IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結) 作:神羅の霊廟
ソウゴ「やぁ、ようやく戻って来れたよ」
シュラ「遅くなった」
タイムマジーンが着地すると、中から『仮面ライダーグランドジオウ』に変身したソウゴと、オーバーロードとしての姿のシュラが降りてきた。
士「終わったのか?」
ソウゴ「うん。向こうに出現したアナザー零は倒した。もうアナザー零は復活しないよ」
ソウゴの報告に全員が胸を撫で下ろす。そしてその報告と共に、地面に落ちていたアナザー零のウォッチは粉々に砕けた。
牙也(サ)「くっそぉ、せっかく考えてきた計画が全部台無しだ……!けどまだ俺には……!」
牙也(サ)は諦めが悪いのか、落ちていたアナザーレオンのウォッチを使おうとした。ところが、
牙也(サ)「あ、あれ?なんで取れないんだ……!?」
何故か彼はアナザーウォッチを拾う事が出来ない、しかも、
牙也(サ)「な、アナザーウォッチが……!?」
アナザーレオンのウォッチも、ブランクロックシードも、はたまた戦極ドライバーも同様に「バキン」と音を立てて粉々に砕けてしまった。
士「……お前、一体何をした?」
ソウゴ「ああ、彼に助けて貰ったのさ」
《カブト!》
ソウゴは右腰のカブトのフレームをタッチした。するとソウゴの隣に『2006』の年号とゲートが現れ、中から『仮面ライダーカブト ハイパーフォーム』が出てきた。
士「なるほど、大体分かった。ハイパークロックアップでアナザーウォッチを生み出す瞬間まで飛んだのか」
『仮面ライダーカブト ハイパーフォーム』は、カブトが『ハイパーゼクター』を使用して変身する最強フォームだ。その能力とは、『ハイパークロックアップ』という超高速移動能力であり、簡単に言えば『過去や未来にすら飛べる』というチートじみた物である。
ソウゴ「その通り。それで一緒にアナザーウォッチが生み出される瞬間にワープしてアナザーウォッチを破壊したって事。これで『アナザー零は誕生しなかった』事になったよ」
それを聞き、牙也(サ)は膝から崩れ落ちた。アナザー零が誕生しなければ、アナザーレオンも、また仮面ライダーサタンも誕生しない。それは自身の野望が完全に潰えた事を意味していた。一方学園の面々達からは喜びの声が上がる。ソウゴはカブトを元の世界に帰すと、変身を解除して牙也に歩み寄った。
牙也「ありがとう、ソウゴ。お陰で俺は、大切なものを失わずに済んだ」
ソウゴ「大した事はしてないよ。けど……どういたしまして」
牙也が右手を差し出し、ソウゴもまた右手を差し出して握手する。
牙也「あぁそうだ。ソウゴ、これをお前に」
と、何を思い出したのか牙也は懐を探り始めた。ソウゴが不思議そうに見ていると、牙也は懐から『零ライドウォッチ』と『レオンライドウォッチ』を取り出してソウゴに差し出した。
牙也「俺達の物語、お前に託しておく。いずれ必要になる筈だ、そうだろ?」
牙也はそう言ってウォッチを渡そうとするが、
ソウゴ「……いや、これは君達が持っているべき物だ、受け取れないよ」
ソウゴはそれを断った。
牙也「だが……」
ソウゴ「君達の物語は、まだここで終わって良い物じゃない。まだこれからも続いていくべきなんだよ。だから……俺は君達の力は継承しない」
そう話すソウゴの目は、決意に満ちたそれだった。牙也は納得したのか「そうか」とだけ言ってウォッチを懐に仕舞った。と、突如学園全体が大きく揺れた。
牙也「っ!?なんだ!?」
??「アハハ、仮面ライダー零ノ物語ガ消滅シナイバカリカ、マサカコレカラモ続イテイクナンテネ。予想外ダッタヨ。僕ノ渡シタウォッチ、全然役二立タナカッタノカナァ?」
誰とも知れぬ声に全員が辺りを見回すと、牙也(サ)の背後にフードの人物が現れた。フードの人物は牙也(サ)の首根っこを鷲掴みにすると、フードの下から狂った笑みを見せた。
牙也(サ)「お、お前……何しやがる……!?離せ……!」
??「初メマシテカナ?『世界ノ破壊者』サン?」
士「誰だ?お前……」
