ボクのモンハン見聞録!〜ただそれだけの、物語〜   作:リア充撲滅委員会北関東支部筆頭書記官

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(;゚д゚)

(;つд⊂)ゴシゴシゴシ

(;゚Д゚) …!?

……なんだ夢か。
いやぁ、評価が赤くなっている夢を見たんですよ。
そんなことあるわけ…って、えぇーっ!?(わざとらしいノリボケ)


というわけで、評価に色が付いてしかも赤くなりました!!
し、信じられん…。
未だに現実かどうか確認中ですが、本当ならば高評価をつけて下さった方々に、心の底から感謝申し上げますっ!!
感想欄でもとある読者の方からありがたい言葉をいただき、涙がちょちょぎれんばかりでございます!

至らぬ点等ございますでしょうが、これからもよろしくお願いします!!ます!!



第16話、涙を拭って!part4〜混濁せし意思の狭間に惑う者〜

 

 

《生き物を殺した》

 

 

自分の手にまるで余韻のように残る感触が、ボクにそうハッキリと自覚させた。

虫とは違う、人間と同じように赤い血を流す、温血動物を殺したことにより、その意識はより一層強くなる。

 

目の前に臥すブルファンゴの死体の、その開けられたままの瞳が、既に生気の感じられない瞳が、まるでボクを責めているかのように思えてしまう。

そんな筈あるわけがないのに、何故か思考の裏にベッタリとくっ付いて離れないのだ。

 

…吐き気がする。

 

それは、先程のような転生特典の副作用によるものとはまた違った、心の底から湧いて出るような吐き気だった。

口を押さえながら、何度となくえずく。しかし、零れ落ちるのは血の混じった唾液ばかりであり、吐くものなど殆ど存在しない。

 

暫くの後、嘔吐感からようやく一息持ち直したボクの肺は、酸素を求めて大きく辺りの空気を吸い込んだ。

その瞬間に流れ込んでくる、噎せ返るような血の匂い。再び戻しそうになるのを押さえ、咳き込んだ。

 

「ゴホッ……はぁ………はぁ………。」

 

気持ち悪い。

 

吐き気がする。

 

 

……何よりも気持ち悪いのは、生き物を殺したというその事実に、僅かばかりの達成感と満足感、そして快楽を見出している、他ならぬボク自身であった。

 

 

確かに、ブルファンゴを殺さなければ、ボクは生きてはいけなかった。だから、生きるために、殺さざるを得なかった。

 

 

【どうせ殺すのなら、"楽しい"方がいいだろう?】

 

 

やめろ。

 

 

本当にキミ(ボク)は、

……何よりも気持ち悪い。

 

 

 

低回する思考や呟かれた言葉を振り払い、今すべきことを成すことだけを考える。そうでもしなければ、思考の坩堝に嵌って出られなくなってしまいそうだったから…。

 

ブルファンゴの体を乱暴に退かし、ボクは魚がいる小川へと這い進む。

 

 

……力が入らない。

……遠い。

 

 

動け、ボクの体。

ここまで来たじゃないか。

どれだけ傷つき、疲れ果てても、

一人で、ここまで辿り着いたんじゃないか。

 

 

自らに言葉を言い聞かせ、失いそうになる意識を懸命に繫ぎ止める。

だが、ボクの体には既にそれだけの力が、それだけの気力が、残っていなった。

 

仮に辿り着いても、サシミウオがいるという確証は?

 

釣竿も餌も無いのに、捕まえることはできるのか?

 

捕まえたとして、本当に食べられるのか?

