機動戦艦ナデシコ コハクのモノガタリ 作:ただの名のないジャンプファン
残党軍との戦闘が未だ終結していない現段階において、ヤマトの戦線離脱は決して軽微とは言えないが、地球にとっての救世主であるイスカンダルを見捨てるわけにもいかず防衛軍はヤマトが抜けた穴を必死でカバーすることとなった。
地球本土の造船局でも昼夜二交替制で軍艦の建造、改修作業が行われていた。
第一ドックで建造中のアンドロメダ級二番艦の「ネメシス」は先の彗星帝国戦役において戦死した当時の連合艦隊総司令土方竜提督の提言により、建造が開始されたが、結局ガトランティス戦線への投入には間に合わず、地球本土の復興が優先され、八割ほど完成していた状態で作業が止まっていたが、急遽残党軍討伐戦線に間に合うよう急ピッチで建造が再開された。
既に一時的な防衛軍連合艦隊旗艦の内定も受け、就航後、ただちにガニメデ基地へ向けて、出港し残党軍との決戦には山南司令が乗艦・艦隊指揮を行い、十一番惑星へ赴くことになるだろう。
外見は一番艦であるアンドロメダとまったく変わりがないが、搭載されている波動砲が拡散タイプから収束タイプへと変更されている。
もう間もなくの就航なのでヤマトの抜けた穴を埋めるには十分な戦力でネメシスの投入により残党軍戦役はこれで終息に近付いたと防衛軍の幕僚たちはそう考えている。
土星圏 ヤマト
その頃、ヤマトは土星圏でイスカンダルへ向けて出港準備をしていた。
そんな出港準備中のヤマトに突如通信が入った。
「艦長代理、タイタンより通信信号が入っています」
「タイタンから?‥‥敵の通信波じゃないのか?」
「いえ、信号の周波数が防衛軍のものです。今パネルに回します」
相原が受信した信号をパネルは映す。するとそこには防衛軍の作業帽を被り眼鏡をかけた男が映し出された。
『やっとここまで来たなヤマト』
「お前は‥‥大山‥‥!!大山歳朗じゃないか!!」
『久しぶりだな、真田』
「誰です?」
古代は真田と親しく話すこの大山という人物と面識が無く、大山がどのような人物なのかを真田に聞く。
「大山歳朗。士官学校時代の俺の同期だ」
「っ!!」
「つまり古代のお兄さんとも同期ということですね?」
「そういうことだ。それにしても大山。どうしてお前がタイタンに?」
『ん?知らなかったのか?俺はな、ここに堕ちて氷漬けになっていた「ゆきかぜ」を掘り出していたんだよ』
「兄さんが乗っていた艦を‥‥?」
『そうだ。M-21881式宇宙突撃駆逐艦‥‥眠らせておくには惜しい艦だよ。で、掘り出した「ゆきかぜ」に波動エンジンを搭載して新しく生まれ変わらせようと思ってな。知っているだろうが、タイタンはコスモナイトをはじめとした鉱物資源が豊富で作業をやりやすい‥‥防衛軍の再編計画の一環さ』
「『ゆきかぜ』を改造?‥‥そうかお前ならできるだろうな。なにしろ『ゆきかぜ』の設計に噛んでいた一人なんだからな」
『へへ、今度の「ゆきかぜ・改」はすごいぞ。完全なる自動化システムを搭載した無人艦に仕上げてある』
「無人艦?お前らしくないな、大山。血の一滴も通わないメカニズムの結晶など‥‥」
自動化システムという言葉を聞いて真田は顔を顰めた。
『ずいぶんな言いようだな真田。だが、お前の貧弱な想像力の中で俺が手に掛けた艦を勝手に解釈してもらっちゃ困る』
「それはどういう意味だ?」
『人間が機会を屈服させるんじゃない。ましてその逆でもない。人間と共に助け合うメカニズム。俺が造ったのはそんな艦だ。「科学は人間の幸せのためにあるということを確かめたい」そう言って科学者になったのはお前だろう?真田。それに地球の造船局に俺と同じような考えで艦を造っている奴もいると聞く。元々戦艦にAIを搭載することを発案したのはそいつらしいからな』
「相変わらず口が達者な奴だな」
