機動戦艦ナデシコ コハクのモノガタリ   作:ただの名のないジャンプファン

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更新です。


第17話

 

 

 

 

オモイカネの暴走騒動から暫くは軍との共同作戦もなく、ナデシコは単艦で宇宙での哨戒任務についていた。

恐らく軍も未だにナデシコのコンピューターが軍に従順なのか不信に思っているのだろう。

しかし、宇宙に出ても敵が現れる気配もなく拍子抜け。そしてこれ幸いに恋に遊びとそれなりに忙しい人達もいる。

そんな日々が続いていたある日‥‥。

 

 

~ナデシコ ブリッジ~

 

「なんです?」

 

「何か用ですか?ジュンさん」

 

ルリとコハクは後ろからの視線が気になり振り向くと上からジュンが覗き込むように見ていた。

 

「い、いや、なんでもないよ‥‥」

 

バツ悪そうに答えるとジュンは頭を引っ込めてしまった。

 

「最近のジュンさん何か様子が変だよね?」

 

ジュンの様子を見ていたコハクがルリに話しかける。

 

「そうですね‥‥」

 

2人の言う通りここ最近、ジュンの様子はおかしい。

寝不足なのか勤務中もよく欠伸をして眠そうにしているし、手には絆創膏を沢山貼っている。

更にルリやコハクを横目や先程の様に陰からこっそりとチラチラ見ていることが多い。

いくら想い人であるユリカがアキト一筋でジュンをお友達と言うカテゴリー以上に見なくても、あのユリカ一筋のジュンがそう簡単にルリやコハクに乗り換えたとも考えにくい。

 

「おーい、ブリッジ。ウリバタケの奴、そっちにいねぇか?」

 

リョーコが空間ウィンドウを開きブリッジにウリバタケが居るかを尋ねてくる。

 

「いえ、居ませんけど、ウリバタケさんに何か用ですか?」

 

「オレのエステの調子が悪くて調整してもらおうと思ったんだけど、来てねぇならいいや」

 

そう言って空間ウィンドウを閉じるリョーコ。

 

「そういえばウリバタケさんもここ最近、姿を見ませんね」

 

リョーコからウリバタケの名前が出てきて気づくルリ。

流石に艦内で野垂死んではないないと思うが、ガイの事もあるので少し心配だ。

 

「言われてみると、この前の健康診断から一部の男性クルーの様子が変ですよね」

 

メグミがここ最近のナデシコ艦内の異変に気づいたのか、ブリッジにいる女性クルーに尋ねてきた。

メグミの言った健康診断とは先日ユリカがナデシコクルー全員に命令したモノで、それによってナデシコのクルー全員が強制的に受けさせられた健康診断だった。

一部の女性クルーからのブーイングもあったが、イネスが健康診断の必要性を長々2時間も説明し、診断拒否の場合更に説明を追加されそうだったので、結局男女別にナデシコクルー全員が健康診断を受けた。

 

「まぁ、健康診断はともかく、ウリバタケさんはまた怪しい発明でもやっているんじゃない?」

 

「そうなんですか?ミナトさん」

 

「うん。これを見て」

 

ミナトはポケットから2枚の紙切れを取り出す。

それをルリ、コハク、メグミの3人が顔を寄せて見る。

紙には『PHR引換券』『PTK引換券』と書かれていた。

 

「なんですか?これ?」

 

「何かの引換券みたいですけど‥‥?」

 

「どうしてミナトさんが引換券なんて持っているんです?」

 

「ミスターゴートが持っていたのよ‥‥妙に大事そうにしてね」

 

(((なんでゴートさんが大事そうに持っていたのをミナトさんが持っているんだろう?)))

 

3人は引換券もそうだが、ゴートが持っていたその引換券をミナトが持っていることも不思議に思った。

 

「それより此処を見て、此処を‥‥」

 

ミナトが引換券に書かれている文字の箇所に指をやる。

 

「『ウリバタケ工房』って書かれていますね」

 

「ウリバタケさん絡みとなるとやっぱり何かの発明品かな?」

 

「えぇ~またぁ」

 

メグミが困ったような声をあげた。

確かにウリバタケは一流のメカニックでその腕も確かである。

現に彼の整備や調節で何度もエステバリスやナデシコは危機を脱してきたが、その反面くだらない発明品でなんでも酷い目にもあってきたこともあった。

 

「PHR、PTK‥‥何かの略語かしら?」

 

「‥‥兵器とするとミサイルかロボットの類でしょうか?」

 

「でも引換券ってことはナデシコのクルー相手に商売するわけだからさすがに兵器ってことはないんじゃ‥‥」

 

ルリは早速PHRとPTKを検索したが、該当はなし、たしかに略語か造語のようだった。

 

「ウリピーのことだからきっとプラモデルかフィギュアのことじゃないかな?」

 

「パッと、花咲く、レントゲン‥‥クククッ」

 

「おいおい、ウリバタケの奴って、そうなのかよ?」

 

いつの間にかリョーコを含め、パイロット3人娘がブリッジに来ていた。

 

「今更気づいたの?それにウリピーの部屋、フィギュアやプラモがいっぱい置いてあるよ」

 

((確かに‥‥))

 

