ボクのモンハン見聞録!〜ただそれだけの、物語〜   作:リア充撲滅委員会北関東支部筆頭書記官

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※時間軸を間違えたので修正しました。


第19話、アイルーの集落!part3〜これまで、これから〜

何故かはよくわからないけど、心が落ち着いた。

……猫の肉球の威力はモンハン世界でも変わらないってことかな。

 

行動方針は相変わらず定まらないけど、まぁ、右も左も道徳も物理法則もわからないこの世界に放り出されて、いきなり方針を決めるなんて事が出来ないのは当然だ。

よくある転生モノだと割とあっさり決まっちゃうけど、もし実際に出来る人がいたらボクは素直に尊敬すると思う。

 

とにかく、今ボクがすべきことは、何らかの形で意思疎通を図ることだ。

当然ながら記憶を奪うのは最終手段だ。そもそも、落ち着いて常識的に考えてみれば、例えその手段をとって言葉が通じるようになっても、最早言葉は意味をなさないと思う。確実に敵視される。

 

さっきはちょっと言葉が通じないショックのあまり混乱し過ぎたな。

 

 

……それでも最終手段としては存在しているのは…まあ、アレだけど。そこは仕方がない。

 

 

それはさておき、太古の人類は如何にして意思疎通を図っていたか……言語のルーツを辿るとキリが無いけど……いや、別に声である必要は無いんだよな。

言語さえ理解出来ないのだから、文字などは望むべくも無いけど、しかし「絵」ならばある程度の情報を伝えられるかもしれない。

 

問題は、どこにどうやって絵を描くかだ……。

今ボクはベット的なものの上から動く事が出来ない。持ってきて貰うにしても、それを伝える術も持たない。

まずは木の枝で地面に……と、言いたいところだけど、身体を起こすこともままならないからなぁ。

 

あぁ、どうしよう。

 

子アイルーの肉球をフミフミしながら考えていると、隻眼アイルーにその手を無理矢理払われた。

 

何すんのさ!ボクは心を落ち着かせていただけだろう!

 

そんな気持ちを込めて咎めるような視線を隻眼アイルーに送ると、隻眼アイルーはジト目をしながら、ただネコの言葉もモンハン語も喋らずに、黙ってじっとこちらを見つめてきた。

 

……ぐぬぬ。

 

暫くの目力勝負は、どうやら隻眼アイルーの圧勝のようだ。ボクは先に目を逸らしてしまった。だって怖いんだもん。

 

目を逸らした事で、ボクは隻眼アイルーによって手を払われた、その原因に逢着した。

自分の視線の先にあるのは、化け物みたいな右腕だ。しかも先端には鋭い針が生えている。

 

あー。納得した。

 

そりゃ怖いよ。

ごめんね。

 

伝わるかは分からないけど、取り敢えず両者に頭を下げる。

隻眼アイルーはそれ以上は何も言わず、そして子アイルーの方は何やらアワアワしていたので、多分気持ちは通じていたと思う。

 

 

……そうだよね。

地獄は脱した。もう、焦る必要は無いんだ。

 

ゆっくりで、いいんだよね?

 

 

・・・

 

高い木々に囲まれ、やや薄暗い印象を受けるアイルーの集落に、眩いばかりの光が射した。

頂点まで上り詰めた太陽は、どこまでも広い青空の中心で、自らがこの世の主であるかのように、これでもかと激しい自己主張をあげる。

 

……もう昼なのか。

 

漸く少し動かせるようになった身体を、油の切れたブリキの人形のようにぎこちなく動かしながら、ふとそんなことを思った。

 

 

逆に言えば、まだ昼なのだ。

今この時、漸くこの最悪の1日目は、折り返しを迎えようとしている。

 

 

身体が動かせるようになったとはいえ、それはまだ自由自在とは到底言い難い。走るどころか壁を支えにして歩くのがやっとだし、一歩動く度に痛風と腓返りを足して2で掛けたような激痛が走る。

 

とはいえそれも、別に耐えられないほどじゃ無いんだけど。

 

 

さて、心も落ち着いたことだし、そろそろ現状を整理したいと思う。

 

これまでの経緯まとめるとしよう。

 

 

・ボクは記憶を失った状態でモンスターハンターというゲームの世界に転生(?)した。

・「奪われた尊厳(スベテヲウバウモノ)」、「蠱惑の肉壺(ベニヒサゴ)」、「禁忌の変質者(キメラ)」、「悪魔の誘惑(マインドコントロール)」、そして「処女(おとめ)の涙」という能力(転生特典?)を持っている。

・初期エリアはエリア5、その後エリア6に移動し、立ち往生。

・エリア11に存在するサシミウオを目指して移動開始。

・エリア5にてライゼクスを警戒して殺気立っているリオレウスと、飢餓状態に陥ったランポス三頭を掻い潜り、さらに出口付近に現れたこれまた飢餓状態のドスランポスをリオレウスのブレスで殺害させた。

