機動戦艦ナデシコ コハクのモノガタリ   作:ただの名のないジャンプファン

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更新です。


第32話

 

 

 

 

ガラガラガラガラ‥‥

 

チャラリ~ララ~チャラララララ~

 

夕焼け空の街中を今日もアキトとユリカは屋台を引き、ルリとコハクがチャルメラを吹く。

そしていつもの場所に着いていつものようにラーメンの屋台の用意をする。

ラーメン屋の屋台を続けて、アキトの屋台もこの辺ではそれなりに名前が知れ渡り、段々と人気が出てきて常連のお客さんが増えてきている。

今思えば初日の閑古鳥とは大違いである。

その日も屋台に来てくれたお客さんにアキトとユリカは「夫婦かい?」とか「結婚は何時だい?」などとからかわれていたが、本人達はまんざらでもない様子だった。

最初の方は新しい生活に慣れるまで大変だったが最近では、屋台とアパートでの生活も充実し、それなりに楽しくやっている。

夕方の6時から屋台を開いて夜の11時ぐらいには、あらかたのお客さんが帰っていった時、暗闇の向こうから1人の人が歩いて来た。

その人は屋台の前で止まり、此方に歩いて来る。

そして屋台の暖簾をくぐって現れたのはプロスペクターだった。

 

「いらっしゃい‥‥あっ、プロスさん、お久しぶりです」

 

アキトが挨拶をします。

 

「お久しぶりです皆さん」

 

プロスペクターもユリカたちを見て挨拶をする。

 

「「「お久しぶりです、プロスペクターさん」」」

 

ユリカ達もプロスペクターに挨拶をする。

 

「ご注文は何にしますか?」

 

コハクが今日何度目になるか分からない定番の質問をする。

 

「そうですね‥‥それでは味噌ラーメンをお願いしますかな」

 

「はい。アキトさん味噌ラーメン一丁」

 

「了解」

 

注文を受け、アキトがラーメンを作り始める。

 

「はい、味噌ラーメンお待ち」

 

アキトが出来立てのラーメンをプロスペクターの前に出す。

しかしプロスペクターはラーメンを食べずにまずアキトに話し掛ける。

 

「商売の方は繁盛していますかな?」

 

「まぁ、最近ではそれなりには‥‥」

 

「ハァ‥まぁ、焦らず、ぼちぼちやることです。積み重ねる事が成功の秘訣ですから」

 

「は、はい」

 

さすが大企業のサラリーマン、言う事にどことなく重みがある。

 

「ところで、艦長。お父上はお忙しいですか?」

 

プロスペクターはユリカにここ最近のコウイチロウについての近状を訊ねる。

 

「え?」

 

ユリカはプロスペクターの言葉に聞き返す。

ミスマル家を出てからコウイチロウとは一度も連絡をとっていないので、ユリカは父が今何をしているのかは知らなかった。

 

「いえ、この頃軍の動きがどうも色々と怪しいようでして‥‥」

 

「どういう事なんですか?」

 

「まさか、木連との休戦協定に何かあったんですか?」

 

アキトとコハクが訊ねる。

軍に何か怪しい動きと言う事は、木連との停戦で何かあり、また木連との間に戦争でも起こるのかと不安視するコハク。

また、木連と戦争が始まれば、ナデシコも参戦する可能性がある。

そうなれば、自分達もまたナデシコに乗らなければならないかもしれない。

アキトは漸く自分の夢に向かって動き出したのに、また戦争に身を投じなければならないのはあまりにも不憫だ。

 

「いえ、どうも新しく軍を再編成するらしいのです‥‥つまり新宇宙連合とでも言いましょうか‥‥陸、海、空、宇宙、そして木連を含めて、新しい政治体制を築こうとしているのです」

 

「宇宙全体が1つになる事は素晴らしいことだと思います」

 

ユリカが答える。

 

(確かに宇宙全体が1つになれば戦争も起こらないし、真の平和になるのだろうが、はたしてそんな簡単に無くなるものなのでしょうか?地球でさえ、未だに宗教の対立や過去の戦争の遺恨でテロが起きているのに‥‥)

 

ルリがそんな事を考えているとプロスペクターもルリと考えと同じ様な事を言う。

 

「動機が邪なんですよ」

 

プロスペクターは眼鏡を弄くって新地球連合の動機を語る。

 