『そういうお前もな‥‥ところでイスカンダルのことは俺も聞いたよ。この「ゆきかぜ・改」と共に俺も同行させてもらう』
「そうか、お前も来てくれるのか」
『ああ、守るに生まれ変わったこの艦を見せて、渡してやらなきゃならんからな』
「はい。ありがとうございます、大山さん」
『『トチロー』でいいぞ、古代。お前の兄貴もそう呼んでいた。よし、それじゃ今から「ゆきかぜ・改」を始動させる‥‥驚くなよ!!』
暫くするとタイタンからヤマトに向って一隻の駆逐艦クラスの小型艦が接近してきた。
「これが生まれ変わった『ゆきかぜ』‥‥」
パネルに映し出されたゆきかぜを見て古代が呟く。
ガミラス戦役時に古代守が艦長を務めた宇宙駆逐艦「ゆきかぜ」沖田提督が地球の命運をかけて望んだ冥王星会戦の折、提督を乗せた旗艦を逃がすため殿を務め、ガミラス軍の攻撃で操艦不能になり、タイタンに墜落した「ゆきかぜ」に波動エンジンを搭載し、各部を改良し蘇らせた艦。
艦の上下に連装式の砲塔を搭載し、小型艦としてはトップクラスの機動性と能力を兼ね揃えている。
生まれ変わったゆきかぜを連れヤマトはイスカンダルへ向け出港していった。
オリオン座α星宙域
イスカンダルを目指すヤマトは太陽系を出た後、一回目の大ワープし、ここオリオン座α星宙域にワープアウトした。
「通常空間を確認。ワープアウト完了。予定航路との誤差、0,0021‥‥オリオン・α星系に到着です」
太田がワープ後の座標を確認し報告する。
「後続艦もワープアウトを確認しました。全艦異常ありません」
後続のゆきかぜ・改も無事ワープアウトを確認した雪が報告する。
ヤマトとゆきかぜ・改は一度機関を止め、機関部に異常が無いかをチェックすることになった。
機関部のチェック中第一艦橋の乗員は目の前で太陽のように燃えるα星を見つめる。
「オリオンα星ペテルギウス‥‥最初の航海の時、ここでデスラーの放ったガス生命体に襲われたんだったな‥‥」
「そうだな‥‥今となっては懐かしい思い出さ」
島と古代は昔の思い出に耽りながらα星を見ている。
「艦のチェックが終わり次第、次のワープに移るぞ」
古代が次のワープ予定地点を確認し、艦内放送を流す。
「古代君‥‥ちょっと様子がおかしいわ」
「どうした?」
「α星の向こう側に、大きなエネルギー反応があるのよ‥‥」
雪がコスモレーダーでα星付近に異常なエネルギー反応を発見した。
「α星の重力レンズ効果で星が放出するエネルギーが屈折して見えているのでは?」
北野が自然現象ではないかと聞く。
「それが、エネルギー源が動いているのよ。もうすぐα星の陰から出てくるわ‥‥」
雪の報告どおりα星から黒いモヤのような塊が出てきた。
「な、なんだ?‥‥あれは?」
「黒い‥‥モヤのような‥‥ガスのような‥‥」
「ま、まさかガス生命体の生き残りじゃあ‥‥」
黒いモヤの様なガスの様なその姿は、まさしく、ヤマトの最初のイスカンガルへの航海にて、デスラーが放ったガス生命体にそっくりだった。
真田が空間スキャナーを使い謎の黒いモヤの正体を探る。
「むう、すごいエネルギー密度だ‥‥生命反応は感じられん。これはガス生命体ではない。これは‥‥暗黒物質で出来た原始星そのものだ!」
「どういうことです?真田さん?」
「たかが二年でこれだけの自然現象が起こるはずが無い‥‥あきらかに人為的なものだ」
真田がこの異常な現象を人為的だと突き止めたとき、太田がレーダーで捕らえた艦影を発見した。
そしてその艦隊から強力な磁力線が暗黒物質とペテルギウスに向け放射されていることも確認できた。
「採掘しているんだ!!あの艦隊はペテルギウスからエネルギー資源を抜き出そうとしているんだ!!古代、これは一大事だぞ!!」
真田の仮説によるとこのままペテルギウスのエネルギーが抜きだされれば、ペテルギウスは予定よりも早く超新星化しハイパーノヴァと呼ばれる爆発を起こすと考えられ、ペテルギウスがもしハイパーノヴァを起こせば地球にも被害が及ぶと言う。
