好きな言葉はパルプンテ   作:熱帯地域予報者

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長らくお待たせして申し訳ございませんでした!

今まで仕事の多忙さと新しい家族(犬)の世話に奔走しておりました。
犬は可愛いのですが、パソコンをかじってバックスペースキーをオシャカにされ、怒り狂おうとしてもつぶらな瞳についつい許してしまった結果、投稿が遅れてしまいました!!

かなりやりにくいですが、引き続き頑張ろうと思います!
今年中に2、3話は更新したいと思いますが、難しいだろうなぁ……


妖精の尻尾と雷竜とのぶつかり稽古 前編

ミラたちが同行してから数日が経った。

最初の頃と比べて大所帯となってしまったため、当然ながら賑やかだった。

 

そして一番大きかったのはミラが来たことでエリックたちの修行にも火が点いたということだ。

元々から負けん気が強く、生身で悪魔を倒した実力を持っていたということもあり、エリックたちに肉薄するほどの実力を持っていた。

それに加えて悪魔の力を宿しているため、ミラの実力はエリックたちと比べて抜きんでていると言ってもいい。

 

偶に悪魔の力が暴走することもあるのだが、その度に私が物理的に治めているため大事には至っていない。

 

そういうこともあり、ミラも私がいるときには悪魔の力を使っても安全だと安堵していたが、それと同時に遠い目になっていたのはなぜだろうか。

 

なんだかんだでミラも悪魔の力に否定的な考えが薄れてきたため、ある程度のコントロールが利くようになっていた。

既に悪魔の腕は自由に人間のものへ戻すことができる。

 

そして、魔法の上達はミラだけでなくエリックたちも同様だ。

 

最近ではエリックも“声”を聴く魔法も覚えてきたこともあり、戦闘力は皆と比べて頭一つ抜きんでてくるようになった。戦闘において攻撃の先読み、思考を盗み聞く魔法を羨ましいと思ったのはここだけの話である。

毒の滅竜魔法と聴く魔法の同時使用は魔力と集中力を膨大に消費するため長期戦は不利となる。

 

そんなデメリットを抱えていてもミラと引き分けることが多くなったのは大きい成果だ。

 

 

一度だけミラとエリックがタッグを組んで私に勝負を挑んできたことがあった。

もちろん、経験で言えば私の方が圧倒的に上なので負けることはなかった。

 

ただ、二人がユニゾン・レイドを使ったのは素直に驚いた。

悪魔の力と毒の魔力は私の想像を超えた威力を纏っていた。そのため、私もパルプンテを唱えると私を含めた術者と残存する魔力の尽くを消し去り、全てを有耶無耶にした。

渾身の一発を呆気なく打ち消されて呆然としたミラとエリックを吹っ飛ばして勝負は幕を下ろした。これを機に油断大敵を学んでもらいたい。

 

 

エリック曰く、私の心の声を正確に聞くことができなかったそうだ。

パルプンテ神は盗撮や盗聴を許さないのだ。

 

 

このように魔法の特訓と皆が地獄と称する『たね』を貪っては吐き続ける毎日を繰り返しながら旅を続け、辿り着いた。

 

 

 

目的地の『マグノリア』へ

 

 

 

 

 

 

旅を続けてから数か月が経つが、マグノリアはこれまでに見てきた集落や街と比べて人の数や文化レベルは別物だった。

石が敷き詰められた足場の踏み心地でさえも違うのだから、マグノリアの発展レベルは上位に存在しているのかもしれない。

 

「うおおぉぉ!?」

「でっけえ……」

 

エリックたちは初めて見る都市の賑わいにテンションを上げている。いつも眠そうなマクベスですらも目を輝かせている。

 

「おっきーー!!」

「何かいい匂いするね」

「はいはい。分かったから落ち着けよ」

 

ストラウス一行は主にリサーナとエルフマンが圧倒され、ミラが苦笑して宥めているほどだ。

 

かくいう私も気分は昂っている。

まだ深く散策していないが、見渡す限り魔法に関連した商品が所狭しと売られている。

今までの農村では鍬や斧といった生活必需品しか売ってなかったイメージしかない。

 

魔導士ギルドがあるという理由なのか、魔法の需要が高いことがすぐにわかる。

需要を考えると珍しい魔法もあるのではないかと期待してしまう。

パルプンテ以外の魔法は使えなくとも、今後の戦法や体術の参考になるかもしれないのだから見逃さない手はない。

 

