好きな言葉はパルプンテ 作:熱帯地域予報者
こっちの用事もひと段落したため、書きました。
ここまで待たせておいて話はあまり進んでいないことが悔やまれますが、今後ともよろしくお願いします。
マグノリアから少し離れた場所にその『屋敷』があった。久しぶりに帰ってきたその屋敷は元からいた時代から放り出され、この場に定住することを決めた時に建てたものだ。フェアリーテイル以外のギルドを見ることを兼ねて色んな知識を蓄え、貯蓄を貯めた私は宣言通りに一年後に帰ってきた。結局、フェアリーテイルの方が色々と都合が良かったことに気づいて元の鞘に収まったということだ。
帰ってきた時にはエリックたちは仮ではあるがフェアリーテイルに随分と馴染んでいた。私がいなかった一年の間にエリックたちはどことなく逞しくなっていたのは印象に残っている。
皆、フェアリーテイルの一員として籍を置くことを勧めたが、全員が私の元に来ることを迷わずに決めてくれた。あの日ほど感激したことなど早々にないほどに。
そもそも、この時にエリックたちには既に目標があった。
自分たちと同じように不幸な目にあった子供たちを救いだすのだと。
子供ゆえに抗えない理不尽を力ある自分たちが打ち倒すと。
もう自分たちの様な被害者を出さないと。
ここまで言われて野暮なことを言う輩などどこにもいなかった。マカロフもそれを認め、エリックたちやミラ兄妹を含めた私たちはとある施設を建てた。
被害に遭った子供たちを護り、育てる憩いの場
人生における「大切なもの」学ぶための学び舎、子供たちの「休憩所」という孤児院を建てて。
「あ、せんせぇだぁ!」
「わーい! 帰ってきたぁ!」
疲れて休みを欲しているにも関わらず、子供たちの声を聴くと不思議と疲れを忘れられる。少年少女が私の周りを囲み、抱きついてきたり私の荷物をひったくってお土産を催促して来るなど反応は様々、それでも私は笑みを隠すことができなかった。保護した時にはこの世の終わりのように絶望し、人形のように感情が欠落したりしていた子が大半だったと言うのに。
子を育てる、慣れないことの連続に疲れ果てていた過去も報われた気がした。
「ミラおねーさんがホットケーキ作ってくれた!」
「ソラノねーちゃんが夕食作って仕事行っちゃったの」
「エリックたちと遠足行ってきた!」
喋るのを楽しむかのようにリビングへ腕を引っ張る子供達の姿に目尻が下がるのを感じながら薄汚れた服や荷物を途中で片付ける。身軽になった状態でリビングに入ると、そこで箒が一人でに床をはいていた。
「おぉ、ご主人。帰ってきてたのか」
箒の先に装飾されたドクロが口を動かしながら床の埃を集め、それを掃除当番の子供がちりとりで集める。見事な役割分担を務める箒こそ、かつては魔導具としてブレインに使役されていたクロドアの杖である。
当初の怪しげな雰囲気を纏った杖が、今では立派な箒としてその役割を全うしている。そのことに私は満足して頷く。
「いや、由緒正しき杖の姿をこんなにしたのはご主人だからね? 好きでこんなんになったわけじゃないから」
口では文句を言いながらもその役割を全うしている姿に由緒も何もあったものじゃない。完全に便利グッズへジョブチェンジしたクロはため息を漏らして作業を終える。クロとは子供達から与えられた名前であり、エリックたちを含めた全員が呼んでいるため本人もそれに甘んじている。
「魔導具として畏れられ、崇め奉られたあの頃が懐かしい……あの頃の信者がワシを見たら間違いなく発狂する。狂ってご主人に挑んで全員もれなく死よりも生ぬるい苦痛にもがき苦しむんだろうなぁ」
この杖も長い間、私たちと暮らして言うようになったものだ。私とて慈悲ぐらいはある。その証拠に今の今まで誰も殺していないだろう。
「真顔で犯罪者を半殺しにしたり呪術や呪いの魔道具を集めるご主人が慈悲深いとか正気を疑うから普段から口にしない方がいいと思うんだがねぇ」
クロが失礼なことを言っているが、そろそろ私も本題に入ろう。
明日には生徒が来るし、そのためにも任務も早めに切り上げてきたのだ。おもてなしのためにクロには少し働いてもらうぞ
「それだけのために最上級クエストを切り上げるとか本格的に人間を辞めてるなぁ……」
クロのつぶやきを無視してドクロの頭部を掴み、箒に取り付けられた部分から取り外す。
「ぐえっ! 急にやるのはやめてほしいんだが……ちょっと待て、お玉に付けるのは勘弁して! 今日はシチューですごくあっつうううぅぅぅ!!」
往生際の悪いクロの体をお玉に取り付けてドクロ部分をシチューに突っ込んでかき混ぜる。唾液も汗もかかないから衛生的に問題はない。見た目的にも気に入っているから料理の手もよく進む。
ミラが用意したであろう作りかけの料理を作りながらミラの帰りを待つのだった。
シチューやサラダを作っていると玄関から扉の開く音が聞こえた。
