IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

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 始まります。




第79話 助ケ船

 

 牙也(……ぁ…………ぁぁ……ぁ…………)

 

 牙也は、真っ暗な空間の中で動く事も出来ずに漂っていた。そこは全ての感覚が失われ、思考能力等も奪う空間であった。牙也は何も考える事が出来ず、体をちょっとも動かせず、ただその空間で漂うままであった。思考能力も段々と消え、体全体がゆっくりと活動を停止していくのにも気づけないまま、牙也はただ暗闇へと堕ちていく。

 

 ??「………………ゃ、…………ばや…………牙也……!」

 

 と、誰かが叫んでいるのが、辛うじて微かに聞こえてきた。更にほんの少しだが、光の眩しさを感じた。牙也は感覚が無くなり最早動いているのかさえも分からない腕を伸ばし、その見えない光を掴もうとするーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ??「……牙也!!寝惚けてないで、さっさと起きなさい!!」

 牙也「いでっ!!」

 

 聞き慣れた声と共に頭に強烈な痛みが走って、漸く牙也は目を覚ます。まだ眠気が残る頭を無理矢理動かして起き上がると、隣には鬼のような形相の茜がいた。

 

 牙也「おはよ、母さん……てか朝からデカイ声出さないでよ、せっかく良い夢見てたのに……」

 茜「夢?どんな夢よ、お母さんにも教えてよ」

 牙也「えっと……あれ、どんな夢だったっけ?」

 茜「何よ、覚えてないの?あら、もしかしたら、さっき思い切り拳骨したのがいけなかったのかしら……?」

 牙也「多分ね~。瑞穂は?」

 茜「何言ってんのよ、今日からあの子は牙也が通ってた幼稚園に入園でしょ?朝からテンションマックスで起きてきたわよ、しかも朝5時にね」

 牙也「ああそっか、今日からだっけ……」

 茜「牙也はもう入学式も済んで、昨日から授業でしょ?初めての授業で堂々と『分かりませんっ!!』って大声で言ったって担任の先生から聞いた時はもう頭を抱えそうになったわ。本当、我が子ながらこれから大丈夫なのかしら……」

 牙也「俺が目の前にいるのにそんな事言う……?」

 茜「あらごめんね。それより早く着替えてご飯食べなさいよ。今日は楽しみにしてた体育の授業の日なんでしょ?」

 牙也「あ、そうだった!急がないと……!」

 茜「じゃあ早く着替えるのよ?」

 

 茜はそう言って部屋を出た。牙也は慌ててタンスを漁り、服を着替えるとバタバタと階段を降りていく。そしてリビングの扉を勢い良く開けると、

 

 準也「こら牙也、体育が楽しみなのは分かるが、少しは落ち着いて行動しなさい」

 

 準也が朝食のベーコンを噛み締めながらそう注意してきた。

 

 牙也「ちぇ~、良いだろ、楽しみなんだからさぁ……」

 準也「全く……ほら、早く朝御飯食べないと遅刻だぞ」

 牙也「あ、やっべ!?それじゃいただきま~す!!」

 

 慌てて椅子に座り、用意されていた朝食に手を付けていく。茜がキッチンから「ちゃんとよく噛んでゆっくり食べなさい」と注意しても、急いでいる牙也の耳にはまったく届かない。牙也が急いで朝食を食べていると、

 

 瑞穂「おはよ~♪」

 

 スキップしながら瑞穂がリビングに入ってきた。幼稚園に着て行く新しい制服姿で、楽しそうにスキップしている。

 

 牙也「おはよ、瑞穂。楽しみなのか、幼稚園」

 瑞穂「もっちろん!たくさん遊んで、たくさんお友達作るんだ!お友達できたら、お兄ちゃんにも紹介してあげるね!」

 牙也「ん、楽しみにしてるよ」

 準也「瑞穂、幼稚園行きたいなら早く朝御飯食べなさい。後からでもゆっくり新しい制服を楽しめるだろう?」

 瑞穂「は~い」

 

 瑞穂は牙也の隣に座り、朝食を食べ始めた。と、

 