古代は相原にエネルギー採掘をしている艦隊に対し警告を送るよう指示する。
暗黒星団帝国 巨星エネルギー資源採掘艦隊・第二十四師団 左翼艦隊旗艦・エルドラB
「クーギス司令、星系に突然出現した謎の艦隊より電文を受信しました」
「読み上げよ」
通信士が母国語に変換した電文を読み上げる。内容はこのままエネルギー採掘を続ければハイパーノヴァが起こる可能性があるので、ただちに採掘作業を止めろというものだった。
その電文の内容を聞くと、クーギスは高笑いをし、右翼側に展開している双子の兄に通信を入れる。
暗黒星団帝国 巨星エネルギー資源採掘艦隊・第二十四師団 右翼艦隊旗艦・エルドラA
弟から通信を受け取ったルーギス
「無視するわけにもいくまい。反応からするとちゃんと武装した艦隊のようだぞ」
その言動から採掘を中止するのかと思ったクーギス。
『では兄上はこんなたわけた通信を聞き入れると?』
「まさか‥‥ちょうど採掘任務で退屈していた所だ。ちゃんと相手をしてやろうではないか。言葉ではなく力でな‥‥」
『フハハハハ、それでこそ兄上よ』
ルーギスとクーギスの両艦隊はまずジャミング電波を流し、ヤマトの遠距離レーダーを使用不能にし、戦闘隊形をとりヤマトへと接近していった。
対するヤマトは近距離レーダーに切り替え、雷王作戦同様まず敵旗艦を撃破し、敵艦隊の指揮系統を混乱させ、残る敵艦隊を撃滅する戦法をとることにし、エネルギー反応から敵旗艦らしい戦艦を探知する。
するとエネルギー反応から敵艦隊には二隻の旗艦級の戦艦が存在した。
ヤマトは数の不利を補うため、コスモタイガー隊の装備を対艦装備に換装し、敵艦隊に対して二面作戦を挑むこととなった。
ヤマトはクーギス率いる左翼艦隊へコスモタイガー隊はルーギス率いる右翼艦隊へと接近していった。
ヤマトは敵艦隊との間に存在するアステロイドを上手く使い敵の攻撃を回避しつつ敵に遠距離砲撃する。
「主砲発射!」
三連装四十六センチ砲ショックカノン計九発が敵艦隊に向け発射される。
ヤマトからの攻撃を受け、前衛に混乱が生じる。
艦隊の混乱に乗じてゆきかぜ・改を先頭に急速で敵艦隊に接近し乱戦に持ち込んだ。
「何をしている!敵は少数ではないか!あんな少数の敵など、さっさと包囲して殲滅しろ!」
クーギスはなかなか仕留められない敵に業を煮やす。
ゆきかぜ・改はその機動性を駆使し敵艦隊の中を縦横無尽で敵を翻弄し、ヤマトはその重武装と防御力を駆使し敵艦を次々沈めていく。
「く、クーギス様!敵のエネルギー弾が本艦に‥‥うわぁぁぁぁー!!」
ヤマトの四十六センチ砲ショックカノンが遂にエルドラBに被弾。
「動力五%へ低下!!クーギス様、これ以上は艦が持ちません!!」
「おのれっ!!おのれぇぇぇっ!!」
「クーギス様、脱出艇で離脱を!!」
「こんな奴等に‥‥こんな奴等ごときに‥‥!!」
「クーギス様!」
「‥‥っ!?‥‥くっ、残存艦に連絡!無念だが、ここは撤退だ!」
クーギスは沈みかけるエルドラBから近くの巡洋艦に移乗し戦線を離脱した。
「いくぞ!全機突撃!」
コスモタイガー隊二代目隊長山本明が率いるコスモタイガー隊は右翼側、ルーギス艦隊を相手にしていた。
彼らはまず示威行動を行って敵艦隊を挑発し、アステロイドへと誘い込んだ。
「ええぃまだあの小うるさいハエどもを追っ払えんのか!?」
対艦ミサイルの集中攻撃で駆逐艦や護衛艦クラスは簡単に沈んでいく。
ルーギス艦隊はコスモタイガーの挑発にまんまと乗り、コスモタイガー隊を追ってアステロイド帯へと入り込んでしまった。
巡洋艦や戦艦といった大型艦艇ではアステロイド帯を高速で航行出来ず、速度が落ちて動きが鈍る。