先日のオモイカネ騒動の時、ウリバタケの部屋に入った時、そこには山のようにプラモデルとフィギュアが置いてあったことを思い出すルリとコハク。

 

「おい、まさかお前らできているんじゃないだろうな?」

 

「まさか、ウリピーは妻子持ちだよ。私、リョーコと違って人のモノに手は出さないよ」

 

「バッ、バカ何が人のモノだよ。オレは別にテンカワのことなんて‥‥」

 

「あれぇ、私は別にテンカワ君のことなんて一言も言ってないよ?」

 

「‥‥」

 

ニヤニヤ顔のヒカルの言葉と自らの発言で墓穴を掘ってしまったリューコは思わず顔を赤くし、黙ってしまう。

そしてテンカワと言う言葉をきいたユリカがいち早く反応する。

 

「ええっ!!リョーコさんもですか!?」

 

「だ、だから‥‥」

 

リョーコは羞恥なのか頬をほんのりと赤く染めて口ごもる。

 

「アキト君も大変ねぇ」

 

ミナトは楽しそうに呟いた。

その後、ウリバタケの新発明の噂は瞬く間にナデシコを駆け巡り、誰もが知るところとなった。

 

「ウリバタケ整備班長が、また妙なものを作っているですって!?」

 

噂を聞きつけたエリナがブリッジに怒鳴り込んできた。

 

「エリナさん、ここは苦情受付所じゃないんですけど‥‥」

 

「艦長!」

 

「は、はい」

 

「元々貴女がクルーの統括をしっかりしてないからウリバタケが好き勝手やっているのではなくて?」

 

「はぅ‥‥」

 

エリナに詰め寄られ縮こまるユリカ。

相変わらずエリナが苦手な様である。

 

「まぁまぁ、エリナさんの言うことも尤もですが、ウリバタケさんの発明品もあれで中々役立つときもあるのですよ」

 

プロスペクターがウリバタケを援護するが、

 

「それは、それ、これは、これよ。これ以上会社の備品を勝手に使ったり、弄られちゃたまらないわ」

 

「しかし、噂の段階で決め付けるのは‥‥」

 

(なんか、プロスさんらしくないな‥‥)

 

コハクはこの時、プロスペクターの態度に妙な違和感を覚えた。

彼ならば、例え噂でも一応、会社のお金や資材が絡んでいる事なので調査をしそうなものなのに、今のプロスペクターはウリバタケの噂をうやむやにしてもみ消そうとしているようにも見える。

 

「だから、それをこれから調べるんじゃない」

 

プロスペクターの言葉も一言で片付けるエリナ。

 

「レイナード通信士、ウリバタケを至急、ブリッジに呼び出して」

 

「えっ?コミュニケじゃダメなんですか?」

 

「あいつ、着信拒否しているのよ」

 

「なるほど、それで、艦内放送ですか」

 

「そういうこと。私が呼んでいるからすぐブリッジに出頭するよう伝えて」

 

エリナの指示を受けてメグミが艦内放送でウリバタケを呼び出すが、ウリバタケは一向に現れる気配が無く、エリナは遂にメグミのインカムを取り上げ、

 

「コラ!ウリバタケ!さっさとブリッジに出頭しなさい!」

 

と、怒鳴っていた。

あれから案の定、ウリバタケはエリナの前に出頭してこなかった。まっ、素直に出頭する気があるならコミュニケを着信拒否する筈がない。

それから数日、ウリバタケの部屋のドアを叩いているエリナの姿が目撃されたという。

 

「うぅ~ウリバタケの奴~」

 

エリナの怒りのボルテージが溜まっていくのが手に取るようにわかる。

 

「こうなれば‥‥コハク!!」

 

「は、はい」

 

「どんな手を使ってもいいわ!ウリバタケをここに引きずりだしてきてちょうだい!場合によっては能力を使ってもいいわ!」

 

「そ、そんな無茶苦茶な‥‥」

 

とは言え、コハク自身もPHR、PTKの正体が何なのか気になったので、ウリバタケの部屋の前へと来た。

 

「さてと‥‥オモイカネ、ドアのロックを強制解除して」

 

≪了解≫

 

ドアが開き、コハクがウリバタケの部屋の中へと入っていく。

 

「こ、コーくん!?一体どうやって中に!?」

 

「問答無用!!ウリバタケさん!!覚悟!!」

 

「ぎゃぁぁぁー!!」

 

ブリッジには縄でグルグル巻きにされたウリバタケがいた。

そしてウリバタケの前には仁王立ちしたエリナが尋問していた。

 

「さっ、PHR、PTKが何なのか吐いてもらうわよ」

 

「な、なんでそれを知ってんだ!?」

 

「ネタは割れているのよ。今度はどんな兵器を作ったの?ロボット?戦闘機?それともミサイル?」

 

「だからそんな兵器は作ってねぇっていっているだろう?」

 

「オモイカネ、ウリバタケさんの脈拍、心肺、体温を調べて」

 

コハクはオモイカネに頼んでウリバタケが嘘をついていないか彼の脈拍、心肺、体温を調べてもらった。

 

《了解》

 