「地球連合のトップも木連のトップも火星の遺跡の情報を独占したい訳で‥‥本当に地球の事を考えているのなら、とっくの昔に遺跡もボソンジャンプも世論に公表していますよ」

 

「つまり、地球も木連もボソンジャンプの技術を独占したいが、それが難しい。だから‥‥そのために、とりあえず手をくんで一方が独占することだけは避ける‥‥簡単に言えば互いに腹の探り合いをしつつ、お互いを監視すると言う事ですかね?」

 

コハクが地球と木連の腹の内を推測する。

 

「そのとおりです。要するにどっちが独占するんだって、問題を先送りしたいだけなんですよ。これではいつまた木連と戦争が起こってもおかしくないですな」

 

プロスペクターが真剣な顔で答える。

 

「また戦争‥ですか‥‥」

 

コハクの予想はある意味当たっていたのかもしれない。

木連とまた戦争になるかもしれないと言う事実にアキト達の顔色は優れなかった。

 

ニャーニャー

 

静かになった屋台の周辺から猫の鳴き声が聞こえる。

 

「それに私が今、非常に気になっている事があるんです」

 

「なんですか?」

 

ユリカがプロスペクターに訊ねる。

 

「これはコハクさんに関係するかもしれない事なんですが‥‥」

 

「えっ?僕に‥ですか?」

 

プロスペクターがコハクの方に顔を向けて話し始める。

アキト達もプロスペクターの言葉が気になるようだ。

 

「実は新宇宙連合を作ろうとする軍部に手を貸している幾つかの企業グループがあるのですが、どうやらそこでもボソンジャンプの実験をしているようでして‥‥」

 

「ネルガル以外にもボソンジャンプの実験をしているところがあるんですか?」

 

アキトが訊ねる。

 

「そうです。彼らはネルガルと軍のボソンジャンプに関する情報を集めているようです。そしてそのグループがボソンジャンプで何をしようとしているのか、私も八方手を尽くして調べてはいるんですが、分かったのは”ヒサゴプラン”という謎の言葉です」

 

「”ヒサゴプラン”ですか?」

 

コハクが呟く。

 

「何かご存知で?」

 

「いえ、開発部でもそのような言葉は聞きません」

 

コハクが現在所属しているネルガルの開発部でもヒサゴプランなどと言う単語は聞いたことがない。

ただ、聞いた事のない単語の筈なのにコハクの中にはそのヒサゴプランと言う単語が妙に引っかかった。

 

「そうですか‥‥」

 

コハクの返事に少し落胆するプロスペクター。

 

「ヒサゴプラン‥‥プランと言う事は何かの計画と言う事ですか?」

 

「恐らくは‥‥」

 

(ヒサゴプラン‥‥ですか。なんでしょうか?今度オモイカネに調べてもらいましょう。たぶん無駄でしょうけど)

 

ルリも頭の中でヒサゴプランと言う単語を思い浮かべるが、自分のこれまでの知識と情報の中でその様な単語の心当たりはない。

 

「でも他の企業でもボソンジャンプの研究や実験をしているってことはまた俺やコハクちゃんにまた『ジャンプの実験を協力しろ』ってネルガルは言ってくるんじゃ‥‥」

 

アキトがプロスペクターに訊ねる。

 

「いえいえ、それは多分ないでしょう。テンカワさんはこうしてラーメン屋の営業をなさっていますし、コハクさんは所属部署が違いますから」

 

「そうですか‥よかった‥‥」

 

アキトが安心したように言う。

 

「それより、ラーメン冷めちゃいますよ?」

 

ルリが話を打ち切るようにプロスペクターに言う。

確かにアキトがプロスペクターにラーメンを出してから少し時間が経っている。

このままヒサゴプランについて話していると折角のラーメンが冷めて伸びてしまう。

 

「ああ、いけない」

 

プロスペクターは急いでラーメンを食べ始める。

 

(プロスさんそんなに急いで食べると喉に詰まりますよ)

 

急いでラーメンを食べるプロスペクターをコハクは心配そうに見る。

すると、案の定、

 

「ぐっ‥‥」

 

プロスペクターが喉にラーメンを詰まらせる。

 

(やっぱり‥‥)

 

ルリはすでに用意していた水をプロスペクターに渡す。

 

「水です」

 

「あ、ありがとう」

 

プロスペクターはルリから水を受け取ると一気に飲み込んだ。

少し冷めていたみたいなので、口の中を火傷してはいないみたいだ。

 

