IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結) 作:神羅の霊廟
始まります。
医務室に戻り、汚れた包帯を交換していると、
千冬「今の騒ぎはなんだ!?何があった!?」
千冬さんが医務室に戻ってきた。その後ろには誰かが担架に乗せられている……って!?
「ゼロ!?」
担架に乗せられている人物を見て、私は驚きを隠せなかった。担架には、大怪我を負ったゼロが乗せられていたからだ。
千冬「デュノアとボーデヴィッヒが近くの海岸で倒れているのを発見したんだ。束、すぐに治療してやれ」
束「分かった、すぐに治療するよ」
スコール「あら、良いの?一応敵よ?」
束「今は敵だ味方だなんて言ってる暇なんか無いの。それに……敵とは言え、私の恩人だから」
そう言うと束は治療用カプセルにゼロを入れ治療し始めた。千冬さんはその場にいたクラスの皆に「極秘の話をするから、お前達は部屋に戻れ」と命令して半ば強制的に医務室から追い出した。残ったのは千冬さんと姉さん、そして一夏達いつものメンバーだった。
千冬「それで篠ノ之、一体何があった?」
「はい……私がクラスの皆や夜月達と話してたら、突然後ろの窓ガラスが割れて、怪物が二匹入ってきたんです。その怪物は私を狙って攻撃してきたのですが……昨日現れた奴がその怪物を回収していきました」
千冬「そうか……篠ノ之は大丈夫だったのか?」
「なんとか。ただ……」
千冬「?なんだ、言いにくそうにして。その怪物に覚えがあるのか?」
「ええ、まあ……千冬sーー織斑先生、スコールさん、更識会長と布仏会計を呼んできてくれませんか?」
千冬「?ああ、分かった」
千冬さんとスコールさんが医務室を出ていくと、
牙也「う……うう……」
この声、牙也が目を覚ましたのか!私と姉さんは急いで牙也が寝かされているベッドに駆け寄った。
「牙也、大丈夫か!?私が分かるか!?」
「牙君、束さん達が分かる!?何処か痛む所はない!?」
立て続けに質問すると、牙也は煩いとでも言いたげな顔をして耳を塞いだ。他の皆も思い思いに牙也に声を掛ける。
牙也「落ち着けっての……俺は大丈夫だから。それよりさぁ……」
牙也はそこまで言って、隣のベッドを見る。そこにはいつの間にかゼロが寝かされていた。
牙也「……なんでゼロがここに?」
束「近くの海岸に漂着してたのを見つけたんだってさ」
牙也「珍しいな、ゼロがここまでボコボコにされるなんて」
「ああ……ところで牙也。奴の事、皆に話すべきか?」
それを聞いて牙也は少し考えていたが、その顔は曇っていた。
牙也「勿論話すべきなんだろうが……どうにもなぁ」
「だがそうも言ってられん。早急に対処せねばならん事態だ」
牙也「……?俺が寝てる間に、何かあったのか?」
「ああ。ちょっと耳を貸せ」
首を傾げている牙也に、牙也が寝てる間に起こった事と私の推測を話すと、牙也の顔はみるみる内に怒気を含んだものに変わっていった。
牙也「野郎……!どこまで腐ってやがる……!」
「だがどうする?今の私達では……」
牙也「けどどうにかして策を練らなきゃ、俺達は終わりだ……今回ばかりは、誰の手も借りられないからな」
束「牙君、それって……?」
牙也「すいません、束さん。奴は異世界を巡っている時に想定せず俺達が持ち帰ってしまった厄災なんです、束さん達ではどうにもなりません。今回の事、全て俺に預からせて下さい」
束「でも……」
雅樹「なあ、俺にも何か出来る事は無いのか?」
するとここで夜月が話に入ってきた。
牙也「お前は?」
「私達を助けてくれた人で、夜月雅樹とアリス・セブンス・レストロイだ」
雅樹「夜月雅樹です」
アリス「……アリス・セブンス・レストロイ。よろしく」
牙也「雷牙也だ。二人はなんでここに?」
束「二人とも、クラックに吸い込まれたんだって」