しかし、艦載機であるコスモタイガーはアステロイドでも小回りが効き、パイロットの力量によっては速度を落とすことなく動きが鈍ることはない。しかもアステロイド帯での戦闘は演習で既に経験済みである。
ルーギス艦隊は敵の攻撃を回避しつつアステロイドも回避しなければならないので、僚艦通しで衝突する艦まであった。
「ルーギス様!このままではこちらの被害が増すばかりです!一度後退しましょう!」
副官がルーギスに後退を進言する。
「馬鹿を言うな!あのようなハエども相手になぜ私が後退しなければならない!」
「し、しかし‥‥」
「本艦上方から敵機、急降下!」
オペレーターがエルドラA上方から急降下してくるコスモタイガーの機影を捉えた。
「なにっ!?」
コスモタイガー隊がエルドラAの上方から艦橋めがけて対艦ミサイルを放つ。
「ば、バカな‥‥バカなぁぁぁっー!!」
艦橋に対艦ミサイル攻撃を受けたエルドラA誘爆を繰り返しながら沈んだ。
ルーギスを含め、艦橋にいた者は艦橋部への攻撃で全員戦死し、その他の乗員も脱出する間も無く全員がエルドラAと運命を共にした。
「敵旗艦、双方を沈めました!!」
「レーダーに空間歪曲反応。敵の残存艦隊が撤退していきます」
「追わなくていいんですか?艦長代理?」
北野の問いに古代の出した答えは「追撃はしない」と言う答えだった。
その理由は元々の目標が敵の殲滅ではないためだからだと言う。
それよりも問題はα星近くにある黒いモヤだった。あの黒いモヤの正体は敵のエネルギープラントで敵艦隊が撤退したため、制御できなくなり暴走し始めた。
モヤは徐々にペテルギウスに接近していきこのままでは衝突してしまう危険が出てきた。
衝突すればハイパーノヴァの危険もあり、高エネルギーの塊なので波動砲で吹き飛ばすのも危険だった。
もはや打つ手なしかと皆が思っていたとき、新人機関部乗員で彗星帝国戦役において戦死したヤマト初代機関長の徳川彦左衛門の息子、徳川太助がかつてイスカンダルでの航海時父が残した航路データを引き出し、かつてこの宙域に残されていたガミラスのバリヤー衛星を使いプラントのエネルギーが吸い出されるよう調節し、地球をハイパーノヴァからの危機を救った。
イスカンダル救援へ向ったヤマトからオリオンα星ペテルギウス付近にて謎の艦隊と遭遇交戦との情報が入った。
交戦理由として謎の艦隊はペテルギウスから無理矢理エネルギーを採掘し、そのまま採掘されればペテルギウスが超新星化しハイパーノヴァを起こし将来的に地球に被害をもたらす可能性があり、警告するも相手はその警告を無視し戦闘行動をしてきたので、自衛のため交戦状態となったと言う。そしてその相手はデスラーの通信にあったガミラス星の爆発に関与している謎の艦隊と同一の艦隊だということも分かった。
ヤマトからの報告を受け、藤堂は渋い顔をした。
まだ彗星帝国残党軍との戦闘が終わっていない中、新たな敵の存在が報告されたのだから無理もない。
藤堂は先日就航した戦艦「ネメシス」に乗艦している山南司令に連絡を入れた。
防衛軍臨時旗艦 戦艦 ネメシス 艦橋
「山南司令、司令部より通信が入っております」
「よし、繋げ」
通信士が回線を開くとパネルに藤堂の姿が映る。
『山南君、戦況はどうかね?』
「はっ、ネメシスが戦列に加わったおかげで艦隊の士気も大いに上がっています」
山南の言うとおり、ネメシスが旗艦として就航し戦列に加わってから防衛軍の将兵の士気は高まった。その理由としてはネメシスの名前の由来が僅かながら関係していた。
ネメシスはギリシャ神話に登場する女神で、人間が神に働く無礼に対する神の憤りと罰の擬人化である。ネメシスの元来は「義憤」の意であるが、よく「復讐」と間違えられるが、彗星帝国戦役で家族をなくした乗員は連中に対し復讐するかのように敵意と闘争本能をむき出しにしてこの戦線に参加している。
『それはなにより。実は先程イスカンダルへ救援に向ったヤマトから少し気になる報告を受けたのだが‥‥』