 

 

ネガティブな発想ばかりが頭の中を駆け巡る。

結局、今までのボクの行動は、殆ど希望的観測によるものだった。

賭けに次ぐ賭け。

無謀で無鉄砲。

 

きっと、ボクの頭がもっと良かったなら、こんな目に遭わずとも生きていけたのだろう。

きっと、ボクがもう少し強かったら、こんなに苦しまずに生きていけたのだろう。

 

 

ボクは、どうしようもないほど、馬鹿で、弱くて。

 

 

そんな奴が必死でここまで来たのに、何度諦めそうになろうとも、何度死にかけようとも、無い頭から振り絞った知恵で、弱い体から振り絞った力で、脆い心から振り絞った勇気で、乗り越えて来たと言うのに……。

どうして。

 

世界はまだボクに、いったい何をしろと言うのだ。

 

 

全力で諦めさせようとしてくる世界。

それでも諦めることを許さない世界。

 

 

ボクはいったい、どうすれば……、

 

 

 

思考が纏まらない。

耐え難い空腹が、波のように繰り返し苦痛となって襲いかかる。

 

意識が白く染まっていく。

まるで、自我が消えていくような感覚。

でもそれは、意外なことにも、不快なものでは無かった。

 

 

殺せ。

 

殺せ。

 

殺して食え。

 

全てを奪う。

 

邪魔はさせない。

 

立ち塞がるならば敵。

 

敵は………殺すっ!!

 

 

真っ白な敵意。

一切の穢れなき、純粋で無垢な敵意。

それがボクの心で暴れ狂う。

 

そしてボクは、何故かそれに抗う気が起きなかった。

何故か、今ばかりは、それに身を委ねようと、そう思ったのだ。

 

 

––––––––

 

 

『無垢』は糧を探し求める。

 

『無垢』は純然たる敵意であり究極の悪意であったが、同時に『ソレ』の中には、一欠片の敵意も悪意も存在しなかった。

何故ならば、『ソレ』は何よりも純粋な『無垢』なのだから。

 

『無垢』は這い蹲り、嗅覚を頼りに糧を探し続ける。

 

そして気付いた。食糧ならばこんなに近くにあるではないかと。

『無垢』は血の池に沈んだ茶色い巨大な肉塊に手をかけ、その芳醇な香りを愉しんだ。

 

新鮮な血の匂い。

野生的な獣臭さ。

美しいピンク色の肉。

 

それら全てが、『無垢』を愉しませた。

 

 

キャッ!キャッ!

 

 

その肉塊の、白く柔らかい腹の皮を引き裂き、臓物を引きずり出して弄ぶ。腕を血と肉の中に埋め、その体内を滅茶苦茶にまさぐっては、血塗れになった腕を引き抜き、ペロリと舐める。

 

その様子はまるで、産まれたばかりの赤子のようにも見えた。

 

 

やがて『無垢』は、その肉に食らいつく。

今この瞬間のために生やした(・・・・)牙で、皮を裂き、腹を掻っ捌いて肉に齧り付く。

 

ぐちゃぐちゃと生々しい音を立て、屠り、貪り、喰らう。

 

肉を裂く。

血を啜る。

骨を砕く。

 

臓物をも呑み、喰らう。

 

喰らう。

喰らう。

喰らう。

 

 

そこに、敵意や悪意など、ごく僅か、ほんの一握りでも介入する余地など存在しなかったなかった。

何故ならば『無垢』は愉しんだいるのだから。

 

芳しい血の香り。

自分が捕食者であるという愉悦。

血肉を飲み込むたびに、食道を駆け抜ける満足感。

 

その全てを、『無垢』は愉しんでいる。

 

 

『無垢』は何も持っていない。

 

自我らしい自我も持たず、

体ですら借り物に過ぎず、

繁殖という概念すら持たず、

他者の分類は「餌」と「敵」のみ、

「滅び」という機能さえ、『無垢』は持っていない。

 

そして、何も持っていないが故に、『無垢(ソレ)』は何よりも完成された生命体なのだ。

 

 

何よりも不完全で、何よりも完成された生命体。

 

 

故に、それを『無垢』と呼ぶのである。

 

––––––––

 

頬を撫でる僅かな風の感触と、サラサラという川のせせらぎの音に、深い眠りから醒めるかのように目を覚ました時、そこは変わらず「森丘」エリア11であった。

 

ただ、違うところがあるならば、先程までボクを苛んでいた飢餓感は消え、そしてブルファンゴの死体が何かに喰われたかのように血の池の中で肉面を晒していることぐらいだ。

 