「はああ、死ぬかと思った」

 

そして、ラーメンを食べ終えるとアキト達に向き直りながら再び話し掛ける。

 

「では、私はこれで。また何か分かりましたら伝えに来ますので‥‥」

 

「はい、ありがとうございました」

 

「いえいえ。ラーメン美味しかったですよ。それでは‥‥」

 

ラーメン代を払いプロスペクターは静かに席を立ち、屋台を出ていった。 

 

プロスペクターが出ていって少しして、今日はもうお客さんが来る気配はない。

時間も深夜で辺りの民家で灯りをともしているのはまばらである。

 

「今日はこの辺で閉めようか?」

 

アキトが今日の業務の終了を言って、皆で撤収の為の後片付けを始める。

 

「じゃあちょっと俺とユリカは丼を洗ってくるから」

 

「わかりました。後は任せてください」

 

アキトとユリカは近くの公園の水道場へと向った。

残されたルリとコハクは黙々と後片付けをしている。

 

「そういえば最近、この辺で強盗事件が多発しているらしいよ」

 

後片付けをしながらコハクが何気なくルリに話しかける。

昼間買い物に行っている時、近所の主婦達が話していたのを思い出したのだ。

 

「人通りのなくなった屋台なんて狙い目でしょうね」

 

「そうだね。でも相変わらずルリはきついこと言うな~」

 

「そうでしょうか?」

 

「そうだよ」

 

「でも今の私達の状況は強盗さんにとっては絶好の標的ではありませんか?」

 

「‥‥‥」

 

ルリの言葉どおり、最後のお客が帰ってからはこの通りも全然人がいなくなり、しかも店にいるのは少女2人。

辺りの家も寝静まっているので目撃者も居ない。

まさに話の通りの状況になっていた。

 

「あっ、あそこに怪しい人影が‥‥」

 

ルリが通りの暗闇を見ながらコハクに話し掛けてきた。

 

「またまたぁ‥‥」

 

コハクがルリの見ている方に目を移すと、確かに遠くの方で人影が見えた。

しかもその数は2人。

なんだかぼそぼそと話しをしながらこっちに向かってきている。

 

「なんか怪しいですね‥‥どうします?」

 

「念のためルリは屋台の下に隠れていて、僕達の勘違いかもしれないけど、万が一ってこともあるから」

 

「もし強盗だったら危ないですよ?」

 

「大丈夫だよ。僕はナデシコで軍人さんにも勝ったんだよ。もし強盗だったらお仕置きもかねてボコボコにしてやる」

 

「殺さない程度にしておいてくださいね」

 

「分かっているよ」

 

やがて2つの影が屋台に近付いてくる。

コハクはスープを掬う大きな柄杓を手に屋台の影で待ち受ける。

 

カツカツカツカツ‥‥‥

 

段々と影が近付いてくる。

 

「あれ?2人ともいないな」

 

「ホントだ。おーい、ルリちゃん、コハクちゃん」

 

「あ、アキトさん?ユリカさん?」

 

慌て屋台の影から出るコハク。

 

「なんでそんなところから出てきたの?それに手に持っている柄杓は‥‥?」

 

「あやしいんだぁ!」

 

アキトとユリカがコハクに訊ねる。

 

「い、いや、これは別に‥‥」

 

口ごもるコハク。

まさか2人を強盗と間違えたなんて言えない。

しかし、

 

「さっきコハクと最近この辺りで強盗が出るって話をしていたんですが、その時にお2人の影を見て勘違いして強盗かと思ったんです」

 

屋台の下から出てきたルリが事情を暴露する。

 

「えっ!?そうだったの!?」

 

アキトの様子から彼はこの辺で強盗が出ると言う噂を知らなかった様だ。

 

「む~酷いなぁ」

 

ユリカは強盗に間違われた事に不満の様子。

 

「「ごめんなさい」」

 

でも、モタモタしていると本当の強盗に襲われるかもしれないので、4人は手早く残りの後片付けをして帰路についた。

 

 

テンカワ家の4人が起きてから揃ってまずする事は揃って朝食を食べる事。

ナデシコ長屋ではアキト、ユリカ、ルリの3人だったが、アキトのアパートに来てからは朝、夜の食事は基本的に4人一緒にとっていることが日課になっている。

その日の朝も勿論皆揃って一緒に食べる。

 

「「「「いただきます」」」」

 

