インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第97話

「か、簪ちゃんがどうしたのよ!?」

 

 一夏の言葉に楯無は驚きながら問いつめる。しかし、彼は何も言わず、二機の機体を睨んでいた。どちらも動く気配名はないが何時でも攻撃できるように万全の体勢であった。

 奴等の狙いは楯無だ。自分が抱き締め続けている限り、どうすることもできないだろう。が、赤い機体の奴はどこにもいない。奴の狙いは簪だろう。

 楯無を狙っているのならば、彼女を人質にし、殺すつもりでもあるだろう。一夏はそれに気づき、ジェイソンに彼女を守るよう命じたのだ。

 暫くの間、赤い機体はジェイソンに任せ、自分は奴等を相手にするだけだ。一夏は思考を走らせながら頷く。が、楯無は未だ問い続けているが一夏は黒い煙を更に噴き出させる。

 刹那、二体の機体は反応するが黒い煙は楯無や二体の機体も巻き込む。二体の機体は黒い煙の中で微かに辺りを伺うが煙は視界を遮らせ、混乱させている。

 しかし、黒い煙は外からでは何が起きているのかは誰にも知らず、判断さえもできない。刹那、黒い煙から大きな破裂音がアリーナ全体に木霊する。

 同時に黒い煙から、ある物が吹っ飛ばされるように出てきた。青い機体であった。青い機体は身体から煙を噴き出させながら落下していく。

 刹那、今度は大きな撲る音が黒い煙から聞こえてくる。が、一回だけではない、何回も、数回も、最悪、十数回も聞こえてきた……。が、黒い煙の中で何が起きているのかは、誰にも判らない……。

 

 

「織斑さん……お姉ちゃん……!」

 

 そんな中、ピットでは、アリーナ全体の様子を伺うことができるモニターを心配そうに観ている者がいた。簪であった。彼女は祈るように、食いつくようにモニターを観ていた。

 アリーナには一夏と楯無、鈴がいる。しかし、彼女は一夏と一応、楯無も心配していた。二人はアリーナに乱入していた赤い機体を倒したようにも思えたが、更に黒と青の二体の機体も乱入してきてしまい、現場は更に混乱していた。

 それでも、簪は二人を応援することしかできなかった。自分は今、ISは無い。それに、あの二人ならばこの状況を打開できる。実力ある者達でもあるからだ。

 この学園を守れるに相応しい二つの盾であるからだ。楯無は学園最強の生徒であり、一夏は自分や姉の補佐する立場でありながらも実力は申し分ない。

 あの二人ならなんとかできる。そう思っていた。ピットにいるのは、二人が戻ってきたら『おかえりなさい』というつもりでもあった。おかしいとも言えるが彼女はそこを動かなかったのも、モニターに釘付けなのも、二人を心配しているからこそであった。

 が……彼女は知らない。彼女自身にも危険が迫っていることを……。

 

「……織斑さん……お姉ちゃん……っ!?」

 

 刹那、アリーナと、このピットを行き来できる方から何かの唸り声が聴こえ、簪は言葉を詰まらせながら振り返る。そこには何もいなかった。が、奥から何かの這いずる音が聴こえた。

 簪はその音に反応すると、軽く目を細める。簪は戦慄した。

 

「ひっ!?」

 

 そこには、奥からは一機のISが這いずりながら姿を現す。その機体は一夏と楯無がランスで倒した赤い機体であった。その機体の至る所は凹んだ後や斬られた跡があり、青い火花を飛ばしているが、簪に対し、這いずりながら近づいてきた。

 赤い機体の目的は簪の抹殺であった。理由は楯無だけでなく、簪も抹殺対象であったからだ。黒と青の機体は楯無に任せる中、赤い機体は簪に抹殺対象を変えたのだ。アリーナから姿を消したのも、簪に標的を変えたからでもある。

 赤い機体は簪に近づいてくる。某ホラー映画に出てくるキャラクターのようであったが、怖くも執念深いキャラクターにも思えた。簪を殺すためならどこまでも追い掛ける。そう思えた。

 

「あ、あぁぁ……!」

 

 簪は赤い機体を見て肩を震わせると、このピットからでようと扉の方へと逃げようとした。刹那、簪の横を何かかが通り過ぎる。が、それは扉に直撃したが小さく爆発した。

 

「っ!?」

 

 簪は目を見開きながら怯える。が、直撃した場所には煙が出ているが、中央には少し傷があるが痕があり、周りには煤らしき物ができていた。

 簪はそれを見ただけでも肩を震わせるが恐る恐る振り返る。赤い機体がいる。それだけでも判るが彼は動いていない。変わりに片腕を前に突き出していた。そう、さっきのあれは赤い機体が撃ったレーザーであったのだ。

 簪を殺そうとしている意味でもあったが、さっきの攻撃を外したのは、簪への死の警告でもあったのだ。

 簪がそれに気づくのには、そう時間は掛からなかった。が、それが効果があったのか簪は怯えながら腰を落とす。恐怖で身がすくんでしまったのだ。

 が、赤い機体は簪を見て再び這いずりながら近づく。簪を抹殺する意味での再開でもあったのだ。

 

