好きな言葉はパルプンテ   作:熱帯地域予報者

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何も考えずに書き直しました。
誠に勝手ながら申し訳ありません。


原作突入前
プロローグ


〇月□日

 

今日は私に起こったことを忘れないために日記を記すことにした。

 

本日、私は死んだ。私が住んでいた集落がドラゴンに襲われたからだ。私の目の前で両親が蒸発したように消えたのをこの目で見た。

 

もちろん、私も例外ではなかったが、そこで奇妙なことが起きた。肉体は村ごと消滅された私は魂だけの存在となり、そこで『声』を聞いた。

 

私は選ばれてしまった。神の呪いを受ける器として。その時の私は魂だけの存在、それがどういうことなのか、そもそも何の神なのかも聞くことはおろか考えることもできなかった。

ただ、聞いたことのあるアンセクラム神ではないようだ。聞いた話ではあれは死を与える存在だったとか。

 

全てが灰となった集落の真ん中で私は謎の神によってもたらされた呪いについて思い返している。

 

 

私は生き返った見返りに不死身に近い身体と寿命をもらってしまった。仮に死んだとしてもすぐに生き返るとのこと。

 

 

そして、私は生涯でたった一つの魔法しか使えなくなった。

 

 

 

その魔法は“パルプンテ”

 

自らを“パルプンテ神”と名乗る存在から与えられた唯一の魔法だ。

 

 

 

 

υ月∬日

 

私が住んでいた集落跡を旅立ってから数か月が経った。

その間はあてもなく旅を続けてきたが、特にこれといったこともなく平和にやれた。

ただ、この数か月で私はパルプンテの魔法に心が折れそうになった。

この魔法は一言で言えば“何が起こるか分からない”

普通に火を出して攻撃できることもあれば、回復で傷を癒すこともできた。また、敵に呪いをかけたり自分に補助魔法をかけることもあった。

だが、そんないいものばかりではなく、パルプンテは術者にも牙を剥く時があった。絶体絶命時には山びことなって不発に終わり、一度殺された時もあった。

またある時は私と敵の魔力を全て空にされて物量差で押しつぶされて殺された時もあった。

 

 

この魔法は味方に恩恵を与える訳でも、敵を倒すためのものじゃない。

本当に何が起こるか分からないものだった。

 

 

〇月△日

 

 

パルプンテを使ったらどこからともなく魔物が現れたと思ったら急に爆散して死んでいった。

一体、何だったのだろうか。

 

△月☆日

 

今日は久しぶりに何もなかったからとりあえずパルプンテを唱えた。死んでいた虫が光を帯びて生き返った。今日使わずに次の戦いに取っておけばよかった。運がいいと思ったらすこぶる運が悪い日になった。

 

△月□日

 

死んでも生き返る回数もパルプンテに対する抵抗もマヒしてきた今日この頃、黒い青年と知り合った。ファーストコンタクトでは妙な雰囲気をまとっていると思って近寄ってみると大袈裟に拒絶された。そのことに少しショックを感じていると彼から言い知れぬ嫌な余波を感じた。反射的にパルプンテを唱えると私と彼の魔力が一瞬で空になった。

ただ、嫌な余波も消せたということで今日のパルプンテは当たりだったと一息ついていると、彼は魔力欠乏症になって地面に倒れながらも驚いていた。

 

 

その後、彼はゼレフと名乗った。

 

 

Ψ月η日

 

ゼレフと知り合ってからというもの、彼は私の旅に同行している。

彼はとある理由からアンセクラム神という神から呪いを受けており、不死特性を持ってしまったそうな。

彼が受けたのは矛盾の呪い。命を尊いと思えば無差別に呪いが発動して周りの生命を殺してしまうのだという。正直言って私の呪いよりもはるかにエグいことだけは確かだ。

私は自分の意思で魔法を使えるし、彼と違って不死に近い寿命を与えられているというだけなので、その時が来れば天寿を全うしたとして死ぬことができるのだ。今まで死んでは生き返るのも、その天寿が定められているが故のことなのだ。

思わず瞑目していると、彼は穏やかに笑った。

いわく、自分と似た境遇の者に出会えただけでなく、こうして他愛ない話をするのは久しぶりだと。

 

彼自身も穏やかな人柄なのでしばらくは同行することとなるだろう。

 

 

 

и月※日

 

