ボクのモンハン見聞録!〜ただそれだけの、物語〜 作:リア充撲滅委員会北関東支部筆頭書記官
でわどーぞ。
ブチッ……!
刃を振り下ろした瞬間、繊維筋が切断される生々しい音と共に、鮮血が吹き出す。苦悶の声を上げ、心の中では絶叫する。それでも、飛竜の注意を引くわけには行かない。その悲鳴は歯を目一杯食い縛って必死に飲み込んだ。
一度では切れない。二度、三度と、刃を振り下ろす。
ブチッ!グチャッ!ガシュ!!
「ぐっ……ぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
激痛が灼熱のように押し寄せ、脳を焼く。その苦痛に悲鳴を漏らしながらも、ボクは手を休めずに骨ごと足を断ち切らんと刃を振り下ろす。
そして、自らの左足を、ボクの体との繋がりを完全に断ち切り、切り落とした。
自分の足を切り落とす。
それだけの異常な行為に、ボクの心は何かしらの反応を示すと覚悟していたが……いざ、実際にやってみれば、拍子抜けするほど、「特に何も感じなかった」。
それは痛みで思考は塗り潰されるし、グチャグチャになった肉面を見れば吐き気だって込み上げてくる。だが、それだけなのだ。特に感慨も無く、ただそれだけなのだ。
ボクは、おかしいのだろうか?
ボクがおかしいのか、世界がおかしいのか、
ボクがボクをおかしくしたのか、世界がボクをおかしくしたのか、
ボクが世界をおかしくしたのか、世界が世界をおかしくしたのか、
或いは、全ては必然であり、予定調和で…
おかしいところなど、一つもありはしないのか。
切り落とされた左足とその傷口から溢れ出た血は、その瞬間にまるで「
そして、それに追従するように、ボクは左足の太腿の切断面を「
「
一つは、入れた物が生き物の死骸であること。
この時は、サイズ、状態、物品問わず、大抵の物は入れることができる。ただし、枯木のように他のものに固定されていたらダメだ。
一つは、完全に生命体でない場合、使用者、つまりボクの血を含む体液が付着していること。そして使用者が一人で持ち上げられるものであることだ。
そして、もう一つは、もし生命体であるならば、「
生命体だと一気に条件が厳しくなるが、それでも不可能ではない。
だが、上の条件だと、直径30cmという壺の入り口の大きさの関係上ボクの体を丸ごとは入れることが出来ない。
だが、細身なボクの片足の太腿程度ならば、
そして、入りさえすれば、好きなように改造することが出来る。そういう能力だ。
まず、切り落とした左足からリオレウスの爪を抜く。「
でも、こうしているうちにもいつ上空から流れ弾が降ってくるかわからない。だから作業はできる限り迅速にっ!
次、改造能力を使って、出血毒を完全分離!
次、蓄積された乳酸を強制排出!
次、改造!切断された断面同士を癒着させ………っ!
クソッ!適当に切った上にリオレウスの爪が刺さっていたから損傷が激しすぎるっ!!
ならば……代用品を使って埋めていくしか無い!
ボロボロの表面を、グチャグチャの中身を、グロテスクな切断面を補うために……ドスランポスの体組織を使用する。
ドスランポスの肉を血を、鱗を爪を、自らの足に、融合させていく。ついでだ、左足だけだが、脆弱な人間部分を減らして、ドスランポスの体組織で強化しよう。
左足は太腿から先が闇に呑まれているため、特に痛みは感じない。しかし、自分の体が自分で無くなるような、そんな言葉には言い表せない不安がボクの心に湧いてきた。
それでも……
ボクは、生き延びて見せるから。
そして、左足の癒着と改造が、今、完了した。漏れ出た血液を全て戻し、これで作業は終了だ。
「
途中までは通常の人間の足。しかし、太腿の途中から先が、ランポス特有の青い縞模様の鱗で覆われて刺々しくなっており、更に足の指先にはドスランポスの真紅の爪が付けられていた。
そして、何よりの変化は、力が湧いてくる。
疲れていない状態の自分よりも、更に高いポテンシャルを、その左足は秘めていた。
この方法を試す時、やはり一番気掛かりだったのは、全く別種の生物を体に組み込んだことによる拒否反応だった。
しかし、その答えは、あの今まで一度も役に立っていない転生特典なが、示してくれた。
"「
それが、全ての鍵となった。
人で無くなる、理由に。
左足の傷は無くなり、これ以上の血液の流出を防ぐことができた。
だが、それで突然立てるようになったり、まして走れるようになるわけでは無い。疲労は依然全身に鉛のように重くのしかかり、これまでに流れ出た血液が戻ることもない。
再び、泥臭く地面を這って、前へ進んだ。
とにかく前へ。
前へ。
「がっぁぁぁぁぁぁああああああっ!!」
叫ぶ。
痛みを堪えるため、力を入れるために。
だが、そんなものはまやかしだ。根性論甚だしい。
叫んだところで流れた血は戻らない。蓄積された疲労が無くなることなどない。隠された力が目覚めるわけでもない。
余計な体力を使い、飛竜の注意を引いて死亡率を高めるだけだ。
でも……
それでもボクは……
足掻けば、足掻いて足掻いて、足掻き続ければ、いつか道は拓けると、そう、信じたい。
土に塗れながら、湿った地面の上を這い進む。
エリア11に続く細道までは、少なめに見積もって10メートル。それは、呆気ないほど短くて、そして絶望的に長い。
それでも、前へ……
ズドォォォォオオオンンッ!!!!
