機動戦艦ナデシコ コハクのモノガタリ   作:ただの名のないジャンプファン

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更新です。


第56話

 

 

 

地球連合大学の卒業を間近に控えた士官候補生たちの実地研修の最中、火星の後継者の残党が突如、新地球連合政府と統合軍に対して宣戦布告を布告してきた。

しかし、当の統合軍は、火星の後継者の残党など、今更脅威とは思っておらず、討伐と鎮圧に関して、宇宙軍へと対応を任せた‥‥と言うよりも押し付けてきた。

連合宇宙軍総司令のミスマル・コウイチロウは、訓練航海中だったナデシコにもその対処に当たるように命令した。

ナデシコは地球連合大学の艦長候補生を乗せての訓練航海中で既に今回の航海のためにオモイカネは地球連合大学の艦長候補生である学生が艦長と言うことでプログラミングされており、書き換えるには時間がかかる。

だが、現状において時間がおしている中で無駄な時間を費やすわけにはいかない。

ルリ、サブロウタ、ハーリーのサポートを受けて、艦長候補生であるジーク・ブレストーン・ユグドミレニアはまだ学生ながらもこの火星の後継者の残党軍鎮圧のため、実戦に挑むことになった。

そして、ひとまず補給のため、月のドックへと向かうことになった。

 

月へと向うナデシコ、しかし月へと向う途中でもさまざまなアクシデントがあった。

月に向かう途中でチューリップを発見しそれを撃破。

地球本土防衛用の戦闘衛星が火星の後継者残党メカのヤドカリに寄生され危うく地球本土にミサイルが発射されそうになったのでそれを防いだり、哨戒中だった友軍の駆逐艦、カトレアが敵艦の襲撃を受け、航行不能に陥ったので、その救援に向ったりと、もはや訓練とは言えない程のアクシデントばかりであった。

そんなアクシデントを乗り越えようやく月へと到着したナデシコ。

 

「ネルガル月ドックからの、誘導システムを確認」

 

「ナデシコ、降下します」

 

ゆっくりと月に向かって降下するナデシコ。

その時、艦内に警報が鳴り響く。

 

「月面に重力波反応を感知!」

 

「敵艦か! なんで今までレーダーにかからなかったんだ!」

 

「わかりません。と、とにかく急に現れたんです!」

 

「待ち伏せ‥‥ですね」

 

「敵も簡単には補給させてくれませんねぇ~」

 

敵としても補給路を抑えるのは定石であり、当然その手を打ってきた。

 

「詮索は後です。艦内警戒態勢パターンCからAへ移行! 敵戦力の解析を急いでください!エステバリス隊はいつでも発進できるよう待機!」

「「「「了解!」」」」

 

ジークは学生ながらもまずは目の前の敵に対処するために指示を出す。

 

「敵戦力が判明。カトンボ級駆逐艦3隻、バッタが約30機です!」

 

索敵から判明した敵戦力をハーリーが報告する。

 

「結構な数ですな~‥‥どうします、艦長?」

 

プロスペクターがジークに意見を求める。

 

「確かにそれなりの戦力ですが、月ドックを落とすわりには、少ない気がするのですが‥‥」

 

敵戦力が表示されたウィンドウを見ながら考え込むジーク。

月にはネルガルのドックの他にも軍の基地が存在している。

そんな月をたったこれだけの兵力ではとても陥落することなんて不可能だ。

ナデシコが救援を求めれば、統合軍はともかく、宇宙軍の援軍ぐらいは見込める。

敵は何か策があることは十分考えられるが、どんな作戦を立てているのか分からない。

 

「私もそう思います。ですが、このまま放っておくわけにもいきません。とりあえず、クレーターに隠れて、敵を引き寄せた後、グラビディーブラストで一掃しましょう」

 

ルリ自身もジークと同じで敵戦力がたったのこれだけなのは妙だが、ひとまず目の前の敵を一掃することを進言する。

 

「っ!?ホシノ少佐今なんて?」

 

「えっ?敵を引き寄せた後、グラビディーブラストで‥‥」

 

「その前!」

 

「クレーターに隠れて‥‥っ!?」

 

ジークに指摘され何かに気づくルリ。

 

