機動戦艦ナデシコ コハクのモノガタリ   作:ただの名のないジャンプファン

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第57話

南雲義政率いる火星の後継者残党の討伐のため、艦長候補生のジークは火星へとやって来た。

しかし、これまでの戦闘でナデシコはボロボロの状態‥‥

火星には既に火星の後継者の残党軍が多数存在していると思われ、ナデシコは今、危機的状況に置かれていた。

傷ついたナデシコの艦内の状況を、自分の足で見て回るジーク。

わざわざ艦長自ら見回らなくてもブリッジに居れば各部署から報告がいくのでそれを聞くだけでよいのだが、ジーク本人としては自分の目で確かめたかったのだ。

まず医務室にいくとおでこに絆創膏を貼ったプロスペクターがいた。

 

「プロスさん。どこかケガでもしましたか?」

 

「いやいや、大したことはありません」

 

「でも、そのおでこ‥‥」

 

「着地の時、人とぶつかりましてね。でも大丈夫ですよ」

 

「それより艦長エンジンの具合はどうなんです?」

 

「あまり良くないらしいです。今ウリバタケさんが修理しています」

 

「弱りましたねぇ~‥‥ここまで来て足止めとは‥‥一刻も早く極冠遺跡に向わないと‥‥」

 

「そうですね」

 

その後、医務室にいる負傷者を見舞った後、艦内巡回を続けるジーク。

 

「リョーコさんはヒカルさんの下敷きになったけど、怪我は無かったようだし、ヒカルさんはそのおかげで怪我はしていない‥‥プロスさんとゴートさんは衝突のショックで互いにぶつかり合ったみたいだけど幸い軽傷‥‥ゴートさんはイネスさんと連絡を取りたいって言っていたけど今の状況じゃあ‥‥」

 

独り言を言いながら現状を確認し、食堂に向かうジーク。

 

「ホウメイさん、怪我はありませんでしたか?」

 

食堂に入りながら尋ねる。

しかし、ホウメイの姿は見えない。

 

「あれ?ホウメイさん?」

 

「はいよ」

 

厨房の方からホウメイの声が聞こえる。

 

「ホウメイさん、大丈夫でしたか?」

 

「ああ、あたしはなんともないさ。‥‥けどねー、ここがメチャクチャになってね。やっと、片づいたところさ」

 

結構無理な着陸のせいで厨房は滅茶苦茶になっていた。

床には食器や調理器具、食材、調味料がぶちまけられている。

 

「でも、怪我が無くてよかったですね」

 

「ああ‥‥しかし、艦長。あんた、わざわざ見て回っているのかい?」

 

「ええ、ジッとしてられなくって‥‥」

 

「ははは、あんたらしいねー」

 

「ああ、そうだ。イズミさん見ませんでしたか?」

 

「いいや、見てないよ。何かあったのかい?」

 

「ここにもきてないかぁ‥‥いえ、コミュニケで呼び出しても応答無いんで、怪我でもしたんじゃないかと思って‥‥」

 

「案外、どこかで寝ているんじゃないかい?あの人、結構変わり者だし」

 

冗談半分で言うホウメイ。

実際、ナデシコの最初の航海でも爆発するサツキミドリから脱出する際もツールボックスの中に入り、脱出した経験がある。

その他にもイネスの『なぜなにナデシコ』の放送回では目を開けたまま寝ていたこともあった。

 

「はは、いくらイズミさんでもそれは無いですよ」

 

その後一言二言話をして、食堂を離れる。

その足で機関室へ向かう途中、捜し人であるイズミに出会う。

 

「ああ、イズミさん。怪我はありませんか?」

 

「怪我?」

 

「ええ、火星に不時着してから、コミュニケで呼び出しても応答無いんで、大怪我でもしたんじゃないかと‥‥」

 

「ああ、寝ていたの。乗り越しね。お客さん終電ですよ‥‥」

 

そう言って立ち去るイズミ

 

「‥‥」

 

相変わらずイズミのギャグにはついていけないジークであった。

 

「本当に寝ていたんだ‥‥」

 

まさか、ホウメイが言っていた通り、本当に寝ていたとは思わなかったジークだった。

 

艦内巡回を一通り済ませたジークは機関室へとやって来た。

 

「ウリバタケさん。エンジンはどんな具合です?」

 

機関室では整備班総動員でエンジンに修理に取り掛かっていた。

 

「あんまりよくねぇなぁ~‥‥かなり無理させてきたんであっちこっちガタがきているよ」

 

「時間がかかりそうですね」

 

「ああ‥‥エンジンの交換パーツさえありゃ、もっと早くなおせるんだがな。」

 

「交換パーツですか‥‥」

 

「まぁ、無いもんをどうのこうの言ってもしかたねぇー。なんとか自作やそこらのパーツで補ってやってみるよ。‥‥ただし、時間はかかっちまうがな」

 

「とにかく、お願いします。俺に出来ることがあれば遠慮なく言ってください」

 