??「アハハ、ソウダネェ……ジャアアエテ名乗ロウカ。僕ノ名前ハ『ヘイグ』。コレデモ女ダカラネ、以後ヨロシク」
謎の女ーー『ヘイグ』はそう言って牙也(サ)を掴んだ状態で優雅に一礼した。牙也(サ)が未だに喚いているが、ヘイグは首根っこを掴む手に少し力を入れた。途端に牙也(サ)はガクッと崩れ落ちた。どうやら気絶させられたようだ。
シュラ「ヘイグと言ったか……貴様、何を企んでいる?」
ソウゴ「君……もしかして『タイムジャッカー』?」
シュラとソウゴがそれぞれの疑問をヘイグに投げ掛ける。
ヘイグ「ウーン、『タイムジャッカー』ッテノガ何ナノカハ知ラナイ。デモモシカシタラ、僕ハソノ『タイムジャッカー』ッテノカモシレナイネェ……デ、何ヲ企ンデルカ、ダッケ?」
ヘイグは少し考える素振りを見せると、こう言った。
ヘイグ「特二企ミトカハ無イヨ。強イテ言ウナラ、『僕ガ楽シミタイ』ッテダケカナ」
シュラ「何だと……?貴様……自分が楽しみたいが為に、この世界を滅茶苦茶にしたのか!!」
千冬「なんとも身勝手な……!」
ヘイグ「アハハ、マァマァソンナ怒ラナイデヨォ。小皺ガ増エルヨ?」
千冬「誰のせいだ、誰の!?」
真耶「お、落ち着いて下さい!」
真耶が必死に千冬を宥める。一方ヘイグはクスクス笑いながら、牙也に向き直った。
ヘイグ「ソレニシテモ君、ナカナカ面白イネ。ネェ、僕ト一緒二アチコチノ世界ヲ好キ勝手シテ楽シマナイ?」
牙也「断る」
ヘイグの誘いを牙也は速攻で断った。
ヘイグ「ンー、マァソウダヨネ……残念」
牙也「今度はこっちが聞こう。そいつにアナザーウォッチを渡したのは、お前なのか?」
牙也はヘイグが掴んでいる牙也(サ)を指差して問い掛けた。
ヘイグ「ンー、マァソノ通リダネ。ナンデ僕ガ持ッテタノカハ分カンナイケド、使イ方ハ知ッテタ。デ、コイツガ使イタイッテ頼ンデキタカラ渡シタ、ソレダケダヨ」
ヘイグはそう言ってヘラヘラ笑う。が、途端に膨れっ面になった。
ヘイグ「ケド、マサカ壊サレチャウナンテネ。僕ガ何ナノカ知ル為ノキーアイテムダッタノニ……」
牙也「そんなの渡した自分を恨むんだな。俺等に文句言うのはお門違いってもんだ」
ヘイグ「ソレモソッカ。仕方ナイ、ソレジャアコイツ連レテ帰ロッカナ。八ツ当タリモ兼ネテネ。ア、ソコノ君」
次いでヘイグは束の隣にいた牙也(異)に声をかける。
牙也(異)「な、何さ?」
ヘイグ「今回ノ事、僕二原因ガアルカラネェ……オ詫ビトシテ僕ガ責任持ッテ元ノ世界二還シテアゲルヨ。サァ、ツイテキテ」
ヘイグは牙也(異)に手招きするが、束が彼の前に立って行かせない。
束「信用ならないよ、お前。絶対ついて行っちゃ駄目だからね、牙君」
牙也(異)「は、はぁ……でも……俺は正直言うと、元の世界に帰りたいです……」
士「なら俺がついて行こう」
とここで士が名乗りをあげた。
士「俺がコイツのボディーガードになってついて行く。それならどうだ?」
束「うーん……まぁあんたなら多少は信用できるかな」
ヘイグ「フフフ、交渉成立ダネ。サァ、行コウヨ」
そう言ってヘイグは自身の背後にオーロラカーテンを呼び出した。そして先程までずっと首根っこを掴んでいた牙也(サ)を先に放り込む。
牙也(同じ俺とは言え、扱いが雑なのはなんかなぁ……)
牙也(異)(下手したら俺があの立場になってたのかぁ……)
そんな事を考えながら、牙也(異)は士と共にオーロラカーテンの前まで来る。そして牙也達に対して一礼すると、オーロラカーテンの中へ入っていった。それを追い、士も中へ入っていく。それを見届け、ヘイグもオーロラカーテンに入ろうとした。と、何を思い出したかヘイグは牙也の方を見て言った。
ヘイグ「マタネ」
一言それだけ言うと、ヘイグはオーロラカーテンに飛び込んでいった。そしてヘイグがオーロラカーテンを潜ったのを最後に、オーロラカーテンは一瞬で消えた。
牙也「……取り敢えずは、これで終わったんだよな」
ヘイグ達が去って静寂が辺りを包む中、最初に口を開いたのは牙也だ。
シュラ「ひとまずはそうだろうな。色々疑問が残る終わり方だったが」
千冬「なんとも後味の悪い終幕だ……」