「ハーリー君、ドック周辺にあるクレーターの位置を出して!」

 

「は、はい」

 

ルリに言われて、ハーリーは月ドックを中心にメインスクリーンに月面の地図を映し出す。

 

「やっぱり‥‥」

 

「ええ、艦長の予想通りですね」

 

「「「?」」」

 

ジークとルリは敵の作戦がどんなものなのか大体の見当はついた。

 

「皆さん作戦が決まりました」

 

ジークはクルーを安心させる、あたたかい笑顔を見せながら作戦を説明した。

 

 

ナデシコはクレーターの一つにその身を隠した。

 

「カトンボ及びバッタ、真っ直ぐ月ドックに向け進撃。距離、本艦の前方百‥‥九十‥‥八十‥‥!」

 

ハーリーが敵の接近距離を読み上げ、ジークはタイミングを計り指示を出す。

 

「相転移エンジン始動!ナデシコ浮上と同時にエステバリス隊全機発進! グラビティーブラストチャージ及びディストーションフィールド展開!」

 

『待っていました!いくぜ、ヒカル!サブ!』

 

『はいはい』

 

『行ってきまーす!』

 

「皆さん、グラビディーブラストのエネルギーチャージ終了まで、敵を引き付けつつ射程内に追い込んで下さい!」

 

『わぁーてるよ!』

 

カトンボ級駆逐艦の前面に展開するバッタに向かって、攻撃をかける赤、黄のエステバリス・カスタムに青のスーパーエステバリス。

そして敵の存在を探知したのかそれにつられるように集結し、攻撃態勢をとるバッタ。

 

「グラビティーブラスト、チャージ完了!」

 

「エステバリス隊に退避命令!グラビディーブラスト発射準備!目標、前方敵艦隊!」

 

「エステバリス隊、待避完了しました。」

 

「グラビティーブラスト、発射!!」

 

「発射!」

 

グラビティーブラストを受け、消滅するカトンボとバッタ。

しかし僅かながらもバッタが射程内から外れていた。

ジークはエステバリス隊に残敵の掃討を指示する。

3機のエステバリスは意図も簡単に残ったバッタを殲滅した。

 

「そろそろだな‥‥全艦、浮上!虫型戦闘機、全機発進!」

 

クレーターから浮上した、木連型駆逐艦1隻とカトンボ2隻。

そして、その3艦から出撃する多数のバッタ。

 

「月基地は我々が占拠する。すみやかに月基地を明け渡せ!手向かうならば我々は攻撃も辞さん!」

 

敵駆逐艦の艦長からの通信を受け、ジークは表情を強張らす。

月基地を奴らに明け渡す気なんてある分けがないが、それを阻止するには相手を撃沈しなければならない。

撃沈‥‥すなわち相手を殺すということになる。

今まで相手にしてきたのは全て無人兵器‥‥だからこそジークは躊躇なく攻撃が出来たのだが、今回は人が乗っている艦を沈めなければならない。

 

(軍人と言う職につくということはいつか人を殺す‥‥自分ではわかっていたのに‥‥まさか、こんなにも早くその機会が回ってくるなんて‥‥)

 

ジークは顔には出さないが、震えながらもギュッと拳を作り必死に不安と恐怖に戦っていた。

 

(ここで俺が不安や躊躇すればクルーの安全を守れない‥‥逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ‥‥)

 

「艦長?」

 

ルリは先程の敵艦長の通信から様子がおかしいジークに声をかける。

 

「な、なんでしょう?」

 

「いえ、少し艦長の様子がおかしいので‥‥」

 

「だ、大丈夫です。ホシノ少佐」

 

不安を必死に隠しているが、ルリもなんとなく察したのだろう。

 

(ホシノ少佐だって、通ってきた道なんだ‥‥ここで逃げる訳にはいかない)

 

訓練航海でいきなり実戦に巻き込まれ、そして人を殺さなければならなくなった今回のこの状況。

普通の人ならば不安や恐怖が芽生えなければおかしいだろう。

 

「艦長、ここは私が指揮を執りましょうか?」

 

「‥‥いえ、現在のナデシコBの艦長は俺です。このまま私が指揮を続行します。マキビ少尉、グラビティーブラストチャージまで、後どのくらいかかりますか?」

 