ゼレフは元々から頭がよく、かつて通っていた学院でも天才と呼ばれていただけあって、私のパルプンテについて色んな発見をしてくれた。彼が言うにはランダムに見えて、ある法則に則っているらしい。

今まで使ってきて現れた効果だが、多岐にわたる。あまりに多いため、ここでは割愛することとなる。

 

まず、基本的にパルプンテは相手の命を奪わないとのことだ。これまでに多く使ってきたことを思い出すと、確かにそうだった。この呪文は敵味方関係なく様々な効果を発揮する。その中には普通に攻撃系も含まれる。そして、ここで重要なのは自分たちと相手の敵意の有無によって被害にも差が出るという。

まず、相手が普通の人間相手だとすると、私自身恨みもない時には普通の人間が巻き込まれても気絶、もしくは軽症で済むとのこと。

ただ、モンスターとか山賊とか確実に命を奪おうという明確な敵意を抱かれると、死ぬほどではないにしろ『生きているとも死んでいるとも言えない瀕死状態』に追い込むとのこと。どちらの場合にせよ、大災害級の迷惑は無差別に降り注ぐことになるが。つまり、使う相手によってこの魔法は姿を変えるのだ。普通に恐ろしい。

 

次に、この魔法を使う代償なのか、私の常識がかなり偏っているとのこと。

こればかりは彼の印象というだけで確証はしていないが、最近では他の人に引かれたり、自分が死ぬことに慣れてしまった感じはある。

これは自分の感情さえも矛盾させるゼレフからなのだが、彼が言うからには間違いではないのだろう。これから気を付けよう。

 

 

 

х月¶日

 

ゼレフの言うように、パルプンテで魔力が切れた時のために素手や武器で戦える準備を始めた。

魔法は一つしか使えないが、武器とかは自由に選んだりできるから凄く魅力的である。

これから特訓をする。

 

 

☣月Λ日

 

この日は久方ぶりの絶望を味わった。私たちの旅の最中に黒いドラゴンが現れ、問答無用にブレスを吐かれて全滅させられた。ゼレフはあれを『アクノロギア』と言っていた。

無論、ゼレフは死なず、私は生き返ったのだが。ただ、ゼレフはアクノロギアにすっかり怯えてしまっていた。対する私は久方ぶりに怒りを覚えていた。最近では体を鍛えたり武器を使っていたこともあって武具や魔具、呪われた武器の収集にハマっていた。そのため、これまでに数多くの武器を集めることが趣味となっていた。

 

そのコレクションが全て焼かれた。

 

その瞬間、私は頭に血が昇ってアクノロギアに思い知らせることを決意した。ただ、ゼレフはアクノロギアの討伐には行けないとのこと。痛いのやいたぶられるのが怖いらしい。

この時、私は自分が壊れてしまったことを認識した。普通は痛いのだとかを嫌がるはずなのに、私はそれを恐れないどころか、何回死ねば奴に届きうるかと自分の命を金勘定の如くに考えていた。

 

ここで私たちは道を違えた。ゼレフは最後まで謝っていたが、私は彼を恨んでいない。

同じような境遇ということもあるが、短い間でも気心の知れた友との旅は有意義であり、楽しかったことを伝えると、彼は涙を流して泣きじゃくった。

ひとしきり泣いた後、別れる直前に記念のパルプンテを唱えたら一度聞いたことがあるパルプンテ神のお告げが聞こえた。

 

“二人は再会するであろう。お供え物としてハチミツをくれたらな!!”

 

あまりに唐突で俗的なお告げにしばらく唖然とした後、二人で大いに笑って腹筋を痛めた。

その後、二人で森からハチミツをかき集めてお供えとして拝んだ直後に綺麗に消え去っていた。

隠れるとか秘匿する気は0のようだ。

 

憎き相手を倒す復讐者と探究者の旅はここで終わりを迎えた。

私はそれでも、アクノロギアの去った方向へと歩を進める。

 

 

Ш月Ⅰ日

 

考えたが、このままアクノロギアと相対するのは芸がないように思える。そこで、私はゼレフの助言を基に対アクノロギア用の対策を講じることにした。

 

まず、アクノロギアだが、奴は魔法自体を喰らい、その魔力を自分のものにするという反則じみた能力がある。この時点で魔導士では分が悪く、ゼレフでは倒せないとのことだ。

ただ、私のパルプンテはある程度効いていたこともあり、神の力が宿った魔法が弱点だと結論付けた。いわく、私は曲がりなりにも神の化身とされているのかもしれないらしい。全ては机上の空論だ。