ナデシコのコミュニケは付けた人の感情の振幅に合わせて、画面の大きさを変えることが出来る。故にコミュニケを付けた人の感情もある程度計ることが出来るのだ。

人は嘘をつく時、その嘘がバレないか不安となり、脈拍、心肺、体温が上がる。

しかし‥‥

 

《脈拍、心肺、体温‥いずれも変化なし》

 

オモイカネはウリバタケの脈拍、心肺、体温に変化はないと言う。

変化はない‥と言う事は、ウリバタケは嘘をついていないと言う事だ。

流石に特殊訓練を施された訳でもないウリバタケが平常心を保ちながら嘘をつくなんて芸当は出来ない筈だ。

 

「エリナさん、ウリバタケさんは嘘をついていないようです」

 

「ホントに?」

 

「はい、そういう徴候は認められません」

 

「じゃあ一体何なのよ~PHR、PTKって~」

 

結局、ウリバタケはPHR、PTKに関しては決して口を割ることはなかった。

個人の所有物についてとやかく言われる筋合いはないといわれると、確かに正論であり、ネルガルの就業規則や契約書と照らし合わせても、ウリバタケには非はなかった。

そんなある日、連合軍からナデシコにある指令が届いた。

 

「‥‥と言う訳で、木星蜥蜴が設置した補給拠点と思われる施設の破壊、これが今回の任務よ」

 

「はぁ~」

 

「なお、司令部ではその補給プラントを"タガメ"と命名したわ」

 

ムネタケがブリッジに集まった主要クルーに今回の任務の内容を伝える。

木星蜥蜴は月を連合軍から奪還する為の足掛かりとして補給プラントの様なモノを設置したらしい。

しかし、連合軍は先のナナフシの件もあり、木星兵器の新型兵器に関して慎重な姿勢をとる様になり、今回の補給プラントに関しても監視衛星がその存在を確認しただけで、その施設が本当に補給プラントなのか?

どう言った兵器を搭載しているのか?

などの詳細は一切不明だった。

勿論、攻略のための艦隊も偵察隊も派遣しておらず、ナナフシ撃破の功績からナデシコがその施設の破壊任務にあてがわれた。

当然、攻略の為の援軍もない。

 

(いよいよ、ナデシコは本格的に連合軍の雑用、捨て駒扱いされていないか?)

 

『詳細不明の木星兵器を破壊しろ』なんて命令、いくら連合軍と共闘しているからと言って民間人が多く乗る艦にそんな命令を下すだろうか?

とは言え、先日のオモイカネの暴走の件もあり、ナデシコとしては連合軍に負い目も感じていた。

それに自分達には拒否権はない。

ナデシコは早速その補給プラントがあるとされる座標へと向かった。

 

「タガメまで距離2000」

 

「現在のところ、タガメ及び本艦に異常は認められません」

 

ナデシコも先日のナナフシの一件で慎重になった。

何しろ相手の情報が一切無いのだから‥‥。

 

「艦長、今回は偵察隊を送るわ。エステバリスを偵察に送ってちょうだい」

 

ムネタケも今回はいきなり攻めるのではなく、情報を得てからタガメ攻略に踏み切った。

 

「は、はぁ~」

 

「なに?そのやる気のない返事は?」

 

ユリカとしてはナナフシの件もあり、またエステバリス隊‥アキトを危険な目に合わせてしまうのかと言う心境だった。

 

「あっ、だったら、ちょうどいいモノがありますよ」

 

其処にコハクが、偵察に関していいモノがあると言う。

それは‥‥

 

「なに?コハクちゃん、いいモノって」

 

「これです」

 

コハクが格納庫の映像が映し出されている空間ウィンドウを出す。

其処には木星兵器のバッタが映し出されていた。

 

「これって木星兵器じゃない!?」

 

「なんでこんなモノがナデシコの格納庫に!?」

 

突然、艦内に敵である木星兵器の登場に驚くユリカ達。

 

「戦場で撃破されたバッタの残骸を回収して、それを直して新たにプログラミングをしました。無人兵器なら、人的被害も防げますし試験作動も兼ねることができるのでちょうどいいと思います」

 

コハクがナデシコの艦内に敵の兵器であるバッタが居る訳を話す。

 

「流石、コハクちゃん。それじゃあ、早速、偵察に行っちゃってください!!」

 

エステバリス隊‥アキトを危険に晒さないと知ってご機嫌なユリカ。

 

「了解」

 

コハクは早速、鹵獲したバッタを起動させて、タガメの偵察へと向かわせる。

鹵獲バッタは順調に作動してタガメの映像をナデシコに送り続けながらタガメに接近する。

しかし、未だにタガメからは何かしらのリアクションは見られない。

鹵獲バッタを味方と勘違いしているのだろうか?

それとも武装は一切施されていない施設なのだろうか?