だが、街の散策はやることをやってからだ。

浮足立つエリックたちに声をかけると名残惜しそうにするも、文句言わずに付いてくる。

目指すフェアリーテイルへの場所を街の住民に聞けたので場所は問題ではない。

 

ただ、その過程で聞いた噂の方が気になったほどだ。

 

 

街の人曰く『問題児の集まり』『建造物破壊集団』『変態集団』などなど。

他にも芳しくない噂を聞くも、キリがないため挙げることはない。

フェアリーテイルの評判を聞くついでに判明した実態の一部にエリックたちは徐々に顔を引きつらせていった。

 

「なんか少し行きたくなくなってきた……」

「言うなよ……」

 

見るからに意気消沈しているエリックたちの足取りは重くなっていた。

 

目指していた場所が街の評判だけとはいえ、変人の集まりということがネックなのだろうか。

その辺りは最早どうしようもないから諦めてもらうしかない。

 

ただ、被害は出すものの、明確な悪意を持っていないことも噂の中では感じられるため、それだけが唯一の救いだろう。

 

元より悪徳ギルドだとして、エリックたちに悪意を向けるような所であれば私は一切の躊躇いもなく排除し、二度とギルドを名乗れないくらいには叩き潰す意向は変わりない。

そうなれば国と敵対することになるかもしれないが、それもまた止む無し。

 

ただ、エリックたちに真っ当な人生を送らせるなら国と敵対はなるべく避けたい。

 

 

護るものさえなければどんな結果でも問題なかったが、仮定の話などここでは無意味だ。

 

できればフェアリーテイルが人道を外していないことを願う。

そう思っていた所で、目的地へ辿り着いた。

 

 

 

「ここか」

「おっきい!」

「あぁ、ここまでとは思ってなかった……」

 

まるで巨大な屋敷だ。そう思わせるほどのスケールでギルド『フェアリーテイル』が私たちの前にそびえ立つ。

巨大な様相に圧倒されること数分、さっきまで億劫にしていたエリックたちが今度は臆したようだ。

 

無理もないのかもしれない。

 

色んな『初めて』に圧倒されっぱなしの彼らに特大級の衝撃は受け止めきれなかったのだろう。私も圧倒されたから気持ちはわかる。

でも、ここでいつまでも立ち止まっている訳にはいかないため、皆の背を押す。

 

ここまで来たら覚悟を決めるしかあるまい。踏ん切りが付けられないでいる面々を置いていくように私が扉を開けようとした時だった。

 

 

「このバカ者共があぁぁ!!」

 

扉の中から怒鳴り声が聞こえた瞬間、中から気配を感じて私は即座に後ろへ跳ぶ。

 

 

それと同時に扉が勢いよく中からこじ開けられた。そこから飛んでくる二人の人影が私に迫ってくる。

 

「「うわあぁぁぁぁ!!」」

 

一人は桜色の髪でマフラーを着けた少年、もう一人は文字通り全裸の、恥部丸出しの少年だった。

本来であるならここで受け止めるのが正解だったのだろう。

 

しかし戦いが身に染み付いた私は受け止める、といった行動をとらなかった。

 

 

考えるより体が動く、“反射”という奴だ。

おイタが過ぎるエリックたちによくやっていたお仕置き

既に体に染み付いた仕置きを私は実行した。

 

飛んできた二人の首根っこを掴み、膝を曲げてイメージする。

 

 

 

私は強固なバネ

 

 

 

足の、腰の、腕の力を全て収束して―――解き放った

 

 

 

これが私の『マジ高い高い』だ。

 

 

 

 

 

 

今日まで俺は退屈だった。

 

 

フェアリーテイルギルドマスター

 

 

 

聖十魔導士

 

 

 

数知れない名誉を我が物としたジジイ……その名が俺にもたらしたものは『ジジイの孫』という呪いだった。

 

 

 

何をするにもジジイの孫という色眼鏡で見られてきた俺を真っ当に評価する奴なんていなかった。

 

ギルドマスターの孫なら……聖十魔導士の血を引くなら……俺へのおべっか、やっかみも最初にその言葉から始まった。

 

 