轟音と地響き、そして地震のような衝撃と共に、これまでのブレスとは比較にならないほどの質量を持った物質が、ボクの真後ろに落下した。
振り返らずともわかる。この気配はライゼクスだ。
いくらライゼクスがリオス種と相性がよくても、流石にリオレイアとリオレウスを同時に相手にするのは難しく、あえなく墜落したといったところだろう。
だが、ライゼクスがただ黙って墜落するはずもない。リオレイアかリオレウスのどちらかを道連れに落ちたはずだ。
その証拠に、今、ボクの真後ろでは巨体がぶつかり合い、組んず解れつしている音と衝撃がこれでもかと鳴り響いている。
熱風と雷撃がバックで嵐のように吹き荒れ、その余波はボクにまで影響を及ぼす。熱風の頻度から考えて、戦っているのはライゼクスとリオレウスだろう。
取っ組み合いの最中なので、リオレイアは手が出せないといったところか。
おそらく、人間が立ち入れば数秒とたたず細切れにされるような戦いが、真後ろでは展開されている。
両者周囲の環境に配慮するような余裕は無く、また戦闘の余波によっていとも容易く大木がへし折られた音が聞こえた。
無論、その脅威は、いつ自分に降りかかるかわからない。
しかし、ボクは今、不思議なほどに後ろの事が気にならなかった。
いや、それは当たり前のことだ。
自分は弱い。だから、ボクの後ろで起きている圧倒的な力の応報を気にしたって、何か変わるものでも無いのだ。
今、ボクに必要なのはただただ愚直に前に進むことのみ。
それ以外のことを、ボクは必要としない。
ボクは生きること以外の一切のことを、許されていないのだから。
ガッ……!!
気付けば、ボクの体は、宙を舞っていた。
衝撃も痛みも感じず、ただ唐突に、浮遊感の中にあった。
そして、吹き飛ばされているのだと、脳が自覚したその瞬間に、ボクの全身に激痛が襲いかかる。いや、正しくいうならば、激痛を思い出したというべきか。
壊れた人形のように飛び上がったボクは、そのまま重力に引っ張られて吸い込まれるように地面へと落下した。
全身に鈍痛が駆け巡り、肺の空気が一気に押し出されたことで咳を繰り返し、そして衝撃に嘔吐する。
右腕から着地……というよりはモロ墜落したためか、右腕は熱を持ち、奇妙な方向へと折れ曲がる。
それだけでなく、右胸にも鋭い痛みが走った。
右腕が折れた。肋も何本かやられたか…。
口の中に入った土を吐き出し、顔を上げて現在の位置を確認しながら、冷静にそう判断する。まだ足と左腕が動くのならば、活路は開ける。さして気にするものでもあるまい。
それよりも、僥倖だったのは、何故吹っ飛ばされたのかは状況が混沌とし過ぎていて不明だが、とにかく吹っ飛ばされた影響でエリア11まであと少しという位置まで漕ぎ着けることができたことである。
あと少し。あと少しなんだ…。
その希望を胸に、必死に前へと躙り進んだ。
手のすぐ届くところに小さいが薬草とアオキノコが生えているのを発見した。すかさず口の中にある放り込む。薬草もアオキノコも、腹にはたまらないが回復作用がある。
今この状況で手の届く位置にあるのならば採らない理由は無い。
よし、怠さも頭痛も吐き気も少し楽になった。
ほんの少しの変化だが、今はその僅かが何よりも大切なのだ。
前へ。前へ。
背後では、依然として飛竜の決戦が続いている。
おそらく、戦いは泥沼化することだろう。
そしてボクは………、
目的地、「森丘」、エリア11に、辿り着いた。
…現実時間にして、エリア5脱出劇からおよそ一時間。
そう、あれ程長く感じたのに、現実にはまだたったの一時間しか経っていないのだ。
ボクは、これ程長い長い一時間を、おそらくほかに知らないだろう。
この先ボクが、これよりももっと遥かに長い絶望的な一時間を、何度も何度も経験することになることなど……
この時はまだ、知るよしも無かったのだから。
密かに囁かれるR-18G疑惑。
もう少し、もう少しでほのぼの要素を出せるんだ!!