インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

70 / 198
第70話

「…………」

 

 翌日の朝日が昇る頃。ここは学生寮の一夏と楯無の部屋。今の時間帯は朝の六時であるが窓側のベッドには楯無が寝ていた。

 寝息を立てているがどこか安心したような寝顔をしている。彼女は更識家の当主であるが寝る時は寝るのだ。近くにはスマートフォンが置かれていた。

 しかし、近くのシングルベッドには一夏はいなかった。彼は今……ある所にいるのだった。が、楯無は一夏がいないことに気づいていない。彼女は昨晩、一夏を警戒しながらも寝てしまったのだ。

 一夏が何をするのかを知りながらも寝てしまったのだ。当主として見落としているとしか言えなかった。

 

「う……うん」

 

 刹那、楯無は目を覚ます。充分に睡眠を取ったことを意味しているようにも思えるが彼女の朝は早いからであった。楯無は上半身だけを起こしながら手で目を擦る。

 

「……っ!?」

 

 楯無はある事に気づいた。それは、一夏がいないことにであった。楯無は眠気を完全にさますが彼女はベットから降りると、室内や浴室を調べる。

 しかし、彼はどこにもいなかった。それだけではない、玄関には靴がなかった。自分の靴はあるが彼の靴はない。どこかへと出掛けたことを意味していた。

 楯無は一夏の行動を気にしつつも慌ててベッドの方へと戻ると、ベッドの上に置いていたスマートフォンを手に取る。一夏に連絡しなければ、と。

 彼は携帯を持っているが源次が買い与えてくれた物であり、彼の携帯電話には自分の電話番号も載っているのと、自分のスマートフォンにも彼の電話番号が載っている。

 楯無は彼に電話しょうとした。

 

「何をしている?」

 

 刹那、後ろから声がした。楯無が振り返ると、そこには壁に凭れ掛かりながら腕を組んでいる一夏がいた。

 眉をひそめているが楯無の行動に不信感を抱いていたのである。

 

「お、織斑君……!」

 

 楯無は慌てて一夏に駆け寄ると、彼の前に立ち止まる。

 

「お、織斑君、どこへ行ってたの?」

 

 楯無は一夏に訊ねた。

 

「…………」

 

 が、彼からなんの反応もない。彼は眉をひそめたまま無言であった。

 

「織斑君、どこへ行ってたのよ?」

「…………」

「なんとか答えなさい!!」

 

 楯無は一夏の無言で怒る。当主として従者の彼に怒っているのだ。彼の勝手な行動は何度もあった。学園内でもそうであった。箒や鈴の件で彼は周りから怒りを買った。

 全て彼の自業自得であるが彼は更にとんでもないことをしたのだ。ジェイソンを使ったのだ。彼はジェイソンを使ってセシリアを怖がらせ、倉持技研の研究員や警備員を殺したのだ。

 許されないことをしている。彼が自ら手を下してはいないが命令したことに代わりはない。彼がいつ命令したのかは判らない。が、今は、楯無は一夏に対し、どこに行っていたのかを訊ねていた。

 もしも勝手な行動だとすると、更にとんでもないことをしたのならば、もはや許すことはできない。楯無はそう思いながら一夏を見据える。

 一夏は楯無を睨むが不意に視線を、ある方へと移す。

 

「何を見てるのよ?」

 

 楯無は一夏の視線を追うように、彼が向いた方を見る。そこにはテレビがあった。楯無はテレビを見て何も解らなかった。テレビに何があるのか? そう思ったのだ。

 

「…………まさか!?」

 

 刹那、楯無は何かを思い出したかのように目を見開く。何か嫌な予感がした。楯無はそう察知すると彼を見る。彼は視線をテレビの方へと向けたまま何も言わない。

 が、何かを知っているようにも思えた。楯無は一夏の様子に気づくと、再びテレビを見る。テレビの画面は暗かった。しかし、なぜか嫌な予感は消えない。

 

「っ!?」

 

 楯無は行動を起こす。それは、テレビを点けるためでもあった。彼女は近くにあるリモコンを手に取ると、電源のボタンを押した。

 

「ああっ!?」

 

 楯無は戦慄した。なぜならテレビは点いたのだ。当たり前であるがニュースがやっていた。しかし、その内容は戦慄かつ、一大スキャンダルな内容が飛び交っていた。

 

『昨夜未明、各放送局に、倉持技研の研究員が記した日記の内容らしき物を纏めた書類が送られてきました!』

 

