インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
その頃、ここはアメリカにある、とある街。今の時間帯は夜の十一時過ぎであった。日本とは時差が違うのと、今の時間帯でも人は疎らだが明かりは消えない。
そんな街の、とある十階建てのビルの屋上には、ある人物がいた。全身黒ずくめであるが赤と緑のチェックの柄のシャツを着ている。帽子は深々と被っているが誰かを待っていた。
刹那、後ろから気配がして、その人物は振り返った。そこにいたのは、一夏であった。彼は腕を組みながら険しい表情を浮かべている。呼び出されたことに怒っているようにも思えたが、実際、呼び出されたのだ。
「……お前は」
一夏はその人物を見て訝しめる。あの時、デパートのエントランスで青年が不審死を遂げた際に、二階に居た者である事に気づく。が、同時に一夏はスマートフォンを取り出すと、それを指でタップし、その者に見せた。
『アメリカの〇〇ビルの屋上で待ってる。主催者』
スマートフォンの画面には、メールの内容らしき文字が映っていた。が、一夏は食堂で赤い手紙のメール……つまり、主催者がメールを送ってきたことに訝しんでいるのであった。
一夏はそれを気にしつつも、ここへと来たのだ。ゲームに関することであるのと、主催者がなんの目的で呼んだのかは判らないからだ。
「……俺はムダな時間や行動は嫌いだ……用件を早く言え」
一夏はそう言いながら、その者を促す。しかし、その者は一夏を見て何も言わない。
「……それに」
一夏は辺りを伺う。自分以外、誰もいない。他のプレイヤーは愚か、ここにいるのはおかしい。無論、ここなら誰にも会話を聞かれないことにも気づいた。
一夏は辺りを見渡した後、その者を見る。呼ばれたのは自分だけか? そう思ったのだ。他の奴等を呼んだのならば戦う準備もできている。自分にはISがあるからだ。
「……答えろ、お前は、なんのために呼んだ?」
「……はあ〜」
刹那、黒ずくめの者は溜め息を漏らす。緊張を吐き出す意味にも思えた。が、一夏は眉をひそめる。呼ばれた理由を知りたいが、その者が溜め息を漏らしたことに怒りを隠せないでいた。
「そう憤るなって……それに愚問だな?」
「……なんだと?」
「おいおい、俺の顔を忘れたのか?」
刹那、その者は被っていた帽子を取る。三十前半の男性で、黒い髪に黒い瞳が特徴的な男性であった。が、左目は抉られたのか眼球はなかった。
一夏はその者を見て眉をひそめる。知ってるのであった。
「……やはり、主催者か」
一夏はその男を主催者と言った。そう、その男は、このゲームを作り、ゲームの主催者であった。同時に一夏達に殺人鬼を与えたのも、彼である。しかし、彼はゲームの主催者に過ぎない。
彼の他にもいるが、その上には更なる別の人物もいるのだ。主催者であるが、彼は監視役でもある。一夏は自分を呼んだのは主催者であることに怪しんでいた。
メールを送ってきたのは主催者であることには気づいていた。が、目の前にいる男も主催者である事に気づいていた。一夏はあえて知らない振りをしたのだが主催者である男は微かに笑う。
「そう憤るなって? 俺はお前を呼んだだけだ」
「……だったら、なんのために俺を呼んだ?」
一夏の言葉に男は不敵に笑うと、背を向ける。
「まあ、少し話をしょうぜ?」
「……なんの話だ?」
一夏は少し後退りする。警戒しているのだ。メールの主は主催であることには気づいていたが警戒を緩めていない。そんな一夏に男は肩越しで見る。
彼は警戒心丸出しであった。が、男はそれを鼻で笑うと、前を、いや、下を見下ろす。ここは十階建てのビルであるが下は物凄く遠い。落ちたら人だまりもないだろう。
骨はぐしゃぐしゃに潰れ、臓器は皿が割れるように飛び散る。それを考えただけでも男は微かに笑う。いい、と。
「……答えろ」
そんな男に一夏は促す。苛立を隠せないでいた。一夏の言葉に男は微かに笑う。
「ああ……その前に」
男は空を見上げる。夜中であるが闇に包まれているようにも思えた。それでも、男は言葉を続ける。
「お前も知ってるだろ? このゲームが誕生した理由を」
男は、主催者は不敵に笑いながら一夏に訊ねる。一夏は男の様子に気づきながらも目を逸らす。が、彼は男が言うゲームの目的を知っていた。
これは単なる殺し合いではない、これは周りを、全世界を巻き込むゲームでもあるのだ。周りは一夏を含めた他のプレイヤー達の殺人鬼の生け贄に過ぎない。