・エリア4はむしろ不気味なほどにアッサリと通過。

・続くエリア3にてブルファンゴの乱入もありこれまた殺気立ったリオレイアに邂逅。薬草に変身して辛うじて脱出。

・エリア10に到着。水場から上がった直後に1匹のランゴスタに見つかる。

・ランゴスタ討伐。しかし直後にライゼクスに群れを滅ぼされたことで出てきたクイーンランゴスタとその親衛隊4匹と遭遇。これと交戦。

・ほぼ敗北確定。追い詰められるも突如として出現した黒幕、ライゼクスによって皮肉なことに九死に一生を得る。

・ライゼクスに気付かれる前にもリオレウスとリオレイアを「悪魔の誘惑(マインドコントロール)」を使って呼び寄せ、交戦状態にさせる。

・流れ弾の嵐を掻い潜りながらエリア11を目指す。途中リオレウスの爪先が突き刺さるも、「蠱惑の肉壺《ベニヒサゴ》」を使って脚を付け替えることで強引に解決。

・なんとかエリア11に到着。しかしここでブルファンゴに邂逅。

・死闘の末にブルファンゴ討伐。しかし自らも意識を失う。

・意識を失っているだろうボクをアイルーが介助。

・隻眼アイルーによって言語の壁を知る。

・今に至る。

 

 

………。

 

うわぁ。な〜にこれ〜。

……不幸自慢大会があったら上位に食い込めそうだね。

 

 

まず、重要な話として、状況は何一つとして改善方向には向かっていないということ。

 

あれからどのように戦況が遷移したか分からないけど、リオス夫婦が残るにしろ、ライゼクスが残るにしろ、この『森と丘』が危険であるという事実は変わっていない。

どちらも獰猛な性格をした肉食の大型飛竜である。ボクを一撃で殺害できる存在であることには変わりないからだ。

 

言語の壁がある限り人里に行くのも安全とは言い難い。ボクが元々いたような記憶を持っている日本のように、治安がしっかりとしているとは限らないからだ。

そもそも、モンハン世界にある大きな特徴として、『国』の数が少ない。少な過ぎる。

 

『西シュレイド王国』

『東シュレイド共和国』

『アヤ国』

『シキ国』

『火の国』

 

なんと大陸周辺に目を向けても公式に名前が出ている『国』はたったのこれだけしかない。

もちろん、公式で公言されていないだけで他にもあるのかも知れないけど、しかし事前通達も無しに『シキ国』に存在する『シナト村』に、遠く大陸のエルデ地方に存在すると思われる『ナグリ村』で建造された飛行船が入って、なんの咎めも無かった。

もっと『国』が沢山存在し、『国際関係』という概念が存在するならば、『侵略行為』と見做されても文句は言えない行為であるにも関わらず、だ。

 

このことからわかるように、モンハン世界ではそもそも『国』という概念が希薄であり、人間達は大きくても『街』といった程度の規模の共同体しか築かないのである。

 

そこで気になってくるのが、『法律』の存在とその範囲だ。

 

密猟やギャンブル、兵器などといったこれまでクエストに出てきた単語を見る限り、この世界の人間もれっきとした"人間"である。

アンパンマンの世界のような幻想的暗黒郷(ファンタズマディストフィア)でもない限り、当然犯罪は起こりうる。

 

そして、そんな犯罪者にとって、言語がわからない人間ほど良質なカモがいようものか。

何をされてもそれを他人に伝えることができないのだ。

これほど安全な『被害者』も中々いない。

 

よって、現状のボクにとっては、人里であっても決して安全では無いのだ。QED……違うか。

 

 

つまり、今現在において、ボクが安全に過ごせる場所はこの世界には存在しない。

そういうことなのである。

 

 

本当に、嫌になる。

現実を見るたび、そこには絶望の欠片しか転がっていない。

 

希望が見えない。

未来どころか、一歩先に存在する希望すら、ボクは見つけることが出来ないでいた。

 

 

でも、目を背けるわけにはいかない。

背を向ければ、世界は確実にボクを仕留めに来るだろう。

 

そういう星の下に、生まれたのだから。

 

 

 

足を止めるな。思考を止めるな。

1秒1秒、自分に出来る最善を。

前を向いて歩き続けるんだ。

 

ボクは死なない。

ボクが死なせない。

(安らぎ)は訪れない。

 

生きて苦しむ。

苦しみ生きる。

 

何度でも、

何度でも、

何度でも……。




自分で生み出しといてアレだけど、この子凄い情緒不安定。
コンセプト上は間違っていないのですがね。

次回から展開が動きます。
動くと思います。

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