 ニュースキャスターらしき女性が慌てながら手元にある書類を見ながら話をしていた。が、楯無はなぜかチャンネルを変える。

 偶然だ、そう思っていたのだ。が、どのチャンネルも倉持技研の話題で持ち切りであった。一大スキャンダルでもあるが内容は凄かった。

 その日記には日本政府と倉持技研の金のやり取りと、倉持技研の上層部が金に目が眩んだことでISを見送ったことや、少数派の者達の悲痛が記されていた。

 ある姉妹のやり取りと、織斑一夏の専用機になるであろうISの白式の件も細かく記されていた。が、楯無はテレビの内容を見て戦慄し続けていた。

 あの日記の内容が流れている。自分達や日記を記した者だけが知らないことが流れていたのだ。それは日本だけでなく、全世界に流れる。楯無はテレビを観続けていたが我に返ると、一夏を見る。

 一夏は無言であった。が、彼も視線をテレビの方へと向けている。いや、観ているのだ。しかし、日記の内容を流したのは一夏であった。彼は昨晩、楯無が寝た少し後に目を覚ますと、ある場所へと向かった。

 霧に囲まれた孤島であり、自分とジェイソンが住んでいる場所でもあった。彼はそこで、日記の内容を一通りパソコンでコピーしたのだ。そしてそのコピーした日記の内容を各局にファックスで送ったのだ。

 彼の家にはパソコンやファックス等の電気用品もある。それは、主催者側からのメールが来るのと、他の脱落者を教えるためでもあったのだ。

 が、一夏は倉持技研の奴等を破滅に追い込もうとしていた。そして、その日記は、ある場所へと投げ捨てた。それは……。

 

『あっ、緊急速報です!』

 

 テレビに写っているキャスターがスタッフから書類を渡される。楯無はキャスターの声に反応して、振り返る。

 

『えっ!?』

 

 直後、キャスターは何かに驚いていた。楯無はキャスターの様子に困惑するがキャスターは我に返ると、あることを伝える。

 

『し、失礼しました! 実は先ほど、ある放送局で、研究員が記し、そのコピー元になったであろう日記が届けられたようです!』

「なっ!?」

 

 楯無は驚く。しかし、一夏は何も言わずテレビを観続けていた。が、彼は日記をある局へと届けたのだ。用済みかつ、なんの意味もないであろう日記を届けたのだ。

 理由はコピーだけでなく、本物を見せるためでもあった。そうすれば、真実を報道することができる。偽りではなく、関心を呼び出させるためでもあった。

 警察に届けなかったのは、政府から止めてくれと言われる危険もあったからだ。逆にマスコミならば利益が欲しいがために躊躇なく教えるだろう。

 視聴率を稼げる。そう思っているのだろう。一夏はマスコミのウザさには呆れながらも利用していた。簪を傷付け、楯無をも困らせた倉持技研や政府へのバッシングを期待していた。

 倉持技研は路頭に迷うか、最悪倒産するだろうし、日本政府も大幅な入れ替えが起きる。後者は無理に等しいかもしれないが、今頃はマスコミの餌食を喰らっているだろう。

 理由は誰が金を渡し、政府がなんのために手渡したのかを根掘り葉掘り尋ねるだろう。最悪、無理に等しくてもジェイソンに頼んで殺してもらえばいい。

 腐った日本政府にはそれが言いのと、彼等が破滅すればなんでもいい。更識姉妹を哀しませた報いを受けばいい。そう思っていた。無慈悲な考えでもあるが彼は気にもしなかった。

 家族が路頭に迷おうが関係ない。彼は冷酷な決断を下したに過ぎないのだ。

 

「お、織斑君……っ!」

 

 そんな一夏に楯無は背筋が震えるのを感じた。怖い……そう思ったのだ。彼の行動は想定外な場所まで行っている。それは彼の行動は他の家族が破滅しょうが、社会的抹殺されようが関係ない。

 彼は冷酷な殺人鬼ではないのかとも思った。ジェイソンも例外ではないが彼の場合、任務を難なくやってのけている。従者として当たり前かもしれないが彼は暗部の人間としてしたにも過ぎないだろう。

 しかし、彼は諸刃の剣ではないのかと思っていた。いや、すでに諸刃の剣だろう。同時に楯無は一夏を見て、あることをも考えてしまった。

 それは、彼の方が更識家の当主である楯無に相応しい。自分よりも冷酷で、自分よりも無慈悲だからだ。,もし彼が暗部の長になれば……楯無はそう思うと後退る。

 怖い……彼への恐怖で青褪めていた。彼が従者であるのを喜ぶことはできなくなった。前からであるが今日で確信した。彼は危険な存在だ。

 冷酷な青年だ。箒や鈴にも容赦なく罵倒に近い言動をしたのもそうであるが彼はもう、自分が良く知っている一夏ではない。

 彼は悪魔だ……そう思ったのだ。楯無は一夏を見て震えるが一夏は何も気にもせずにテレビを観続けていた。テレビは未だ倉持技研でのスキャンダルを流しているがどちらも、何も言わなかった……。




 次回の月曜日での投稿はお休み致します。次回は火曜日に投稿致します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。