インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
「…………」
その頃、此所は湖に囲まれ、全体が霧で漂っている島らしき場所。そこには畑や鶏の養育場があり、二階建ての一軒家がポツリと建っていた。
そんな場所に一人の大男が佇みながら湖を眺めていた。彼が何を思っているのかは彼にしか判らないが彼は湖には拒否反応どころか懐かしさを感じていた。
その大男とは、ジェイソンであった。彼は湖を見て何かを思っているのは幼い頃の出来事だろう。嫌な思い出としても認識しているが湖がある以上、仕方ないだろう。
ここは自分が動ける場所でもあり、殺人以外出られない場所でもあり、一夏と一緒に住んでる場所でもあった。ジェイソンは今一人で留守番している。
一夏は今、向こうの世界でフレディの手掛かりを見つける為に動いている為に此所にはいない。自分は留守番しているがジェイソンは何処か寂しくも何時もの事だと諦めていた。
刹那、近くから風の様に現れた人物がいた。ジェイソンは後ろを振り返ると、片膝を突きながら眉間に皺を寄せながら瞑目している一夏がいた。
ジェイソンは一夏の様子が変である事に気付く。向こうの世界で何か遭ったのか? そう感じていた。一夏はと言うと何かに怒っているのと同時に焦りもしていた。
「くそが……」
一夏はそう言いながら立ち上がると、ズカズカとした足取りで家の扉を開け、家の中に入る。
だが彼は怒っている事を意味していた。向こうの世界で嫌な事が遭った――そう意味していた。
ジェイソンは一夏の様子を気にしていたが一夏は家に入るや否や、テーブル近くのイスに座ると、肘を突きながら頭を抱える。
「何なんだよ……あれは」
一夏はあの時の事を思い返す。十数分前、一夏はISを起動してしまった。否、足蹴りしょうとした意味で触れた時点で起動してしまったのだ。
これには一夏は驚いていたが周りも騒然としていた。あの時の青年以上とは言えないが男性が扱えた事やイレギュラー的な出来事が起きた事に驚きを隠せないでいたからだ。
女性から見ればあれだが男性から見れば希望でしかないだろう。が、一夏は冷静を装いながらも下唇を噛むと、ISから降りる。降り方はある事で知っている為に問題は無かったが一夏はその場を逃げる様に立ち去った。
周りは自分を見ているが好奇と言った視線ではない――驚愕の視線を向けている。同時に近くにはIS関連の人は不在であった。もしいたらどうなっていたのだろうか?
考えるだけでも嫌な予感しかしなかったが今はその場からいなくなる事だけを考えていた。人気の無い場所まで行くと風の様に消え、此所へと戻ってきたのだ。
しかし、一夏は自分が何故、ISを起動出来たのかは判らなかった。
「どうしてだ……」
一夏は思考を走らせる。徐々に冷静さを取り戻していたが今は思考を走らせていた。何故動かせたのか? 色んな仮説を立てるが何れも疑う様な物であった。
一つ目、あの女が男性でも扱える様に改良した事――これは無理だろう。あの女は宇宙進出を夢見ていたから男女両用のISを造る事はなく、同時に他人等気にもしないだろう。
二つ目、自分は別のあの女と同じ血を引いているからか? ――無論、同じ血と言う理由でISを起動出来るとは限らない上、思い出したくもない為、無理であると共に例外。
三つ目、単に動かせた――否、これは例外であるが一夏は知らなかった。三つ目こそが正解であった。それは一夏が霧による影響で身体につ突然変異が起きた事だ。
それは身体の大幅に上昇するだけでなく、彼の身体にも影響を及ぼしていた。それは彼の身体の中にある細胞が霧の影響で変化していた。それは彼を人間でありながらも人間ではない身体にしてしまったのだ。
言わば彼は人でありながら化物となっていた。それが原因でISは彼が男性か女性かも判断出来ず何方の性別を併せ持った人間としても判別してしまったのだ。
彼がISを起動したのも霧であり、全ての元凶でもあった。一夏がそれを知るのは何時になるのかは判らないが同時に他のデスプレイヤー達もISを起動出来るが霧の成分まで知っているかどうかは判らないだろう。
一夏は霧の成分を知らず、ISを起動した事に愕然とする中、ジェイソンは家の中に入る。一夏を心配したからではない、一夏の様子を気にしていたからだ。