「気になること?なんですか?」
藤堂はヤマトがペテルギウスで遭遇した艦隊がガミラス星の爆発に関与しさらに無理矢理ペテルギウスからエネルギーを採掘しハイパーノヴァを引き起こさせようとしたこと、警告を発したヤマトに対し武力行動をとったことを山南に話した。
『イスカンダルとガミラスは双子星でありその組成も似ている。その謎の艦隊の目的が惑星に存在するエネルギー資源の採掘であればガミラスを失った今、その艦隊の矛先はイスカンダルへと向けられる可能性がある。ヤマトだけでは不安というわけではないが、相手の戦力は未知数だ。そこで防衛軍の方でもヤマトに援軍を送れないだろうか?』
「援軍ですか?」
『未だ残党軍の戦闘が終わらず、艦艇が一隻でも必要だという事は十分承知しているが、そこを曲げてなんとか出来ないかね?山南君』
「‥‥」
山南司令は即座に決断は出来なかった。
確かに長官の言うとおり今の防衛軍にとって艦艇は一隻でも多く必要だ。
山南は考えた末に答えた。
「前期生産型の艦でよければ数隻ほど派遣は可能かと‥‥」
前期生産型、それは彗星帝国戦役を生き残った艦で、戦闘と航行機能の修理以外されていない艦で戦艦は拡散波動砲を装備している。
『わかった。どの艦を援軍に回すかは山南、君の判断に任せる』
「了解しました」
藤堂との通信後、山南はどの艦を派遣するか集結した防衛軍全艦艇から前期生産型のリストを見て、各艦に通信を送る。
山南は先程の藤堂との通信の内容を話した。
「すでに諸君はイスカンダルの事態については知っているかと思うが、その救援に向ったヤマトから新たな敵の存在が確認された」
山南の発した「新たなる敵」という言葉に各艦の艦長をはじめ将兵達が息を飲んだ。
「未だ彗星帝国残党軍との戦闘が継続中であるが、イスカンダルにもその敵の襲来が予測され、先程藤堂長官と検討した結果、防衛軍からイスカンダルに‥‥ヤマトに援軍を送ることとなった」
『『『『援軍!?』』』』
「しかし、援軍といっても現在の我々の戦力差から大部隊は派遣できない。せいぜい巡洋艦が二隻か戦艦が一隻程度だ。そこで諸君らの中で誰かヤマト援軍に行ってもらえないだろうか?」
少数での援軍に新たな敵の存在。
再び生還し地球へ帰還できる保障はどこにもない。
各艦の艦長は顔を見合わせているが、そんな中で志願した艦長がいた。
「司令、本艦が参ります」
「そうか、近藤。君が行ってくれるか」
山南が言った近藤とはかつて士官学校で山南と同期で彗星帝国戦時ガニメデ基地司令を勤め、土星圏の決戦時戦艦「さつま」の先任将校の役職を拝命し艦長として乗り込んだ参謀長を補佐し、参謀長が戦闘の際、艦の被弾で負傷したのち、艦長職を引き継ぎ傷ついた「さつま」を無事ガニメデ基地へと送り、木星圏でヤマトと共に共同戦線を張り、デスラー率いるガミラス艦隊と戦った。
木星圏でガミラスのデストロイヤー艦の注意を一身で引いたさつまは再び損傷し、彗星帝国本体との戦闘に参加できなかったという苦い経験がある。
近藤はその汚名を雪ぐべく今回の援軍参加に志願した。
さつまの援軍が決定したところで新たなる問題が生じた。
それはヤマトの現在位置だった。
ヤマトはα星の戦闘の遅れを取り戻すため、プラントから戦闘で消費したエネルギーを供給後、全速でα星を通過、その後再び大ワープをしてイスカンダルへの距離を縮めていた。
さつまがヤマトに追いつくには連続の大ワープが必要だった。
そこで登場したのが現在、防衛軍の技術部で開発中の超ワープ機関だったのだが、現在までの実験において、ワープ自体は成功したが、その際艦内で人体には耐えられない重力が観測機器で計測された。
