インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第63話

 その日の夜。ここは東京の少し離れた場所にある工場地帯。そこはISを開発し、研究している倉持技研と言う企業があった。

 そこはISを造るのを主体としつつも専門としている。が、別の意味での研究所でもあり本社ではない。

 しかし、研究所内は今、ガランとしていた。理由は殆どの研究員が帰宅しているのと、居るのは残業をしている研究員と夜番の警備員達だけだろう。

 同時に、研究所内にはシャワーや仮眠室もある為、泊まりたいときのためにも備えられている。

 

「異常なし……か」

 

 その頃、研究所内には警備室があった。そこはあまり狭くはないが何台もの画面が映し出されていた。それは、この研究所内に至る所に設けられた防犯カメラの物であった。

 近くにはカメラを操作するためのボタンが幾つもあるがその上には一冊の雑誌があった。

 が、カメラに映し出されている映像は全て、通路や室内を映している。防犯と言う意味でもあるが誰も侵入者はいない。いるのは警備員か研究員くらいだろう。

 そんなカメラをひとつひとつ観ている警備員がいた。三十代くらいの男性であるが彼はイスに腰掛けているあ。飽きているのと同時に疲れているのか、或いは眠いのかあくびした。

 

「ファァァ〜〜」

 

 警備員はあくびをした後、再び全ての画面を凝視した。しかし、異常はない。怪しい者は居なく、いるのは研究員と警備員くらいであった。

 顔見知りでもあるが彼は暇であった。この仕事に就いたのはいいが一日中とまではいかないが睨み合っているのは疲れるとしか言いようがない。

 彼はそう思いながらも愚痴をこぼす。

 

「全く……飽きるな」

 

 警備員はそう思いながらも携帯を弄ろうとした。が、それはできず、困っていた。が、警備員は何を思ったのか軽く笑う。

 それは、近くにある一冊の雑誌であった。強いて言うなら、水着を付けている女性達の特集の雑誌であった。警備員はその雑誌を読んで時間を潰そうとしていた。

 カメラには怪しい人物は映っていない。そう確信しているからであった。警備を怠っているようにも思えるが一休みくらいさせろ、警備員の言い訳がましい理由でもあった。

 

「へへっ、どの女もいい体つきしてんな?」

 

 男性はページを捲りながら笑う。水着の女性の一人一人を舐め回すように見ているのだ。彼は誰と付き合いたいのか、誰を……にしょうかと考えていた。

 しかし……彼は知らなかった。後ろには一人の大男が気配を悟らせずに、ゆっくりと近づいてくる。警備員は雑誌を見ているせいでもあるが彼は後ろから迫る者には気づいていない。

 

「うん?」

 

 が、警備員は雑誌が暗くなっていることに気づく。部屋自体が暗くなっている訳ではない。後ろから誰かが近づいてくることに気づいたのだ。

 警備員は後ろを振り向こうとした。刹那、男の頭に何かが食い込んだ。男は驚く前に目を見開いた。自分の置かれている立場を知る前に死んでしまった。

 即死であった。なぜなら、男の頭には鉈が食い込んでいたのだ。それも脳にまで到達していたのだ。警備員は雑誌を落とす。同時に彼もイスから転げ落ちることはなかった。

 そして、鉈を手にしている主は、ホッケーマスクを付けた大男、ジェイソンであった。彼は一夏の命により、倉持技研にいる者達を殺せと言ったのだ。

 場所は簪から聞いたために把握している。同時に彼のうっぷんを晴らさせるためにも単独行動を許したのだ。彼は警備員の頭に食い込んでいる鉈を引き抜く。

 引き抜かれたのと同時に警備員は微かに動いた。が、直後のことであり、彼が生き返る訳でもない。彼の頭には食い込んだ痕があったかのように微かに割れている。

 脳も顔を覗かせているように見える。血も微かに出ており、頬を伝うように落ちる。しかし、ジェイソンは彼を最初の目的にした訳ではなかった。

 彼は、この警備員室にある全てのカメラを機能停止と言う意味で破壊しょうとしていたのだ。同時に警備員は邪魔と見なされ、殺害されたのだ。

 

「キ、キ、キ、マ、マ、マ……」

 

 ジェイソンはそう呟いた後、沢山のボタンがある機械に近づく。刹那、彼は鉈を地面に落とすと、両手を拳に変え、力一杯殴った。

 大きな音が木霊するが何度も殴る。完全に機能停止にするためでもあるが、それは一夏の命でもあり、証拠を隠滅するためでもあったのだった……。

 

 

「…………」

 

