IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

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 裏話です。牙也達三人が異世界を旅している間の物語で、一話一話は短いです。




裏話 脈動ノ暗黒(ダークネス)
裏話 胎動スル悪意


 

 ??「ああくそっ!!気に入らない気に入らない気に入らない!!」

 

 とある拘置所。そこにある独房の一つから、怒気を含んだ大声が響き渡る。

 

 ??「何故だ……何故だ何故だ何故だ!?何故俺の思い通りにならない……!?何故神童と呼ばれた俺が、こんな目に合わなければならないんだ!?」

 監守「囚人番号96!!静かにせんか!!また懲罰室に入れられたいか!?」

 

 監守の大声も後から響き渡るが、当の声の主は聞く耳持たず。相変わらずギャンギャン悪口を吠えている。

 

 ??「許さない……絶対に許さない!雷牙也……篠ノ之箒……!今に見ていろ……俺はお前達をも越える力を手に入れ、お前達を完膚無きまでに叩き潰してやる……!そしてそのふざけた頭を、俺の手で粉々に砕いてやる……!」

 

 牙也と箒に対し強い憎しみをぶつけるこの男ーー名を、『中沢春輝』と呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 少し過去の話をしよう。

 

 この男、生まれはかのブリュンヒルデの血筋であり、幼い頃から『神童』と周囲から揶揄される程に頭が回り、そして運動神経も抜群に高かった。人々は彼を崇め、更に期待を寄せるようになった。

 その男には兄が一人いた。この兄は男程ではないが人並みよりやや上くらいの頭と運動神経を持っていた。人々は弟である彼を例に挙げて、その兄に期待を寄せた。しかし、兄は弟に追い付く事は出来なかった。兄が強くなれば、弟もまた強くなる。ある意味世の常かもしれないが、それだけ二人の成長力は凄まじかったとも言えよう。つまり、兄はどんなに頑張っても弟には追い付けなかった、という事だ。

 人々はそれを見て、兄に更なる期待を寄せた。お前なら出来る、弟に出来た事が兄に出来ない筈はないーーそんな期待を。だが、それでも兄は弟を越えられなかった。そして日を追う毎に、人々の期待は侮蔑や嘲笑へと変わっていった。弟に出来た事が何故お前には出来ないのか、兄なのに出来ないなんて恥ずかしくないのかーー。そんな謂れのない中傷が兄を襲う。彼はそれを見て兄をせせら笑い、嘲った。そしてそれに乗じて兄を虐めに掛かった。兄に味方する者は、こうして一部を除いて誰もいなくなった。

 そして兄はある事件を契機に一般の生活から離れて、ISを製作した幼馴染みの姉と共に人目を忍んで暮らすようになり、彼の名声は更に高まった。その裏で彼は、名声とブリュンヒルデという後ろ楯を隠れ蓑に好き勝手し始めた。不良と手を組み金銭を要求したり、誰の目にも届かない所で女子を暴行したり、神童と呼ばれるにはあまりにも不相応な悪行を重ねていき、何時しか彼の周りには誰もいなくなっていた。しかしそれに気づかぬまま彼は成長していき、やがて彼は完全に変わってしまった。『神童』と呼ばれる所以だった頭脳は数々の悪行の為に使うようになり、神童としての面影は鳴りを潜めた。

 

 そんな風にして時間はあっという間に過ぎていき、そして彼はISを動かした。彼は突然の事に驚く反面大いに喜んだ。そして気づいた、自分は神に選ばれた者だ、ならばこの能力、神に近しい者として使うのが良いと。

 

 しかしその考えは、一つの出来事によって脆くも崩れ落ちた。

 

 『ヘルヘイムの森』より現れたインベスと言う怪物。そしてヘルヘイムの果実の力で戦う『アーマードライダー』と言う存在の登場。そして全てを知るアーマードライダーの青年、雷牙也。

 

 世界はIS委員会を通じてこの存在を一部の者達が知り、そして畏怖した、IS以上の恐怖がすぐ近くにあり、しかもISでは太刀打ち出来ない事を。彼は恨んだ、世界をねじ曲げた、そして姉をも変えてしまったヘルヘイムの森とアーマードライダーを。

 

 しかしここで、彼に名案が浮かんだ。ISで駄目ならば、アーマードライダーとして名声を高めていけばいいと。それなら一番性能が高い物が良い、神に選ばれた自分ならば、それくらいなければ釣り合わない。しかしそれを手に入れるチャンスはなかなか訪れなかった。一度牙也が使っている物を試したが、体に異常をきたして使いこなせなかった。ならばどうするか……

 

 そうして考えている内に、あるチャンスが訪れる。牙也達がとある人物の依頼でヘルヘイムの森に向かう事になったのだ。このチャンスを不意にしてはいけない、直感的にそう感じた彼は、こっそりヘルヘイムの森に忍び込んで戦極ドライバーの設計図をコピーして盗み、そのついでに牙也に報復という名目で重傷を負わせた。この後ボコボコにされたが、取り敢えずドライバーは手に入れた。

 

 しかし肝心な事を忘れていた。ヘルヘイムの果実が無い。戦極ドライバーが完成したところで、ヘルヘイムの果実ーーつまりロックシードが無ければそれは使えない。困った……

 

 考えに考え抜いた結果、彼は牙也が所持するロックシードを強奪する事にした。それなら手っ取り早いし、良い性能の物が簡単に手に入る。そしてそのチャンスは簡単に訪れた。

 

 臨海学校にて銀の福音が暴走し、しかもインベス化した事で、「IS関連については我関せず」という事で待機していた牙也達は出撃を余儀なくされた。その際自分がわざと勝手な出撃をして牙也を誘き寄せる事で、誰にも見られない状態からロックシードを強奪、そして牙也をこっそり処分する事に成功。しかし、思わぬ事でボロを出してしまい、ドライバーも盗んだロックシードもシュラに回収され、彼は殺人及び同未遂罪で牢に入れられる事となった。

 

 そんな彼に救いの手を差しのべたのは、他ならぬゼロであった。彼女は彼の友人を装って彼と面会し、「貴方の頭脳と力が必要なの。乗ってみない?」と脱獄計画を提示した。それに乗った彼は、予定通り脱獄に成功し、ゼロからシュラのゲネシスドライバーとイーヴィルエナジーロックシードを受け取って、ゼロと共に学園を急襲。しかし、牙也の帰還と学園側の必死の抵抗、更に亡国企業の介入によってまたも捕らえられた彼は、またまた牢に放り込まれる事になったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 春輝「許さない……俺をこんな目に合わせたあいつらが憎い……!力が欲しい……!あいつらを越える力が……!あいつらなんか簡単に蹴散らせるくらいの強大な力が……!」

 

 春輝は牢に入れられてからずっとこんな事ばかり口にしていた。そしてーー

 

 

 

 

 

 ??「……クク……!」

 

 

 

 

 自身の心の奥底から聞こえる不気味な笑い声に気づく事も出来なかった。

 

 

 

 





 次回もお楽しみに。


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