インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
数日後、ここは日本の本州から少し離れた孤島に建てられているIS学園。今日は平日でもあるがとても騒がしくも、異様な雰囲気を醸し出していた。
今日はIS学園の入学試験の日であった。その日は次世代の、未来のIS操縦者や研究者を育てる為でもあった。
中には就職を有利にしたいが為に入学した者達もいるだろう。それでも学園に入学したい者達は皆、少女である。
全世界から、この学園へと入学する者達は二百人もいる。しかし、その中で入れるのはほんの一握りであり、全員を受け入れる事はできない。
学園側の事もあるが仕方ない事だろう。それ以前に今年は今までの入学試験とは違う。
今年は、異様な存在が入学してくるのだ。その者を受け入れるのもそうであるが学園側もその事で緊張している。
同時に、今年は延期があったのだ。それは、学園にいる教師の一人が自宅で何者かに殺されたのだ。
それが原因でもあるが学園側はそれを重く受け止めつつも、入学試験を行なっていた。
そして今、入学試験は実技試験を残すのみとなった。会場はアリーナで行なうが時間は掛かる為、入学試験は三日も掛かるのであった。
「…………」
そんな中、ここはアリーナに繋がるピット内。そこには一人の青年と、一機の待機状態のISが置かれていた。彼は腹や脹ら脛が露出しているスーツを身に纏っていた。
それはIS用のスーツであった。そして、その人物は織斑一夏であった。
彼は腕を組みながら何かを待っていた。眉間に皺を寄せているが瞑目している。彼が待っているのは実技試験で必要なISであった。
彼はそこで待機しいているのもそれが理由であるが、彼が入学試験を受けているのは、彼が操縦者であるからだ。
それも世界初の男性操縦者であり、学園側も緊張しているのは彼の存在が原因でもあった。
しかし、彼は入学試験を自ら受けたのだ。それは、ある理由がある為に……。
刹那、ピット内を出入りできる扉が自動で開き、彼は視線を扉の方へと向ける。二人の女性と少女であった。
女性用スーツを纏った千冬と、学生服を着た楯無であった。
千冬は入学試験に必要な試験官であり、楯無もその一人であった。二人は一夏に近づくが一夏は楯無としか目を合わせなかった。
千冬は其処にいないようにしていた。
「織斑君、そろそろスタンバイよ」
楯無は一夏にそう言うと、彼は無言で頷く。が、彼は千冬とは目を合わせていなかった。
毛嫌いしているのもそうであるが千冬は一夏を見て顔を引き攣らす。怒りではない、哀しみであった。
一夏と和解できる手段がないのもそうであるが不意に項垂れる。その間に一夏はISに乗り始めた。
彼が乗っているISはラファール。彼が選んだISであった。理由としては軍事用に使われる事が多い、それだけであった。
「どう? 乗り心地は?」
楯無はISに乗っている一夏に訊ねる。彼はISを乗ったが違和感を感じていた。いつもより背が高く思えたのか視線をいつも見ている一とは違う。
一夏はISの凄さを改めて知りつつも怒りが沸きそうになった。これのせいで自分は……しかし、今は私情に挟まれる訳にはいかなった。
「最高だ……それに最悪だ」
「そう……それよりも織斑君、もうすぐ放送が鳴るわよ」
楯無がそう言うと、放送がなった。
『では、ピットにいる受験生はスタンバイして下さい』
放送はピットにいる者に命令した。紛れもなく一夏であるが一夏は放送を聴いて、何も言わなかった。彼は無言で楯無と千冬に背中を向ける。
刹那、一夏は振り替えもせずにアリーナに続く通路目掛けてISを発進させた。楯無と千冬は離れているが一夏の行動に迷いがないと感じ、少し驚いていたのは言うまでもなかった。
「で、では私が相手でひゅ!」
一夏がアリーナにたどり着くと、そこは空席であった。いるのは試験官くらいの教師達か選ばれた在校生であった。
彼は辺りを見渡す前に、少し先にISを纏った女性がいた。
二十代くらいの中学生としか見えない女性であった。緑色のロングカットに翡翠色の瞳に黒縁の眼鏡を掛けている。
スリムな体型であるが胸が大きい。思春期の少年達は見惚れ、色んな意味で……にされるだろう。一夏はそう思いながらも彼女と向き合う。
しかし、相手は一夏を見て戸惑っていた。下を噛んだのだ。それも緊張の現れでもあった。
「わ、私は試験官の山田真耶と申します! よ、よりょひくお願い致します!」
女性、真耶は一夏は見ながら名前を教えた。しかし、また噛んだのだ。彼女を見て眉間に皺を寄せるが放送がなった。
『で、では、実技試験を開始致します! 両者、始め!!」
声が聴こえた。しかし、真耶を見て困惑していたが一応、言ったのだ。
そして、同時に実技試験は始まった……。
「んだよ、あれ……」
数分後、一夏はピットに戻り、ラファールから降りた後、そう呟いた。彼は険しくも呆れていた。さっきの実技試験での事であった。
自分の相手である真耶は緊張のあまり、突撃してきたのだ。一夏は簡単過ぎる攻撃に呆れつつ躱したが彼女はそのまま、壁に激突するという形で自滅したのだ。