 

「バッタ、タガメまで距離1000キロ‥異常なし」

 

接近を続け、次第に大きな姿を見せるタガメ。

 

「そのまま接近を続けて下さい」

 

しかし、タガメに接近していくバッタの映像が突如、ブレると鹵獲バッタが突然爆発し、映像が途切れた。

 

「バッタの爆発を確認」

 

ルリは鹵獲バッタがどうなったのかを報告する。

 

「えっ?なんで、どうしたの?」

 

何の攻撃もなく鹵獲バッタが爆発した事にユリカが動揺する。

 

「どうしたの?整備不良かなにか?」

 

反対にムネタケは冷静に鹵獲バッタが何故爆発したのかその原因を尋ねる。

 

「原因は不明です」

 

「イネスさん、何か分かりましたか?」

 

ユリカが鹵獲バッタの爆発の原因についてイネスなら何か分かると思い尋ねる。

 

「ちょっと待って、そっちに行って説明するから」

 

それから少ししてイネスがブリッジへとやってきた。

説明できると言う事でイネスは嬉しそうだ。

 

「ホシノ・ルリ、バッタが爆発した映像はナデシコ側から撮っていると思うからその映像を皆に見せてあげて」

 

「はい」

 

イネスの指示に従い、ルリがナデシコ側から撮影した鹵獲バッタの爆発シーンの映像を皆に見せる。

鹵獲バッタは何かの衝撃を受けたかのようにその体を震わせると突然爆発した。

 

「もう一度‥今度はスロー再生で」

 

「はい」

 

次はスロー再生をして一コマ一コマの映像で鹵獲バッタが爆発するシーンが再生される。

 

「このバッタの爆発を見て何か気づかない?艦長」

 

イネスはユリカに意見を尋ねる。

 

「うーん‥‥破裂したと言うよりも‥なんだが、バラバラにされた感じに見えましたけど‥‥」

 

ユリカが自信なさげに鹵獲バッタの爆発したイメージを言うと、

 

「ええ、その通りよ。もう一度スローで見てみましょう」

 

先程の映像がもう一度繰り返され再生する。

今度は皆、鹵獲バッタがバラバラになるのかを意識して映像を見る。

 

「ホントだ」

 

「プラモデルみたいにバラバラになっている‥‥」

 

「恋人に送る花‥‥それは薔薇‥‥」

 

「イネスさん、これはどういうことなの?」

 

「マグネトロンウェーブよ」

 

「マグネトロンウェーブ?」

 

「発振用真空管の一種で、磁電管とも呼ばれているわ。電波の一種である強力なマイクロ波を発生する。主にレーダーや電子レンジに使われているわね。そのマグネトロンをあのタガメはより強力にしたものを大量に発生させ流しているわ。バッタがバラバラになったのはその強力なマグネトロンを受けて体自体が超振動を受け継ぎ目が剥がれて爆発したのよ」

 

イネスが鹵獲バッタの爆発原因を説明する。

 

「それじゃあ、エステバリスで接近していたら‥‥」

 

「あのバッタの様にマグネトロンウェーブを受けて継ぎ目を剥がされてドカーンってなっていたわね」

 

イネスの予測を聞いて思わず身震いするパイロット達。

 

「じゃあ、グラビティブラストで遠距離射撃を‥‥」

 

「それも無理ね」

 

「どうしてです?」

 

「タガメ自身にも恐らくディストーションフィールドの発生装置が付いている筈よ。グラビティブラストを幾ら撃ってもタガメにはビクともしないわね」

 

「攻守、鉄壁の布陣か‥‥」

 

「まさに難攻不落の要塞ってわけですな‥‥」

 

ゴートとプロスペクターは、タガメは難攻不落の要塞で攻略するには手こずりそうだと言う。

 

「じゃあ、どうするのよ!?司令部に何て報告すればいいの!?」

 

ムネタケはイネスの説明を聞いて声を荒げる。

タガメの破壊を命令されたのに、『マグネトロンウェーブのせいで攻略できません』なんて報告は出来ない。

そこで、

 

「誰かタガメの攻略のアイディアがある人間はすぐにブリッジに知らせて。どんな些細なことでも未完成でもいいから」

 

と、エリナは露骨にウリバタケを相手にエサをぶら下げる。

すると、あっさりとウリバタケはエリナの言葉に釣られてブリッジに姿を現した。

 

「フッフッフッフッ‥‥こんなこともあろうかと‥‥」

 

「出たわね。発明バカ」

 

「ちっちっちっ、改造屋と呼んでほしいな」

 

「能書きはいいから『こんなこともあろうかと』なんなのよ!?」

 

「うーん、と言いたい所なんだが、今回は何もない」

 

何も策がないにもかかわらず何故か自信満々で言い放つウリバタケ。

ある意味、潔良いのかもしれない。

 

「何もない?アンタ、こんな時に出し惜しみしている場合じゃないのよ!?」

 

「いや、そう言われても今回は本当にねぇーよ」

 

エリナがウリバタケに食って掛かる。

 

「例のPHR、PTKとか言うのを使いなさいよ!!」

 

そこにムネタケも加わってブリッジはカオスな状態となる。

 

「なんで、アンタもPHRとPTKを知っているんだよ?」

 

まさか、ムネタケが例のPHRとPTKを知っていた事に意外だと思うウリバタケ。

 

「いいから早く出しなさいよ!!強力な兵器なんでしょう!?」

 

「PHRとPTKは兵器じゃねぇ」

 

「じゃあ、一体何なのよ!?」

 

「それよりも、あの要塞の攻略はどうするのよ!?」

 

エリナとムネタケがウリバタケに食って掛かる。

一方はPHRとPTKについて、もう一方はタガメの攻略についてだ。

 

「あの‥‥」

 