「あと3分ほどかかります」

 

「了解!エステバリス隊は敵の迎撃に、イズミさんは狙撃による援護をお願いします!」

 

『漁船の船員さんに一言‥‥りょうかい?‥‥くくく‥‥』

 

「‥‥と、とにかく、お願いします(汗)」

 

リョウコ達のエステバリス隊は敵バッタに向かってラピットライフルや、イミディエットナイフで攻撃をかける。

イズミはレールカノンで遠距離から敵を狙撃し、援護する。

 

「グラビティーブラスト、チャージ完了!」

 

「エステバリス隊は退避!グラビティーブラスト発射!」

 

グラビティーブラストに包まれる敵艦隊。

 

「カトンボ級、撃破!木連型駆逐艦、大破!バッタは九割撃破しました」

 

遠距離とフィールドを張っていたおかげか木連型駆逐艦は月の表面に不時着した。

ジークは駆逐艦に降伏勧告を出し、駆逐艦側もこれを承諾したが、この降伏に不満な乗員の1人が木連起動兵器『マジン』でナデシコへ攻撃を仕掛けてきた。

しかし、大戦時は強力なマジンも機体の老朽化には逆らえず、エステバリス隊の攻撃で機関が暴走し、自滅するような形で爆発。

これにより月ドック攻防戦は火星の後継者側の敗北で終わった。

ナデシコが補給中、ジークはルリに軍人となり人を殺めることについてどう思っているかを聞き、ルリが軍人となった経緯を踏まえ、ルリの硬い信念を聞いて、自分ももう迷わないと硬く心に誓った。

 

 

ナデシコが月で補給中、地球では‥‥

 

オーストラリア 首都 キャンベラ クリムゾン本社ビル

 

クリムゾングループ‥‥反ネルガル企業の急先鋒で、木連との戦争後、ボソンジャンプの研究独占とナノマシンを使用せずに起動できるステルンクーゲルの開発で今ではネルガルを超える利益を生み出している地球有数の大企業。

その企業本社ビルにある重役専用の執務室に座る1人の女性。

デスクには音声のみの空間ウィンドウが表示され、通信で、誰かと話している。

 

『それで、計画の方は順調に進んでいるのかね?』

 

「ええ、問題無く‥‥火星の後継者も行動を開始しています‥‥」

 

『くれぐれも言っておくが、我が国はこの件に関して、一切無関係であるから、そのつもりで‥‥』

 

「どうぞご心配なく。あなた方の国が表立つことは、決してありません。‥‥ただ、成功した時の見返りは、きっちり頂きますわよ‥‥」

 

『わかっている‥‥』

 

会話が終わるのを見計らったかのように、切り出す秘書の男。

 

「ナデシコは月での補給を終え、ターミナルコロニー『コトシロ』に向かっている模様です」

 

「そう、じゃあ私たちもそろそろ準備しましょう。ターゲットは捕捉しているわね?」

 

「はい‥‥」

 

「おとなしく待ってなさい。イネス・フレサンジュ‥‥そしてE-01いえ、タケミナカタ・コハク‥‥」

 

そう言って彼女は、静かに笑った。

彼女の目の前にはイネスの顔写真と隠し撮りされた今のコハクの姿を映し出した空間ウィンドウがあった。

 

月にて補給を終えたナデシコはターミナルコロニーのコトシロへと向かう。

なぜ、ナデシコがコトシロへとむかっているのかというと、月ドックで補給中のナデシコに宇宙軍総司令のミスマル・コウイチロウが火星極冠遺跡にいるイネス・フレサンジュの保護を命令し、ナデシコはコトシロを経由して火星へと向っていた。

その途中、ネルガルシークレットサービス所属のゴート・ホーリーが乗った駆逐艦、サルビアが火星の後継者の襲撃に遭い、サルビアを救助した。

サルビアは、タグボートが月へと曳航することになったが、ゴートはナデシコへ乗艦し火星へ同行することになった。

 

「ターミナルコロニー『コトシロ』への進入経路に入ります」

 

「重力波反応を感知!敵艦です!」

 

