好きな言葉はパルプンテ 作:熱帯地域予報者
また、コブラも後編では乗り物酔いしてたのでドラゴンスレイヤーとしては成熟しています。
「鉄竜棍!」
腕を鉄の棍棒に変えたガジルの攻撃をエリックは難なく避ける。
それを読んでいたとばかりに鉄の棍棒から枝を生やすかのように棍棒を繰り出す。
だが、エリックはさらにそれを読んでいたかのように最小限の動きで避けながらガジルに迫り、毒の魔力を拳に乗せてガジルにぶつけた。
「ぐっ!」
顔面に入った一撃を踏ん張って耐え、エリックへ鉄の剣を振るう。
それに対してもエリックは冷静に対処する。
「聞こえてるんだよ」
「あ?」
「毒剣(ポイズンブレード)」
ドロっと手から溢れた毒を剣の形に変え、鉄の剣とぶつかり合う。
一瞬だけ拮抗するも、鉄と毒の剣では鉄に軍配が上がり、毒の剣が粉々に砕け散ってエリックの手から剣が消える。
「はっ! なんだそのナマクラは!」
「そりゃそうだろ。毒ってのは剣にして使うんじゃねえからな」
「負け惜しみかぁ!? クズがぁ!」
「ちげえよ。これが毒の正しい使い方だ」
減らず口を、そう続けて剣を振るおうとしたガジルは突然、眩暈に見舞われて膝をついた。
「な、んだ、これは……ごほっげほっ!」
「粉々にして宙に舞った毒を吸い込んだだけだ。お前がわざわざばらまいて宙に舞った毒をな」
「毒だぁ? 俺がいつそんなもんを……あの剣か!?」
喉からこみ上げるチクチクする痛みにせき込みながら、エリックからのヒントに自分のしたことを思い出した。
自分が砕いた剣が毒の粉末として体内に入ったことを理解したガジルは表情を歪める。
自分が相手の策略に乗せられたことを知り、青筋を浮かべる。
対照的にエリックは不敵な笑みを崩さず、ガジルにしてやったりと口角を上げる。
「それで勝ったつもりか!? 潰してやるよ!」
「ブレス対決か? おもしれえ」
ガジルの頬が膨らむのに対し、エリックは歯をむき出しにして笑みを浮かべる。その時、歯が鋭利な牙へと変わり、その後に頬を膨らませたのを見た。
自分と同じように魔力を高めるエリックの様子にガジルは目を見開かせた。
(この野郎……まさか!!)
自身と同じシンパシーを感じたガジルだが、既に最大火力を放つ準備はできている。元より、途中で止まるほど腑抜けてはいない。
「鉄竜の……」
「毒竜の……」
「「咆哮!!」」
ドラゴンのブレスがぶつかり合い、マグノリアの街に爆音が響き渡った。
ぶつかり合った衝撃で周囲の建物の窓ガラスや植木鉢が壊れる。
眠っていた住人も騒ぎで起きたのか建物の照明が徐々に明るくなっていく。
その原因となったエリックたちの戦いの均衡は既に崩れつつあった。
互いのブレスのぶつかり合いにも拘らず、エリックは衣服が汚れただけで健在だが、ガジルは膝をついて息を切らせている。
エリックは腕を組んで余力を見せているがガジルは鉄の鱗まで出しており、その様子だけで二人の力関係が見て取れた。
「てめえ……ドラゴンスレイヤーかよ!」
「毒のドラゴンスレイヤーのラクリマを体内に埋めただけだがな。鍛え方が違うんだよ」
「さっきからてめえ、上から目線でほざいて何様のつもりだ!! あぁ!?」
エリックの物言いにガジルは我慢の限界が来た。鬼の形相を浮かべながら現在進行形で毒に体力を奪われている体を動かしてエリックに襲いかかるが、エリックは難なく避けて手に毒を集める。
「毒蜘蛛≪どくぐも≫」
霧状に散布した毒が意志を持っているかのように一か所に集まり、蜘蛛の形を浮かばせる。
霧を吸い込んだガジルは眩暈と共に咳が強くなったのを感じた。
「知ってるか? ドラゴンスレイヤーは食べる物の性質を取り組むことができる」
「何が言いてえ!?」
