ボクのモンハン見聞録!〜ただそれだけの、物語〜 作:リア充撲滅委員会北関東支部筆頭書記官
更新がだいぶスローに……いえ、アイデアが無い訳では無いんです!寧ろ多過ぎて今後の展開が決められないんです!
……どうしましょう。←テメェで決めろ。
言語チートは当たり前。
などというテンプレは、ボクには適応されないようだ。
テンプレというかさ、幼少期を過ごすことのできる「転生モノ」ならばそりゃ言語チートが無いことだってそりゃああるよ?でも、覚える猶予は与えられてるじゃん。
転移モノで言語理解完全不能ってどういうことだよっ!覚える猶予すら与えられてないよっ!!
いくらボクでも流石にコレは想定外だった。
いや、本来当然想定すべきことなのに、どこか慢心していたのだろう。"なんとかなる"と……。
馬鹿かボクは。
そんな事は決してないのに。あるはずもないのに。
……これが英語圏などならばまだ良かった。
どんなに学の無い人でも「はい」と「いいえ」と簡単な単語くらいは言えるからね。それならある程度のコミュニケーションは取れるってものだよ。
だけどモンハン語、テメェは駄目だ。
ボクに理解できるのってそれこそ「行ってらっしゃい」くらいだよ!あのクエスト受けた時に受付嬢達が言ってくれるヤツ!
「はい」と「いいえ」は
どこの国だったか忘れたけど、真逆な場所もあったはずだよ!?
…いや、ムービーとかを見る限り、モンハン世界では日本と同じルールで大丈夫みたいだけど…それも何もかもムービー通りと言うわけでは無いだろうし…、この世界の性質を鑑みると過信はできない。
どうやらボクに嫌がらせしないと気が済まないらしいからね。このモンハンの世界は。
……ホント、忌々しいよ。
静かな憎悪を抱きながらも、それでも表に出すことはせず、自分を助けてくれたアイルー達を見る。
……彼等は本当に『味方』なのだろうか?
いや、正確に言うならば、『敵』では無いのだろうか?
「……っ!?」
そんな思考がふと頭をよぎった。
それと同時に感じるのは、猛烈な自己嫌悪だ。命を救ってもらっておきながら、未だ彼等のことを信じることの出来ない自分に対する、深い自己嫌悪。
ボクが言葉を理解出来ないのをいいことに、何か企んでいるのではないか、そんな思考が、自然に湧いてきてしまうのだ。
自分のしていることがどんなに醜く、恩知らずなことかはわかっている…。
助けてくれた相手に対して、なんて冒涜的な態度だろうか。許されるはずもない。
……だけど、ボクは信じることができないんだ。
信じない理由など無いはずなのに、どうしても信じることができない。
彼等も結局は、アイツ等となんら変わらない、モンスターの一匹に過ぎないのでは無いか…?
いつでも殺す事が出来るボクを、影で嘲笑っているのではないか?
何を企んでいる?
ボクを何に利用するつもりなんだ?
