インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第54話

「お……織斑、さん……」

 

 クラス代表が終わった後、簪は一夏の席に近づき、彼に訊ねた。彼は机の上にある教科書をしまうが無言で手を動かしていた。

 因みに今の時間帯は五分休憩であった。周りの生徒は軽く背伸びをしたり、教科書をしまったり、近くにいる者達と話をしていた。

 しかし、IS学園は入学式初日で授業があるからだ。一日でも早くISを立派に扱いこなせ、良く知る人材を育てる為でもあった。

 が、中には社会、国語、数学、理科、体育と言った普通の学校にある教科もある。

 期末や中間もあり、IS関連だけでなく、他の勉強もしなければならないため、忙しいのだ。

 

「あ……あの」

「…………」

 

 

 そんな中、簪は恥ずかしそうに一夏に訊ね続けていた。しかし、彼は無言であった。

 一夏は教科書をしまい終えるとそのまま腕を組み、項垂れた。

 

「……っ」

 

 簪は下唇を噛みながら俯いた。自分の愚かな発言のせいで彼を怒らせてしまった。

 自分はただ、セシリアの言葉が許せなかったのだ。一夏を侮辱するよな事を彼女は言ったからだ。

 彼女は一夏の事を良く知らないのに、彼を責め続けたのだ。

 簪はその事で怒りを表しながらも、彼に余計な行動をとらせ、更には怒らせたのだ。

 彼が怒っている理由は知ってる。自分に対しての事だろう。さっきから彼は無言であり、簪を無視し続けていた。

 これには簪も俯く事しかできなかった。

 

「か、かんちゃん〜」

 

 そんな簪に従者の本音が近づき、彼女の肩に手を置く。慰める意味でもあったが彼女の行動は一時的でしかない。

 それをしても簪は喜ばないし、逆に追い詰めるだけであった。

 

「本音……」

 

 簪はゆっくりと顔を上げ、本音を見る。つらそうであった。自身を責めているが彼女に非はない。

 一夏を、自分を守ってくれている従者を馬鹿にされた事での怒りと、一夏を困らせた事に後悔しているのだ。

 本音は簪を見て、う〜と唸る。慰める言葉が見つからなかったのだ。本音は不意に一夏の方を見る。

 一夏は無言であった。できる事なら彼に慰めてほしいが、彼がするかどうかは判らなかった。

 戦うのは彼とセシリアであり、自分達は戦わないのだ。

 

「……オリム〜」

 

 本音は一夏を呼ぶ。刹那、一夏は肩越しで二人を見る。

 彼は無表情であった。気にもしていないのか、簪に怒っているのかも判断できない。

 簪と本音は肩を震わすが、一夏は溜め息を吐くとゆっくりと立ち上がった。

 二人は驚くが、彼は簪と向き合う。

 

「あっ……っ」

 

 簪は一夏を見てつらそうに目を逸らしながら下唇を噛む。彼は怒っていた、眉間に皺を寄せていたからだ。

 自分への怒りだと気づいたのは直ぐであった。しかし、本音は一夏を見て困惑していた。

 そして関係ないが、箒は心配そうに見ていながらも簪に対して、嫉妬が籠った視線を送っている。

 が、一夏は自分よりも少し背が低い簪を見下ろしながら何も言わなかった。

 彼女に対し、どんな感情を抱いているのかは判らない。判るのは彼自身だ。

 一夏は無言で見下ろし、簪はつらそうに目を逸らし、本音はあたふたしている。

 すると、周りも三人の様子に気づいたのか、困惑し始める。

 一夏の事を良く知らないのも原因であるがまた何か起きるのではないかと思っていた。

 すぐにでも、千冬か真耶を呼びたかったが動けなかった。何かされるのではないかとも思っていた。

 重苦しい空気が流れ始める。誰もが冷や汗を流す者や泣きそうな者達が出はじめた。

 

「…………」

 

 刹那、一夏は簪に対して腕を伸ばす。これには簪は驚き強く目を閉じた。

 

「……えっ……?」

 

 が、簪は驚きのあまり、目を見開いた。彼女だけではない、近くにいた本音も驚いていた。

 周りも予想外の事で微かに驚いていた。なぜなら、一夏は簪に対し、ある事をしたのだ。

 一夏は、簪に対し、頭を撫でたのだ。簪は一夏の行動に驚くも彼は自分の髪を、大切に扱うように優しく撫でていた。

 

「お、織斑、さん?」

 

 簪は一夏の行動に驚きつつも、彼に訊ねる。彼は無表情で手を動かしていた。正反対ともとれる行動に簪は驚きを隠せない。

 しかし、一夏は簪を慰めていた。一人の同級生としてではない。

 従者としても、心配している訳ではない。が、利用する対象としてでもそのような行動をしただけであった。

 同時に箒の件をうやむやにさせるためでもあった。一夏の行動に簪は驚き続けていたが不意に頬を紅くする。

 一夏に魅入っていたのだ。彼の行動が簪の心に大きな変化を及ぼさせているが、一夏はそれを知らない。

 

