インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第95話

「……なんだ、貴様は」

 

 一夏はナイフを持ち構えながら、背を向けている赤く禍々しい機体に訊ねる。その機体は鈴を見据え続けていた。鈴は壁から背中に激突したために気を失っていた。

 

「……答えろ」

 

 一夏は機体に再び問うが機体は聞く耳を持たない。が、一夏は溜息を漏らすと、機体に迫る。刹那、機体は振り返りながら腕を曲げる。同時に、衝突する音が微かに響いた。

 

「……やるな」

 

 音の正体は一夏のナイフと、機体の腕からであった。ナイフと機体の腕が衝突した音であった。一夏は機体に斬り掛かる意味で斬りつけよとしたのと、機体がそれを腕で防いだのだ。

 一夏は感想を漏らす。褒めている訳ではないが攻撃を防がれたことに微かに憤りを感じていた。が、相手は未知の敵であり、実力も判らない。

 それでも彼は敵であることを認識していた。一夏はナイフで機体の腕と鍔競り合う形になる。

 

「………」

 

 が、彼はある事に気づく。力では自分の方が下である事に気づいたのだ。彼はそれを察知するや否や、素早く後退し、ナイフを解除すると、ランスを展開し、身構える。

 一方、機体の方はと言うと、一夏を見ているが構える様子は無い。まるで、彼が標的や獲物ではないようにも思えた。実力ある物の余裕とも思えるが機体自身、何を考えているのかは理解できない。

 一夏はランスを構えるが、会場席からは逃げ惑う声が幾つも聞こえる。耳障りとも思えるが彼は機体に集中していた。乱入者であり、戦いの邪魔をしたのだ。

 彼は軽く舌打ちする。怒りを表していた。それを吐き出す意味でもあった。

 

『止めろ一夏! ソイツはお前がかなう相手ではない!』

 

 そんな中、放送席から千冬の怒りと心配事が孕んだ声が聴こえた。彼女は一夏の様子に気づいたのだ。彼は戦うつもりだ。姉としての直感と心配でもあった。

 しかし、一夏は聞く耳を持たず、ランスを持って機体に迫ると、ランスで攻撃した。機体は反撃するように彼と戦う。

 が、機体は一夏を軽くいなしているように戦っている。一夏は一夏で真剣に戦っているが一進一退の攻防を繰り広げていた。

 

 

「一夏!? っ!」

 

 そんな一夏に千冬は歯を食い縛ると、放送室を走って出て行くと、廊下を走る。そんな中、少し先には放送室へと走るように向かっていた者がいた。

 その者は真耶であった。彼女は会場席に居たのだが謎の機体を乱入を見て、急いで放送室へと向かっていたのだ。

 

「お、織斑先生!?」

 

 真耶は奥にいる千冬を呼び止めようとしたが彼女は真耶の横を走り過ぎる。

 

「織斑先生、どこへ!?」

 

 真耶は千冬を呼び止めようとしたが千冬は振り返らないまま答えた。

 

「一夏の助けに向かう! 山田先生は私の代わりに指揮を執ってくれ!」

「え、ええっ!?」

 

 千冬の言葉に真耶は驚くが彼女はまだ新米であり、指揮を執れと言われても困惑しかなかったのだ。が、彼女は適切な判断ができるため、問題ないだろう。

 一方で、千冬はある場所へと向かうために廊下を走りながら歯を食い縛っていた。あの機体は未知の敵であることに気づいていた。女の勘かもしれないが、それとも元代表としての直感かもしれない。

 相手が誰であれ、どういう攻撃をするのかは判断できない。手合わせをすればいいが隠し武器は愚か、その能力も未知数なのだ。そうなれば一夏が、弟が危ない。

 千冬は姉として助けにいこうとしていた。生身の身体ではどうすることもできない……訳ではない、彼女は、ある物を持っていた。とあるISだ。量産機ではない、それは専用機でもあったのだ。

 

(一夏……っ!)

 

 千冬は彼を想う。彼は今まで一人であった。自分は彼を見ていなかった。それは自分が手を差し伸べなかった。それで彼は変わったのだと、彼女は思った。

 だが今はもう、彼を一人にさせない。彼は一人で戦おうとしている。誰かを守るためでもあるか、それとも自分勝手な行動かは判断できない。

 が、それでも彼は戦おうとしている。稼働時間はまだ浅く、新米である。そんな彼に危険な仕事はさせたくないが自分が行けば戦力にもなる。

 一夏の近くで戦えることは嬉しいが不謹慎でもあった。それでも千冬はアリーナへ向かう。ハイヒールの音を立てながら……。

 

 

「……はっ!」

 

 その頃、一夏はランスで機体と戦っていた。彼のランスさばきはお手の物とも思えたが機体は軽く躱したり、軽く攻撃し、反撃してくる。彼もまた、反撃しているが躱したりしている。 

 一進一退の攻防でもあるが互いに休む気配はない。しかし、アリーナでは一夏と機体が戦っている中、観客席は騒がしさが続いている。

 

