IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

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 心の傷は、易く戻る事はない……治す術は、ただ一つーー。




黄金ノ狂戦士ト血二濡レタ狂戦士
第41話 弔イノ学園祭


 

 IS学園の夏休みは、本当に一瞬だった。普通の高校と同じくらいの日にちの夏休みではあったが、ほとんどの生徒はそう長くは感じなかっただろう。理由は勿論、牙也の死である。アーマードライダーや用務員としての仕事の傍ら、生徒の悩みなどを聞くなどして生徒達のより良い学園生活を陰からサポートしていた牙也の存在は、一年生に止まらず二年生や三年生にとっても大きな存在であった。その牙也を亡くす事が、どれだけ生徒達にショックを与えたかは計り知れるものではない。

 

 そしてここ、一年一組もまたそのショックの大きいクラスであった。久々の仲間との再会ではあったが、その表情はとても暗いものであった。

 

 セシリア「はあ……これほどにも陰鬱な時間が今まであったでしょうか……?」

 シャルロット「陰鬱どころじゃすまないよ、皆そう思ってる」

 鈴「牙也の存在って、こんなに大きかったのね……今初めて知ったわ」

 セシリア達は周りを見回しながら思った事を口にする。

 ラウラ「ところで皆は、この夏休みはそれぞれの国に戻っていたのだったな。何か収穫はあったのか?」

 セシリア「そうですわね……私はこの夏休み、偏向射撃(フレキシブル)の練習をしましたが、雑念が多かった為になかなか形にならず……」

 鈴「あたしは親戚の子や他の代表候補生と練習してたんだけどね……凡ミス連発で練習どころじゃなかったわ」

 シャルロット「僕も他の代表候補生と練習したり、実家で作った新しい武装のテストをしてたけど……精神的にきてたのかな、ミスばかりしてその人達に怒られたよ」

 ラウラ「やはり皆同じか……私も祖国に戻っていたが、なかなか練習に身が入らなくてな。クラリッサにほとんど指導を丸投げしていたぞ」

 セシリア「やはり私達にも、牙也さんと言う存在は大きかったのですね……」

 簪「おはよう」

 本音「おはよ~……」

 そこへ、珍しくいつもより遅い時間に簪と本音が来た。

 鈴「おはよう、簪」

 セシリア「布仏さんもおはようございます」

 簪「何の話、してたの……?」

 シャルロット「夏休み何してたかって話だよ。僕達皆散々だったみたいだけど」

 簪「そう……私と本音も、お姉ちゃん達と一緒に実家で練習してたけど……いつもは出来る事が、出来なくなってたりしたの……」

 本音「かんちゃんや会長だけじゃなくて、私やお姉ちゃんも同じような感じだったよ~……はあ」

 簪と本音は揃って溜め息を吐いた。

 ラウラ「私達は皆、牙也にすがっていたのだな……なんとも嘆かわしい」

 セシリア「仕方ありませんわ。私達では、下級インベスでさえ倒せる訳がありませんし……」

 鈴「はあ……強く、ならなきゃね……」

 

 

 

 キーンコーンカーンコーンーー

 

 

 

 鈴「あ、予鈴だわ。それじゃまた後でね」

 簪「私ももう行くね……」

 そう言って鈴と簪は自分のクラスに戻っていった。そしてそれと同じタイミングで、千冬と真耶が入ってくる。教壇に立った千冬は、全員の顔を見てから話し始めた。

 千冬「諸君、久し振りだな。この夏休みはどうだっただろうか。何か自分の欠点を見つけたり、何か収穫があっただろうか。二学期はそれらを踏まえて、じっくりとIS操縦の練習を重ね、充分な能力が身に付くよう、皆頑張ってもらいたい」

 『はい』

 千冬「うむ。ではSHRだが……今日は学園長の提案により、SHRと一限が自習となる。そこで一組はこの時間、来月始めに行われる学園祭で何をするか決めていこうと思う」

 ラウラ「教kーーいえ、織斑先生。一つ質問があります」

 千冬「ボーデヴィッヒか、許可する」

 千冬の言葉に、ラウラが疑問を持ったのか挙手して質問した。

 

 ラウラ「今学園は、紫野牙也という大きな存在を亡くした事で非常に陰鬱な雰囲気にあります。そのような時に学園祭の事を決める、そもそも学園祭を行うというのは……」

 

 千冬「うむ、ボーデヴィッヒの言う事も最もだ。が、これもまた学園長の提案であるのだ」

 ラウラ「学園長の、ですか?」

 千冬「そうだ。実は先程の職員会議でーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教員A「学園長、本気ですか!?紫野さんが亡くなって、未だに学園は悲しみに包まれているというのに!」