第二世代型は防衛軍宛に送られてきたデスラーからの電文の中にワープ機関に関してのデータが添付されており、重力問題に関しては解決できたのだが、途中の部分がノイズでかけ落ちてしまい完全な物にすることが出来ず、第二世代型の欠点としてエネルギー干渉で衝撃を和らげている分、正確なワープが出来なくなるという結論が出されている。
時間さえあれば理論上は連続ワープが可能なのだが、今回は完成品が出来るまで待つ時間がない。
技術部からその報告を聞いた藤堂は悩んだ。
「どうしました長官?頭を抱えて?‥‥何か悩んでいるようですが?」
長官室に報告書を持ってきたコハクが藤堂に声をかける。
「ああ、コハク君か‥‥実は‥‥」
藤堂はヤマトに援軍を送りたいのだが、援軍とヤマトとの距離が離れすぎていて送るに送れない事情を話した。
「‥‥同調型の空間偏向弁とエネルギーバイパス管それと無人駆逐艦を一隻‥‥用意できますか?」
「?‥‥基地の修理ドックにそれらのパーツがあると思うが‥‥しかし一体何に使うのかね?」
コハクは第二世代型の実験デバイスのデータをもとにシミュレートを行った。
「超ワープ機関を今すぐ完成させるのではなく、二つにすればいいのです」
「二つ?」
「はい、曳航型に改修させればいいんですよ」
「曳航型?」
「超ワープを艦一隻単位ではなく、初期型のデバイスを搭載した無人艦を正確な座標にワープさせ、それが作り出す空間歪曲口に同調させた第二世代型搭載艦を送り込めば理論上正確な大ワープが可能です。多少強引かもしれませんが、今回はイスカンダルまで早くつけばいいのですから」
シミュレートの結果を見せながらコハクは藤堂に説明した。
「成程、それでその時間はどのくらいかかる?」
「技術斑の力量と人数にもよりますが少なくとも半日もあれば何とか‥‥」
「わかった。早速、山南君に今の案を提示してみよう」
藤堂は山南に先程、コハクが説明した曳航による超ワープ機関の利用を説明し、タイタン基地から工兵と資材を載せた輸送艦、そして無人駆逐艦「レイピア」をさつまのもとに送った。
それから半日後、新型デバイスを搭載した無人駆逐艦レイピアとさつまは防衛軍では初となる曳航型超ワープを行ってヤマトを追いかけていった。
七色星団宙域 ヤマト
「見えてきたな‥‥七色星団だ‥‥」
かつてガミラス軍一の智将ドメルとの決戦が行われた古戦場跡‥‥
暗黒ガスとそれぞれ異なる性質を持った七色のスペクトル光を放つ七つの惑星が形成する特殊な宙域‥‥
「つい、昨日のことのように思いますよ‥‥」
「勇敢な相手だった‥‥」
「古代、感慨にふけるのもいいが、まず先に周囲をチェックしておいた方がいいぞ。この宙域は暗黒ガスが多い。敵が待ち伏せするにはもってこいの場所だからな」
「そうだな。雪、頼む」
「了解」
雪が空間スキャンで周囲を解析する。この宙域は暗黒ガスと七つの惑星から発せられるスペクトル光の影響でレーダーの映りが悪いのだ。
すると、ヤマト後方で空間歪曲が観測された。
「っ!? 本艦後方に空間歪曲反応を確認」
「何!?敵か?」
第一艦橋に一瞬の緊張が走った。
「いえ、違います。この反応は‥‥パネルに投影します」
パネルに映ったのは防衛軍の戦艦と無人駆逐艦だった。
「防衛軍の戦艦?」
「艦長代理、後方の戦艦から通信が入っています」
「通信回線を開け」
「了解」
敬礼し艦長服を着た男がパネルに映し出される。
『タイタン基地から参りました。さつま艦長の近藤です』
「ヤマト艦長代理の古代です。遠路はるばるご苦労様です。しかし、近藤艦長はなぜここへ?」
『藤堂長官と山南司令がα星での報告を受け、ヤマトに援軍を向わせることを決定し、小官が援軍として赴きました』
「そうでしたか‥‥ありがとうございます。近藤艦長」
『いえ、前回の雪辱を果たすため、さつま乗員一同粉骨砕身でヤマト護衛の任に就きます。では‥‥』
「すいません。近藤艦長、ちょっとよろしいですか?」
真田が近藤艦長を呼び止めた。
『なんでしょう?』