「ちょっと早く行きなさいよ!?」

「早くしてよ!」

「死にたくない!」

 

 女子生徒達が恐怖で支配されながら出口へと向かっていた。しかし、それは出勤と帰宅ラッシュ時の満員電車の如く、人混みと化していた。

 彼女達に共通することは死にたくない、自分が可愛いだけであるだろう。が、中には彼女らに交じるように職員達もいた。彼女達もまた、同じ気持ちであった。

 失望や幻滅さえも感じるが彼女達の中には違う者達もいる。

 

「押しては行けない!」

「皆落ち着いて!」

「冷静になってください!」

 

 女子生徒達の中には避難誘導する者達もいた。それは生徒と言う強い立場でもなく、教えられる立場の者達が自分よりも他人を優先していた。

 彼女達はこの状況を苦虫を噛み締める思いかつ、つらい中、怖いと思いながらも必死で頑張っていた。が、そこだけではない、放送室でも数人の教師達が放送で誘導している、そんな中、真耶が合流する。彼女は急ぎ足でここへと来たのだ。

 周りには教師達もいるが真耶は息を整える前に行動を始める。

 

「皆さん、落ち着い、て!」

 

 真耶は疲れの色がありながらも、肩で息をしつつもマイクに口を近づけながら避難誘導していた。彼女は教師として、生徒を守ろうとしていた。

 アリーナではそれぞれの思惑があり、それぞれの修羅場が繰り広げられている。生徒達や冷静さを失っている教師達を誘導する生徒達。

 教師達が逃げる中、教師としての使命を果たそうとするために、生徒達の身の安全を心配する真耶を含めた数人の教師達と放送部の生徒達。

 が、それは少女達と数人の女性が他人を優先する中、一夏はたった一人で、未知の敵であり、乱入者の機体と戦っていた。攻防は有利でもなく、不利でもない。

 彼は機体を敵と認識しつつもランスを振り回す手を止めない。疲れの色も無いが相手も無い。どちらかが倒れるまで、続くようにも思えた。

 

「織斑君!!」

 

 そんな中、一機のISが一夏が出てきたピットからこの場所へと来るように合流する。一夏は突然のことで振り返るが一瞬の隙を見せてしまった。

 

「ギガガ!」

 

 刹那、機体は声を上げるようにそのISを見る。が、機体は一夏をよそにISへと迫る。憎悪を向けるように迫っていた。

 

「……更識……!」

 

 一夏はそのISを、いや、霧纏の淑女を纏い、彼女の主力武器の一つであるランスを手にしている少女、楯無を見る。楯無は一夏の危機に駆けつける意味で援軍を名乗り上げたのだ。しかし、機体は楯無目掛けて迫るが、楯無は微かに笑みを浮かべる。

 

「相手が悪いわよ?」

 

 楯無はそう言う。機体は楯無に迫るが楯無と機体が衝突する前に、彼女と機体の周りに水が発生する。機体は突然のことで驚くが動きが止まる。

 いや、微かに進んでいるが身体が言うことを聞かないようにもなっていた。楯無はそれを突くようにランスで攻撃した。楯無はランス機体の腹部分を突く。

 機体は吹っ飛ばされる……訳ではなかった。彼は吹っ飛ばされる、と言うよりも後退りしていた。いや、彼女と周りに発生している水が重力を奪っていたからだ。

 楯無のIS、霧纏の淑女の能力でもあるが楯無はその能力で機体を攻撃する。二度、三度とランスで攻める。楯無が優勢であった。

 

「…………」

 

 が、一夏は楯無の乱入に怒っていた。自分の援軍でもあるが機体は自分の獲物である。一夏はそう思うと、ランスを持ってる手に力をれる。

 楯無に怒りたい、が、今は機体をなんとかしなければならない、楯無は守るべき者の一人である。彼はそう思っていた。しかし、鈴はほったらかしであった。

 彼は眼中には無いが鈴はいまだ気を失っている。援軍に来るにはもう少し時間が掛かるが一夏は楯無に加勢しょうと近づいた。二人でならば勝てる。そう直感したのだ。

 だが……彼の直感は哀しくも崩れ去り、更なる修羅場が襲う。それは、放送室で避難誘導を鳴らし続けていた真耶や他の数名の教師達からであった。

 彼女達は自分達のやれることを精一杯頑張る中、警報が鳴ったのだ。真耶達は気づく。

 

「な、なんですか!?」

 

 真耶が警報の元を探る。そして、彼女は驚いた。同時に戦慄していた。

 

「そ、そんな!?」

 

 真耶は驚きを隠せない。そんな真耶に教師の一人が訊ねると、真耶は驚きながら叫んだ。

 

「じょ、上空の、が、学園付近に、更なる未知のISが学園に迫ってきます!! それも二機!!」

 

 刹那、真耶の言葉に周りは戦慄した。が、乱入者は更に来ることをも、意味していたのであった……。

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