くだらねえ……どいつもこいつも俺という本質見もしねえバカしかいないことが何よりも耐えがたい苦痛だ。

マグノリアの魔法も使えねえ一般人なら百歩譲ってもまだ笑ってやる。

 

だが、同じ穴の狢であるはずの他の魔導士から言われることだけは我慢ならねえ。

 

 

ジジイは言う、『魔法の本質は心にある』と。

 

 

ガキだったころは素直にそう思っていた―――そう思えていた。

 

だが、それは他の魔導士を見てから考えは変わった。

 

 

 

いざ魔法の世界に出てみたと思えば、外にいたのは物事の本質を捉えることさえしていないバカしかいなかった。

その事実に気付いた俺は怒りを覚えたが、それ以上に上回った感情があった。

 

 

失望

 

 

俺の期待は裏切られ、周りの連中がどうでもいい奴にしか思えなくなった。

 

結局、俺の周りの世界は変わり映えしない、味気の無いものとなった。

 

ギルドの連中はまだ俺を俺として見る奴はいるが、それでも俺の気持ちなど分からないだろう。

俺の身に付けた力を『ギルドマスターの孫だから』の一言で片づけられる苦悩と俺の努力を分かってもらえない空しさは。

 

俺と同じ力を持つ者でしか分かるまい。

 

 

 

 

 

そう思っていた俺は死んだのだ。

 

 

 

 

いつも通りエルザたちのガキみてえにくだらねえ喧嘩でギルドの入り口をぶっ壊してナツとグレイが吹き飛んでいた。

毎度のことだから放っておこうとした時、俺は感じ取った。

 

 

 

肌を刺すような鋭い殺気

 

 

体の全身から噴き出る汗

 

 

研ぎ澄まされた感覚が俺に警鐘を鳴らした。

 

 

 

 

 

それはまさしく、『死』そのものだった。

 

 

 

 

その『死』は人の形をしていて、壊れた入り口の先でナツとグレイを両手でつまんでいた。

体力がなかったころに感じた息苦しさとは別の感覚に俺は動けなくなった。

 

 

それは恐怖ではなく、今までに遭ったことの無いような『狂喜』

 

 

外では地響きと共に『死』……もとい見慣れない男がナツたちを抱えて消えた。

消えた、は正確ではない。奴の姿が消えた瞬間に地面がクレータのように陥没し、ギルドが少し傾いてパニックになっていた。

 

 

雷と同化するために鍛えられた俺の動体視力を以てしても微かにしか確認できなかったが、状況だけは正確に見極めた。

 

 

奴は魔力無しに地面を蹴り、空の彼方へと消えたのだ。遠ざかっていくナツたちの悲鳴が消えゆく山びこのように遠ざかっていく様子から如何に高く跳んだかは明らかだった。

 

 

 

 

まさに圧倒的な力そのものだった。

 

 

退屈で死んでいた心が……体にようやく血が流れ始めたのだ。

S級でもお目にかかれないほどの人外級がまさに、目の前に現れた。

 

突然の昂りに俺は拳を握り、ありったけの魔力を練り込んだ。

 

 

 

 

早く戻ってこい、早く打ち合おう……もう頭の中はそれしかなかった。

 

 

 

奴が誰なのか、何故ここに来たのか、今の力は一体なんなのか、その強さをどうやって身に付けた……

 

 

 

頭の片隅に色々と聴きたいことが浮かび上がるが、今の俺にとってそんな疑問はゴミみたいに思えた。

 

 

 

俺の渇きを癒すのなら、なんだっていい。

ただ全力でぶん殴りたい。

 

 

 

騒然となるギルドの連中が外へ出て行き、俺一人となったギルドは静かだった。

今はそんな静かさが心地いい。

 

 

 

 

後、もう少し……まるで悠久の時が過ぎたかのように永く感じられたような一時だった。

 

 

 

そして、“そいつ”は空から降りて来た。

ジジイとエルザを筆頭に何やら騒いでいるが、俺にはそんなのどうでもいい!

 

 

練りに練った魔力を全て開放した俺は

 

 

 

 

電光石火の如く、雷を纏ってそいつの元へ近づき

 

 

 

 

全力の一撃をそいつに放った。




かなり内容も薄くなってしまいましたが、次回はネタ魔法炸裂させます!

それでは、また次回までお楽しみを!

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