「一つ腑に落ちない点がありまして‥‥近藤艦長、さつまはどのようにしてここまでこえたのですか?従来の波動エンジンではここに来るまでには我々と同じ時期に出発しなければ間に合わないはずですが?」
近藤は藤堂の秘蔵っ子と言われるコハクが提案した曳航型にした次世代型エンジンの使用方法を真田に説明した。
説明を受けた真田は驚き感心した後、ヤマトのほうでもその大ワープに同調出来るように技術班と大山を呼んで早速作業を開始した。
敵の襲撃が予想される宙域であったが、少しでも早くイスカンダルへと着きたいヤマトにとってはやむを得なかった。
作業が終わるまで、ゆきかぜ・改・レイピア・さつまは周囲を警戒しながらヤマトを護衛していた。
ヤマトが作業をしているその頃、
「フフフ‥‥我々の方が一歩先んじていたようだな。貴様らのワープ航路を計算し、この場所へとやってくることはすでに割り出せておったのだ。艦隊集結が間に合うかどうかだけが心配だったが、どうやら杞憂だったようだな‥‥まぁ、奴らの貧弱なワープ装置ではこれが限界というところか‥‥」
α星の戦闘から命からがらに離脱したクーギスが前回の汚名を晴らすため、そして双子の兄、ルーギスの仇を討つため、空母を中心とする機動部隊を率いて布陣していた。
「クーギス様、全空母の攻撃機の準備が整いました」
「よし、艦載機の射出シークエンスに入れ、レーダー妨害開始」
「了解、艦載機射出シークエンス開始。レーダー波妨害タキオン波、放出」
「待っておれ、兄上。あの小ざかしい者どもを、真の恐怖を味あわせながら葬り、兄上の元へ下僕として送り届けてやろう」
ヤマト 第一艦橋
クーギス艦隊の妨害波を受け、ヤマトの空間スキャンは機能を停止し、レーダーもノイズが多量に入りこちらも機能が低下した。
レーダーの異常に気づいたのがレーダー担当の雪だった。
「あら?」
「どうした?」
「空間スキャンが中断してしまいました‥‥なんだが様子がおかしいわ。コスモレーダーもノイズが多量に入って機能が低下しています。」
「真田さん。レーダー機器の方は大丈夫ですか?」
「うむ、異常はないようだが‥‥雪、とりあえず中断した空間スキャン画像をパネルに出して見てくれ」
「了解」
メインパネルに先程までヤマトがスキャンしていた七色星団の宙域図が表示されるが、そこにはおかしな様子は特に見られない。
「これだけ恒星が密集しているんです、恒星磁場の影響ではないんですか?」
七色星団の特色から今回のレーダー異常は自然現象ではないかと太田が指摘する。
「いや、念には念を入れておいた方がいい。雪、画像を時間軸にそって巻き戻してくれないか?」
白色彗星戦役前に装備したタイムレーダーの記録を遡らせていると。
「ストップだ!止めてくれ!」
ある時間軸の画像を見て真田が待ったをかけた。
「左上‥‥左舷前方の宙域を拡大してくれ」
真田の言われた宙域を拡大していくと人工的なエネルギー反応が探知された。
「これは!」
「反応が薄いが、おそらく周囲に立ち込める暗黒ガスのせいだろう。エネルギー反応はα星で遭遇した敵のものと一致している」
「やはり敵は待ち伏せをしていたわけですか‥‥」
「この時点から四秒後に反応が消失しています。もしかすると先程からのレーダー異常も‥‥」
「うむ、敵の妨害だと見て間違いないだろう。空間スキャンの実行が少しでも遅れていれば完全に奇襲を受けていたところだ」
スキャンデーターのエネルギー反応の解析の結果、小さなエネルギー反応が多数観測され、その結果これが敵の艦載機であり、敵は空母を中心とした機動部隊であるということが分かった。
「古代、艦載機が飛び立っているということは、敵はもう攻撃態勢にあるってことだ。いや、それどころかもうこちらに進軍してきている可能性も高い」
島の指摘を受け、古代はまず作業の進行状況を大山に聞いた。