 牙也「ご馳走さま。お先に」

 

 瑞穂が食べ始めて間もなく、牙也があっという間に朝食を食べ終わった。食器を流し台に置き、洗面所へと向かう。歯磨きや顔洗いをすると、一旦部屋に戻って荷物を持って降りてきた。

 

 牙也「んじゃ、そろそろ行くよ。瑞穂、幼稚園楽しんで来なよ」

 瑞穂「は~い♪」

 茜「こらこら、ちょっと待ちなさい。お弁当忘れてるわよ」

 

 茜がリビングからバタバタと走ってきて、牙也にお弁当が包まれたバンダナを渡す。

 

 牙也「あ、ごめんごめん、ありがと母さん」

 茜「お礼は良いから、早く行きなさい。箒ちゃん達が外で待ってるんでしょ?」

 牙也「そうだったそうだった……あれ?」

 

 玄関のドアを開けた所で、牙也はふと引っ掛かる言葉を聞き振り返る。目の前に立つ茜は、相変わらすニコニコしている。

 

 茜「どうしたのよ?ほら、早く行きなさいったら」

 牙也「わっ!?」

 

 茜が牙也の背中を軽く押すと、牙也はふらつきながら外へと倒れていき、ドアはゆっくりと閉まった。それを見送り、茜は一筋の涙を溢す。

 

 茜「……これで、本当に最後。牙也……絶対に勝ちなさいよ」

 

 その言葉と共に、全ては白く塗り潰されたーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 牙也「……はっ!?」

 

 また牙也が目覚めると、そこは何もない真っ白な空間だったーーいや、よく目を凝らして辺りを見ると、何やら鍵のようなものが宙に浮いている。体を起こして立ち上がり、それを手に取った。

 

 牙也「鍵形の、ロックシード……?これって確か、葛葉紘汰さんのと同じ……?」

 

 それを見て思い出したのは、かつてアーマードライダー炎竜と共闘した時、危機に陥った炎竜を庇ったあの白銀のアーマードライダー。後でそれがアーマードライダー鎧武ーー葛葉紘汰だと知り、大いに驚いた事は記憶に新しい。と、ポケットから突然光が溢れ出してきた。ポケットを探ると、それはロシュオから受け取った芯だけの黄金の果実だった。更にそれを取り出した時、ポケットから更にロザリオが音を立てて落ちる。気づいて拾い上げると、

 

 牙也「っ、ぐうううううっ!?」

 

 突如頭の中に膨大な情報が流れ込んできて、牙也の脳内に集約していく。あまりに膨大な情報の為に強烈な頭痛が発生し、牙也は持っていた物を取り落とし、頭を抑えて苦しみ出す。が、それもほんの少しの時間だけで、すぐに頭痛は消える。

 

 牙也「ハァ……ハァ……ハァ……今のは、一体……?少しだが、影松やソニックアロー、それに見覚えのある白銀の鎧が見えた……まさか今のは、葛葉さん達アーマードライダーの記憶……?」

 

 荒くなった息を整え、牙也は落とした物を全て拾い上げる。相変わらす黄金の果実は目映い程に光を放っている。

 

 茜『……行きなさい。箒ちゃん達が、貴方の帰りを待ってるわよ?』

 

 牙也にはそんな声が聞こえた気がした。黄金の果実と鍵形のロックシードを握り締め、牙也はロザリオを片手で首に下げる。

 

 牙也「……今が、その時か」

 

 牙也は鍵形のロックシードを左手に持ち直すと、右手の黄金の果実を一口で食べた。シャクシャクと瑞々しい咀嚼音が響く。と、牙也の体は、瞬く間にロザリオから伸びた蔦と黄金の光に包まれたーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園のグラウンドは、火の海と化していた。あちこちが炎で焼かれ、雑草の一つも残らない程に燃えていた。

 

 コウガネ『フハハハハ……!これが、これこそが、この沸き上がる程に膨大な力こそが、黄金の果実の力!!神の力だァァァァ!!』

 

