IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結) 作:神羅の霊廟
武神鎧武さんの作品『IS絶唱エグゼイド』にてコラボ実施中です。是非ともお読み下さい!
暗い地下独房の廊下に、コツコツという小刻みな足音が響く。やがてその足音はある独房の前で止まった。そしてその人物は独房の扉の前に立つ。
箒B「牙也……」
独房の出入口付近から独房の中を覗き込んでいるのは箒Bだ。牛ールの襲撃から既に数日経ち、牙也は危険性を指摘され眠った状態のまま独房に入れられたのだが、あれから数日経った今も目覚める気配を見せない。箒Bはあれから毎日独房へ牙也の様子を見に来るのだが、牙也は目を覚ます事もなく、ただ無機質な部屋のベッドに寝かされ、栄養摂取の為一応の点滴を受けている。箒Bはその様子を独房の外からじっと見守る事しか出来なかった。
箒B「また、置いてきぼりにするのか……?私を、皆を残して、逝ってしまうのか?」
目を覚まさない牙也にそう問い掛ける箒B。しかし返答など返ってくる筈もない。箒Bの声は、暗い地下に寂しく響き渡るだけだ。
箒B「……もう約束は破らないと言っただろう……?お願いだから、早く起きてくれ……私はお前の……牙也の声が聞きたいんだ」
そう呟く箒Bの目から思わず涙が流れた。しかし返答はない。
カンナ「こちらでしたか」
箒B「……?ああ、カンナか」
カンナ「やはりまだ目を覚ましになりませんか?」
箒B「ああ……日頃の疲れがここに来て一気に襲ってきたのか、はたまたそれ以外の要因か……」
カンナ「それは私にも分かりません……今はただ、牙也様が早くお目覚めになられる事を祈るしかありません」
箒B「そうだな……」
カンナ「それよりも箒様、お願いですからご飯はちゃんとお食べになって下さい。あれからほとんど食べておられないのでしょう?」
箒B「ああ、分かっている……」
カンナ「牙也様だけでなく箒様も倒れられたら……私はそれが心配でなりません」
箒B「……迷惑をかけるな」
カンナ「自覚されていらっしゃるのなら、どうか……」
箒B「承知している、いつもすまないな」ナデナデ
カンナ「はふぅ……箒様のナデナデは、牙也様とは違った安心感がありますねぇ……牙也様には早くお目覚めになっていただいて、またナデナデしてもらいたいです」
箒B「それは私だってそうだ……が、倒れた原因が分からん事にはな」
カンナ「はい。あの暴走が一体何を意味していたのかーー」
グキュルルル~
箒B「……」
カンナ「……」
暫しの沈黙。
箒B「……先にご飯か?」
カンナ「……妥当ですね」
クスッと笑みを溢し、二人は食堂に向かうのだった。地下独房を出る際、箒Bは一瞬振り向いて牙也のいる独房を見つめながら言った。
箒B「目を覚ましたら……美味しい料理を沢山食べさせてやるからな」
鈴「あら、箒。あいつはまだ起きないの?」
二人が食堂に向かうと、ちょうどお昼の混雑時とバッティングしたのか大勢の生徒が食堂を利用しており、今日も食堂の外まで並んでいた。列の一番後ろに並んでいた鈴が、二人の姿を見つけて声をかける。
箒B「まだだ。ダメージが大きかったのか、もしくはそもそも疲れが溜まってたのか、はたまたそれ以外の要因か……私には見当もつかん」
カンナ「暫くこちらでお世話になりますね、この調子では。牙也様がお目覚めにならない限り、私達は次の世界に向かえませんので」
鈴「あんたらも大変ね、あいつに振り回されて……あ、列が進んだわ、行きましょ」
色々話している間に、三人は注文するスペースまでやって来た。
箒B「さて、何にするか……しかし、メニューが凄い充実しているな……」
カンナ「そうですね、それに聞いた事もない食材の名前がいくつもあります。この世界は一体何処の世界と繋がっているのでしょうか……?」
鈴「ま、そういう話は食べる時にしましょ。一夏、あたし酢豚定食ね!」
一夏「はいよ!二人はどうする?」
箒B「うーむ……ではこのバドミン豚しゃぶ定食を頼む」
カンナ「それでは私は、剣サバの味噌煮定食を」
一夏「はいよ!すぐに作るからちょっと待っててくれよ!」