すると作業はまだ終わっておらず、兵器は使えるがヤマト自体はまだ動かせない状況だった。
「総員戦闘配置!対空攻撃に備えるんだ!コスモタイガー隊全機、迎撃準備!相原、さつまに連絡、敵の艦載機はヤマトとコスモタイガーで引き受ける。さつまの方には敵の本体を叩くようにと!」
「了解」
コスモタイガー隊全機がヤマト前面に展開し、敵の艦載機を迎え撃つ。
敵艦載機はエネルギー反応から爆撃機の編隊であることが分かった。
コスモタイガー隊はドックファイトをやりながら機体に搭載されている小型のレーダー衛星を射出、セットし、レーダー範囲を少しでも拡大させようとし、同時に敵のレーダーも妨害させようと、タキオン阻害チャフをばら撒いた。
クーギス艦隊の艦載機は数に物を言わせヤマトに攻勢をかけるが、戦闘機VS爆撃機の戦いなので、クーギス艦隊の艦載機は次々と撃ち落されていく。
「えええぃ、まだ撃沈できんのか!」
撃沈どころか未だヤマトに接近出来ない状況にクーギスは苛立ち始める。
「そ、それが敵艦載機の迎撃網は厚く突破が困難なようです」
「くそっ」
「く、クーギス司令!敵の艦載機からレーダー妨害物が散布されています。こちらのレーダーも機能が低下しています」
「小癪な。直掩の艦載機を攻撃機体の護衛につけさせろ。さっさとあの小うるさいハエどもを叩き落すのだ!」
「りょ、了解」
直掩機の護衛もと攻撃機隊はヤマトへと攻撃に向った。
その直掩機の反応を雪は捉え、コスモタイガー隊に注意を呼びかけた。
「来やがったか‥‥今度のヤツは動きがケタ違いだな‥‥全機に警告!おそらく奴らはエース級だぞ、気をつけろ!」
山本は爆撃機を後回しにし、先に護衛機を相手にした。
コスモタイガー隊が艦載機を相手にしている最中さつまとレイピアは敵本体を叩くため、索敵を行いながら進撃していた。
敵艦載機の来襲方向やレーダー衛生からの情報を頼りに進んでいくと、敵は左舷前方にあるアステロイドの反対側に布陣していることがわかった。
「拡散波動砲発射用意。敵本体を一気に殲滅する」
「了解。波動砲へエネルギー注入」
さつまは敵のレーダー機能が低下している隙をついて波動砲の射程まで接近し、発射準備を整える。
「波動砲発射準備完了!」
「波動砲発射!」
さつまから拡散波動砲が発射された。
「く、クーギス司令!前方から高エネルギー反応が!う、うわぁぁぁぁぁぁぁー!!」
クーギスが前方を見ると、目映い光が広がる。
「おのれ、おのれっ!おのれぇぇぇぇぇぇっ!」
轟音と光の中、クーギスの艦隊は護衛艦数隻を残し消滅した。
残存艦は暗黒ガスの中へと入って撤退していった。
北野は追撃を進言したが、古代はそれを却下した。
理由として今のヤマトは動ける状況ではないし、そもそもヤマトの任務は敵の殲滅ではないためだった。
北野はどこか納得していない様子だった。
今回の一番の功労者はコスモタイガー隊のパイロット達であった。そして負傷者も一番多かった。
山本は負傷した隊員達一人一人を見舞った。
その中で敵のエースパイロットと戦い撃墜されかけた坂本と椎名が医務室で意気消沈しているのを見て、怖いもの知らずと強さとの違いを教えた。そして去り際に「尾翼のマークが増えなくてよかった」と呟いた。
二人が尾翼のマークのことを軍医の佐渡先生に聞き、それが撃墜マークではなく、今までの戦いで戦死した仲間のパイロットのことだと知った。
そして古代と島は北野に白色彗星の残党軍とは何か?暗黒星団帝国とは何か?を問い、そしてガミラスとは何かを聞き、なぜ残党軍との戦いで北野の作戦が採用されたのかを語った。
北野は自分の作戦が採用された真実を聞き、自分の考えがすべて正解ではなかったことに気づかされ、今後自分はヤマトで‥‥防衛軍で良い指揮官になれるのだろうか悩み、考えることとなった。
・・・・続く
ではまた次回。