IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結) 作:神羅の霊廟
怒りは時に、優しささえも凌駕するーー。
??「ふああ……」
IS学園の屋上に、一人の少年の姿があった。
??「今日は授業が休みなんだよな……珍しく早く目が覚めたから屋上に来てみたけど、気持ちいいな~」ノビー
体を大きく伸ばしているのは、お馴染み織斑一夏だ。現在の時刻は午前7時半。まだ夜が明けたばかりの屋上で風を感じながら、一夏は手足をじっくりと曲げ伸ばししている。
一夏「さて、今日はどうするかな……正昌達と一緒に訓練するのも良いし、何処か出掛けるのも良いし……」ノビー
何をするか考えながら腕を伸ばすと、
バチッ
一夏「痛っ!」ビクッ
突然その手に痛みが走り、思わず一夏は手を引っ込めた。何が起きたのか分からず、一夏は首を傾げる。そして腕を伸ばした方向に恐る恐る手を伸ばした。すると、
バチッ
一夏「っ!」バッ
また痛みが走り、一夏はまた手を引っ込めた。
一夏「ここ、なんかバリアみたいなのがあるな……なんだろ?」
一夏は少し考えていたが、
一夏「……千冬姉達を呼んでくるか。なんかあるかもしれないし」
そう言って一夏は一旦屋上を離れて千冬達を呼びに行った。
牙也「ん……朝か」
一方バリアの中では、ちょうど牙也が起きてきたところだった。体を確認すると、椿との戦いで開いた傷口は完全に閉じていた。
牙也「よし、傷は大丈夫だな。おい二人共、朝だぞ。そろそろ起きな」ユサユサ
箒「んぅ……朝か……?」
カンナ「ふみゅう……おはようございます」
寝ぼけ眼を擦りながら、箒とカンナも起きてきた。
牙也「おはようさん。取り敢えず二人の髪なんとかするから、ちょっと我慢しろよ」
こうして牙也が二人の髪を手入れする事数分ーー
牙也「よし、こんなもんだろ。どうだ?」
箒「おお……良くできてるな」
カンナ「わざわざありがとうございます」
牙也「良いって良いって。さて、これからどう動くよ?」
箒「まずは朝御飯ではないか?」グキュルル
カンナ「そうですね。何か食べられるものをーーあら?」
ここでカンナが何か違和感に気づいた。
箒「カンナ?」
カンナ「しっ、静かに。誰か来ます」
三人がバリアの外に耳を澄ますと、
??「屋上ーーリアーー?なぜーーようなーーが屋ーー?」
??「分かりーー。怪しーーで、放っーーりますが……」
何やら話し声が聞こえる。
牙也「ちっ、気づかれたか。箒、カンナ、クラック開いて逃げるぞ」
箒「逃げるのか?話せば相手も分かってくれると思うが……」
牙也「それは無理だ。昨日の戦いで紅星椿は言ってただろ、『お前という存在は、消えた筈だ』って」
カンナ「なるほど……この世界では、箒様は行方不明かもしくは死んでいるという事ですか」
牙也「あいつの言葉から考えた推論に過ぎんがな。もしそうだとして、消えた筈のお前が目の前に現れたとしたら、それを見た奴等はどう考える?」
箒「……まさか牙也とカンナが、私を拐った犯人と見られる可能性が……!?」
牙也「そういう事だ。さ、早く逃げるぞ、もうバリアが持たないだろう」
牙也の言う通り、バリアは皹が入り始めていた。牙也は急ぎクラックを開きいつでも逃げられるように準備する。
牙也「早く入れ、箒」
箒「ああ、分かってーー」
ザクッ
箒「ぐうっ!?」
牙・カ『箒(様)!?』
突然バリアを突き抜けて剣が現れ、箒の左肩に刺さった。刺さった剣は、そのままその肩を抉るように抜かれ、バリアを斬り裂いた。
箒「ぐううううっ!!」
剣を刺された肩を抑えながらその場に膝をつく箒。