ブリッジがカオスな空間へとなりつつある中、コハクが恐る恐る声をかける。

 

「「なに!?」」

 

ムネタケとエリナの声がシンクロする。

 

「継ぎ目があると不味いのであるならば、継ぎ目のない機体を作れば、タガメは攻略できませんか?」

 

「そうよ!!それだわ!!ちょっと、アンタ、何時も変な兵器を作っているなら、それぐらい作れるでしょう!?」

 

「まぁ、資材があれば出来ない事は無いと思うが‥‥」

 

「それぐらいすぐに手配するわ!!急いで作りなさい!!」

 

「お、おう‥‥」

 

ムネタケはそう言ってウリバタケをブリッジから追い出す。

どうやらムネタケはPHRとPTKが何なのかよりもタガメ攻略の方が大事らしい。

 

「ちょっとまだ、PHRとPTKが何なのか聞いていないわよ!!」

 

PHR、PTKが何なのかを知る事が出来なかったエリナが1人叫ぶ。

その後、ムネタケの行動は意外にも早く、司令部をどうやって説き伏せたのかは知らないが、継ぎ目のない機体を作る為の資材を乗せたコスモスがナデシコと合流し、ウリバタケ達ナデシコの整備班とコスモスに乗ってきた技術者達と共に継ぎ目のない戦闘機の製作へと入った。

何故、戦闘機かと言うと流石にエステバリスではその構造上継ぎ目のない機体は無理だったからだ。

継ぎ目のない宇宙戦闘機を製作中のウリバタケ達に差し入れを持って来たコハクは、製作状況をウリバタケに尋ねる。

 

「作業は順調ですか?」

 

「ん?おお。コーくんか、まずまずと言ったところだな。何しろ機体には一切継ぎ目がない状態にしないと中のパイロットを殺す事になるからな、細心の注意をしなきゃならねぇから作業はどうしても慎重になっちまう」

 

製作中の宇宙戦闘機をチラッと見ながら言うウリバタケ。

 

「‥‥ねぇ、ウリバタケさん。1つ聞きたい事があるんですが‥‥」

 

「なんだ?PHRとPTKの事か?」

 

「いえ、それも気になるんですが、別の事です」

 

「ん?」

 

「先日のナナフシの一件を見て思ったのですが、ディストーションフィールドを艦内の隔壁に使用する事って技術的には可能ですか?」

 

「ディストーションフィールドを隔壁に?」

 

「はい。ナナフシの一件ではナデシコはかなりのダメージを受けました。それは通常の隔壁ではダメージを抑えられなかった事が1つの要因でした。でも、普通の隔壁よりも強度があるディストーションフィールドで1ブロックごとにフィールド発生装置を設置し事故や被弾したブロックをディストーションフィールドで隔離すれば、艦のダメージを抑えられると思いまして」

 

「なるほど‥‥やってみる価値はありそうだな‥‥」

 

顎に手を当てて新たなシステムを考えるウリバタケだった。

 

継ぎ目のない宇宙戦闘機はウリバタケの言う通り、製作は時間がかかり、4日目で漸く完成した。

その間にもタガメはゆっくりではあるが、月へと移動し始めた。

早い所、タガメを破壊しなければ月基地と連合軍はタガメのマグネトロンウェーブで大きな被害を受ける。

しかし、その切り札となる継ぎ目のない宇宙戦闘機、シームレス機なのだが、その肝心の入り札は僅か1機しか作れなかった。

シームレス機の製作時間もあるが、タガメが月に接近している事もあり、2番機を製作している時間がなかったのだ。

宇宙戦闘機1機ではとてもあの宇宙要塞には勝てない。

 

「どうするのよ!?たった1機であの宇宙要塞を落せるの!?」

 

案の定、ムネタケが現状を見て騒ぎ出す。

 

「まだ、手はあります」

 

そんな状況でもコハクは冷静にまだ策はあると言う。

 

「シームレス機で要塞に接近して、内部へと侵入‥‥要塞の動力炉を爆破すればタガメは機能を停止する筈です」

 

「それよ!!それだわ!!直ぐに作戦を実行するのよ!!これは提督としての命令よ!!」

 

「ですが、提督、シームレス機は複座‥突入要員は多くても2人だけです。あまりにも危険です」

 

ユリカはたった2人でタガメを攻めなければならないリスクを指摘する。

生還率はかなり低い作戦だ。

 

「じゃあ、艦長、他に何か作戦はあるの?」

 

「そ、それは‥‥」

 

時間が押し迫っている中、ユリカにいい作戦が浮かぶべくもなく、

 

「無いなら、黙って突入部隊の人選をして頂戴」

 

「‥‥」

 

ユリカはコハクの立てた作戦を実行に移すしかなかった。

 

「作戦立案は僕ですから、突入部隊の人員の1人は僕が行きます」

 

と、コハクは突入部隊に志願する。

 

「ダメです。コハク」

 

案の定、ルリはコハクが要塞へ行く事に反対する。

 

「でも、ルリ。僕は作戦の提案者だ。人が死ぬかもしれない作戦を提案だけして、高みの見物なんて出来ないよ」

 

「ですが‥‥」

 

「ごめん、之だけはルリに言われても譲れないんだ」

 

