。

 彼は暗部の人間である事は楯無にはつらかった。本来は保護するのが役目であり、暗部に入れる為ではない。

 同時に彼が政府の腐った連中に飼いならされる狗にされている事も怒りと哀しみさえも感じていた。

 出来る事なら彼には暗部から抜けてほしい。自分達に保護され、信用してほしいからだ。しかし、彼はそれをしょうとはしなかった。

 暗部と言う裏家業を難なくこなしているのだ。暗部には相応しいが認めたくなかった。

 

「織斑君……出来る事ならソイツと縁を切って! ソイツよりも私達を信じて! 暗部という仕事から抜けて! それに……」

 

 楯無は下唇を噛んだ。ランスを掴んでいる手に力を入れながら身体を震わす。

 

「その手を放して……それに退いて! ソイツは私が殺すわ!! ソイツがいる限り、貴方は一生、貴方を束縛する手枷足枷にもなりかねないわ! 簪ちゃんや貴方を破滅に誘いかねない存在にもなるのよ!?」

 

 楯無はジェイソンを否定した。しかし、それを聞いた源次達は驚きを隠せないが言葉を発しない。が、楯無は一夏を想うが故の事であるが恋愛感情ではない。ただ、一夏を守りたいのだ。

 しかし、ジェイソンは障壁としか認識しておらず、簪の心に傷を落としてかねないでいる。簪は楯無の言葉に驚くが、一夏は無言でランスを退かすように手放した。

 これには楯無は驚くが、一夏は彼女に素早く歩み寄り、楯無の胸ぐらを掴む。

 

「っ!?」

 

 楯無は一夏に胸ぐらを掴まれるが悲痛の声を上げる。

 

「刀奈!!」

「お嬢様!!」

「楯無様!!」

 

 源次と虚、従者達は驚くが、従者達は行動を示そうと楯無を助けようとした。しかし、ジェイソンが動こうとした。

 従者達はジェイソンを見て怯みそうになるが、直ぐに気を取り直し、動こうとした。

 

「動くな……!」

 

 一夏が従者達に対して、そう言い放った。従者達は一夏の言葉に足を止める。一夏の口調には怒りが孕んでいたからだ。楯無を人質に取るかもしれない危険があったのだ。

 動けば彼女の命はない。そう言い聞かせているようにも思えた。従者達は一夏の言葉に困惑する中、一夏は彼等に見向きもしない、彼は楯無しか見ていなかった。

 その瞳には怒りが籠っている。ジェイソンを否定した事に怒っているよう事での怒りでもあった。

 

「貴様……謝れ」

「な、何をよ……!」

 

 楯無は一夏の言葉の意味を理解していなかった。否、理解しているがそれを認めたくなかった。認めれば彼は自分達よりもジェイソンを信用している事は目に見えていた。

 楯無は、ジェイソンが嫌いだった。化物である事や、簪を泣かした事であるからだ。しかし、それ以上に一夏の背中を預けるに相応しい値にされている事が何よりも侮辱だった。

 一夏を守るのは自分である。彼は追われている身であり、保護するのが使命なのだ。なのに、なのに……楯無は悔しそうに歯を食い縛る。

 当主でありながら一夏を守れない。他の従者達を多く喪った事もそうであるが楯無は今、当主としての使命を果たせない事に苛立と哀しみを感じていた。

 そんな彼女に、一夏は詰るような事を言い放った。

 

「謝れ、ジェイソンに謝れ……それにお前らに何が解る……コイツの何が解る!? お前に、女のお前にコイツを詰る資格はない……!」

 

 一夏の言葉に楯無は瞠目した。それは、女と言う事を否定されたからだぅた……。

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