IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結) 作:神羅の霊廟
千冬「くっ、どうしてだ……こんなにも牙也の事が心配でならない……!」
シュラ「落ち着け、織斑千冬。牙也がそう易々と負ける事はあるまい。我が直々に鍛えたのだからな」
千冬はシュラの運転の下、ヒガンバライナーで牙也の救援に急いでいた。シュラが急ピッチでヒガンバライナーを修理した為に性能は通常よりも劣ってしまうが、なんとか動かせる物であった。
その後ろからは、真耶が率いる教員部隊があちこちにセンサーを向けて春輝の捜索をしていた。
シュラ「それ以上の不安要素は織斑春輝だ。奴が何をしでかすか、分かったものではないからな」
千冬「何も無ければ良いのだが……!山田先生、織斑の白式の反応はあるか?」
真耶「いえ、まったくありません。引き続き捜索を続けます」
千冬「頼むぞ」
シュラ「さて、少しスピードを上げる。なるべく早く牙也に合流せねば……急gーーッッ!?」
突然正面から衝撃波が飛んできて、ヒガンバライナーやISを揺らした。
千冬「今の衝撃波……この方角は、牙也がいる方か!?シュラ、急いで向かっtーーどうした?」
シュラ「不味いな……さっきの衝撃波で異常が出たようだ。くそっ、こんな時に……!」ガンッ
シュラは忌々しそうにヒガンバライナーを殴り付ける。
千冬「くっ、仕方あるまい……山田先生達は織斑捜索を続けてくれ。私達は一旦何処かの島に着陸して修理をする」
真耶「分かりました」
真耶達教員部隊はあちこちに散らばっていく。
シュラ(今の衝撃波の感覚……まさか、あのロックシードが目覚めたのか……!?馬鹿な、だとしたらあまりにも早すぎる……!牙也、お前に何があったのだ……!?)
シュラはヒガンバライナーを確認しながら、心配そうに牙也がいるであろう方角に目を向けていた。
牙也「ガアアアアアアア!!」
春輝「な、なんだよこいつ!?もう動けない筈じゃ……うわっ!?」
完全に自我を失っているのか、『ブラッドザクロアームズ』に強制変身した牙也はがむしゃらに専用武器・セイヴァーアローを振るう。春輝は紫炎でこれをなんとか防いでいるが、アーマードライダーとして戦い慣れしていない春輝ではダメージを受けないようにするのが精一杯のようで、攻撃の余地も無い。しかも暴走している為か、最早今の牙也には目の前にいる春輝しか見えておらず、重傷を負っているザック達には見向きもしない。
ザック「す、凄ぇ……あんなアームズあったのか……」
ギリア「あれ、が……ザクロロックシード……」
ザック「ギリア!?しっかりしろ!気をしっかり持て!」
ギリア「もう、良いんです……僕はもう、助かりません、から……それよりも、彼の事を……」
ザック「だが、どうすりゃ良いんだよ?」俺達のドライバーは破壊されちまったし……」
ギリア「彼は、先程重傷を負っています……恐らくいずれは、それによる肉体への負担超過で、変身が解除されます……そこを、狙って下さい……後は……よろしく……お願い…………しま……す……」ガクッ
ザック「ギリア!?ギリア!!」
ザックは何度も呼び掛けるが、ギリアが返事をする事は二度と無かった。
ザック「ギリア……すまねぇ……!」
ギリアの遺体をその場に寝かせ、ザックは未だに暴走している牙也を見つめる。
ザック(絶対に成功させなきゃな……ギリアの為にも!)