パタパタと急ぐような足音が聞こえてきた。その音はこちらへ近づいた頃にはその主も現れた。
「ただいま。もう作ってくれたのね」
言わずもがな、ミラだった。彼女はフェアリーテイルのウェイターをこなす他にも孤児院の職員としても働いてくれている。何より、彼女はこの孤児院創設時からいた古参でもあるので給料も色をつけている。
ただ、今日はエルフマンがいないのが気になっていると、私の考えを読むかのようにミラが答えた。
「エルフマンは明日の仕事が早朝にあるって街を出たわ。帰りは明日になるかも」
それなら問題あるまい。私はすでに出来上がった料理を出そうとするとミラがその前に話があると言った。
何かと思うも、ミラの後ろの扉から知らない気配を感じる。
「実はね、今日はお客様がいるのよ。新人さんだからここのことを知ってもらおうと思って連れてきたの」
前置いた後にミラが件の来客を呼ぶと、少し縮こまって姿を現した。
「こ、こんにちは……ルーシィと言います」
おずおずと頭を下げて挨拶してきたルーシィにこちらも挨拶を交わす。急にミラが連れてきたというのにも彼女が新人だと言うことを考えるとすぐにわかる。
ここの孤児院の職員はエリック、ソラノ、ソーヤー、リチャード、マクベスが正職員でミラやエルフマンは嘱託扱いとなっている。一見すれば数が多いと言えるが、実際はかなり厳しい。
この孤児院はフェアリーテイルとの提携によって経営が成り立っている状態である。基本的に孤児院は慈善事業であり、行き場のない子供たちを独り立ちできるまでに育てることを目的としている。そのため、子供達から収入を得る訳にはいかない。そのための提携なのだ。
エリックたちはフェアリーテイルから困難とされた依頼を代わりに引き受け、達成した時の報酬の10%をフェアリーテイルへ紹介料などを含めた還元に充てている。また、任務中でも闇ギルドや邪教信徒の襲撃、奴隷商の被害に遭った子供の保護もするために遠出しているという理由もあるため、いつもエリックたちが孤児院にいるわけではない。そのため、子供達の面倒を見るシフトも計画的に立てなければならない。
そのシフトを充実させるにも人手を増やさなければならない、そのため常時職員を募集している。
そのための職員への特典というのがある。
「フェアリーテイルに入ってから日も浅くて住む場所も待ってもらってるの。今はギルドの仮宿舎で寝泊まりしているわ」
「本当は7万Jの家を借りようと思ったんですけど、ここの話を聞いてからは考えちゃって……」
二人の口ぶりからすると私の考えは当たっているようだ。
ルーシィに嘱託職員として働くことと孤児院での居住を聴くと、案の定だった。
「はい! 家賃3万で最低限な家具もすでに設置済み、職員として子供達の世話も月に最低4回で日給2万、食事も出ると聞けば飛びつきますよ!」
自分で決めたことだが、改めて聴くと待遇としてはいいと思う。それだけ人手が欲しいという欲求の顕われともいえる。
それに主要メンバーが全員出払っているタイミングとしてもルーシィの加入は助かるのも事実。
万年スタッフ不足に悩む孤児院として彼女の雇用に問題はないため、ここでの住み込みを認める。
契約書のサインを出しながらOKサインを出すと彼女は緊張した表情が一変して喜び一色に変わった。
「あ、ありがとうございます! これから頑張ります!!」
「よかったわねルーシィ。今日は歓迎会で決まりね」
そう言いながら今日は豪勢にしようと言いながら料理の買い出しに出て行った。後に残ったのは私と向かい合うルーシィ、そして奥の部屋で遊ぶ子供達の声がBGMとなっている。
先ほどと違って彼女の雰囲気も少し軽くなっている。
まさしく今日はめでたい日であることは間違いないだろう。
外から不穏な殺気を飛ばす輩もいるけど放っておいて問題なかろう。
私はルーシィを連れてその部屋から出て行った。
鉄の森がフェアリーテイルに壊滅させられてから数日しか経っていないが、俺は行動を開始していた。
エリゴール共々幹部たち全員が投獄され、評議員から逃れた残党もいるにはいるが、そいつらとはバラバラに逃げてきたためここには俺一人しかいない。
ほとんどの奴らはフェアリーテイルを恐れたため、今日の作戦は俺だけで行う。
あの一件以来、元・鉄の森のメンバーだったというだけで闇ギルドの間では敗残兵と揶揄され続け、碌にギルドにも入れず路頭に迷っていた。鉄の森の構成員にすぎなかったために強力な魔法を持っているわけでもなく、ただ毎日をなんとか生きていくだけで精一杯である。
正規のギルドマスターの集団暗殺という作戦を失敗させたということもあり、鉄の森メンバーは信用されなくなっている。
たかが数日だけとはいえ、俺に起死回生の大逆転がなければ現状打破は叶わないと悟った。
フェアリーテイルに付けられた汚名は奴らの血によって洗い流す。