知識自慢をしていると思ったのかガジルの薄まっていく意識とは裏腹に怒気が強くなっていく。
対するエリックはさらに追撃をかける。
「硫酸の爪」
「ぎっ! ぐああああぁぁぁぁ!!」
爪を立てた手から体内で生成した鉄をも溶かす化学薬品である硫酸で鉄の鱗を溶かす。
焼けるような痛みに堪らず悲鳴を上げて膝をつく。
「今までは毒蛇やクラゲの毒といった毒生物の毒が好みだったんだがな。先生の意向で化学薬品も食い続けてたら、いつしか科学毒も出せるようになったんだよ」
「な、んだと……」
「毒竜というだけあって有害物質に強い体だったんだが、調子に乗って色んな毒を食いまくったら色んな性質をもった毒を作り、独自に配合して全く新しい毒も作れるようになった」
手札の多さをアピールするように体中からカラフルな毒を滲ませる。
電気を発する毒や燃える毒、冷気を発する毒など様々な属性を含む毒にガジルは戦慄する。
ドラゴンスレイヤーは食える物質も攻撃に出せる属性も一つだけと決めつけていた。
電気や炎も魔力であれば食えないことはないが、体が受け付けずに不調を訴えるため、苦なく食べられるものだけに落ち着く。
しかし、そのルールを捻じ曲げ、体に馴染ませたら……そんな仮説を証明させたのがエリックである。
「異なる物質を食う……だと!? そんなことできるわけねえ!」
「できねえんじゃねえ。やってこなかっただけだろ? 炎とか雷のドラゴンスレイヤーのように物質じゃねえのはどうか分からんが、鉄のお前なら鉄だけじゃない金属も食えるんじゃねえのか? 食えるには食えるんだろうが」
痛いところ突かれたように表情を歪める。話が本当ならもっと強くなれたかもしれない、なぜ俺はそうしなかった、その悔やみをエリックへの睨みとして表しているとエリックは追撃する。
「毒の巨人≪ベノム・ギガンテ≫」
「なっ!?」
エリックの体から放出された毒が巨大な人型を象る。
ガジルがその光景に驚くのはもっともだ。同じドラゴンスレイヤーとしてエリックがしたことはありえないことだった。
話が変わるが、魔力というものは指紋と同じように人によって性質が異なり、個性として現れる。
その魔力と使用する魔法の相性が合致するほど使用する魔法の威力も精密さも変わる。
しかし、過酷な特訓次第では魔力も如何様にも形を変える。
力強く、『剛』の魔力を必要とする代わりに火力調整が難しく、燃費が悪い滅竜魔法
しなやかで『柔』の魔力で形を変えるが、威力に乏しく、コントロールが難しい造形魔法
『剛』と『柔』相反する二つを使いこなす魔法の可能性は、術者の実力とアイディアによって無限に広がる。
「お前の間違いは幾つもある。自分の力量も図らなかったこと」
「や、やめ……」
巨人は拳を握りしめ
「敵に回す相手を間違えたことだ」
巨大な拳が落ちてくるのを最後にガジルの意識はそこで幕を閉じた。
オークの町
ギルド・幽鬼の支配者
大陸では名が通ったギルドであり、総本山といえる心臓部
ギルド団員は優秀にも拘らず、ギルド方針によって金や名誉に執着している。
そのため、一部では闇ギルドよりもたちが悪いと有名だった。
その名の通り、悪名高いギルドが爆発を起こした。
ギルド内部では団員たちは倒れ伏し、内装もすさまじい破壊によって崩れている。
死屍累々と化したギルドの中には倒れた人の山の傍で三つの影が立っており、周りはその陰に恐れおののいていた。
その陰の一つはラクリマに映るエリックと通信を行っている。
「こっちは既に終わったゾ。そっちは?」
『何の問題もなく完了だ。同じドラゴンスレイヤーとしては及第点以下で拍子抜けだったがな。そっちはどうよ?』
「エレメンタル4を含めて主力は潰したゾ」
「ただ、水のエレメンタル4には逃げられました。トイレの排水溝から逃げるなんて相当慌ててたデスネ!」