牙也「箒!くそっ、逃げるぞ!」バッ
カンナ「は、はい!」
牙也は箒をお姫様抱っこすると、カンナを伴ってクラックに飛び込んだ。その際牙也は、壊れたバリアの隙間からバリアの外にいた人物の顔を見た。
牙也(一夏と千冬さんと……っ!あいつか……あいつが、箒を……!)ギリッ
拳を強く握り締め、牙也はその人物を睨み付けながらクラックの中に消えた。
その数分前、バリアの外ではーー
千冬「屋上にバリアのようなものが張ってあるだと?なぜそのようなものが屋上に……?」
一夏が千冬、正昌、鈴と共にバリアの前で話していた。
一夏「分かりません。なんか怪しいので、最初見つけた時は放っておいたんですが……」
正昌「千冬姉、どうすんだよ?」
千冬「織斑先生だ。とにかく学園長に報告して指示を仰がねば……」
正昌「でもさ、もしこの中に誰かがいて、報告に行ってる間に逃げられたらどうするのさ?それよりかはさっさとバリア壊して中を確認した方が良いだろ」
そう言って正昌は自身のIS『白夜』を部分展開、さらに専用武器『羅刹』を取り出した。
千冬「待て、正昌!」
そして千冬が止めるのも聞かず、
正昌「おりゃっ!」ドスッ
羅刹をバリアに突き刺してそのまま一閃し、バリアを斬り裂いた。すると、
??「箒!くそっ、逃げるぞ!」
??「は、はい!」
青年の声と少女の声が中から聞こえた。しかしバリアが消滅すると、
鈴「ジ、ジッパー?」
ちょうどジッパーのような隙間が閉じるところだった。
一夏「千冬姉、今、箒って……!」
千冬「ああ、私にも聞こえた……織斑兄弟と凰はすぐに周辺を捜索して、不審者がいたら即刻確保せよ!私は急ぎ教員部隊を召集する!」
一・正・鈴『はい!』
三人がそれぞれのISを展開して飛び立ったのを見届けると、千冬は急いで屋上を後にした。
牙也「しっかりしろ、箒!」
カンナ「しっかりして下さい、箒様!」
学園の敷地内にある森に逃げ込んだ牙也達は、箒をその場に寝かせて治療を施していた。牙也とカンナがそれぞれが持つ治癒能力を分け与えて、一刻も早く傷が治るように促す。が、
箒「う……うう……っ!」
牙也「まだか……!まだ治らないのか……!」
カンナ「傷が大きすぎます……このままでは……!」
受けた傷が予想以上に大きく、二人の治癒能力を合わせて治療してもなかなか治らない。
牙也「くそっ、落ち着け……!落ち着くんだ……!熱くなりすぎるな……!」
カンナ「一応治癒のバリアを張ってありますが、急がなくては追手が……!」
牙也「重々承知してるがよ……!」
とその時、
一夏「ここはまだ捜索してないな……」
鈴「そうね、行ってみましょう!」
森の外から、一夏と鈴の話し声が聞こえた。
箒「一夏と……鈴の、声が……!」
牙也「ちっ、もう追い付いてきたのか……!」
カンナ「ど、どうしましょう……!?」
牙也は少し考えていたが、
牙也「箒、走れるか?」
箒「あ、ああ……肩の傷だから、我慢すれば……」
牙也「俺があいつらを足止めしておく。カンナと一緒になるべく遠くに逃げろ」
カンナ「牙也様、それは……!」
牙也「大丈夫だ、ある程度足止めしたらクラック使ってすぐに追い付く。カンナ、なるべく遠くに逃げて、箒の傷を治療してやってくれ」
箒「牙也……」
牙也「心配すんな、すぐに終わらせてすぐに追い付くさ」ナデナデ
カンナ「……分かりました。箒様、無理だけはなさらないで下さいね」
箒「分かってる……牙也、後は頼むぞ」
牙也「任せろ」
箒とカンナは立ち上がって、森の奥へと走り出す。それを見届けた牙也は、
牙也「さて、足止め開始だ」
左手から蔦を伸ばし始めた。どんどん蔦は森の隅々まで伸びていき、少しして、