殺人鬼達の鬱憤を晴らすために過ぎない。殺された者達は生け贄であるが殺人鬼達の獲物に過ぎない。同時に、このゲームが誕生した理由もある上、一夏達が選ばれた理由もある。それを、男は教えた。一夏は最初から知っているが男はあえて、改めて教えたのだ。
「このゲームはお前や他のプレイヤー達一人一人の復讐を成し遂げるために俺が娯楽気分で作ったもの。同時に殺人鬼達はお前達と同じ境遇である者達を厳選にな」
男は両手を横に広げる。
「ゲームは主催者であるこの俺が、ある方に命令されて作った。誰よりも刺激を求め、誰よりも哀しみを快楽だと思っている。それに……」
男は再び、一夏を見る。一夏は目を逸らし続けているが男は更に笑う。
「無論、お前は選ばれた一人であるがジェイソンとも同じ境遇であった。他にもいるが、それ以上にお前は違う……お前が選ばれた理由はお前は誰よりも人を憎んでいたことだ。周りを、自分を苛めていた者や迫害した者達を」
「…………」
「お前はその復讐心を吐き出すことはできなかった。が、あの事件が、あの三年前の事件がお前を変えた、お前は復讐心を吐き出した」
「……ああ、そうだよ」
一夏は奥歯を噛み締める。三年前の事件、それが全ての始まりであった。同時にゲームを始めるための序章にも過ぎなかった。自分が最後の一人であった。
が、あの時は確かに復讐の炎を滾らせた。姉の裏切りや周りへの憎しみを吐き出してしまった。何も変わらなかった。一夏はそう思ったのだ。
今はもう、その話はもう、過去の話であるが関係ない。自分は復讐の鬼として、IS学園に入学したのだ。他のプレイヤー達を誘き出すための隠れ蓑に過ぎないが一夏は獲物が掛かるの待つ反面、迂闊に動けいないでいた。
無闇に動けば、楯無にバレたらうるいさいからだ。いや、既の独断での行動を起こしているため、楯無に怒られるだろうが一夏はそれでも構わなかった。
というよりも、彼女が怒っても自分には関係ない上、時間のムダにはしたくなかった。クラス代表もムダな行動であるが、気に入らないが他のプレイヤーが動くまでの間、学園で過ごすしかなかった。
一夏は舌打ちする。そんな一夏に男は鼻で笑う。
「ふっ、そう憤るなって」
「……くだらん、それよりもなぜ、俺を選んだ?」
「その中でもお前は違う。お前は二人のプレイヤーを倒した。捜すのに一苦労した者達の二人を」
「……それだけでなぜ、俺を優遇する?」
一夏は警戒心を剥き出しにしながら指摘した。それだけの理由では、理由とも言えないのだ。罠であることにも警戒しているが一夏は男の言葉に従っている訳でもないのだ。
一夏は何も解らない中、一夏の指摘に男は振り返りもせずに再び鼻で笑う。
「優遇ではないが、お前は、このゲームの優勝候補であるからだ」
「……なんだと?」
男の言葉に眉をひそめる。が、男は先を続ける。
「お前は、自らを盾に奴等を誘き出そうとしている。俺から見れば馬鹿らしいが、逆に感銘した」
「……知ってたのか? 俺の行動や考えを?」
「ご名答、このゲームは復讐まみれのお前達の用意したゲームだ。無論、俺の戯れでもあるがお前らは真剣にゲームを平然とやってのけている」
「…………」
「俺はゲームの主催者として嬉しく思えるが、あの方も沢山の死者を集めて嬉しいだろうな?」
「……下らん、俺はお前達のためにゲームをしている訳ではない。俺は願いを叶えるために戦っている」
「それは解ってるぜ? だがゲームを楽しめ、血で血を洗うデスゲームをな?」
「……俺は願いを叶えるためにしているだけだ、それ以外に楽しむこと等、ない」
男の言葉に一夏は応えた。いや、ゲームを楽しむ余裕はないようにも思えたが楽しむことを考えていない。彼は純粋に、復讐のためにゲームをしているに過ぎないのだ。
一夏の言葉に男は肩越しで見る。一夏は目を逸らしているが男は微かに笑うと、男は口を開いた。
「お前を呼んだのは、ある者に逢わせるためだ」
一夏は眉をひそめる。ある人物? それは誰なのかを警戒した。それは自分にとって有利なことなのか、と。一夏は男の後ろ姿を見え、それ以上、何も言わない。
男の会話を待っているが男は口を開いた。それは、ある人物の名を教える意味でもあり、逢わせる者の名を教える意味でもあった。
「レクター博士、通称、ハンニバル・レクターだ」
次回の金曜日の投稿はお休み致します。次回は土曜日からの投稿となります。