春輝「くそっ、なんなんだよこいつ!なんで倒れねぇんだよ!?」ガキンッ
依然として暴走する牙也の攻撃を必死に防いでいる春輝。しかし牙也の攻撃は強烈で、一撃を防ぐ度に腕が痺れる程であった。セイヴァーアローのアークリムが紫炎とぶつかる度に火花が上がり、その度に春輝は大きく後ろに後退していく。やがて春輝はフィールドの端まで追い詰められた。
春輝「くっ、天才であるこの僕が、ここまで追い詰められるなんて……」
牙也「ガアアアアアアア!!!」
牙也がセイヴァーアローを振り上げたその時、
春輝「ここは逃げるが勝ちだ!」
なんと春輝はフィールドから飛び出した。そのまま落下していくがその際に変身解除して素早く白式を展開し、そのままその海域を離脱していった。
牙也「逃ガスモノカ……!」
《ロック・オフ ロック・オン》
それを見た牙也はザクロロックシードをセイヴァーアローの窪みに装着。それを離脱していく春輝に向けて構えた。
牙也「……落チロ!」
《ザクロチャージ!》
セイヴァーアローから放たれた無数の赤黒い矢が、全て春輝に向かって襲い掛かる。
春輝「な!?う、嘘だrーーぎゃああああああ!!」
矢は次々と春輝に向かって突っ込み、大爆発を起こした。
牙也「仕留メタカ……?イヤ、外シタヨウダナ……」
未だに起こる爆煙からなんとかほぼ無傷で出てきて、再び離脱する春輝が見えた。
牙也「チイ……ダガ、次ハ逃ガサン」
すると変身が解除され、牙也は再び吐血した。先程以上に出血も酷く、足もおぼつかない。
ザック「くっ、今なら……今なら行ける……っ!」ズキッ
ザックは行動を起こそうと立ち上がるが、春輝にやられた傷が開き、その痛みで倒れ込んでしまった。その間にも、牙也はふらふらとしており、やがてフィールドの端まで来た。
ザック「お、おい待て……!そっちに行ったら駄目だ……!そっちはーー」
ザックが必死になって叫ぶが、それも空しくーー
牙也は遂にバランスを崩し、フィールドから海に転落した。大きな水飛沫が上がり、やがて静かになる。フィールドには、何か金属製の物が落ちる音が響いた。それは牙也の懐から落ちたのであろう、福音の待機状態であるネックレスだった。
ザック「任務失敗……か、よ……すまねぇ…………すまねぇ……ギリア……」
ここでザックの意識も途絶えた。
シュラ「ふむ、どうやら一時的なシステム異常だったようだな。よし、今度こそ牙也の救援に向かうぞ」
千冬「急げ、シュラ!胸騒ぎがしてならない……!」
近くの小島に不時着したシュラと千冬は、ヒガンバライナーが正常に動いた事を確認すると、急いでそれを起動し、牙也の下に向かおうとした。すると、
真耶『織斑先生!織斑君を発見しました!織斑先生がいる小島からあまり離れていない場所にある別の小島です!』
千冬「そうか。織斑を拘束して数人で旅館に運べ。残りは牙也の救援だ!」
真耶『はい!』
シュラ「織斑が見つかったか」
千冬「ああ。私達も急いで向かうぞ」
二人は一部の教員部隊を率いて牙也の救援に向かった。
それが最早手遅れである事を知らぬままーー。
牙也side
(体が、冷たい……)
少しだけ戻った意識を全身に向けると、水の中のようだった。どうやら俺は、海に落ちたらしい……水が胸と背中の傷にしみて、凄まじい痛みが走る……。
(ああ……約束、破っちまったなぁ……)
出撃前に箒達と交わした約束を思い出し、そして後悔する。約束を破ってしまった事を。
(ごめんな、箒。約束、破っちまって……ごめんな、シュラ。お前との約定、果たさないまま死ぬ事になっちまって……ごめんな、皆。皆の元に、無事に帰って来れねぇで……ごめんな……)
また段々と意識が遠のいていく。俺は、ここで終わりか……ま、良いよな……一応、役には立てたんだからさ……それだけで、満足だよ…………
??「ーー!まだーはーー!お前はーーがーーる!」
なんだ……?誰かいるのか……?こんな俺を、救おうとしてるのか……?もう、間に合わないのに……
また意識が途切れる瞬間、最後に俺の目にはっきりと見えたのはーー
(千冬…………さん……?)