「やはり、すんなりとは通してくれませんか‥‥」

 

「艦長、『コトシロ』は地球にもっとも近い、ターミナルコロニーの一つだ」

 

「わかっています。火星へのルートを確保するためにも、撃破しなければ‥‥」

 

「艦長、連合宇宙軍本部から通信です」

 

『ナデシコ、現状を報告してくれ』

 

コウイチロウからの通信にジークはナデシコの現状を報告する。

 

「現在『コトシロ』の進路上に、敵艦隊を確認しました」

 

『うむ、『ツキオミ』、『スクナヒコ』の、両コロニーでも戦闘が始まっている。現在、宇宙軍第三艦隊、及び第五艦隊が応戦している。 火星の後継者は、地球圏のコロニーを占拠するつもりらしい。 何としてでも阻止してくれたまえ」

 

「了解しました」

 

通信を終え、空間ウィンドウが閉じる。

 

「総員戦闘配備!艦内警戒態勢パターンA!各エステバリスのパイロットは、発進準備!」

 

ジークが艦内に戦闘準備の号令をかけ、クルー達は急ぎ戦闘配備につく。

 

「ほんじゃ、まあ、俺はエステバリスで待機します」

 

「おねがいします。場合によっては、私も後から行きます」

 

ブリッジを出て行くサブロウタ。

 

「ナデシコ、戦闘領域まで前進!」

 

「ナデシコ、前進します」

 

ナデシコは戦闘宙域へと突入した。

 

「敵戦力、判明しました。‥‥ヤンマ級戦艦3隻、積尸気(ししき)4機、 夜天光型が1機!コロニー守備隊と既に戦闘を行なっています」

 

『夜天光だって!あの、『北辰』の搭乗機か?!』

 

 ハーリーの通信を聞いたサブロウタが、叫ぶ。

 

「‥‥北辰?」

 

ジークは、『北辰』と聞いて首を傾げる。

どうやら、人の名前のようであるが、いったい誰なのか見当もつかない。

 

「北辰‥‥かつての木連代表だった草壁春樹直属の暗殺集団のリーダー‥‥A級ジャンパー誘拐の実行グループの隊長です」

 

ルリが辛そうに答える。

 

「その北辰はどうしたんですか?」

 

「火星での戦闘で死亡しています。遺体の方もちゃんと確認されています」

 

ハーリーは、ルリの気持ちを気遣って、そう答えた。

 

「と、いうことは、目の前の機体は同機種ですが、パイロットは別人ということですね?」

 

「おそらく‥‥」

 

しかし、影の部隊と言うことで、北辰が自分の影武者を用意していた可能性もあり、油断はならないと思うルリだった。

 

「‥‥本艦はコロニー守備隊を援護します。エステバリス隊、発進!ディストーションフィールド展開!ナデシコ、最大戦速!」

 

エステバリス隊を前面に展開し、コロニーへと接近するナデシコ。

 

一方、火星の後継者側では、

 

「‥‥遅い!」

 

「うわぁぁぁー!!」

 

「ぎゃぁぁぁぁー!!」

 

夜天光は、錫杖型の槍で守備隊のエステバリス・量産型を次々と撃破。

さらに槍を投擲し、守備隊のリアトリス級戦艦をも沈める。

その強さは、見るからに圧倒的であり、鬼神のようでもあった。

その夜天光に乗るのは、今回の叛乱のリーダー、南雲義政。

決起の首謀者自ら、機動兵器に乗って戦場に出るのが、いかにも元木連の将校らしい。

その、南雲のもとに通信が入る。

 

『中佐、敵の援軍です!』

 

「なに?」

 

『中佐、補給物資の搬入、終了しました。』

 

「よし。補給艦隊は、ただちに戦線を離脱せよ。我々は、補給艦隊離脱の時間を稼ぐぞ」

 

援軍たる、ナデシコに向かおうとする、夜天光。

 

『お待ち下さい、中佐。ここは我らにお任せを。中佐は、補給艦隊と共に‥‥』

 

「しかし‥‥」

 

『中佐にもしもの事があれば、我らの願いが潰えてしまいます。ここは、どうかご自重を‥‥」

 