ボクは知っている。

ついさっきまでボクがブルファンゴの死体を嬉々として食んでいたことを…。

皮を引き裂き、食いちぎる感覚。肉を咀嚼し、噛み砕く感覚。血を啜り、飲み干す感覚。それら全てを、ボクは覚えていた。

意識が無かったから覚えてないなどという、都合のいい事は無かった。

 

 

猛烈な吐き気を錯覚し、口元を抑える。

 

変身酔いによる吐き気は既に殆どない。だがしかし、先程と違い吐くものが存在する今、それはより一層強くこの身に襲いかかった。

しかし、いつまでたってもボクの胃の内容物は逆流を始めようとしない。

それはまるで、吐き気を催していると思っているのは頭だけで、身体の方は全くそんな事は無いというような、そんな感覚だ。

そう、それは、自分の精神状態に整合性をとろうと、自分の精神は正常であると思い込もうと、吐き気を催していると心だけが勝手に思っているかのような…………。

 

 

【諦めたフリをしているだけ。】

 

……そんな言葉がふと思い出された。

ならば、今のボクも、所詮は「フリ」でしか無いのだろうか…?

 

だが、その問いに答える者など誰もいない。

ボクは独りなのだから。

 

 

 

血肉を生のまま喰らったにも拘らず、ボクの体にはなんの変化も訪れなかった。

つまりそれは、これまで安全に食すことのできるサシミウオを求め続けて歩んできた、気の遠くなるほどに長い道のりは、全て無駄であったということを示していた。

 

……忌々しい。

 

 

ブルファンゴの牙に突き刺さった右腕を乱暴に引き抜き、「蠱惑の肉壺(ベニヒサゴ)」の中に落とす。ブルファンゴの亡骸も同時に壺に収めた。

そして、ボクの右腕の肘先に付いたランゴスタの腹部をブチリと毟り取り、同じように「蠱惑の肉壺(ベニヒサゴ)」の中へと突っ込んだ。

 

右腕を修復する。

喪われた部分はブルファンゴで補い、折れた骨もくっつける。

 

 

……ああ、そういえば、肋も折れてるんだっけか。

まるで他人事のように、ふと思い出した。

痛みなんか、とうの昔に忘れてしまっていた。

 

 

蠱惑の肉壺(ベニヒサゴ)」から、腕を引き抜く。

ゴワゴワとした毛皮に覆われた、不自然に太い腕。手の甲から指にかけては、黄色いランゴスタの甲殻によって、鎧のように覆われており、針状の爪には麻痺毒が仕込んである。

……鎮まれ、俺の右手っ!!みたいになりそうなビジュアルである。これで拒否反応が起こる身体だったら、別の意味でそうなるんだろうけども。

 

器用さが若干下がったのは遺憾の極みだが、しかしそのぶん力が上がったので良しとしよう。

ポジティブな思考で、頭を切り替える。

 

問題は、これからどうするかだ。

もちろん、エリア10に戻るわけには絶対にいかないので、帰ることはできない。未だなお地面が振動し、轟音が響いていることから、まだまだ戦いは続くだろう。

だからといってこのままずっとここにいるわけにもいかない。

 

取り敢えずこのエリアに生えたキノコを「蠱惑の肉壺(ベニヒサゴ)」の中に放り込みながら、暫し思案する。

だが、やはりここで待機するという選択肢しか湧いてこない。いや、というよりは、既にマトモな思考が出来ていないのだ。

 

血を失い過ぎた。

それこそ今こうして活動できていることが不思議なくらいの血を、ボクは失っていた。

 

 

刹那、視界が突如として暗転する。

その瞬間にボクの身体はバランスを失い、重力のままに倒れそうになって……しかし、直後に意識を取り戻したことにより、片膝をつく程度に収まった。

 

だが、安心したのも束の間、再び意識が消えて行く。

 

視界が暗転し、開け、暗転し、開けを繰り返す。

 

 

…眠い。

 

 

今意識を失えば、どうなるかは、分かりきった事であった。だが、どんなに気力を入れようと、沈みゆく意識は止まる事はなく、寧ろより一層昏き闇の底へと堕ちていく。

 

 

寝るな…寝るな…起きろ……きろ……ろ…………、

 

 

 

自分への呼びかけさえも、最後には聞こえなくなっていった。




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