……そんな風に思えてしまう。
アイルーが通常のモンスターのように、見つけた瞬間即座に襲いかかってくるような凶暴な性格もしておらず、しっかりとした理性を持って独自の文明を築いているのは勿論ボクもよく知っていた。
だがしかし、「言葉が通じない」というのは、それほど不信につながるものなのだ。
というよりは、極論を言ってしまえば、自分の理解できない言語というのは、例えそれが人間同士という同種間の事においてであっても、猿の鳴き声と同じ程度の価値しか持たないのである。
相互理解を得られなければ、その先にあるのは理性なき野獣同士の諍いだ。
もし全ての人種全ての民族の言葉が通じるのならば、地球でも虐殺や戦争といった出来事はもう少し減ったことだろう。
当然のことながら、無くなるわけではないが……。
何気なく使う「言葉」は、物事の意味を表すと同時に、自らが「理性ある存在である」という証明の役割を果たしているのだと、そう思った。
沸々と顔を出しそうになる『無垢』の敵意を、そんな思考の渦に巻き込んで無理矢理に封じ込める。
どちらであろうとも、ここで敵対的な行動に出るのは決して得策ではない。ここは彼等の領域のはずである。地の利と数の時点で負けているのだ、勝ち目はない。
物凄く自然に「勝ち目があるか」を測ってしまっている時点で、ボクはだいぶダメになってしまったようだ……。
既に僅かながらこの世界に適応し始めてしまっている自分に気が付いて、少しばかりの滑稽さを感じ、苦笑いを浮かべる。
実際には、今のボクの状況を述べると、敵対行動など出来やしない。
殆ど体の自由が無いのだから、それも当然だろう。
それが、いい事なのか、悪い事なのかはさておきだ。
兎にも角にも、今はどうにもならない。
今のボクにはあらゆる事態を傍観することしか出来ない。
なんとももどかしいが……
でも、憎しみに駆られて何をするのか自分自身でさえわからないこの身には、丁度いいか。
そんな風に考えて、心を落ち着かせた。
すると、そんなボクに対して、子アイルーが何かを話しかけてきた。
当然ながらその言語は日本語どころか人間語ですらなく、ボクに理解できようはずもない。
態度だけでは通じ合えないし、ましてや、突然言葉がわかるようにもならない。
……いや、正確に言えば、"突然言葉が理解できるようになる方法"は、確かに存在する。
だが、いくらなんでもそれを実行するほどボクは外道にはなれないし、そんな勇気も無い。
……「
それは、簡単で、手っ取り早く、効率的で、合理的。
だが、それと同時に、完全に道を踏み外した者の行いだ。
……できない。
……できない。
……できない、はずだ。
……できてはいけないんだ。
そんな完全に道を踏み外した者の行いを、しかしボクは心の底から忌避感を覚えることが出来なかった。
どうしてもダメな時は、
生きる為に必要であるならば、他者を犠牲にすることを厭わない。
それは、一見すると「覚悟」のようにも見えてしまうが、実際にはどうしようもないくらいに醜く弱い「妥協」だった。
生きるというのは、ただそれだけで他者を犠牲にするということ。
それは、紛れも無い事実なのだろう。この世界に来てそれは良くわかったつもりだ。
この世界にあるのは……"食うか食われるか"、ただそれだけのことなのだから。
そして、当然のことであるからこそ、それは「覚悟」とは言い難い。
当然のことを実行するのに、「覚悟」など必要とはしないからだ。
だから、ボクがしなくてはならないのは、ただ日本人としての感性を捨てるための「妥協」のみ。
そして、日本人としての記憶が殆ど存在しないボクは、その「妥協」をするのに大して労力を要さなかったのだ。
怖い。
他でも無い自分自身が、怖い。
「生きる」以外の全てのことを簡単に諦める事が出来てしまう自分は……その為ならば、何をしでかすかわからない自分は……
いつしか「自分であること」すらも諦めてしまいそうで、怖かった。
そんな時、ずっと俯いたままだったボクの手を、温かく、柔らかい"何か"が包み込んだ。
ボクは、身にその覚えの無い感触に、ゆっくりと顔を上げる。
するとそこには、ボクを助けてくれた子アイルーが、心配そうにこちらを覗き込んできていた。
宝石のような青い瞳と、目が合った。
……その目には、カケラほどの悪意も見当たらなかった。
あらゆることに「妥協」し、悪意と敵意に塗れたこの身が、酷く醜く汚い存在に思えてしまうほどに。
少し、羨ましい。
悪意と敵意に紛れないと、ボクは生きていくことすらも出来ないのに……この子は、こんな純粋なまま、この残酷な世界を生きていく事が出来るんだ。
……羨ましい。
そして、それと同時に、ボクは思ったのだ。
「妥協」したくない、出来ない"何か"を得れば……
ボクは、自分であることを諦めずにいれるかもしれないと。
ボクに向けて差し出された、小さくか弱い猫の手を握りしめながら、そう、思ったのだ……。