 

だが、それなら手はある。奴の好きな魔法に不純物を加えればいいのだ。

 

そもそも魔法というものは己の体内を巡っている“気”の流れと自然界に流れる“気”の波長が合わさることで初めて力が形を成し、“魔法”となる。

言うなれば、その“気”は奴にとっては調味料であり、“魔法”という料理の原料となる。

そこで私は、“気”を単体で使えるようになろうと決意した。

 

人の“気”だけでは魔法にならないと同じように、材料に調理を施さなければ料理など作れない。

そして、その調理に奴にとっての“毒”を混ぜれば効果も覿面となるだろう。

ゼレフも私の魔力には何か未知なものが混ざっていると言っていたため、その正体も知って、自在に扱えるようにしたい。

 

 

これからはパルプンテだけでなく剣術や武術、気の習得と神の力改め、神力の習得をしよう。

 

 

これ以上にない鍛錬になるため、日記はしばらく書くのを控えよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

д月З日

 

 

ようやくアクノロギアを見つけた。

奴は眠っているようなので、私は早朝に奇襲をかける。

気や神力もある程度は様になってきたことも含めて今が絶好のタイミングだろう。

 

これ以上の言葉はいらない。明日は修羅に入る。

 

 

κ月Ю日

 

数日にわたる死闘は私の敗北に終わった。

まず、初めに開幕直後のパルプンテを使い、私の魔力や攻撃力が倍加した。

幸先のいいスタートだったが、それでも奴の薄皮一枚に傷をつけるだけだった。

 

しかし、ゼレフの予想は正しかったことが証明された。

案の定、神力や気は奴に届いた。どんなに軽いダメージでも奴の鱗を突破したのは事実。

少し希望が湧いた矢先のこと、奴の巨体が消えたと思った瞬間、私の首は胴から離れた。

質量に反した超スピードで私を斬り裂いた。

 

だが、私は復活する。粒子と化した身体が集まって再び人の形を成し、アクノロギアへ向かう。

前回の襲撃で奴はそのことを知っていたから普通に戦いは続行された。

 

 

そこからはガムシャラだった。少なくとも私は5回死んだが、全てが犬死ではない。

気による物理攻撃もそうだが、何よりもパルプンテは驚くほど効果的だった。

たまに笑顔の魔神が現れては私を巻き込んで極大攻撃を加えたり、アクノロギアともども私ごと魔力が空になったり、急に現れた落とし穴に一緒に落ちたりもした。

 

ほとんど自爆もあったが、アクノロギアにとっても効果的だったようで、最後はパルプンテのルのとこまで口にした所でブレスを吐かれて、逃げられた。

 

だが、まだ終わらんよ

 

 

Ч月л日

 

再びアクノロギアと対峙した。

今度は両者とも出会った瞬間にブレスを吐き、パルプンテの呪文が世界を轟かせた。

 

 

この日は計24回は殺された。

 

 

ξ月Ф日

 

もう数えるのが面倒になった。どうせ私は生き返る。

アクノロギアの横っ腹を大きく斬り裂いてやったが、このまま終わるつもりはない。

再び見つけたアクノロギアにこれから勝負を仕掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山は崩れ、森は燃え散り、大地が割れる地獄絵図の光景の中で一人の人間と黒いドラゴンが舞う。

 

ドラゴンが人間を爪で斬り裂き、強靭な咢で体を食いつぶし、素手で掴んで地面が割れるほどに叩きつけても戦いは終わらない。

 

対する人間もドラゴンの攻勢から蘇っては呪文を唱え、武器を振るってはドラゴンに傷を負わせていく。ドラゴンの巨体にも恐れを知らず、ただ死へ向かうように突貫を続けていく。

 

 

人間とドラゴンの終わりなき死闘、それはその場にいた全ての生命を死滅するのに十分すぎるほどだった。

 

 

幾ら壊されても、潰されても、燃やされても私は蘇ってはアクノロギアへ剣を、拳を振るう。

幾千、幾万とも殺されてもアクノロギアへ挑み続け、力も技術も魔力も限界を超えた回数は数知れない。力の差は見た目だけでも一目瞭然、しかし、どんなに殺されようとも摩耗されない闘志は確実に牙となり、アクノロギアの命に迫っている。

 

 