牙也「そっか。ところで奴は?」
「あの後、アリスがボコボコにして撤退させた。多分またすぐにここに来るだろう」
牙也「そうか……対策を急がなきゃな。ところで夜月、お前は何か力があるか?」
雅樹「力……これぐらいしかないな……」
そう言うと、夜月は懐から何やら変わったデザインのバックルとチップを取り出した。
「それは?」
雅樹「これは『デュプリドライバー』と『エナジーチップ』。俺はこの二つを使用して、『仮面ライダールーク』に変身出来るんだ。エナジーチップには変身用の物と使用者を強化する物があって、それぞれを駆使して戦うのさ。俺の世界は、このチップを使ったゲームが流行ってるんだよ」
「エメラルド色のアーマーに黄色のライン……あれが『ルーク』だったのか」
牙也「デュプリドライバーとエナジーチップ……ワンチャンあるな……それでアリス、だったか?お前の実力は……ああそうだ、奴をボコボコにしたんだっけな」
アリス「……あんな奴、相手にするまでもない。私の力が必要なら、手を貸すけど」
牙也「すまねぇな二人とも、是非ともお願いする。さて、後は……」
そこまで言うと、牙也はベッドから降りて衣服を整えると、医務室のドアに向けて歩き始めた。
束「牙君?どこ行くの?」
牙也「整備室です。あそこなら何か思い付くかと思ってね。箒、俺の代わりに奴の事を皆に話しておいてくれ」
そう言って牙也は出ていってしまった。すると外が何やら騒がしくなったかと思うと、牙也と入れ替わりで千冬さん達が入ってきた。
千冬「牙也が目を覚ましてくれたか……良かった良かった。篠ノ之、言われた通り更識姉と布仏姉を連れて来たぞ」
楯無「どうかしたの?何か大事な事なの?」
「はい。奴についての全てをお話しします」
私は全てを話した。千冬さんとスコールさんが目撃した一夏そっくりの人物は、私達が巡った異世界の中の一つ、そこで神童クロト(元織斑一夏)と敵対している存在、『イチカ』である事。その世界で一度はクロト達によって倒されたが、牙也が持っていた純化していないブルーベリーロックシードを奪って復活に利用した事で、それを媒体にして甦った事。奴はとあるゲームのプログラムから生まれた『バグスター』というコンピューターウイルスのようなものであり、神童クロトから生まれたバグスターである事。そしてイチカを倒す為には、イチカが使っている『God Mighty Creator IX』のようなゲームガシャットの力が無ければ倒せないという事。他にも知っている限りの事を、私は皆に打ち明けた。
「私が知っている事は、これで全部です」
私の説明を聞いて、皆は押し黙っていた。それはそうだ、まさか異世界の怪物が自分達の世界に流れ込んでくるだなんて、誰が予想しただろうか。
「そして、ここからが大事な事です。さっき私は、二体の謎の怪物に襲撃されました。そしてその怪物に応戦した時、声を聞きました」
一夏「声?」
「微かな声で『助けて』って。その声に、私は聞き覚えがありました」
楯無「誰なの?」
「……簪と、本音です」
千冬「なんだと!?」
楯無「う、嘘……!?」
虚「ほ、本当なんですか、それは?」
「確証はありませんが、声質的にほぼ間違いないと思います。それに私の予想が正しければーー」
真耶「お、織斑先生~!大変です!」
とそこへ山田先生が飛び込んできた。
千冬「どうした、山田先生?」
真耶「そ、それが……更識さんと布仏さんが、行方不明に……!中庭で更識さんのノートパソコンが見つかって、周辺を探したんですが、何処にも……」
楯無「か、簪ちゃんと本音が……!?」
虚「そ、そんな……!?」
「やっぱり……いつかは分からないが、イチカに捕らわれて怪物にされてたのか……」
楯無「ね、ねぇ……簪ちゃん達を助ける方法って、無いの……?」