千冬さんにそっくりっぽい少女が、俺の手を掴もうとしてくる光景だった。
牙也side end
シュラ「こ……これは……!?」
シュラ達は牙也が先程まで戦っていたフィールドを見て愕然とした。フィールドにはガッチリとした筋肉が特徴の大男と細身で長身の男が血を流して倒れていた。シュラ達は辺りを見回すが、牙也の姿は見えない。
千冬「牙也!何処だ!?」
千冬は牙也の名前を呼びながら辺りを見回すが、返事は返ってこない。
千冬「くっ……シュラ、私は周辺を捜索して牙也を探す!その二人から話を聞いておけ!」
シュラ「……」
千冬「どうした?」
シュラ「……こっちの細身の男は、もう既に手遅れだ。もう一人の大男を治療して、話を聞く事にしよう」
倒れていた二人を調べたシュラは、首を振りながら答えた。
千冬「そうか……頼むぞ。教員部隊!牙也が行方不明だ!すぐに周辺を捜索開始せよ!なんとしても、牙也を見つけ出せ!!」
『了解!!』
千冬は予備として持ってきていた打鉄を展開すると、スラスターを全開にして捜索に向かった。
シュラは自身の持つ回復能力を大男ーーザックに分け与え、治療を施した。少しの間ザックの体を淡い光が覆い、やがてそれはゆっくりと消えていく。光が消えると、ザックの傷はそのほとんどが癒えていた。
ザック「う……うう……」
少しして、ザックが意識を取り戻した。
シュラ「目が覚めたか」
ザック「お、お前は……」
シュラ「オーバーロード・シュラ。牙也の仲間だ」
ザック「そうか……お前が、あいつの……」
シュラ「貴様、牙也は何処だ。今何処にいる!?」
シュラは本来の姿となり、撃剣『ラヴァアーク』をザックの首筋に突きつけた。
ザック「まあ待て。今から全部話す、俺達が何者か、ここで何があったかを、全てな」
そしてザックは全てを話し始めた。ザック自身が見た、最悪の結末をーー。
千冬「くっ、牙也……!何処にいるのだ……!?」
千冬は打鉄で飛行しながら牙也を探していた。しかし、どこを探しても牙也は見つからない。
千冬「くっ、何処まで行ってしまったのだ……!?」
<pppppーー>
千冬「もしもし」
シュラ『織斑千冬か?我は一旦旅館に戻る。この大男から重要な情報を手に入れたのでな……』
千冬「……?分かった。私は引き続き捜索を続ける」
通信を切った後、千冬は首を傾げていた。
千冬「今のシュラ……凄まじい殺気が乗っていた……何かあったのか?」
そう考えながら千冬は捜索を続ける。
束「牙君、大丈夫かな……?」
束達は牙也の安否を心配していた。先程真耶率いる教員部隊の一部が帰還してきた。真耶から事情を聞いた束達は拘束された春輝を叩く蹴るなどして暇潰しをするが、不安は拭えない。
一夏「春輝が戻ってきても、牙也がちゃんと戻ってきてくれないと意味が無いんだよ……」
鈴「今はもう祈る事しか出来ないわね……」
<pppppーー>
束「あれ、シュラ君からだ。もしもし?」
シュラ『篠ノ之束、聞こえるか?』
束「聞こえるけど……どうしたの、口調から察するに随分お怒りのようーー」
シュラ『無駄話は後にしろ。それよりそこに織斑春輝はいるか?』
束「え?さっき帰ってきたところだけどーー」
シュラ『その屑のISをすぐに調べろ!!予想が正しければ、拡張領域から【あれ】が出てくる筈だ!!』
束「え!?ちょ、何の事だかさっぱりーー」
シュラ『そっちに戻ってから全部話す!!良いから早くやれ!!それと、絶対に屑を逃がすなと山田真耶に伝えろ!!』
束「わ、分かった!」
この時束達旅館にいたメンバーや、シュラを除く千冬達牙也捜索組は知らなかった。
牙也はもう、何処にもいないという事をーー。
また一旦切ります。次回で福音編は完結。