 轡木「私はいつも本気ですよ。学園祭は、予定通りの日程で行います」

 真耶「で、ですが……!」

 轡木「皆さんがこれに納得いかないのは重々承知しております。ですが、今回の学園祭は大きな意味を持っていると私は考えています」

 千冬「意味、ですか……それは牙也の……」

 轡木「はい。彼の弔いという意味を込めたのが今年の学園祭だと私は考えています」

 教員B「弔い……」

 轡木「牙也君が亡くなって皆さんが悲しんでいるという事は勿論理解しています、私だってそうですから。ですが、いつまでも悲しんでいる訳にはいかないのも事実です。故に今回の学園祭では、亡くなった彼の弔いの意味を込めて、大々的に学園祭を開催したいのです」

 教員A「なるほど……織斑先生はどう思われますか?」

 千冬「……少なくとも、私個人としては開催すべきではないと考えていた。が、先程の学園長の話を聞いてみて考えが変わった。学園長も言ったが、このままずっと悲しんでいる訳にはいかない。私達に出来るのは、空元気でも良いから牙也に私達の笑顔を見せる事だと思う。ならばーー」

 千冬は感極まったのかそこで言葉を切り、静かに涙した。

 轡木「皆さん納得していただけましたでしょうか……?生徒の皆さんには各クラスの担任から、私の言葉をよく伝えて下さい」

 『はい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 千冬「という事があってな」

 ラウラ「そうでしたか……牙也の弔いという意味を持っての開催……」

 セシリア「だとすると、とても大きな意味を持ちますわね」

 シャルロット「牙也さんの為にも、素晴らしい学園祭にしなきゃ!」

 

 

 /ワイワイガヤガヤ\

 

 

 千冬「皆、納得してくれたか?それならば良い。では一組の出し物を決めていく事にしよう」

 

 

 

 ガラッ

 

 すると教室の扉が開き、

 

 

 

 

 箒「おはよう、ございます……遅くなりました」

 

 箒が入ってきた。

 

 千冬「篠ノ之……!大丈夫なのか?」

 箒「まだ本調子ではありませんが……まあ、なんとか」

 クラス全員が立ち上がって、箒を心配して駆け寄っていく。

 

 清香「篠ノ之さん、大丈夫なの?」

 静寐「あまり無茶しないで、私達も頼ってね?」

 さゆか「そうだよ、皆心配してたんだから……」

 箒「すまないな、心配かけてしまって……これから何かするのか?」

 セシリア「実はこれから、学園祭の出し物を決めようとしていたのです」

 ラウラ「学園長の提案で、予定通り開催する事が決まってな」

 箒「そうか……ありがとう、皆」

 シャルロット「お礼なんて良いから……さ、座って座って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セシリア「と、言う事で色々意見を出していただきましたが……」

 春輝が逮捕された事で急遽クラス代表となったセシリアの司会で、学園祭の出し物を決める話し合いが行われているが、なかなかこれと言えるものが出てこない。飲食店やら演劇やら他のクラスと被りそうなベタなものばかりが出てくるようで、セシリアも困っていた。すると、

 

 ラウラ「個人的にやりたい事が一つあるのだが……」

 そう言ってラウラが手を上げた。

 セシリア「なんでしょうか?」

 ラウラ「うむ……メイド喫茶というものだ」

 シャルロット「メイド喫茶?」

 ラウラ「私の部下のクラリッサから聞いた事があってな……興味があったのだ」

 セシリア「なるほど……メイド服ならお古を私の実家から取り寄せ出来ますわ」

 シャルロット「喫茶の飾り付けは僕が出来るよ、一つあてがあるからね」

 ラウラ「皆はどう思う?」

 ラウラがクラス全員に聞くと、

 清香「良いんじゃないかな!ここは女子校みたいなもんだし、ピッタリでしょ!」

 静寐「うん、良いかもしれない。皆でメイドやるってなんか新鮮だね」

 セシリア「でしたら私達一組はメイド喫茶をするという事で、皆さんよろしいでしょうか?」

 『さんせーい!!』

 

 かくして、一組はメイド喫茶に決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シュラ「これは……!洞窟の中の研究施設とくれば、とんでもないものが隠されていると思っていたが、これほどとはな……!」

 一方こちらはヘルヘイムの森。ヘルヘイムの森を探索中、その一角で今までは無かった筈の洞窟を見つけ、さらにその中に作られた研究施設を捜索していたシュラは、とある一室である事が書かれた報告書を見つけた。シュラはそれを手に取り、まじまじと見つめる。

 シュラ「これが本当だと言うのなら……我は、そして牙也は……!」

 シュラは辺りに散らばる報告書の内重要な事か書かれている数枚を回収し、一旦その研究施設を出た。持ち帰ってきた報告書に一枚一枚目を通し、それを強く握り締める。

 シュラ「我の命も、残り少ないという事か……出来る限りの事をして、アーマードライダーの力を学園に少しでも多く残しておかねば」

 シュラはドライバーの製造を急ぐ為に拠点に戻っていった。

 

 

 

 

 

 





 次回、学園祭準備スタート。しかしその裏で、また一つの命が消えようとしていたーー。


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