IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

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 今回はいつもより短いです。




第83話 最終決戦ヘ

 

 未だ燃え上がる炎を見ながら、牙也は召還したアームズウェポンとインベス討伐を終えたアームズ達を全て仕舞う。その目は仮面に隠れてよく見えないが、哀愁の念が漂っている事は辛うじて分かった。ふと後ろを振り返ると、箒達がバタバタと走ってくるのが見えた。

 

 牙也「皆……」

 

 箒達は心配そうな顔で牙也を見ている。と、先頭にいた準也が進み出てきた。

 

 準也「完全に己の物にしたな……黄金の果実を」

 

 その言葉に、牙也は顔をしかめる。

 

 牙也「……分かってたのか?」

 準也「何をだ?」

 牙也「惚けんな、この結末の事だよ……今までの事は全部あんたの考えた余興に過ぎないって言ってたよな?なら、この結末も見えてた筈だ。そうだよな?」

 

 準也は「ふむ……」と少し考えてから言った。

 

 準也「……見えていなかった訳ではないが、僕が考えていた結末とは違った。まさか黄金の果実を己の物にするとは思ってもみなかったよ……それに、箒ちゃんの事もね」

 牙也「知ってたのか?」

 準也「シュラにこっそり会って聞いていたのさ、箒ちゃんが使ってるマスカットロックシードについてね。だから大体は知ってた」

 箒「マスカットについて……?ヨモツヘグリと何か関係が?」

 準也「鋭いね、箒ちゃん。箒ちゃんが使ってるマスカットロックシードは、元はシュラがヨモツヘグリロックシードを変質させて作った擬似ロックシードのようなものなんだよ。んで、このヨモツヘグリが厄介でね……使用者の生命力を糧にして戦うロックシードなんだ。だからこれを変質させて作ったマスカットは常に不安定で、ごく少量ずつだが使用者の生命力を奪っていたんだよ」

 箒「生命力……そうか、それでたまに使用後に気分が悪くなったりしたのか……」

 準也「覚えがあるみたいだね。それで最終的に箒ちゃんに渡ったのが、あのラズベリーロックシードとシャインマスカットロックシードなんだ。ラズベリーロックシードは状況に応じてその力を変える事が出来るし、シャインマスカットロックシードはヨモツヘグリの生命力消費を肩代わりしてくれるんだ」

 箒「そうだったんですか……それで、牙也のその力は一体……?」

 準也「……一言で言うなら、牙也と黄金の果実が完全に一体化した証、だね。つまり牙也は、真にオーバーロードに覚醒した、という事。おk?」

 箒「は、はい」

 準也「ん、それなら良し。残りの事は後で話すとして今はーー」

 

 そこまで言った時、牙也達の背後から斬撃が飛んできた。箒達は気づくのが遅れ対応出来なかったものの、牙也が進み出て左腕だけでその斬撃を消し飛ばした。

 

 準也「奴をどうやって倒すか、だね」

 

 準也と牙也が目を向けた先には、いつの間にか『仮面ライダーマルス ゴールデンエナジーアームズ』に変身したコウガネがいた。箒達も気づいて武器を構える。

 

 コウガネ「おのれ……!人間の分際で、黄金の果実に認められるなどと……この愚か者が!!」

 牙也「愚か者はお前だろ?ったく……」

 準也「後は奴さえ倒せば、全てが終わる。皆、力を貸してほしい」

 

 準也はそう言って頭を下げる。代表して一夏が進み出て言った。

 

 一夏「勿論です!牙也にーー準也さんに、俺達は力を貸します!それは皆だって同じですから!」

 準也「一夏君……」

 

 準也が他の皆を見渡すと、皆笑顔で頷いてくれた。

 

 準也「皆……ありがとう」

 束「準也さんが私の作ったISの為に協力してくれた事、今まで少しも忘れた事はありません。だから今度は、私が貴方を助けます」

 準也「束ちゃん……」

 束「必ず終わらせましょう……この戦いを、皆で一緒に!」

 準也「……ああ!」

 

 準也は気づかぬ内に流れていた涙を拭い、改めてコウガネに向き直る。

 

 準也「終わらせてやろう……貴様との因縁を、僕達の手で!!」

 コウガネ「やってみろッ!!」

 

 コウガネが叫んでソードブリンガーを地面に突き刺すと、コウガネの周囲にクラックが大量に開き、中からインベスが続々と現れた。中にはヘルヘイムの果実を大量摂取したと思われる巨大なインベスの姿もある。

