IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

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 大分短いですが、始まります。




第40話 新タナル勇士

 

 移動式ラボ『我輩は猫である』。どことも知れぬ場所に鎮座するこのラボは、世界各国に複数あるラボの中で束が普段の研究や新型IS製作の為に一番多く使っているラボである。

 しかしーー

 

 

 束「牙君……」グスッ

 束はいつもの元気がなかった。束は今回の一件で、自分の作ったISが春輝によって殺人に使われた事にショックを受けていた。しかも殺害されたのが牙也であった事も災いして、ショックの大きさは計り知れないものであった。

 クロエ「束様……」

 一夏「束さん……」

 その後ろから、一夏とクロエが心配そうに話し掛ける。

 束「あ……どうしたの、二人共?」ゴシゴシ

 先程までモニターに向かっていた束が二人がいる事に気づいて、白衣の袖で涙を吹いて尋ねた。

 クロエ「あ、いえ……白式から外したコアはどこにしまっておけば良いでしょうか?」

 束「えっとね……あ、そこに置いておいて。二人はもう休んで良いよ、後は束さんがやるからさ」

 一夏「いや、でも……束さんあの日からずっと寝てないでしょう?ショックなのは良く分かりますけど、少しは休んでくれないと……」

 クロエ「一夏様の言う通りです。どうかお休み下さい、束様。束様が倒れられたら……」

 束「うん、分かってる。分かってるよ……これが終わったら休むからさ……」

 そう言って束は再びモニターに向かう。その様子を二人は悲しそうに見つめていた。

 クロエ「束様……牙也様がお亡くなりになった事がとても響いておいでですね……」

 一夏「自分で作ったISが殺人に使われたからな……しかも牙也の殺害に……ショックなんて生易しいもんじゃないだろ。とにかく俺達はもう部屋に戻ろう」

 クロエ「そうですね」

 クロエは一夏の言葉に頷いて、手に持ったコアを束に言われた場所に置こうとする。が、

 

 クロエ「……」プルプル

 

 ↑指定場所に手が届かない

 

 一夏「……代わりに置こうか?」

 クロエ「……お願いします」

 クロエがコアを差し出し、一夏がそれを受け取ったーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 クロエ「ーーっ!?」

 束「な、何!?どうしたの!?」

 一夏「コ、コアが突然光りだしてーーっ!」

 

 光は、コアを持っていた一夏を飲み込んでいったーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏side

 

 「はっ!?」

 

 気がつくと、俺は芝生に寝転んでいた。まだ重い体をゆっくりと起こして辺りを見回すと、そこは西洋の館なんかでよく見るような庭園だった。

 

 ??「あ、気がついた」

 

 女の子の声が後ろから聞こえたので後ろを振り向くと、白いワンピースを着た10歳くらいの女の子が俺をじっと見つめていた。

 

 一夏「君は一体……それに、ここは……?」

 ??「私は、カンナ。ここは、貴方の精神世界を具現化したもの」

 カンナと言う女の子はそう自己紹介して、手を差し出した。

 カンナ「こっちに来て、座って。手伝うから」

 言われた通りに手を差し出すと、突然ゆっくりと体が浮いて、近くにあった椅子の上に導かれてゆっくりと着地した。突然の事に理解が追い付かずにいると、カンナはテーブルの上にティーセットを置き、ティーポットから紅茶をカップに注ぎ、俺の前に出した。少し熱めの紅茶を一口飲んでみる。紅茶を飲んだ事は無かったけど、この紅茶は飲みやすい。

 一夏「……美味しい」

 カンナ「そう、良かった……」

 カンナは嬉しそうな顔をした。にしても……

 一夏「カンナ、だったな。なんで俺はこんな所にいるんだ?」

 カンナ「それは……私がここに貴方を呼んだから」

 一夏「カンナが?なんで?」

 カンナ「私から貴方に、プレゼントがあるの……それも、二つ」

 一夏「プレゼント?」

 

 するとカンナは、ワンピースのポケットから何かを取り出して俺に差し出してきた。あれ?これって……

 

 一夏「ロックシード……!?なんで君が……!?」

 星の形の果物が描かれたロックシード……なんでこの子が……!?