対するアクノロギアは目の前の不死の人間に心をすり減らしていた。

これまでにドラゴンを憎み、自らがドラゴンとなって全ての頂点に君臨したはずだった。

故に、一つの敗北も許されない……その矢先にその人間は現れた。

食すことができない謎の魔力、全てが未知の魔法、どんなに惨たらしく、苦痛を与えて殺しても死なない心。

もはや、人間だと思うほうが無理だった。

 

「いい加減にしろ壊れし者よ!! そんな一撃が我に届くとでも!?」

 

分かりやすいやせ我慢だ。今まで口を利かなかったアクノロギアが怒りと僅かな怯えを含んで挑発する。

だが、それも当然のことと言える。

 

ただの弱い人間が何度も狂気の光を宿して挑んでくる。

 

どこにいても存在をかぎつけて挑み続ける。その度に殺しても挑み続ける。

惨たらしく、一方的に虐め殺してもそいつは強くなって挑んでくる。

度重なるしつこさと休む暇も与えられない心労に、先にアクノロギアの心が悲鳴を上げたのだ。

 

それに伴う大きな恐怖と屈辱

 

 

アクノロギアは認めたくないと言わんばかりに豆粒程度の人間に向けて突貫する。

飛行の余波だけで全てが破壊されるのを尻目に、彼は再び唱えた。

 

 

―――パルプンテ

 

 

その瞬間、全ての星々が大地に降り注いだ。

 

まるで大雨のように止めどなく降ってくる流星は敵味方の区別もなく、大地に残る全てを破壊し尽くす。

まるでこの世の終わりを再現した神話的光景の中でドラゴンが血は吐き散らす。

 

 

「がああああああああぁぁぁぁぁ!!」

 

翼に穴をあけられ、流星によって体全てを叩き伏せられたドラゴンは地に墜ちる。

黒い身体が血で赤く染まり、ひたすらに酸素を求めて荒く呼吸するしかない。

 

ただ、その余波は術者にまで及ぶ。

 

アクノロギアと同じく流星によって瀕死状態に追い込まれ、手足はひしゃげ、まるで打ち捨てられたボロボロの人形のようである。

だが、それでも人間は痛みなど感じていないように折れた足で無理矢理立ち上がろうとする。

痛みなどとうの昔に忘れ去った体でも、ダメージの許容量に悲鳴を上げている。

 

その悲鳴を黙らせるように男は立ち上がって魔力を込める。

 

 

パルプンテに敵を殺す効果はない。

ならば、止めは魔法でなく私自らが付けないとならない。

 

剣を携えて倒れ伏すアクノロギアへと近づいていく。

 

 

 

しかし、これで終わるドラゴンの頂点ではなかった。

 

全ての強者となった誇りだけがドラゴンの闘志を蘇らせ、今まで羽虫と蔑んでいた人間に屈辱を与えられた怒りがアクノロギアを蘇らせた。

目を見開くと同時に穴の開いた翼を必死で羽ばたかせる。フラフラに飛びながら未だに死んでいない狂気の目を地上の人間に向ける。

 

 

「貴様をここで、滅してくれようぞ!! 壊れし者よ!!」

 

 

口に膨大な魔力が集まる。

それだけで大地が、空気が悲鳴を上げるようにうねり、震える。

 

 

しかし、こちらもそのまま終わる訳にはいかない。

私は残りわずかとなった魔力をかき集め、足りない分を生命力で補う。

吐血し、考えることさえ億劫になるほどの微睡みにも耐え、この生涯を誇る量の魔力を一つの魔法に託した。

 

 

 

―――パルプンテ

 

 

 

何が起こるか分からない魔法。もしかしたらそれはパルプンテ神の気まぐれが具現化したものかもしれない。

 

降り注ぐ極大のブレスは着弾すればこの辺りの全てを蒸発し尽くすだろう。私の体も含めて。

そう思いながら、パルプンテによって生じた光に包まれながら私はすっきりとした頭でアクノロギアのブレスから目を離さない。

 

 

 

パルプンテはあらゆる流れをいい意味でも、悪い意味でもかき乱す。

ドラゴンと呪いにかかった人間の決着の瞬間を気まぐれ一つで臨まぬ形へ収束させる。

 

 

 

この日、ドラゴンが勝者として歴史に残される形となったが、本来の結末を知る者はいない。

 

 

 

 

呪いにかかった人間は時を渡り、舞台は新たな時代へと移る。




次回から原作の過去編辺りになります。
かなり原作改変がありますが、ご了承ください。
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