これには一夏も困りはしないが彼女の行動に頭痛がするのを感じたのだ。しかし、一応とは言え勝利した為、一夏は合格(政府の言いつけ)した。
彼から見れば納得いかないがIS学園への入学は認められたのである。
「……まあ、これで奴の、夢見一彦の行動は限られるな……それに他の奴等も」
同時に一夏は一彦の事を思い出す。邂逅はしていないが彼がどう動くのかを考える。
思考を走らせていると言い替えればいいが、彼はIS学園で行動をするつもりであった。此処ならば奴等は行動できない。
警備が厳重な上、迂闊に行動できないのだ。しかし、逆に狙われる危険もあるが罠ではないかと思わせる為でもあった。
一時であるが一彦を含め、他のプレイヤー達の行動範囲を削る為でもあった。自分がいれば、奴等は日本に集中する。
そうなれば、他の奴等が他の奴等と邂逅し、殺し合う事での自滅をも狙える。一夏はそこを狙っていた。
同時に、自分と同じ考えをしている者の立場にもなって考えていたのだ。
自分ではなく最後に取っておくと言う意味で他の奴等を標的にするか、或いは最初から狙う事も考えていた。
しかし、来るなら来い、自分は此処にいる、一夏は他のプレイヤー達にそう宣言していた
一夏はそう考えながらも不意にピットを出入りできる扉が左右に開く。
視線を扉の方へと向けると、一人の女子高生がピット内に足を踏み入れて来た。
楯無であった。彼女は一夏を見て哀しそうに笑いながら歩み寄る。
「お疲れさま」
楯無は一夏に気遣いの言葉をかける。彼女は別の所で見ていたのだが彼が勝った事に安堵していた。
しかし、一夏から見ればあれは真耶の自滅なので、勝った気にはなれない。その証拠に、彼は舌打ちした。
「何がお疲れさまだ、あんなの自滅しただけだ」
「そう言ったらダメよ? 山田先生は貴方が相手だと緊張したのよ?」
「だからって緊張し過ぎだ。あれでは他の受験生にも負けるぞ?」
一夏は山に対して呆れていた。気遣ってはいない、不安でしかないのだろう。彼には関係ない事だが……。
が、一夏の言葉を否定するように楯無は微かに笑う。
「それは大丈夫よ?」
「なんだと?」
「山田先生、あれでも元日本代表候補生なのよ?」
「……あれが?」
楯無の言葉に一夏は不信感を抱く。真耶が元日本代表候補生? それは疑わしいとしか言えなかった。
代表候補生、それは代表候補生よりは下であるが候補生の次に実力ある者達が名乗れる物であった。
実力だけではない。カリスマや知勇を富む者だけが必要とされている。
それなのに、真耶はカリスマどころか噛んだばかりで候補生であるかどうかも疑わしい。
一夏はそう思いながらも楯無に指摘した。
「どこが代表候補生だ? あれはただ胸がデカいだけの女だろ?」
一夏は呆れながら否定の言葉を述べる。しかし、その言葉に楯無はカチンとした。
「失礼ね、あれでも強いのよ? それよりも胸はデカいのは余計でしょ?」
「知るか、俺はあの教師が強いかどうかも疑わしいからだ」
「人を見た目で判断してはダメ。山田先生が聞いたら、哀しむわ」
「別にいいだろう、本音を言ったんだからな」
一夏と楯無は軽く言い合う。しかし、そのやり取りはどこか違和感を感じた。
それは、今の二人には何かは判らないだろう。それでも彼等は言い合いを続ける。
真耶での事だが不意に扉の開く音が聴こえた。二人は音に気づき振り返ると、数人の女性が足を踏み入れる。
四、五人であるがその内の一人は、一夏が憎んでいる姉、千冬である。
一夏は千冬を見て舌打ちした後、目を逸らす。
千冬は一夏を見て下唇を噛むもぎこちない笑みを浮かべながら訊ねた。
「一……織斑、実技試験はまあまあだな?」
「……そうだな、あの女が自滅したおかげだ」
「ま、まあ山田先生はお前が相手だと緊張したからだ、あまり責めないでやってくれ」
「別に責める気はない……」
一夏は相槌を打つだけであった。そんな彼に千冬は哀しい想いが込み上げてくるのを感じた。
弟に毛嫌いされている。自分でも判っている筈なのに、そう思うだけでもつらかった。
自分は和解できないのか? そう感じると身体を微かに震わせる。しかし今は、教師と、この春入学する生徒として接している。
姉弟としてではなく、教師と生徒なのだ。
そんな二人を楯無は見守る事しかできなかった。千冬は一夏に対して何かを訴えているが、一夏は軽く流している。
その光景はまるで、自分と妹、簪と重ねて見える。できる事なら和解したいのだがその切っ掛けが見つからなかった。
そして楯無は今、簪を思う姉、刀奈となっていた。無意識であるがいつの間にか、刀奈になっていた。
「……それになんの用だ? まさか、実技試験での事を伝えに来ただけか?」
楯無は考えている中、一夏は千冬に訊ねる。千冬は一夏の言葉に一瞬だけ身体を震わすが直ぐに落ち着くと、ある事を教えた。
「じ、実技試験の事もそうだが、織斑、お前はこれからどうするのだ?」
「……決まってるだろ、試験を終えた生徒は帰宅する。それ以外、何がある?」
「あっ、そ、それは……」
千冬は一夏の言葉で困惑した。彼女はあのことを言おうとしていた。それは……ある事であった。
千冬は困惑しつつも、それを言った。
「な、なあ、後でお話をしないか?」
次回の水曜の投稿はお休み致します。次回は木曜日に投稿します。