「……ジェイソンか」
一夏はジェイソンが近くにいる事に気付き顔を上げる。ジェイソンは一夏を見て何とも感じないが一夏は呆れると共にテーブルを殴る。怒りを吐き出そうとしていた。
ジェイソンに八つ当たりするのは違う事に気付き、彼が悪い訳でもない。あれを起こしたのは自分であり、ジェイソンではない。
一夏はそれに気付きながらも目を逸らす。ジェイソンは一夏の様子に首を傾げるが一夏は不意に呟いた。
「済まない……フレディの手掛かりを掴めなかった……それどころか、ISを起動してしまった」
一夏は微かに呟くがジェイソンは首を傾げる。彼は一夏が向こうで何が遭ったのかを知らない。彼は留守番していたが干渉してはいない。
ジェイソンから見れば向こうの世界は別世界でもあり、自分のいた世界ではない。ジェイソンと言うのは向こうの世界の小さな田舎町で有名なだけであり、一夏のいる世界では全くと言っていい程、知られていなく、存在すらもしない。
そして、自分が沈められ、其処を長い間住処とし、拠点としていたクリスタル・レイク湖も存在しない……ジェイソンから見れば帰る場所が無い事は寂しくも感じるが今は此所が帰る場所である。
一時であるが彼は自分の半霊であり、デスゲームを制するまでの間にしか過ぎない。ジェイソンはそう思いながらも一夏を見続けていた。
「…………」
一夏はさっきの事を未だ考える。幾らISを起動しただけでは珍しくもない。しかし、自分は男性であるの同時に女性にしか扱えないISを起動したのだ。
今頃、日本中は騒然とし、最悪、海外にまで知れ渡るだろう。そうなれば自分は他のデスプレイヤー達を見つける前に自分が捕まる。研究所でモルモットにされるだろう。
日本への活動を一時的にやめて海外で活動しても、海外でもまた我が国に居る事を願い捜すに違いない。同時に、あの女共にも知られる。奴等は他とは違い血海鼠になってでも捜すだろう。
一夏はそれに気付き考える中、八方塞がりや四面楚歌に置かれている立場にも気付いていた。自分はフレディを捜しているだけなのにこんな事になった。
どうすれば良い……どうすれば、この危機的状況を打開出来る? 一夏は思考を全て走らせるが状況は益々悪くなるばかりであった。が、同時にある事をも思い出す。
「…………チャンスだ」
一夏はある事を思い出す。それはISを潰せるのではないのかと考えた。自分はISを憎んでいる――ならば、そこを突けば良い。自分が死のバトルロワイヤルに参加しているのは復讐を果たす為でもある。
その願いにはISも含まれているがそこを突けば良い。ISを使うのは癪だが仕方ないと片付けるしかない。それに他のデスプレイヤー達も日本に来る事も考えていた。
それはあの時、青年が謎の変死を遂げた時に、近くには何処かのテレビ局の者達がいたのだ。もしもあの時、あの者達が撮影していたのならば、もしも他のデスプレイヤー達が見たか観ていたのならば日本にやってくるに違いない。
あれがフレディの罠かそれとも単に近くに居たのかは判らないがチャンスと思った。デスプレイヤー達は互いの存在を知られていない。姿形は愚か、何者かまでも知られていない。
もしも観ても罠だと気付いても其処は仕方ないと片付けるしか無いが逆に今はISを潰すのが先と考えてもいい。デスプレイヤー達は何時でも良い――そう考えていたがある事も警戒していた。もしも自分の存在が他のデスプレイヤーに知られる危険も伴う。
が、一夏は其処にも気付いていた。同時に返り討ちにする事も考えていた。彼は復讐に走っており、逃げようと言う考えは無い――あったとしても危険が伴うからであった。
顔を知られたら其処でおしまいだからだ。活動範囲を拡大させなければならないからだ。そうなれば、相手の目を誤摩化す以前に別のデスプレイヤーにも見つかる危険が伴う事にも気付いた。
しかし、今はISが先であった。一夏は頷くと立ち上がり、ジェイソンの方を見る。ジェイソンは一夏を見て首を傾げ続けていたが一夏は彼にいった。
「ジェイソン――俺はまた出掛ける――勿論、あの女に接触する為だ」
一夏はそう言うと再び扉の方へと歩くと、家を出た。ジェイソンは一夏の後を追う様に身体を動かすが彼は動かなかった。
留守番――そう、思っていたからだった。