なんとも歯切れの悪い終わり方に、皆渋い表情を浮かべる。
本音「んー、でも牙っちが無事に帰ってこれたんだし、それで良いんじゃな~い?」
シャルロット「そう、なのかなぁ……?」
牙也「当人の俺はあまり納得してないんだがなぁ……」
本音「いーのいーの!そんなの後々で考えればいーんだから!それよりほら、牙っちが帰ってきたのをお祝いしなきゃ!ねー!」
本音はお得意の明るさで皆を盛り上げていく。と、それにつられて皆一様に「お祝いだお祝いだ!」と騒ぎ出した。牙也を含め一部納得してない者もいたが、皆が大騒ぎするのを見て諦めたのか、ひとまず頭の隅に置いておく事にした。
楯無「よーし、派手にお祝いしましょ~!」
セシリア「親衛隊の皆さん、お手伝いお願い致しますわ!」
『はーい!』
一夏「よーし、久々に俺も腕を振るうとするかな!」
鈴「一夏、あたしも手伝うわよ!」
虚「私も微力ながら手伝わせて頂きますよ」
\ワイノワイノ/
スコール「やれやれ、暢気な子達だこと」
ザック「ハッハッハァ、ガキの特権って奴だろ!」
オータム「そーだな。で、あたし達はどうするよ?」
ギリア「今日くらい好き勝手騒いでも問題ないかと思いますがねぇ」
スコール「……そうね。こんな日はなかなか無いものだわ、一日くらい騒いでもバチは当たらないでしょ」
M「……フン」
オータム「素直じゃねーなー、M」
皆がワイワイ騒ぐ中、牙也だけは未だオーロラカーテンがあった場所を見て何か考え事をしていた。
ソウゴ「どうしたの牙也君。何か気になる事でもあったのかい?」
牙也「ん?あぁ……まぁ、一つだけ、な」
ソウゴ「?」
牙也「なに、大した事じゃない。それより行こうぜ、ソウゴ。久々にお前と色々話をしたいしな」
ソウゴ「そっか。じゃあ先に行くよ」
適当に話をはぐらかした牙也は、大宴会の準備に向かう学園の面々や亡国企業の面々を見、次いでそれを追うシュラや箒、ソウゴを見、そしてまたオーロラカーテンが出ていた場所を見た。
牙也(……俺だけらしいな。あの『龍』が見えてたのは)
実は牙也(異)との別れの際、牙也にだけ見える姿があった。それは∞の形にとぐろを巻いた龍のような生き物であり、牙也(異)を守るように寄り添っていた。そしてヘイグを見て低く唸り声を上げているようにも見えた。
牙也(いずれあいつも仮面ライダーになるのか……?いや、そんな訳ないか……?いやでも……)
箒「牙也、何をしている!?早く行くぞ!」
牙也「おー、悪い悪い!すぐ行く!」
答えは出ないと理解した牙也は、一旦その事は忘れて大宴会に集中する事にしたのであった。
時間は夜遅くまで進み、大宴会もたけなわとなった頃。
牙也「……」
シュラ「……」
ギリア「……」
学園の校舎の屋上に、牙也、シュラ、ギリアの姿があった。そして三人の目の前には、あのオーロラカーテンが出現していた。と、ガチャリと音がして、誰かが屋上に上がってきた。
ソウゴ「……見送りに来てくれたのかい?」
上がってきたのはソウゴであった。ソウゴはこれからこのオーロラカーテンを通って元の世界に帰るのだ。
牙也「あぁ、だいぶ世話になったしな。もう少し話が出来れば良かったんだが」
シュラ「仕方あるまい、これを逃すとこやつは元の世界に帰れなくなる。流石にそれは可哀想だ」
ギリア「帰る場所があるというのは良い事ですがね。まぁそれは私達とて同じ事」
ソウゴ「俺ももう少し君達と話がしたかったんだけどね……俺達の世界がどうなってるのか、少し心配な面もあるから」
シュラ「そうか、中途半端なタイミングで我が呼んでしまったのだったな。それはすまぬ事をした」
ソウゴ「良いよ、気にしなくて。お陰で良い体験ができたしね」
シュラ「そう言われると多少は楽になるな」
ソウゴはオーロラカーテンの前に立つ。と、
牙也「……ソウゴ。お前はこの先、最高最善の魔王を目指すんだってな」
牙也がそう問い掛けた。
ソウゴ「あぁ。俺は魔王になる。そして最悪の未来を変えて見せる」
牙也「そうか……なら人生の先輩からのアドバイスを一つ伝授しとくか」
牙也はソウゴを指差しながら言った。