 

 コウガネ「私の思い通りにならぬ世界など必要ない……私の力で、すべからく滅ぼしてくれよう!!」

 

 コウガネは更にそう叫び、自身の背後にクラックを開くと中に飛び込んだ。クラックはそのまま閉じ、他のクラックからインベスが殺到する。その数一万は越えているだろうか。

 

 千冬「奴め、逃げたか……!」

 準也「速攻で倒して追い掛けるだけだ!」

 スコール「けどこの数をどうやって捌くのよ!?いくらなんでも数が多すぎるわ!」

 ザック「泣き言言ってねぇでとっととやるぞ!」

 

 全員が武器を構えた時、牙也がゆっくりと前に進み出てきた。

 

 一夏「牙也、何を……!?」

 牙也「心配すんな……すぐに半分は片付ける」

 

 《絆羽扇!》

 

 牙也がそう言って絆ロックシードを捻ると、音声と共に真っ黒な羽扇が現れた。そしてそれを右手に持ち、持ち手部分に付いたトリガーを引く。すると『火』『水』『風』『土』『雷』『環』『弱』『挑』『奮』『浄』の十の文字が円を描くように現れた。牙也はそれに向けて羽扇を扇ぐ。と、

 

 《火計!》

 

 その中の『火』の文字が文字でできた円の中央に移動し、そして文字自体が輝き始めたかと思うと、更に火を帯び始めた。もう一度牙也が羽扇を扇ぐと、それは勢い良く飛んでインベスの群れへ突進、インベスの体を次々と焼き焦がしていく。そうして火が動き回ること十数秒、インベスは牙也の言った通り半分が倒された。

 

 牙也「ついでにこれでダメ押ししておくか」

 

 《埋土ノ計!》

 

 《浄化ノ計!》

 

 牙也が更に二度羽扇を扇ぐと、今度は『土』『浄』の文字が輝き始めると、残りのインベス達が立つ地面が揺れたかと思うと、インベスを覆うように土壁が現れて、インベスをいくつかのグループに分けて閉じ込めてしまった。更に牙也達は淡い緑の光に包まれていき、受けていたダメージと傷が修復された。

 

 牙也「これで時間稼ぎはできる。後は各個撃破していけばいい」

 鈴「凄い……あの数をこんなあっさりと……」

 楯無「しかも回復まで……最早なんでも有りね」

 簪「勝てる気が、しない……」

 

 牙也の他の追随を許さないその実力に皆が呆然とする中、その牙也は上空を見上げていた。その目線の先には、空間が歪んでいると思われる場所があった。

 

 牙也「……多分あそこに逃げ込んだな、コウガネは」

 準也「何?……ああ、あれか。間違いない、あそこからコウガネの気配がする」

 

 準也もそれを見て顔をしかめる。

 

 千冬「奴はあそこで何をするつもりだ?」

 準也「分からない。分からないが……黄金の果実が手に入らなくなった以上、十中八九奴はこの世界を滅ぼしに掛かるだろうな」

 一夏「っ!だとしたら、早く奴を止めないと……!」

 準也「残念だが、あそこに入れる者は限られている。この中だと……僕と牙也、それに箒ちゃんだけか」

 牙也「もう一刻の猶予もないな……皆は引き続きインベス撃破を急いでくれ。コウガネとの決着は、俺達で付ける」

 スコール「確かにもう四の五の言ってられないわね……ここで待つしかできないのは心苦しいけど……」

 束「三人とも、ちゃんとケリ付けて帰ってきてね!」

 牙也「分かってます。たとえどんな姿になったとしても……俺達は必ず戻ります」

 準也「その通りだな……さぁ行こう、二人とも。早く行かないとあの歪みが消えてしまう」

 

 準也が差し出した手を二人が揃って繋ぐと、三人の体がゆっくりと浮遊し始めた。三人はそのまま勢い良く上空の歪みへと突き進んでいく。そして三人が歪みの中に突入すると、その歪みは消えてしまった。

 

 ラウラ「奴の事は、牙也達が何とかしてくれる……そう信じよう。私達は、私達にできる事をしなければ」

 オータム「あぁ、そうだな。やるぞ!」

 

 『おうっ!!』

 

 オータムの声と共に、全員が次々とインベスの群れに向けて突撃していく。最終決戦の幕は、今上がったのだーー。

 

 

 

 

 





 次回もお楽しみに。


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