 その頃、一夏は学生寮の自分と楯無の部屋にあるシングルベッドで上半身を起こしたまま、窓の方を見ていた。窓の外は夜であるが静寂に包まれている。

 しかし、彼は無表情であるがジェイソンが上手くやっているかどうかを気にしていた。逆に彼のことだ、上手くやっているだろう、と考えていた。

 が、今は別の問題があった。それは隣のシングルベッドには自分の方を向きながら寝ている楯無がいるのだ。自分を監視するためでもあるが彼女は寝ているため、そんな事を言える場合ではなかった。

 寝ていては監視の意味はない……が、一夏はそれで好都合だと思いつつ、視線を再び窓の方へと向けた……。

 

 

 

「…………」

 

 研究所にある仮眠室。室内は暗いが四つの二段ベッドが左右に二つずつ置かれていた。そして、部屋の奥の左側にある二段ベッドの下には一人の男性が寝ていた。

 彼は研究所の研究員であり、今日は寝泊まりしょうとしていたのだ。彼には妻子がいるのだが今日は泊まることを言ったために問題はなかった。

 彼は安心しているように寝息を立てている。が……。

 

「キ、キ、キ、マ、マ、マ……」

 

 そんな仮眠室に一人の大男がゆっくりと部屋の中へと入る。ジェイソンであった。彼は手に鉈を持っているが男性を殺そうとしていた。

 通路は明るく、扉を開けたままにしながら彼は奥の方へと進む。ふと、顔を左の方へと向ける。二段ベッドの下で寝ている男性を見ているのだ。

 男性は寝ているがジェイソンは屈むと鉈を逆手に持ち替え……そして……。

 刹那、何かが突き刺さる音が微かに木霊する。それは、ジェイソンが彼の腹を鉈で突き刺したのだ。男性は起きたが激痛を感じているのが目を見開いている。

 彼は視線をジェイソンの方へと向けているがジェイソンは彼の視線に気づくと、口元を大きな手で押さえ、鉈を持ってる手に力を入れ、鉈を更にめり込ませる。

 男性は何かを言い掛けようとしたが彼の脳裏に、自分に手を振る十歳くらいの女の子、娘と自分に対して微笑む妻の姿を思い浮かぶ。しかし、それは直ぐに消えた。

 彼は白目を剥きながら死んだ……。腹が致命傷になったのだ。彼のいるベッドのシーツを赤い血で染められ、掛け布団も赤く染まる。

 

「キ、キ、キ、マ、マ、マ……」

 

 ジェイソンは彼が死んだことに気づくと、鉈を引き抜き、立ち上がる。彼は微かに動くが鉈を引き抜かれた直後であり、生き返る訳ではない。

 ジェイソンは彼を見た後、何かに気づく。仮眠室を出入りできる扉の方から足音が聴こえたのだ。彼は扉の方を向いた。扉は開けたままであった。

 同時に鉈を持ってない方を懐に入れると、ある物を取り出した。一本のナイフであった。彼は誰かが近づいてくる。ジェイソンはそう思っていた。

 刹那、扉の向こう側、通路から一人の男性が横から出てくる。横を向いているが通路を歩いているのだ。

 

「うん? なっ!?」

 

 男性はジェイソンに気づいた。同時にジェイソンはナイフを男性目掛けて投げた。男性は驚く前にジェイソンのナイフは彼の眉間に突き刺さる。

 彼は微かに反り返るが、そのまま後ろへと仰向けへと倒れた。ナイフが脳にまで達していることが致命傷であった。しかし、彼は研究員ではない。

 青い制服を着ている……警備員でもあった。彼は見廻りをしていたのだ。が、彼はジェイソンと邂逅したために殺された。

 

「キ、キ、キ、マ、マ、マ……」

 

 ジェイソンは部屋を出ると、警備員に近づく。彼は仰向けに倒れているが死んでいる。ジェイソンはそう気付くと同時にナイフを引き抜く。

 警備員は死んだままであるがジェイソンはナイフを懐にしまうと、男の足を掴み、そのまま仮眠室へとひきずる。そして、部屋を出ると扉を閉めた。

 彼は辺りを窺う。誰もいなかった。気配さえもなかった。が、それで好都合であった。ジェイソンは一夏の命により、ここにいる者達を殺せと命令されているのだ。

 ジェイソンから見れば無差別殺人を起こすような物であるが彼は誰でも良かった。しかし、ここにいるのは簪のISを政府から貰った莫大な資金で目がくらみ、千冬の鶴の一声で手の平返しをした倉持技研の奴等がいる場所。

 それは汚い大人達であり、クリスタル・レイク湖で自分の監視を疎かにした指導員と同じ腐った人間達がいるのだ。

 ジェイソンはそう思っているが中には良い人間もいる。さっきの研究員がそうであった。が、彼には、ジェイソンには関係なかった。

 この研究所に居る者は全て殺せばいい……そう考えるのと同時に他の生存者を捜すために歩き出した。

 そして夜は長いが、ジェイソンによる殺人劇は、まだまだ、終わらない……。

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