怒気を含んだルリの視線と真剣な眼差しのコハクの視線がぶつかり合う。

 

「‥‥もう、勝手にしなさい」

 

「ごめん‥ルリ‥」

 

しかし、コハクにどんな言葉をかけてもコハクの意思を曲げる事は出来ないと判断したルリが折れる。

 

「別にいいです、貴女の無茶ぶりには慣れましたから‥でも、絶対に戻って来てくださいね」

 

「うん」

 

「でないと貴女にお仕置きが出来ませんから」

 

「‥‥」

 

突入メンバーの1人はコハクに決まる。

 

「で?もう1人は?誰が行くの?」

 

コハクが行くことに対してムネタケは特に反対する事もなく、さっさともう1人を決めろと言う。

 

「コハクちゃんが行くなら、もう1人は俺が行きます!!」

 

「アキト!?」

 

もう1人のメンバーにアキトが志願した。

 

「ダメよ、アキトにそんな危険な仕事させられない!!」

 

「でも、ユリカ!!俺達よりも年下のコハクちゃんが行くのに大人の俺達が安全な所で見ているだけなんて恥ずかしくないのか!?」

 

「うっ‥‥」

 

「ハハ、耳が痛いね‥それなら、テンカワ君に代わって僕が行こうか?」

 

アカツキがアキトの代わりに行こうかと言う。

 

「いや、俺が行く!!」

 

アキトの意思も堅かった。

 

「メンバーが決まったら、さっさと行ってあの忌々しい要塞を壊してきてちょうだい」

 

「では、行きましょう。アキトさん」

 

「ああ」

 

アキトとコハクはシームレス機専用の飛行服を着てシームレス機に乗るとタガメに向かった。

 

「シームレス機、ナデシコを発艦、タガメに向かいます」

 

ブリッジクルーの皆の視線先にはタガメへと向かっていくシームレス機の姿。

 

((絶対に帰って来てね‥‥))

 

シームレス機に乗る2人を案じるユリカとルリだった。

タガメが近づくにつれ、マグネトロンウェーブの影響が出ないかアキトとコハクは緊張した面持ちになる。

もし、マグネトロンウェーブの影響を受ければ機体はバラバラになり、自分達も機体の爆発に巻き込まれる。

だが、流石ウリバタケ特製の機体、シームレス機はマグネトロンウェーブの中を壊れる事無く飛行している。

まずは第一段階を突破した。

 

「ナデシコへ、此方シームレス機」

 

「シームレス機、此方ナデシコ」

 

「ナデシコへ、現在順調に飛行中、マグネトロンウェーブの影響はなく、タガメに接近中」

 

アキトがナデシコに現状を報告する。

 

「テンカワ、タガメの詳細をそのまま送ってくれ」

 

ゴートがアキトにタガメについて尋ねる。

 

「了解。形は、楕円形長さは約1kmで厚さは約300m、宇宙を漂うサツマイモみたいで、表面に無数の穴とアンテナがあります」

 

「恐らくそれがマグネトロンウェーブの発射口ね。そしてアンテナはレーダーの他にディストーションフィールドを張る為の防衛装置ってところかしら?」

 

イネスがタガメの表面にある穴がマグネトロンウェーブの発射口でアンテナはレーダーとフィールド発生装置だと指摘する。

 

「他に武器はありそうか?」

 

「いえ、見た限り表面上には武器の類は見られません。これより要塞に侵入します」

 

「了解した。気をつけろ」

 

「はい」

 

アキトとコハクはタガメの表面にシームレス機を着陸させ、マグネトロンウェーブの発射口から要塞の内部へと入る。

フィールド発生装置はグラビティ―ブラストなどのある程度の威力のある攻撃に対して作動するモノの様でシームレス機が接近してもタガメはフィールドを発生させることはなかった。

要塞内部にはマグネトロンウェーブは発生していなかった。だが、内部構造は複雑でさながら迷路の様だった。

当然、人の気配はないが、ちゃんと番犬は居た。

通路の奥からバッタがガチャ、ガチャ、と音を立てて通路を見回っていた。

2人は警備のバッタをやり過ごし、迷路の奥へと進んで行く。

 

「もう、かなり歩き回ったと思うけど、制御室はまだ着かないのかな?」

 

アキトにやや疲労の色が見え始めた。

 

「この先です‥‥」

 

コハクはまるでタガメの内部を知っているかの様に進んでいたが、次の曲がり角が目的地だと言う。

 

「えっ?どうしてそんな事が分かるんだい?」

 

「このタガメは当然、木星兵器であり、無人です‥‥それはつまり、この要塞自体が巨大なロボットであり、コンピューターなんです。僕はこの通路を歩きながら、この通路もコンピューターの回路にそっくりな作りであると気が付きました。そして、答えがでました。僕達が破壊すべきこの要塞の頭脳‥制御室はこの角を曲がったところです」

 

そう言ってコハクとアキトが曲がり角を曲がると、そこは制御室への入り口で大きな扉とその扉の開閉に使用する制御端末を見つけた。

 

「それなら急いで破壊しちゃおう」

 

「はい」

 

コハクは扉の前に有る制御端末にリンクして制御室への扉を開閉する。

 