部下たちはここで万が一にも南雲を失うことになれば、自分たちはあっという間に瓦解してしまう。

地球との戦争はまだまだこれからなのだ。

その大事な戦いの序盤戦で、大切なリーダーを失うわけにはいかない。

 

「‥‥わかった。頼んだぞ」

『はっ!』

 

『おまかせください』

 

部下たちを残すことに後ろ髪を引かれる思いがあった南雲であるが、まだ自分たちの戦いはこれからなのだ。

ここで散るわけにはいかない。

それは南雲自身自覚していた。

彼は部下たちに任せて補給船団と共に戦線を離脱した。

 

 

ナデシコB ブリッジ

 

「夜天光、敵部隊の一部と共に戦場を離脱」

 

『どういうことだ?』

 

「目的は達した‥‥と、いうことでしょう。とにかく、まだ敵は残っています。目の前の敵に集中してください」

 

『わかった。』」

 

「新たに、重力波反応!‥‥前方に四連筒付木連式戦艦3隻を確認!」

 

『敵の援軍か‥‥』

 

「ナデシコは守備隊残存部隊と合流!残存艦と共四連筒付木連式戦艦の相手を!エステバリス隊はヤンマ及び積尸気を相手して下さい。ホシノ少佐、俺もエステバリスで出ます。後は、お願いします」

 

「了解。何かあったら連絡します」

 

ナデシコから発進するスーパーエステバリス。 

月での補給で、搬入された新しいフレームである。

近年開発採用された最新型のフレームで、固定武装として連射式キャノン砲、ミサイルポッドを持つ。

 

『コトシロ』で行われた戦闘の経緯は増援の四連筒付木連式戦艦部隊は、ナデシコと守備隊のリアトリス級戦艦のグラビティーブラストで撃破。

ヤンマ及び敵機動兵器も、ナデシコ所属のエステバリス隊と守備隊所属のエステバリス隊で撃破した。

 

『しかし、なんであの夜天光、途中で逃げやがったんだ?』

 

『さあね‥‥でも、あのままここにいられたら、どうなっていたか分からないのは、確実』

 

『うわぁー、久しぶりに見る、「シリアス・イズミ」ちゃんだ』

 

『‥‥と、とにかく、ナデシコに帰還しましょう。ホシノ少佐、戦闘配備を解除。被害状況を確認して下さい』

 

コロニー守備隊に僅かながらも被害を出したが、幸いナデシコや、エステバリスに然したる被害も無く、一路火星を目指すナデシコ。

 

「前方にターミナルコロニー『コトシロ』を確認」

 

「ディストーションフィールド、出力最大!」

 

「ルート確認。コトシロ、タヂカラ、ウズメを経由して火星へ!光学障壁展開」

 

「各員、最終チェック」

 

「通信回線閉鎖、生活ブロック準備完了」

 

「エネルギー系統、OK!」

 

「艦内警戒態勢、パターンBへ」

 

「フィールド出力も問題無し。その他まとめてオールOK!」

 

「フェルミオン=ボソン、変換順調」

 

「艦内異常無し」

 

徐々に、体内のナノマシンが輝きだすルリ。

 

「レベル上昇中」

 

「じゃんぷ」

 

ボソンジャンプするナデシコ。

が、しかし、

 

「艦長!ここは火星じゃありません!ターミナルコロニー『ウズメ』です!」

 

「ヒサゴプランにシステムバグが発生した為、ルートが変更されてしまったようです」

 

「誰かがヒサゴプランのメインシステムを、いじり回しているんですよ。エンジンにも異常な負荷がかかっています」

 

「その誰かって‥‥?」

 

「おそらく火星の後継者‥‥でしょうね」

 

「連中はヒサゴプランのシステム全体を、乗っ取るつもりなんでしょう」

 

「やばいじゃん。‥‥こりゃ、急がないと」

 

「もう一度『ウズメ』から、火星へジャンプできますか?」

 

「無理だと思います」

 

「システムに計算誤差が生じています。次は何処に飛ばされるかわかりませんよ」

 

「仕方ありません‥‥通常航行で火星を目指しましょう」

 

「そうですな。‥‥下手にジャンプして、これ以上エンジンに負荷をかける訳にいきませんからな」

 