いくら奴らが強くても不意打ちに急所を叩けばいけるはずだ。奴らとて同じ人間、倒せない道理はない。
そうなれば鉄の森以前に俺の名誉はうなぎ上り、鉄の森にいた時よりも待遇もよくなるかもしれない。
そして、俺は奴らの仲間である金髪の女を最初のターゲットとした。
偶然見つけたから追いかけてきたというのもあるが、あの女だけはどうにも場になれていた様子ではなかった。まだ実戦経験が少ないかもしれない。
憶測の域を出ないが、少なくとも他の三人と組するよりは格段に楽だろう。あの女がもう一人の銀髪の女に連れられて豪邸に入ったのを確認し、見つからないように遠くから望遠鏡で中の様子を伺う。
くくく、俺は付いている。中にいるのはこの家の家主だろう男と標的がが楽しげに話している。机に星霊の鍵を置いたのを見て動くのはここだと確信した。鍵がなければただの小娘、不意をついた後は家主であろう優男も倒して金品を奪おうと考えた。これだけの豪邸だ、蓄えも相当なはずだ。
隠れるのをやめて家の塀をよじ登って侵入できそうな窓を目指し、小綺麗な庭に足を踏み入れた。
その瞬間、俺は見渡す限り、何もない草原のど真ん中に立っていた。
今日で10日は経っただろうか。
訳がわからない。最初は気が狂ったか、幻を見せられているのだろうと思った。
色々と魔法で草原を燃やそうとしたり、走れる限り走り続けたこともあった。
だが、この異常事態は全く収まる気配もない。それどころか走り続けても魔力を使い続けても力が抜けないどころか、今日まで飲まず食わずにいても生きていること自体おかしいのだ。動けない訳じゃないため、俺は今日も出口を探す。
今日で何日経っただろうか……いつからか俺は日数を数えるのをやめていた。現状は変わらず、魔力も体力も尽きることなく、食料なしでも生きていける。
今日まで生きてきたけど、青い空は一度として暗くなったことがなく、夜空になったことがない。
風も吹かない、雨も降らない
寒くも暑くもない
俺はいつになったらーーー
何年、いや、何十年経っただろう
代わり映えしない風景、体力も尽きることもなく、ただ長い時間だけが経っていく。
これまで飲み食いせず、病気にもなったことがなければ歳も取った様子がない。髭も生えなければ空腹も訪れない。
でも、最近では新しい生きがいを見つけた。
今日も魔力を練り、俺は自分の体に魔法を放つ。
あぁ、痛い……肉が焦げて引き裂かれる感覚が、俺が生きていることを証明してくれる。
俺は生きている。この何もない世界の中で
この 争いも後悔もないこの世界で
俺は今日も▪️▪️▪️いく。
ルーシィの歓迎会を終えた翌朝、私は日が昇り始めた早朝に私は庭の手入れを始める。
この家の手入れは絶対に欠かせない必要条件だ。
この家はもともと普通の家ではなく、パルプンテ神がうっかりで地上にばらまいたアーティファクトなのだ。
細かい事情は今は省くが、たまにパルプンテを通して集めてほしいと神託が入ることがある。この家もその回収物であり、報酬なのだ。
基本的に回収したものは自由に使ってもいいが、中には使うだけで眼に映る限りの土地を焼き尽くす物さえある。そんな物を地上にばら撒くパルプンテ神は間違いなく邪神。異論は認めない。
パルプンテ神がばら撒いたのは何もアーティファクトだけでなく、他の神を地上に落として封印したりとかなりやんちゃしているようだ。
アーティファクトに関しては私の物にしていいということは非常に魅力的だったので基本的に文句はない。
エーテリオンでさえも貫けない瓦を持つ神の家の維持管理を怠れば、家はヘソを曲げてとんでもない大災害に見舞われる。
回収する前にこの家が存在した土地は呪いの土地と地元住民に恐れられ、200年クエストの対象となっていたくらいなのだ。そのヤバさは計り知れない。
そんな家をパルプンテでこの土地に移し、今では立派な豪邸として機能しているのだ。
この家は住民を快く迎え入れるが、不当な侵入者に対しては容赦しない。
そのことを庭の真ん中で倒れる男の姿を通して再認識するのだった。
『招かれざる家』
パルプンテ神が神樹で作って地上に落とした家。その家に住んだ者は富に恵まれ、一生の栄華を約束される。
しかし、この家を解体しようとしたその年に家の住民が全員姿を消した。人の生活の痕跡を残し、床にこびり付く人の形のような痣が一年に一度だけ浮かび上がる。侵入者に対して起こる事象は家の侵入場所によって変化する。
『庭は住民の憩いの場所。森羅万象から断絶された空間は住民に安らぎを与え、侵入者には丁重な警告を与える。毎週には雑草の草をむしり、生き物の殺生を禁じ、祠を建てて供物を捧げよ。忘れることなかれ、庭は神の玄関口。
永遠の安寧を約束する者より』
私「体感時間で300年とかヌルゲーwww 魔物無限増殖セットは基本だろJK」
侵入者「自首して植物のように生きていきます」
侵入者は憲兵に引き取られました。