一夏「な、何だよこれ!?くそっ、離せぇ!」
鈴「ちょ、どこに絡まってるのよ!?いやっ、だ、誰か助けてぇぇぇぇ!!」
森の中に、一夏と鈴の叫び声が響き渡る。
牙也「悪いな……暫く蔦に捕まっててもらうぜ」
(箒、カンナ……なるべく遠くまで行ってくれよ……)
牙也は先に逃がした二人を心配しながら、暫くその場に留まる事にした。
一方箒とカンナは、ひたすら森の中を走っていた。
箒「っつぅ……!」
その間、箒は何度も肩の怪我に顔を歪めていた。
カンナ「箒様、やはり痛みますか?」
箒「ああ……取り敢えず暫くは、森の中にいた方が良いかもしれないな。あまり広い所にいると見つかりやすいだろうから」
カンナ「今はそれが妥当でしょうね……箒様の怪我の事もありますし」
すると、
??「きゃっ!」ドンッ
箒「うわっ!?」ドンッ
突然誰かが木の陰から飛び出してきて、箒とぶつかった。ぶつかった二人は勢い良くこける。
箒「いたた……」
??「いたた、大丈夫~?……って、大怪我してるの!?」
箒「え?あ、ああ……」
ぶつかった人物を見て、箒は驚いた。箒とぶつかったのは、本音だったからだ。
本音「早く治療しなきゃ~!こっち来て!」グイッ
箒「わわっ!ひ、引っ張るな!一応怪我人なんだって!」
カンナ「あ!ま、待って下さい~!」
本音に引っ張られていく箒を、カンナは慌てて追いかけた。
牙也「よし、そろそろかな」
箒達と分かれてから十五分以上経った頃、牙也はやっと蔦をしまった。森の中からドサッと何かが落ちる音がする。
牙也「さて、足止めはこれくらいにして、さっさと箒達を追いかけなきゃな……」
千冬「待て」
その声に牙也が振り向くと、
千冬「貴様か。あのバリアを張ったのは」
打鉄を纏い、葵を牙也に向ける千冬がいた。その隣には白夜を纏い、羅刹を同じように牙也に向ける正昌もおり、さらにその後ろには打鉄やラファール・リヴァイブを纏う教員達もいた。
牙也「織斑千冬と……お前は?」
正昌「なっ!?僕の事を知らないのかい!?」
牙也「知らん」
正昌の言葉を容赦なくぶった斬り、牙也は千冬に顔を向ける。
牙也「バリアを張ったのは、俺の仲間だ。今は別行動中だがな」
千冬「その中に、篠ノ之箒がいるな?」
牙也「」ピクッ
千冬「やはりか……篠ノ之を拐ったのは、どうやら貴様で間違いないようだな。篠ノ之を大人しく返すならば、私達は手を出さん」
牙也「断る。どうやらお前等は勘違いをしているようだが……」
正昌「勘違い?今さらすっとぼけても無駄だよ。お前が連れてるのが箒なのは確認済みだ、観念して箒を渡しな!」バッ
羅刹を構えた正晶が牙也に襲いかかった。が、
牙也「」シュルシュル
ガキインッ!!
正昌「なっ!?」
牙也は左手から蔦を伸ばして円形の盾を形成し、正昌の攻撃を防ぎ、そのまま押し返すように振り払った。
正昌「うわっ!?お、お前……何m『ふざけんなよ』なんだと?」
牙也「俺の大切な箒に怪我させておいて……返せだと?ふざけてんじゃねぇ!!」
牙也は懐からガシャコンバグヴァイザーを取り出した。そしてAボタンを押して持ち手と合体させる。
牙也「覚醒……!」
《Infection! Let's Game! Mad Game! Blood Game! What's Your Name!? The OverLoad!!》
牙也の全身を蔦が覆い、蔦が弾けるとその姿はオーバーロードの姿となっていた。
正昌「ひっ!?」
千冬「な……!?」
牙也「てめぇら全員覚悟しとけよ……怪我だけじゃすませやしねぇ……!」
牙也のその目は、怒りに満ちていた。
戦いは、まだまだ続くーー。