4人の声が朝日の匂いに包まれたアキトの部屋に響く。

 

「さて、皆、今日の予定はどうなっているんだ?」

 

アキトがユリカ達に予定を聞く。

朝食のときに今日一日の大まかな予定を互いに教えあう。こうしておけば何かあったときに連絡が取りやすいだろうという以前アキトが出した提案だった。

 

「ユリカは今日も軍のお仕事」

 

ユリカはジュンと共にまだ正式な配属部署は任命されていないが、軍の施設で事務処理の仕事をしている。

夕方にはアキトと一緒に屋台を引いているが、昼間はやっぱりアキトと一緒に居られないのでどこか寂しそうである。

 

「僕は今日徹夜になるかもしれません」

 

コハクは現在、ネルガルの開発・設計部に席を置いている。

木連との戦争中に新型のエステバリスの設計や無線式攻防システムを開発した経験のある彼女はその時に設計に興味を持ち、プロスペクターに頼んで入社したのだった。

労働基準法はどうした?と言いたいが、実際の所、ルリもコハクも10代前半で戦艦であるナデシコに乗艦し、戦争に身を投じたのだから労働基準法なんて今更?な感じである。

実際に本人も気にすることなく、仕事をしている。

普段はパソコンで設計をして、そのデータをメールで転送しているのだが、時々技術者達と集まって仕事をすることがあるのだ。

そして給料はアキトの屋台の収入より遥かに上だが、コハクはその給料のほとんどをアキトに渡している。

最初は貰うのを渋っていたアキトだったが、コハクが「お店の開店資金に使って」と頼んだので、非常金として小さな金庫に毎月仕舞っている。

それにウリバタケ家に納付する屋台の製作費代も払わなければならない。

 

「徹夜って‥それじゃあコハクちゃん今日は夜帰ってこないの?」

 

「はい。今日は屋台の方も手伝うことが出来そうにありません。ごめんなさい」

 

「い、いや構わないよ。コハクちゃんの方もお仕事頑張っているみたいだし」

 

「すみません」

 

コハクは申し訳なさそうに言う。

 

「アキトは今日どうするの?」

 

「俺は今日もラーメンの材料の買い出しとラーメンの研究」

 

「ルリちゃんは?」

 

「私も今日はテンカワさんの買い出しを手伝います」

 

「いいのかい、ルリちゃん?」

 

「はい、私も何か手伝いたいですから」

 

アキトの言葉に答えるルリ。アキトは笑顔で「ありがとう」と言う。

 

「むぅ~いいなぁルリちゃん」

 

ユリカは羨ましそうにルリを見る。

 

なにはともあれ今日の4人の予定は決まったようだ。

 

コハクは夕方ごろ、会社のデスクからアキトのアパートに電話を入れる。

電話に出たのはルリでちゃんとご飯は食べたか?とか仮眠する時間はあるのか?と色々心配された。

流石にネルガルの人間もコハクが10代の少女と言いう事でそこまで無理はさせなかった。

 

翌日、昼近くにアキトのアパートに帰宅したコハク。

部屋に入ると、そこにはユリカが居た。

そしてアキトとルリが何処かに出かけている様だ。

ユリカは寂しそうな顔をして窓に座っている。

 

「あっ、おかえり、コハクちゃん」

 

「ただいまです。ユリカさん‥‥あれ?アキトさんとルリは?」

 

「2人とも買出しに出ているよ」

 

どこか元気のないユリカにコハクは不思議に思い訊ねる。

 

「どうかしましたか?なんとなく元気ないですよ。ユリカさん」

 

「うん、ちょっとね‥‥」

 

ユリカは少し歯切れが悪そうに言う。

 

「いつものユリカさんらしくないですね。何か悩みがあるのでしたら聞きますよ」

 

「‥‥ねぇ、コハクちゃん‥‥アキトは私の事どう思っているのかな?」

 

「えっ?アキトさんはユリカさんのことが好きなんじゃないですか?火星でアキトさんはそう言っていましたけど‥‥?それに、ユリカさん、アキトさんとキスをしていたじゃないですか」

 

「それはそうなんだけど‥‥」

 

「ん?じゃあなんですか?」

 

「でもね、アキトは私に”くっつくな~”とかよく言うでしょ。それが不思議で。何でそんな事いうのかな、って」

 

ユリカは考えるような顔で答える。

 