(これが、例の波動エンジンならば、ここまでの事態にはならなかったのでしょうけど‥‥)

 

プロスペクターは、銀河に搭載されている波動エンジンならば、ターミナルコロニーを使用しなくても目的地である火星へもっと早く行けると口惜しんだ。

まだ波動エンジンの量産はネルガルでも整っていない。

せめて、ナデシコに波動エンジンが搭載されていれば、ここまで時間を惜しむこともなかっただろうと‥‥

 

「艦長、出来るだけ戦闘を避けて、火星へ直行しよう」

 

ナデシコは周囲を警戒しながら通常航行で火星へと目指した。

 

 

ただ強制ルート変更を受けたため、ナデシコのエンジンに無理な負荷がかかり、整備員がエンジンの総チェックを行っている。

ジーク自身も艦の状態が心配となり、エンジンルームへと様子を見に来た。

 

「エンジンの様子はどうですか?ウリバタケさん」

 

「おお、艦長。あんまり良くねぇな。やっぱりかなりエンジンに負荷がかかっているぜ」

 

「そうですか‥‥」

 

「まぁ、とりあえずやれるだけやってみる」

 

「ありがとうございます。それで、どのくらいで出発出来そうですか?」

 

「そうだなぁー、あと10分ってとこだな」

 

「なるべく早く、お願いします」

 

「ああ、何かあったら連絡するよ」

 

ここにいても何もやることが無いと判断したジークはブリッジに戻ることにした。

機関室から出るところで、ウリバタケが呼び止める。

 

「艦長、そう心配すんな。俺たちにまかせろ。俺たちは、整備と修理が仕事。あんたは、どうやって奴らと戦うか考えるのが仕事だろう?それに、あんたが心配すりゃーエンジンが直るわけじゃねぇんだからよ」

 

「そうですね‥‥修理作業、頑張ってください」

 

「おう」

 

ジークはウリバタケの言葉に笑顔で答え出ていく。

 

エンジンルームをはじめとし艦内の被害状況を直接目で確認し終え、ブリッジに戻ったジーク。

 

「艦長、エンジンはどうでした?」

 

ルリがジークにエンジンの状況を尋ねる。

 

「ええ、とりあえず10分後には出発出来そうです。ただし、エンジンを始め、あまりいい状況ではありませんね‥‥やはり、なるべく戦闘をさけて火星に向かいましょう」

 

「そうですね」

 

「マキビ少尉、レーダー監視を厳重にお願いします。出来るだけ、敵に見つからずに火星に着きたいので」

 

「は、はい!」

 

「ふふ、そんなに緊張しなくても大丈夫。いつも通りやってもらえばいいんです」

 

「は、はい」

 

火星周辺に存在するアステロイドや戦争の爪あとの残骸の中を潜り抜けながら火星を目指すナデシコ。

そしてようやく火星宙域へと着いた。だが、予想通りというか、衛生軌道上に敵艦隊がいた。

 

「敵戦力、判明しました。」

 

「詳細は?」

 

「木連型駆逐艦4隻。両サイドから本艦を包囲しようとしている模様です。」

 

メインスクリーンに表示される敵の配置図。

 

「ウリバタケさん、エンジンの状況は?」

 

『今のところは大丈夫だ。連続で全力運転したり、グラビティーブラストを連射しなければな。』

 

ウリバタケの説明を聞き、頷いたジークは直ちに作戦を説明し、それを実行した。

 

「面舵20、目標右翼側木連駆逐艦群。エステバリス隊発進!」

 

ナデシコから発進する、エステバリス隊。

ジークが考えた作戦はまずナデシコに比較的近くにいる右翼側の駆逐艦群の主砲たるリニアアキャノンを封じることだった。

エンジンが不安定なナデシコにとってリニア方式で加速させた弾体は脅威であり、もしこれが機関部に被弾なんてすればナデシコは航行不能になりその後、敵駆逐艦からの集中砲火を浴びることになる。

そうなればいくらナデシコといえど撃沈は時間の問題となる。

ジークはエステバリスを中心とした時間差各個撃破戦法をとり、敵の包囲網を破った。

 

「後方に敵艦!敵の援軍です!」

 