「プログラムの停止と破壊は僕がやります。アキトさんは番犬が来ない様に此処で見張って下さい」

 

「ああ、分かった」

 

制御室へはコハクが入っていき、アキトは制御室前で見張りをする。

すると、コハクが制御室にはいると扉が自動で閉まってしまう。

 

「コハクちゃん!!」

 

扉の外でアキトが声を上げる。

 

「大丈夫です。プログラムを停止すれば開くかもしれませんから、アキトさんは引き続き、其処に居て下さい」

 

「あ、ああ」

 

制御室の中からコハクの声がする。

不安にかられながらもアキトはそのまま扉の前に立ち続けた。

コハクは制御室の制御盤を操作してマグネトロンウェーブを停止しようとする。

すると‥‥

 

「‥‥アキトさん」

 

「ん?どうしたの?コハクちゃん」

 

「不味い事になりました」

 

「えっ?どういう事!?何があったの!?」

 

「このプログラムを破壊すると大量の中性子が数秒間出るみたいです」

 

「中性子!?」

 

「はい‥でもこの区画はシールドされているみたいなので、アキトさんは其処に居れば安全ですが、念の為、少し離れて下さい」

 

「そっちはどうなのさ!?ちゃんとシールドされているのかい!?コハクちゃん!!コハクちゃん!!」

 

「‥‥」

 

コハクはそのまま、制御盤をリンクしてプログラムの停止作業を続ける。

そんな中、コハクはこの制御室であるものを見つけた。

 

「コハクちゃん!!開けてくれ!!コハクちゃん!!」

 

扉の外からはアキトの叫び声が聞こえる。

アキトはコハクが無言のまま肯定も否定もしない事に胸騒ぎを感じたのだ。

そんなアキトの耳に、

 

ドカーン!!

 

ザッパン!!ザァァァー

 

爆音と大量の水が流れる音がした。

 

「コハクちゃん!!」

 

そして、

 

ドカーン!!

 

もう一度大きな爆音がする。

 

「コハクちゃん!!コハクちゃん!!」

 

アキトが扉を叩いていると扉が少し開く。

 

「コハクちゃん!!」

 

アキトが扉をこじ開けて制御室の中に入ると、其処にはコハクの姿はなかった。

制御室は何故か水浸しで機械は火花を上げて壊れている。

 

「そんな‥‥コハク‥ちゃん‥‥」

 

アキトはドッと両膝をつく。

 

「俺は…俺はまた‥守れなかったのか‥‥?コハクちゃん‥‥俺はもっと君から色々教わりたかった‥‥君にもっと俺の料理を食べてもらいたかった‥‥」

 

アキトの目から涙があふれ出る。

その時、

 

ザパーン‥‥

 

制御室の周りに出来た深い水溜りの中からコハクが出てきた。

 

「コハクちゃん?」

 

水の中から出てきたコハクに唖然とするアキト。

 

「ハハ、中性子は水を通りにくいんですよ。この制御室内に冷却用の水槽があった事とこの制御室の周りに堀のような溝があって助かりました」

 

何故ほんの数秒とは言え、中性子が充満した部屋で生きていたのかを説明するコハク。

この制御室はこの要塞の頭脳‥そこには各パートを冷却するための冷却水が入った水槽が供えられていた。

コハクはその水槽を破壊し、水溜まりを作り、時限式でプログラムを停止させると同時に時限爆弾も設置させ、水の中に飛び込んだ後、物理的に制御盤を破壊したのだ。

冷却水と身に纏っている特製のシームレス・スーツ、そしてコハクの体内のナノマシン。この三重の防御がコハクを守ったのだった。

 

「‥‥全く、ルリちゃんの気持ちが分かった気がするよ」

 

涙目ながらも苦笑してコハクに手を伸ばすアキト。

 

「すみません‥あっ、この事はルリには内緒にして下さい」

 

「ああ、分かった」

 

コハクの手をとり、水溜まりから引き上げるアキト。

その後、2人はシームレス機でナデシコへと戻り、フィールドを張る事の出来なくなったタガメはナデシコのグラビティブラストで完全に破壊された。

 

 

タガメを破壊したナデシコは哨戒任務が解かれ、補給の為に地球へと帰還する。

そんな中、ウリバタケがようやくPHRとPTKの秘密を解禁すると言ってきて、主要メンバーがブリッジに集まった。

 

「で、結局PHR、PTKってなんだったのよ!?」

 

エリナがウリバタケに聞く。

 

「ふふふ‥‥それはこいつのことだ!」

 

白い煙と共にウリバタケの後ろにあった2つの大きな箱が開きそこに居たのはルリとコハクだった。

 

「ルリちゃんとコハクちゃんが2人?」

 

「どうなってんの!?」

 

「違うよ。これは1/1等身大フィギュア‥‥人形だよ」

 

ヒカルがそういってルリとコハクの人形の頭に手を置く。

 

「気のせいか頭の上に手を置かれている気がします」

 

「僕も‥‥」

 

ルリとコハクが頭に手を置き確認している。

 

「これが人形‥‥?」

 

「すごいリアル」

 

皆が1/1人形を見ながら、声をあげている。モデルにされた本人達ですら鏡をみているのかと思うぐらいそれは精巧な作りだった。

凄いのだが、ある意味気持ちが悪い。

 