「アキトは昔から私の王子様だったけど、アキトにとって私はそうじゃなかったみたいなの。だからなのかなぁ?」

 

「‥‥‥」

 

(そんな事を本気で悩んでいたのですか、この人は‥‥)

 

コハクはユリカの相談内容を聞いて少し呆れた。

 

「ユリカさんそれはアキトさんなりの照れですよ。照れ」

 

「照れ?」

 

「そうです。考えてもみてください。今までユリカさんは所構わずアキトさんに引っ付いたり、第三者に対して自分がアキトさんに好意を寄せていることを大々的に話していましたね?」

 

「う、うん」

 

「アキトさんも内心ではきっと嬉しかった筈です。でも周囲の目や後でからかわれるのが嫌で、ユリカさんを突っぱねる行動をとってしまったんだと思います。ユリカさんと2人っきりになればきっと優しくしてくれますよ」

 

「そうかな?」

 

「そうですよ。アキトさんはいわゆるツンデレというやつですね」

 

「ツンデレ?」

 

「21世紀初頭に広まった言葉であり概念です」

 

「それってどういう意味なの?」

 

「発祥元はあるゲームらしいのですが、意味はツンツンとした高慢とも言える態度が、ふとしたきっかけでデレデレとした甘いものに変わる様子、あるいは、本心とは裏腹に意中の人に冷たい態度を執る様子を指して、「ツン」が「デレ」に変わることから「ツンデレ」と言います」

 

「そうなんだ」

 

「そうです。だからアキトさんのユリカさんに対する行動は照れであり、ユリカさんの事を本当に嫌っているわけではありません。本当に大嫌いなら、ユリカさんを自分の家に同棲なんてさせない筈です。むしろ大好きだと大声で叫びたいのを必死で我慢している筈です」

 

「照れている‥‥そう言えばそうか‥‥そうだね、ユリカってば気にし過ぎだよね!」

 

ユリカはコハクの言葉を聞いてさっきとは反対に嬉しそうに笑って答える。

 

「はい」

 

(ユリカさんはやっぱり笑っていないとユリカさんらしくないや‥‥)

 

「ありがと、コハクちゃん。お礼になんでも言う事聞いてあげる!」

 

「えっ?そんな‥べつにいいですよ」

 

「いーの、”お姉さん”になんでも言ってみなさい!あっ、でもアキトがほしいっていうのはダメだよ」

 

ユリカさんが”お姉さん”の部分を強調して言う。

 

「い、いえユリカさんからアキトさんを取りませんよ」

 

(それにしてもいきなりそんなことを言われても困るな‥‥)

 

「うーん、そうですね‥‥」

 

コハクは少し考えた後、

 

「じゃあ、アキトさんと幸せになって‥‥」

 

「わー!!ありがとう!!」

 

自分でもらしくないことを言ったとコハクはそう思ったが、言わずにはいられなかった。

ナデシコからユリカを見てきてアキトに対してのアプローチは凄く、彼女のそんな努力を無駄に終わらせたくはなかったのだ。

 

「そういえば最近コハクちゃんよくネルガルの会社のほうに行くけどお仕事そんなに大変なの?」

 

ユリカがコハクに仕事について聞いてきた。

 

「そうですね。今は設計ではなくプログラミングのほうが大変なんですよ」

 

「へぇ~どんなことしているの?」

 

「う~ん‥‥まぁ、ユリカさんなら他人に喋らないだろうから教えますけど本当に他の人には教えないでくださいよ。まだ企画段階なんですから」

 

「わかっているって」

 

「今、僕はワンマンオペレーションシステムを開発中なんです」

 

「ワンマンオペレーションシステム?」

 

「簡単に言うと1人で戦艦を動かすことの出来るシステムを開発中なんです」

 

「1人で?戦艦を!?」

 

「はい。といっても動かす人はナノマシン処理を施さなければなりませんが‥‥すでに試作艦の設計は終わっているので、後はその艦に搭載するAIのプログラムが作り終われば建造が開始されます。そしてこの実験が成功すれば新しいナデシコにも採用するつもりです」

 

「新しい‥‥ナデシコ‥‥そうなんだ‥‥がんばってね」

 

「はい」

 

後に建造された新型のナデシコの艦長にルリがそしてこの試作艦が幽霊ロボットと呼ばれる謎の機体兵器の母艦になることをこの時のコハクには知る由もなかった。

 




ではまた次回。
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