「…………」

 

 刹那、一夏は鋭い目つきをしながら視線を移動させる。

 そこには、視線の先にはセシリアがいた。彼女は座ったままであるが一夏の視線に気づくと、不愉快そうにそっぽを向いた。

 が、一夏を嫌っている彼女の事でもあるが、簪を傷付けた事に変わりはない。

 一夏は利用する意味でもあるが、今は従者として、簪を馬鹿にしたセシリアに怨みを抱いていた。

 あの女には、お灸を据えさせてやる。そう考えていた。同時に、殺意をも抱いていた。

 しかし、今は夢見一彦や青年、他のプレイヤー達も探さなけれならないが動けないのだ。

 今はジェイソンが辺りを探索しているが、一夏はセシリアを凝視していた。

 彼の視線はセシリアにしか向けられていない。周りもそれに気づいたが誰も声を掛けようとはしなかった。

 

 すると、チャイムが鳴った。五分休憩の終わりを告げる意味でもあり、授業の始まりをも告げていた。

 これには周りも安堵したが席に着く。一夏も席に着くが簪から離れる。

 

「……」

「かんちゃん、かんちゃん〜」

 

 簪は一夏の行動に少し頬を紅くしていたが、本音が簪を呼ぶ。

 簪は本音の言葉で我に返ると驚く。

 

「えっ?」

「授業だよ〜」

「え……あ、う、うん」

 

 簪は何かに気づいた。が、本音の言葉に気づいてもいたがチャイムにも気づいた為に慌てて席に着く。

 不意に一夏の方を見た。彼は机の中から何かを取り出していた。

 教科書でもあるが簪は頬を微かに紅潮させてしまった。しかし、そんな簪を窓側の席から見ていた箒は微かに目を逸らす。

 刹那、下唇を噛みながら両手を拳に変えていた。嫉妬であった。

 簪は一夏に惚れた。そう気付いたのだ。

 刹那、箒がそう考えているのを他所に、教室の自動型の扉が開き、二人の教師が足を踏み入れる。

 千冬と真耶であった。彼女達は教卓の前まで歩くが千冬は不意に一夏を見た。

 一夏は無言であった。千冬とは目を合わせていない。拒絶しているようにも思えた。

 

「(一夏…………)」

 

 千冬は一夏を見て呟いた。表情は険しいが外面であり、内面は哀しみに満ちていた。

 彼と和解したいが彼は今、自分を拒絶しているため、動ける事はできない。

 それに源次がいる更識家に預けているため、今の自分には何もできない……訳ではなかった。

 なぜなら千冬には、一夏に対して、ある物をプレゼントしょうとしていた。

 千冬は教卓の前に立つ。真耶は近くに立っているが困惑していた。

 さっきの件が原因でもあるが千冬は彼女の事を気にせず、ある事を口にした。周りにではない、一夏に対してであった。

 

「諸君、授業を始める前に……織斑、政府がお前のために専用機を用意してくれた」

 

 刹那、千冬の言葉に周りはざわつき始める。専用機という言葉を聞いて驚いていたのだ。

 しかし、一夏はそれを聞いて眉間に皺を寄せていた。欲しくないのだ。政府からの専用機等、受取りたくないのだ。

 が、セシリアは何故か不敵に笑っていた。これで一夏をコテンパンにできる、そう考えていたのだ。

 

「静かにしろ!!」

 

 千冬は一喝して黙らす。これには周りも肩を震わすが、効果はあった。彼女達は千冬の言葉を聞いて静かになる。

 千冬は周りの様子に気づくと、一夏を見ながら口を開いた。

 

「織斑、お前には政府が専用機を用意してくれた……勿論、その専用機の名は白式、私の専用機、暮桜の後継機だ」

「…………武器は?」

 

 一夏は千冬の言葉に一夏は聞き返した。何かを気にしていた。専用機は兎も角、武器が問題であった。

 武器が豊富であれば問題ないが一夏は使う気にはならないのだ。機体が問題ではなかった。千冬の物を使いたくないからであった。

 

「刀一本だ……それ以外はない」

「……じゃあ返却しろ」

「なっ!?」

 

 一夏の言葉に千冬は驚いた。それだけではない、周りも驚きを隠せない。

 専用機を与えられるのにも関わらず、自ら手放す事を選んだ一夏に驚いているからであった。

 周りはざわざわとする中、千冬は教卓を叩きながら指摘した。

 

「な、なぜだ!? なぜそんなする事を言う!」

 

 千冬は一夏の言葉に納得できなかった。あのISは自らが政府に頼んだのと、自らがある研究所に頼んだ物であるのだ。

 それを返還する一夏に怒りと困惑しかなかった。

 しかし、一夏は普通に答えた。口調は厳しいが彼は理由を言った。

 

「刀一本でどう戦う? それに、それでは勝てるどころか相手に対して、自殺行為な物だからだ」

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