 カンナ「それは、貴方の力……貴方のこれからを決める、大事な力……忘れないで。貴方には沢山の仲間がいる事を……」

 カンナがそう言うと、周囲の景色が少しずつ光の中に消えていく。そして同時に、俺の体もーー。

 一夏「な、なあ!二つ目は何なんだ!?」

 消える間際、俺はカンナにそう問いかけた。するとカンナはこう返した。

 

 

 

 

 カンナ「目が覚めた時に気づいた変化……それが、二つ目のプレゼント……今度は、大切にーー」

 

 

 そこで、カンナの声は聞こえなくなった。

 

 

 

 一夏side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 束「ーーくん……いっくん!!」

 一夏「はっ!?」

 一夏が次に気づいた時、束とクロエが驚いた表情を見せながら顔を覗き込んでいた。

 一夏「ああ、束さんにクロエ……俺、どんだけ気を失ってましたか?」

 クロエ「かれこれ20分程です。それよりもーー」

 束「いっくん!足見て、自分の足!!」

 一夏「足?」

 一夏が自分の足を見ると、

 

 

 

 

 一夏「こ、これ……!」

 一夏の足は、純白に彩られた義足となっていた。

 束「一体気を失ってる間に何があったの……!?」

 一夏「実はーー」

 一夏は自分の精神世界に行ってカンナに会った事、カンナから二つのプレゼントを受け取った事を話した。

 束「二つのプレゼント……その一つが義足なら、もう一つは……?」

 一夏「それは……」ゴソゴソ

 一夏はポケットの中を探すが、

 一夏「あれ?確かに受け取ったのに……見当たらない……?」

 クロエ「どのような物だったのですか?」

 一夏「ロックシードだった……しかも、牙也達が持ってない物だったよ」

 束「ロックシード……!でも、何処にいっちゃったんだろう……?ちゃんと受け取ったのなら、なくすなんて事はないだろうけど……」

 一夏「ええ……それ以上に気になるのは、あのカンナって言う女の子です。白いワンピースを着た、10歳くらいの女の子でした」

 クロエ「一体誰なんでしょうか……?」

 束「束さんにもさっぱり……とにかく、この事を皆に伝えなきゃ!」

 束はすぐに学園にテレビ電話をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 知らせを受けた学園の面々の内、部屋に閉じ籠ったままの箒と私用で学園にいなかった千冬、調査中のシュラを除いた全員はすぐに会議室に集まってきた。そして束から先程一夏に起こった出来事を聞いていた。

 セシリア「一夏さんがロックシードを……?」

 簪「それにそのカンナって子は一体誰なの……?」

 一夏「それは分かんない。でも俺の事を前々から知っている風だった」

 楯無「織斑先生なら知っているでしょうか……?」

 束「今ちーちゃん達はいないみたいだし、後で聞いてみようか」

 鈴「それが良いですね。でも良かった……一夏に義足がついて」

 一夏「ああ、そうだな。牙也にも見せたかったぜ……」

 ラウラ「牙也に見せられなかったのは残念だが、悲しんでいる暇もあるまい。今後は私達もインベス討伐に駆り出されるかもしれんのだからな」

 シャルロット「そうだね、僕達も今以上に強くならなきゃ……牙也さんの分まで」

 一夏「俺達も協力するぜ。何ができるかは分かんないけど」

 改めて決意を露にする一夏達であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ??「そう、ギリアとザックは……分かったわ、詳しい事はまた報告書に纏めて頂戴」

 何処かのビルの一室。黒髪の女性が部下の報告を電話で受けていた。受話器を置き、溜め息を吐く女性。

 ??「ギリアは戦死、ザックは連行され、目標だった紫野牙也もまた死亡……全く、あのガキのせいで計画は台無しよ……でも紫野牙也が死んでくれたのは良かったわ、『失敗作の処分』ってなかなか難しいのよね……そう言えば、あのガキは何かに使えそうね……さて、どう操って利用しようかしら……?」

 含み笑いを浮かべながら、女性はこれからの動きを考えていた。

 

 





 幕間はここまで。次回から今度こそ学園祭編に入ります。


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