「種別は!?」

 

「ヤンマ級です!数は3隻!」

 

「っ!エステバリス隊に帰還命令を!帰還後、このまま火星へ直進!」

 

「迎撃はしないんですか?」

 

「これ以上戦闘が長引けばこちらが不利です。エンジンが動けるうちに火星へ向います」

 

「了解」

 

大気圏突入の為、徐々に高度を下げるナデシコ。

 

「大気圏突入準備完了」

 

「ちょっと待った!フィールド出力が低下している!」

 

「あのヘンテコジャンプのせいですよ。出力モニター、イエローからレッド!」

 

『相転移エンジンにトラブル発生!』

 

「ナデシコ、エンジン出力低下!突入コースを外れて、火星に降下中!」

 

『エンジンに、異常振動を確認!このままだと爆発するぞ!』

 

「‥‥機関出力を上げて、突入コースを補正!」

 

『ちょっと待て、艦長!これ以上出力を上げると、本当にエンジンが爆発しちまうぞ!』

 

「エンジンはどのくらい保ちますか?」

 

『せいぜいもって15秒だ!それ以上はマジでヤバい!!』

 

「ギリギリまで推進継続!」

 

「カウントダウンします。15‥14‥13‥‥5‥4‥3‥2‥1‥‥総転移エンジン停止」

 

「突入角度補正完了!」

 

「総員、対ショック姿勢!各ブロック隔壁閉鎖!」

 

かなりの高速のまま、火星へと降下するナデシコ。

そのまま地表に不時着し、数百メートル滑った後ようやく停止した。

 

警報が流れる艦内。

ブリッジでは、皆シートベルトをしていたおかげで、投げ出された者はいないようだ。

その中、一瞬の気絶から目覚めるジーク。

 

「‥‥み、皆さん、怪我はないですか?」

 

「‥‥え、ええ、なんとか‥‥」

 

「‥‥俺も、大丈夫ッス」

 

「私も怪我はありません‥‥」

 

ブリッジの3人の無事を確認し ほっ、と胸をなで下ろすジーク。

そして、被害状況の確認と負傷者の救護、現在位置の確認を急がせる。

特に負傷者の救護を最優先させた。

そこにウリバタケから通信が入る。

まず、ウリバタケの様子を聞くジーク。

 

「ウリバタケさん、怪我はありませんか?」

 

『ああ、大丈夫だ。俺もコイツらもピンピンしているよ』

 

通信で話す限り、ウリバタケや整備犯のメンバーには怪我は無さそうだ。

 

「それで、エンジンはどんな状況です?」

 

『だめだな‥‥完全にイカレちまったよ‥‥エネルギー出力の臨界点を制御できねぇんだよ‥‥今、エンジンを動かしてみろ‥‥ナデシコはエンジンごとぶっとんじまうぞ!』

 

「修理は可能ですか?」

 

『難しいところだが‥‥とにかくやってみる』

 

「お願いします」

 

『わかった。‥‥時間があったらあとで機関室まで来てくれや』

 

通信を切り、ウリバタケたちはエンジンの修理に取り掛かる。

 

「ふぅ~‥‥マキビ少尉、ナデシコの現在位置はわかりましたか?」

 

次にナデシコの現在位置を知るためにハーリーにナデシコの現在位置を尋ねるが、

 

「だめです。レーダー故障のため、まだ現在位置の特定ができません」

 

レーダーの故障で現在位置の特定が不可能となっていた。

 

「艦長、エンジンとレーダー以外は特に被害はないッス」

 

「救護班より報告。負傷者も少数のようです」

 

「よかった‥‥ホシノ少佐、しばらくはここから動けそうにありません。おまけにレーダーも故障している。‥‥とにかく、手の空いている人に肉眼による周囲の監視をお願いしてください」

 

「了解」

 

エンジンの動かないナデシコ。

 

それは瀕死の狸同然。

 

さらに、レーダーまで故障している。

 

それは目も耳も塞がれ使えない状態

 

場所は、おそらく火星の後継者の勢力範囲。

 

地の利、数においても敵の絶対有利。

 

ナデシコは、かなり危険な状況へと追い込まれてしまった。

 

 

 




ではまた次回。
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