「あたぼうよ。キャストの魔術師、ウリバタケ・セイヤ入魂の一品だからな」

 

ウリバタケは高笑いしているが、ヒカル以外の女性陣からの視線は冷めている。

 

「セイヤさん。それじゃ、PHR、PTKっていうのは‥‥」

 

「PHR、PTKっていうのは、このキャストの魔術師が作り上げた1/1等身大ルリルリ&コーくん、名づけてパーフェクト・ホシノ・ルリ パーフェクト・タケミナカタ・コハクの略語だ!!‥‥製作はウリバタケ・セイヤ、協力はミスマル・ユリカ、資源調達はゴート・ホリー、アオイ・ジュン、販売担当はプロスペクターという、ナデシコの上層部と各界のプロフェッショナルが手を組んだ夢の商品だ。どうだい?テンカワ、お前も1つどうだ?今なら、制服バージョンのほかに、水着と猫スーツも付属品としてついてくるぞ」

 

「い、いえ俺は別に‥‥」

 

アキトはコハクをチラッ見て後退する。

 

「私はナデシコで流通する商品管理する立場にありますので、その一環としてですね‥‥」

 

プロスペクターがブツブツと言い訳している。

 

(なるほど、だからウリバタケさんが、何かを作っていても止める事がなかったわけか‥‥)

 

お金の管理に口うるさい筈のプロスペクターが、ウリバタケが何かを作っていると言う噂が出た時、消極的な態度をとっていたのは、彼自身もウリバタケの協力者だったからだ。

 

「服はどうしたんですか?まさか盗んだんじゃ!?」

 

アキトが1/1人形が着ている服はどうしたのかを尋ねる。

 

「違う違う、そいつはジュンに縫ってもらった」

 

「ジュンに?」

 

皆の視線を一身に浴び、気まずそうなジュン。

 

「あの、その‥‥ルリちゃんとコハクちゃんの服を作ったらあとで、ユリカのフィギュアも作ってくれるって言われてつい‥‥」

 

オロオロしながら言うジュン。

ルリとコハクの服を作る為、ジュンはここ最近陰からルリとコハクの制服のデザインと目視によるサイズを見ており、手が絆創膏だらけだったのは慣れない裁縫作業の為だったのだ。

 

「それにしてもまさか艦長まで協力していたなんて‥‥」

 

「なんか、ちょっと意外です」

 

ルリとコハクが冷ややかな視線をユリカに送る。

 

「わ、私は、2人の身長とか教えてくれたらアキトの人形を作ってくれるって言うから‥‥」

 

「成る程、だから健康診断を強制的に受けさせたわけですか‥‥」

 

コハクが呆れたように言う。

 

「はぅ‥‥」

 

2人の少女のキツイ視線にさらされ、小さくなるユリカ。

 

「ふーん、ミスターにこんな趣味があるなんて意外ね」

 

ゴートもミナトに言われ小さくなっている。

ウリバタケはそんな女性陣からの視線を気にせず、今回の作品がいかに優れた造形かを得々と語っている。

それはイネスの説明ばりに‥‥

そんな中、ブリッジに冷ややかな声が静かに響く。

 

「なるほど‥先日、女性用の浴場と脱衣所に隠しカメラを仕掛けていたのはウリバタケさんの仕業でしたか」

 

ルリがそう言うと女性陣からの軽蔑のオーラが殺気へと変化した。

 

「あっ、僕もそれ見つけました。健康診断のデータだけでは正確に作れないからってお風呂場にカメラを設置するのはやりすぎですよ。ウ・リ・バ・タ・ケ・さ・ん」

 

コハクもルリに同調する。

 

「な、なんのことだよ!?ルリルリ、コーくん」

 

ルリとコハクから盗撮疑惑をかけられて狼狽えるウリバタケ。

 

「ちょっと!!それ本当なの!?ルリルリ、コーくん」

 

「ウリバタケさん、サイテー‥‥」

 

「ま、待て!!濡れ衣だ!!俺はそんなこと‥‥」

 

「撮った写真や映像はどうしたの!?まさか、売ったんじゃないでしょうね!!」

 

「出しなさい!!ウリバタケ!!ネガとデータごと全部!!今すぐ!!」

 

「酷いウリバタケさん!!せっかく協力したのに~」

 

女性陣がウリバタケに詰め寄る。

これでウリバタケに対する制裁は自動的に行われるだろう。

だが、それだけではルリとコハクの怒りは収まらず、

 

「オモイカネ」

 

《はい》

 

「ウリバタケさんのパソコンのデータを全部消去して」

 

≪い、いいんですか?プロテクトがかけられているものがありますが‥‥≫

 

「「全部消して!!」」

 

《で、ですが昔の貴重なアニメや予約録画されて未だ見ていない作品やプライベートなものまでありますが‥‥》

 

「「ぜ・ん・ぶ」」

 

≪リョ、了解しました‥‥≫

 

「さて、後は製作協力した人達と‥‥」

 

「引換券を持っている人達ですね‥‥」

 

「「うふふふふ」」

 

電子の姉妹達はいい笑顔で製作協力者と購入予定者の制裁を考えていた。

 

 

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。
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