 巨大な炎の馬の姿となったコウガネが、高らかな笑い声を辺りに響かせながら叫ぶ。

 

 箒「……ぅ…………ぁ…………」

 

 そしてその足元には、火球の直撃こそ回避したものの、大爆発に巻き込まれて変身解除にまで追い込まれた箒達が倒れていた。全員まだ意識はあるものの、辛うじて意識をはっきりさせている状態の為、それもいつまで続くか分からない。

 

 コウガネ『む……まだ生きているのか。火力をもっと上げるべきだったか……まぁ良い、次で終わりになるからな』

 

 コウガネはそう呟いて、その前足を大きく上に上げる。その前足の下には、満身創痍の状態で倒れている箒がいた。

 

 束「間に合えぇぇぇぇぇぇッ!!」

 

 と、突如上空から紅椿を纏った束が急降下してきて、箒を回収した。コウガネの前足は地面を踏みつけ、学園全体を大きく揺らす。

 

 箒「……ね……姉、さん……」

 束「箒ちゃん、しっかりして!あいつは何なの!?ちーちゃん達は無事なの!?」

 箒「まだ……皆はあそこに……私の事は、後で良い、ですから……早く、牙也達を……」

 束「嫌だよ!箒ちゃん置いてきぼりにして行ける訳ないじゃん!!」

 コウガネ『蛆虫が次々と出てくる……燃やしてくれよう!!』

 束「ちっ!?」

 

 コウガネは上空の束に向けて火球を放った。束はギリギリの距離で回避し、千冬達が倒れている場所まで一気にまた急降下する。ちょうど千冬達も、ふらふらになりながらもなんとか立ち上がっているところだった。

 

 千冬「ハァ、ハァ……束、か?ちょうど良い……セシリア達を急いで回収、してくれ……これ以上危険な目に遭わせる訳には……」

 束「だったらちーちゃん達も!もう皆ボロボロなんだよ!?」

 スコール「悪いけど……そうは、いかないのよね……」

 

 スコールがボロボロになった体に鞭打って立ち上がりながら言う。

 

 スコール「私達が、今ここで逃げたら……どうなると思う?貴女でも分かるわよね……?」

 ザック「だから、こんな所で逃げる、訳にはいかないんだよ……!俺達しか、戦える奴がいないんだから、よぉ……!」

 一夏「束さん……皆を、よろしくお願いします……!」

 束「でも……!」

 コウガネ『下らん……人間とは、何故にこれほどに愚かしいのか!?所詮人間は神には勝てんのだ!私に勝ちたいのなら、神を連れて出直してこい!!』

 

 コウガネがそう叫び、またも火球を放ってきた。

 

 千冬「くっ、ここは私がーー」

 束「駄目ッ!!」

 

 ここで束が全員の前に立ち塞がった。

 

 千冬「束、止せッ!!」

 

 しかし束は尚も立ち塞がる。火球が後少しで自分達にぶつかるーー死への恐怖に、束は思わず目を閉じたーー。

 

 

 束「……?」

 

 

 しかし、何時になっても体が炎に包まれない。恐る恐る目を開けると、束の目の前には黒いスーツに身を包んだ男が手を翳し、コウガネが放った火球を束達全員を覆う程の大きさのバリアで受け止めていた。そして男は手を払って火球を消し飛ばした。

 

 ??「……久しぶりだね、束ちゃん」

 

 男はそう言って振り返る。その顔に、束は見覚えがあった。十年前、自身が発明したISをいち早く理解し、そして援助をしてくれた会社の社長ーー忘れる筈もない。自分にとって恩のある人の顔を、声を、そして存在そのものさえもーー。

 

 

 

 

 束「じゅ……準也、さん……!?」

 

 

 

 

 牙也の父、準也がそこにいた。

 

 

 

 

 

 





 束達の前に姿を現した準也ーーオーバーロード・ロシュオ。準也はコウガネに対し嫌悪感を露にするが、コウガネは準也もろとも人間を滅ぼさんと動き出す。が、準也はそれを笑い飛ばす。何故ならーー。

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