牙也「お前の選択に、『後悔』の二文字は残すな。そしてその選択に、『自信』を持て。そうすれば自ずと道が開けるもんだ」
ソウゴ「アドバイスありがとう。もしも俺が魔王になったら、君を是非とも軍師として迎え入れたいね」
牙也「あぁ、その時が来るのをゆっくり待たせてもらう」
牙也はそう言ってサムズアップする。ソウゴもまた笑顔でサムズアップを返した。
ソウゴ「……それじゃあ、俺はもう行くよ」
牙也「あぁ。元気でな」
ソウゴ「シュラさん達もありがとうございました。皆さんによろしく伝えて下さい」
シュラ「確かに」
ギリア「任されました」
ソウゴはもう一度サムズアップすると、オーロラカーテンを潜り元の世界へと戻っていった。
ギリア「……行ってしまいましたね」
シュラ「うむ」
オーロラカーテンが消え、屋上には三人だけが残された。ひゅうぅ、と冷たい風が吹く。
シュラ「……さて、次は我等か」
ギリア「……のようですね」
その言葉に牙也が二人を見ると、二人の体が粒子となって消え始めていた。
牙也「そうか、アナザー零の誕生がなかった事になったから……」
シュラ「うむ、そういう事だ。この世界は、ようやく本来の歴史に戻り始めたようだな」
ギリア「私達は本来ならもう死人ですからね。未練がない訳ではありませんが、少し寂しくもあります」
牙也「シュラ……ギリア……」
シュラは牙也に近づきそっとその肩に手を置いた。
シュラ「これからはお前が皆を、この世界を導くのだ。我等はお前の礎となるだけ。泣いてくれるな」
ギリア「どうかザック達をよろしくお願いします。貴方なら、安心して任せられます」
牙也「あの筋肉ダルマをか?やれやれ、骨の折れる仕事が増えるぜ……」
牙也はブツブツと愚痴を溢し、シュラとギリアは軽く吹き出す。
シュラ「……まぁ、なんだ。お前に会えて、お前とまたこうやって話ができた事、とても喜ばしく思う。牙也……ありがとう」
ギリア「私からもお礼を。かつて敵だったザック達を受け入れてくれた事、感謝します」
牙也「当然だろ?もうあいつ等は『仲間』なんだから」
牙也の言葉に、二人は安心したような笑みを見せた。
ギリア「ではそろそろ時間のようなので……私達はこれにて」
シュラ「……さらばだ、牙也。どうかお前達の未来に、良き結末があらん事を」
その言葉を最後に、二人の体は粒子となって数多の星煌めく夜空へと消えていった。
牙也「……さようなら、シュラ、ギリア。二人の意志は、必ず繋いでいくから」
満天の星空に向かって、牙也はそう誓うのだった。
その後牙也は学園寮内をぐるりと一周した後、寮にある自分の部屋に戻ってきた。時間は日付が変わるギリギリのところであった。本来なら学園寮の規定によりこの時間は既に就寝時間なのだが、牙也は用務員兼警備員であるが故見回りという名目でこの時間に起きている事を半ば許されている状態だった。
牙也「さー、寝るべ寝るべ」
寝間着に着替え、さぁ寝ようとした時、牙也は自身の使っているベッドがやけに膨らんでいる事に気づいた。はて、と布団を捲ると、
牙也「なんだまだ起きてたのか、箒」
可愛らしい猫のイラストが描かれたパジャマに着替えた箒が丸まった状態で出てきた。
箒「……えーと、その……ふ、布団を暖めておいた、ぞ」
牙也「そりゃどーも。久々に一緒に寝るか?」
牙也がそう聞くと、箒はパアッと目を輝かせて大きく頷き、急かさんばかりに牙也の腕を掴んで引き倒すようにベッドに招き入れた。引っ張られた勢いで、牙也の顔は箒の豊満な胸にポフンと納まる形になった。箒は牙也を抱き締めたままベッドにゴロリと横になる。
牙也「モゴモゴ……ぷはっ。随分熱烈な歓迎だな」
箒「……二年。二年もの間、お前の帰りをじっと待っていたのだ。当然だろう」
牙也「そうだな、二年か……そんなに経ってたんだな」
箒「今の今まで、ずっと我慢し続けてきた……だがもう我慢は止めだ。もう絶対に離しはしない、ずっと一緒だ……お前と、私は」
牙也「あぁ、そうだな。これからも一緒だ……お前と、俺は」
そうして二人は二年の空白を埋めるように互いを抱き締め合い、互いの暖かさを感じながらゆっくりと眠りについたーー。