「麗しいレディだったから心配だよ。ソラノ、今すぐに探しに行っても―――」
「アリエスによろしく伝えとくんだゾ。ロキ」
「つれないね。そんな君も素敵だよ」
ロキと呼ばれた青年は光と共に消えた。ファントムの殲滅を担当したソラノとリチャードは談笑しながらも周りを警戒する。
「もうそろそろジョゼのお出ましだからもう切るゾ。その前に、子供たちの様子は?」
『既にソーヤーがガジルを連行して拘束した。マクベスがガキ共に夢を見せて寝かせたから騒ぎは起こしてねえ。万事問題なし』
「完璧デスネ。ところで先生にはそのことを?」
『知られてねえ。今のところは』
「なら、夜明けまでにケリ付けますよ」
『あいよ』
会話が終わり、ラクリマでの通信が終わった直後にギルド団員が左右に分かれて道ができた。
その道から息を切らせて走ってきたのはファントムのギルド長であり、マカロフと同じ聖十魔導師の称号を冠するジョゼ・ポーラ、その人だった。
「ギルド長のジョゼ様デスネ? お初にお目にかかります、養護施設『休憩所』のリチャードです」
「同じく、職員を務めるソラノと申します。急な訪問、誠に申し訳ありません」
談笑していた表情を瞬時に変え、非礼を見せない『休憩所』の職員としてあいさつを交わす。
笑顔で応対するが、その目は笑っておらず、剣呑な光を見せる。
それに対し、ジョゼは体を震わせて唾を飲み込む。
「そ、そちらが謝ることはございません! こちらの不備でそちらに多大なご迷惑を……!」
荒れたギルドからして訪問など冗談にもならない法螺に対し、ジョゼは腰を低くして丁寧に対応する。その姿にギルド団員は衝撃を受けた。
ファントムこそが至高、逆らう者には無慈悲を与えると豪語していた本人が明らかに怯えて応対している。ギルドを荒らされたにも拘らず、だ。
ジョゼの実力を身を以て痛感している彼らは目の前の光景が信じられない。
聖十のジョゼの弱みを握っているのか
それとも、ジョゼですら足元にも及ばない強者がいるのか
下っ端は真実を知る余地などなかった。
「本日、こちらへ窺ったのは他でもありません」
「此度の件の落としどころを検討しに参りました次第ですが、
お時間はあ り ま す よ ね ?」
ソラノとリチャードとの対談が決定した瞬間、ジョゼは人知れずしめやかに失禁した。
ファントムと一悶着が起こっていることを知らない『私』は近年まれにみる事態に困惑していた。
ガルナ島から泳いで帰っている最中に私は一冊の本が漂っているのを見つけて回収した。
普通の本ならいざ知らず、妙な魔力を感じた私は興味を持って回収し、目的の海岸に着いた時に確認した。
本を開くと同時に魔力反応による光を発し、やがて人の形を象っていくのを見た。
しばらくして落ち着いた時、私の目の前にいたのは
「あなたが僕のお父さんですか?」
年端もいかない、一糸纏わぬ姿の少年が私を父と言って離れない。
急なことで何が何だか分からず、現在思考中だ。
とりあえず、原因となった本を探ってみようとするも、本からは少年と強いつながりを感じた。
本の中の文字をいじると危険だと判断し、本を探るのを断念した。
ただ、本のタイトルと少年の存在と照らし合わせて名前だけは分かった。
少年の名前は「ラーケイド」
とんでもない爆弾を私に落とした親友に久方ぶりの悪態を吐いた。
次に会ったらその綺麗な顔を吹っ飛ばしてやる
原作との相違点
・コブラ=エリックはワンピースのマゼランの技を使用。他にも毒キャラの技も取得済み
・ソラノはロキ、アリエス、ジェミニ、スコーピオンと契約(カレン生存)
・ジョゼ、フェアリーテイルの前に心が折れる
後は色々と相違点がありますが、今後もこれくらいの原作ブレイクは続きますのでご了承ください。