そう言って風のように消えた一夏。待つ事数分、
一夏「お待たせしました!温かいうちに食べてくれよな!」
三人がそれぞれ頼んだ物が運ばれてきた。三人は「ありがとう」と言ってその場を離れ、空いていた窓際の席に座り食べ始めた。
箒B「……旨い!この豚しゃぶ、脂がサラリと溶けていくがくどさが微塵もなく……赤身の部分もしっかりとした味で……!そして付け合わせのキャベツ……シャキシャキした歯応えにこれまたしっかりした甘さがある……!」
カンナ「サバ味噌も美味しいです!噛んだだけで身がホロリと柔らかくほどけて、そこにこの味噌のこってりとした旨味……たまりません!」
鈴「でしょ?ここの食堂は外れが無いのよ、全くね」
箒B「ここの生徒たちが羨ましいな……いつもこんな美味しい料理を食べているのだろう」
カンナ「是非とも学びたいですね、これらの料理を」
鈴「止めときなさい、確実に体がぶっ壊れるわよ」
カンナ「ぶ、ぶっ壊れる?」
鈴「一夏はね、これだけの料理を常に一人で作ってんのよ、普通の人間なら筋肉痛じゃすまないわ。それに、ここで使われる食材は全部異世界の物よ、取りに行くだけでも命懸けだって一夏が言ってたわ」
箒B「そんな過酷な世界の食材を使っているのか……聞いただけで身震いがするな」
鈴「普通の料理を学びたいなら他を当たりなさいよ。まああたしは中華くらいなら教えてあげるわよ」
箒B「そうさせてもらう」
カンナ「ふふ……牙也様に食べさせる手料理のレパートリーがまた増えますね、ほうk――むぐっ!?」
箒B「ちょ、それを言うな!」
鈴「あら、今聞き捨てならない言葉が聞こえたけど……」
箒B「気のせいだ」
鈴「いや確かに聞こえたわよ?」
箒B「気のせいだ」
鈴「いやでも」
箒B「気 の せ い だ」ギロッ
鈴「……まあそういう事にしておくわ」
納得いかないながらも、鈴はそれ以上踏み込むのを止め、食事に集中する事にした。
牙也「う……」パチッ
牙也が目を覚ました時最初に見えたのは、見た事のある天井だった。天井が透明で丸っこく、周りには何やら客席のようなものも見える。鉛のように重たく感じる体を無理矢理動かして体を起こすと、
牙也「ここ……学園のアリーナ?なんだってこんな所に……?」
??「私が呼んだのだよ」
聞いた事のある声に振り向くと、黒の上下スーツを着た男が立っていた。
牙也「狗道のおっさん……ここは何処なんだ?」
狗道「久しぶりだな、牙也。ここは分かりやすく言うなら、私が作り出した特殊な空間に少し手を加えたものだ。学園のアリーナを模しているのは、あそこがちょうど良い具合に広かったからだ」
牙也「ご説明どうも。それでここに俺を呼び込んで、何をしようってんだ?」
狗道「何をする、か……それはお前が一番理解しているのではないか?」
牙也「……?」
狗道「先程、お前には何が起こった?どんな出来事があった?」
そう聞かれて、牙也は自分に何が起こったのか思い返す。
牙也「……そうか、俺は……」
狗道「思い出したか。あれはお前の日頃の疲れが蓄積した事で、オーバーロードの力を抑えきれなくなった為に起こった事だ。全く、大事な事を全て自分一人で抱え込みおって……シュラの遺言を達成する前にお前が倒れては意味がないではないか」
牙也「……すまん」
狗道「謝るのはあの二人にしろ。とにかく、今回お前をここに呼んだのは、ちょっとした試練をお前に課そうかと思ってな」
牙也「試練?」
狗道「私ともう一人対お前。所謂模擬戦のようなものだ。どちらかが全滅すれば終了。簡単なルールだ」
牙也「なるほどな……良いぜ、やってやる。で、そのもう一人ってのは誰なんだ?」
狗道「まもなく来るだろう、気長に待つが良い」
狗道がそう言った時、アリーナの出入口付近に音もなくクラックが開いた。それはあの、牙也達が異世界へと向かう為に使うクラックとほぼ同じものだが、そこから闇は出てきていない。しかし代わりに誰かがクラックの中からヌッと現れた。それを見た時、牙也は目を見開いて驚いた。
牙也「……シュラ……!?」
消滅した筈のシュラが、そこにいた。
牙也の前に現れた、消滅した筈のシュラーー狗道の狙いは一体ーー?