「あ、ああっ……!」

 

 簪は目に涙を浮かべながら逃げようとした。しかし、さっきからすくんでいるために身体が言うことを聞かない。さっきのことが原因でもあるが簪は逃げる思いで一杯なのに、それができないのだ。

 赤い機体は徐々に近づいてくる。簪はそれだけでも判るのに身体は言うことを聞かない。が……簪は、なぜか腰を落としたまま後退る。恐怖で我を忘れているのか、それとも無意識で逃走本能が出たのかもしれない。

 簪は後退り、赤い機体は這いずりながら迫る。どちらも止まる気配はなかった。刹那、簪は背中から何かにぶつかる。それは扉であった。無意識のうちに扉の方まで辿り着いていたのだ。

 無我夢中でもあるが簪は扉の方を振り返る。違和感を感じたのだ。扉が開かない、これは自動で開く物なのだ。それなのに、開かない。簪はそれに気づくが扉を叩く。

 

「開いて、開いてよ!!」

 

 簪は扉を叩くが反応は無い。無慈悲でもあるが簪の言うことを聞いていないようにも思えた。それは、あることが原因でもあったのだ。それはさっきの攻撃が原因ではないことに、簪は気づいていない。

 

「開いて! 誰か助けて!!」

 

 簪は扉を叩き続ける。しかし、一向に開く気配はない。誰も応える者はいない。簪一人であった。が、機体が突然。

 

「ギガガ……!」

 

 機体が声を上げる。それは簪を呼んでいるようにも思えた。それは簪に気づかせる意味でもあった。簪は「ひっ!?」と振り返るが機体は片腕を伸ばし始める。

 刹那、機体の片腕の手の平から光が現れ始める。簪を殺す意味でもあった。

 

「あ……あぁぁ!」

 

 簪はそれを見て気づく。殺される、と。簪は目に涙を浮かべていたのだが限界であった。涙は頬を伝う。止まることの無い涙が……。しかし、光は徐々に大きくなっていく。

 それだけでも簪から見れば殺されることに変わりは無かった。

 

「い、イヤァァァ!!」

 

 簪は泣きながら悲鳴を上げる、頭を抱える。殺される、そう思ったのだ。刹那、赤い機体は突然、後ろへと引っ張られる。

 

「ギガガ!!」

 

 赤い機体は驚きはしなかったが突然のことであるが円を描くように引き摺られる。が、赤い機体の声に簪は目を開ける。そして、目を見開いた。

 

「ああっ……!」

 

 簪は驚きを隠せない。が、その機体を引き摺っているのは、ジェイソンであった。彼は簪を守るために一夏に命じられ、行動を起こしていた。

 簪は驚く中、ジェイソンは赤い機体を円を描くように引き摺った跡、軽く持ち上げる。機体だけであって重いが彼は難なく持ち上げていた。

 そして彼は無言で振り返りながら赤い機体を叩き付ける。大きな音が木霊するが軽くクレーターができた。しかし、彼は赤い機体を何度も振り返りながら叩き続ける。

 まるで怒っているようにも思えるが一夏の命でもあったのだ。ハデにやれとは言われていないが簪を守れと言われたからである。機体を敵と認識しているが彼は何度も叩き続けた。

 何度も音が木霊するが、機体は徐々に火花を飛び散らしているが、ジェイソンには関係なかった。

 ジェイソンは機体を何度も地面に叩き続けた後、軽く投げる。機体は大きな音を立てながら壁に激突するが動く気力は微かしかなく、壁に凭れ掛かりながら仰向けに倒れている。が、ジェイソンは機体に近づく。

 機体は微かに声を上げそうになりながらも片腕を伸ばそうとした。しかし、ジェイソンの方が早く、彼は機体の直ぐ近くまで来ると、赤い機体の伸ばしてきた腕を軽く掴むと、機体の身体を強く踏む。

 刹那、ジェイソンは赤い機体の腕を力一杯引き千切った。機体は声を上げなかったが引き千切られた腕にはブチブチとコードの引き千切られる音が幾つも聴こえ、青い火花も飛び散る。

 しかし、ジェイソンは腕を投げ捨てると、今度は赤い機体の顔を両手で鷲掴みし……。刹那、ジェイソンは赤い機体の顔を引き千切った。それも幾つもあるコードで繋がっていたが青い火花を飛ばしている。

 

「ひっ!?」

 

 簪は怯えると身体を震わせる。が、ジェイソンには関係なかった。同時に、赤い機体は顔を引き千切られているが動く気配はない。完全に停止しているようにも思えた。

 しかし、ジェイソンはそれを見て何も言わない。そして彼は不意に簪の方を見る。簪はジェイソンを見て悲鳴を上げる。

 

「キャァぁ!! ……あっ……!」

 

 簪はジェイソンを見て悲鳴を上げたが、なぜか気を失った。理由は恐怖の余りであった。

 

「…………」

 

 しかし、ジェイソンは簪をジッと見ていたが、彼はゆっくりと簪に、近づいた……。そして、簪はその後どうなったのかは、ジェイソンしか知らない……。

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