「あるにはあります。が……それが可能な人が、ここにはいません。簪と本音を助け出すのは、現時点で正直に言うと……絶望的です」
それを聞いて、二人はヘナヘナとへたり込んだ。
「ですが、可能性が0という訳ではないです。今、牙也が対抗策を探しています。異世界から持ち帰ってきたのはアーマードライダーに関するものばかりではありません、他にも色々持ち帰ってきましたから……その中に簪達を助け出す方法が必ずあると、私は信じてます。だから……だから、牙也を……私達を信じて下さい、お願いします」
私は頭を下げた。今この状況を何とかする手立てを見つけ出す事が出来るのは、牙也以外他にはいない。だから今の私には、こうやって頭を下げて皆の言葉を一心に受け止める事しか出来ない。すると、楯無さんが私に向かってふらふらと歩み寄ってきて、私の手をギュッと握り締めた。
楯無「お願い……お願いだから……簪ちゃんと本音を……助けてあげて……!」
虚「私からも、お願いします。どうか簪お嬢様と本音を、救って下さい」
虚さんからも頭を下げられる。とても申し訳ない気持ちで一杯になった。
「信じるのでしたら、今は私じゃなくて牙也を信じてあげて下さい。今この状況を打破出来る術を見つけられるのは、牙也だけですから」
私はそう言って楯無さんの手を握り締め返す。楯無さんと虚さんの目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
(……もっと私に力があれば……こうやって牙也に任せっきりになる事も無かっただろうが……すまない、牙也。なんでも良い、どうか策を見つけ出してくれ)
「……」
整備室に籠り、俺は今回の異世界旅行でちゃっかり持ち帰ってきた物やデータ等とにらめっこしていた。フルボトル、調理用具、武神スサノオと冥王イザナミのデータ、ゼロノスのデータ。他にも色々あるが、どれを見てもこれと言って良い策が思い浮かばない。データ類はそのほとんどが強力過ぎて、使おうとしても逆に自分が飲み込まれる恐れがあるのでボツ。フルボトルや調理用具に関しても、俺達が戦闘で使える訳ではないのでこれもボツ。はっきり言って手詰まりの状態だった。
「くっそ……全然浮かばないな。奴の強さは身に染みて分かった、だが奴の傲慢さには付け入る隙はある……けど、一番の問題は、『どうやって奴を倒すか』だ」
以前箒が言っていたが、ゲーム内部のコンピューターウイルスが変質して出来たと言われるバグスターは、ゲームの力でなければ倒せない。何か奴を完全撃破出来る方法を見つけ出さない限り、奴は延々と俺達を邪魔してくるだろう。そうなったら対抗手段の無い俺達はひとたまりもない。
「何かある筈だ……!奴に対抗できる手段が……!」
色々策を考えてみるが、奴なら全て正面から叩き潰しに来るのが目に見えて分かる。今まで様々な出来事を自力でどうにかしてきた俺だが、今回ばかりは一人では難しい。
「はぁ……考えてばかりじゃ思い付くものも思い付かん。少し休むか」
一先ず心を落ち着かせる為に、一旦部屋に戻って何か飲む事にした。
部屋に戻り、冷蔵庫を漁って麦茶のペットボトルを見つけ、コップに注いで飲む。程よく冷えた感じが心地良い。ペットボトルとコップを持ったまま自分の椅子に座り込んだ。
「せめて奴と同じ力があればな……奴と同じゲームの力が……けど俺達はそんな物持ってーー」
……あ。
俺は急いで部屋の中をくまなく探し、そして机の引き出しの中からある物を見つけた。
「これだ……!これなら奴を倒せる可能性がある……!よし!」
俺はそれを持って急いで整備室に戻り、それをパソコンに繋いで操作し始める。
(これが上手くいかなければ、今度こそ終わり……絶対に作り上げるんだ……!)
そうしてパソコンをひたすら弄ること一時間ーー
「見つけた……!これだ!後はこれを……!」
活路は見えた。後はそれを現実にするだけだ。
次回もお楽しみに!