「その気持ちだけ受けとっとくよ。艦長」

 

『艦長、現在位置が判明しました。至急ブリッジに戻ってください』

 

「わかりました。今戻ります」

 

ハーリーの通信を聞き、ブリッジへと戻るジーク。

 

「お待たせしました。それでナデシコの現在地は?」

 

「はい、極冠遺跡から南に1200キロです。」

 

「旧ネルガル研究施設の近くですな。」

 

「研究施設?」

 

「ええ、そういえば艦長はご存じありませんでしたなぁ~‥‥初代ナデシコ‥‥その建造に大きくかかわった施設でしてねぇ。相転移エンジンや、ディストーションフィールド、グラビティーブラストを開発した施設です」

 

「それなら、そこにはナデシコの修理に必要な部品が残っている可能性は‥‥」

 

「ええ、あると思いますよ」

 

「まさか、それを取りに行くつもりですか?」

 

「ええ、修理を急ぐにはそれしか無いでしょう。このままでは、極冠遺跡にいつたどり着けるかわかりませんから。リョーコさん!」

 

リョーコとの空間ウィンドウが開く。

どうやら彼女はまだ、格納庫にいたらしい。   

 

「エステバリスの発進準備をしてください。ネルガル研究施設から、修理に必要なエンジンの部品やパーツを取ってきてもらいたいんです。詳しいことは、ウリバタケさんに聞いてください。」

 

『よし、わかった!』

 

『ちょうど退屈していたところだしね』

 

『寝起きの一仕事‥‥』

 

「じゃー、俺も行ってきます。艦長」

 

「お願いします‥‥研究所の正確な位置はわかりますか?」

 

「レーダー及びセンサーがまだ完全な状態じゃないんですよ‥‥」

 

たしかにセンサーを作動させると画面がブレたり、砂嵐で乱れたりする。

 

「だいたいこのあたりだったと記憶しておるのですが‥‥」

 

プロスペクターが火星の地図を広げ、ナデシコから北の方角を指す。

 

「いや、確かこっちの筈だが‥‥」

 

しかし、ゴートは西の方角を指す。

 

「いったい、どっちなんです?」

 

「とにかくエステバリス隊に捜索してもらいましょう。サブロウタさん、今の二カ所を重点的に捜索してください」

 

「了解!」

 

『エステバリス隊、発進するぜ!』

 

「お願いします」

 

「リョーコさん、移動距離にくれぐれも注意してください。」

 

『なんでだよ?』

 

「まだ、重力波エネルギーの供給が不安定なんですよ。」

 

「あんまり遠くまで行くと、帰ってこれなくなりますよ」

 

『まったく、仕えねぇなぁ‥‥了解‥‥』

 

エステバリス隊が発進してから暫くしてリョーコから通信が入った。

 

『ナデシコ、研究施設を発見したぜ!これから中に入る』

 

「了解。リョーコさん、注意してください」 

 

『わぁーてるよ』

 

その通信を最後に四機のエステバリスのエコーが消えた。

おそらく研究所の奥に入ったためであろう。

ジーク達は四人の無事を祈るしかなかった。

 

研究所へと入った四人は交換パーツを探し始めたが、そこにはコンピューターを乗っ取られたエステバリスやバッタ、ジョロがウヨウヨいたが、そこはエース揃いのパイロット達、敵を撃破しながら無事交換パーツを入手し無事ナデシコへと帰還した。

 

リョーコ達が研究施設から持ち帰った部品でエンジンの修理が終わりナデシコは針路を北に向け、一路極冠遺跡へと急いだ。

 

火星の後継者残党軍と戦っているのはナデシコ一隻だけではない。

統合軍司令部より、火星の後継者残党の掃討は今現在すべての宇宙軍が担当しており、火星の各地及び周辺宙域では火星の後継者残党軍と宇宙軍との戦闘が幾つも起こっていた。

 

「ナデシコ針路上に複数の重力波反応を感知、味方艦が敵と交戦中のようです!!」

 

「敵艦より通信入ります!発信源は‥‥渓谷の北側‥‥っ!?夜天光からです!」

 

「アイツだ‥‥!コロニーにいたあの赤い奴だ!」

 

「アイツが南雲だったの!?」

 

「どうりで手強いと思ったぜ」

 

コロニーで鬼神のごとく暴れ回った敵の正体を知り、どこか納得するリョーコ達。

通信回線を開くとそこには火星の後継者残党軍指揮官南雲義政の姿があった。

 

『わたしは火星の後継者指揮官、南雲義政‥‥』

 

「こちらは地球連合宇宙軍第四艦隊所属訓練戦艦ナデシコB、艦長のジーク・ブレストーン・ユグドミレニアです」

 

『お会いできて光栄だよ、艦長。素晴らしい戦艦と有能な乗員をお持ちだ』

 

「それはどうも」

 

『敵ながらナデシコの活躍には常々感服している‥‥だが、ここから先へ通すわけにはいかん‥‥』

 

「そうでしょうね‥‥」

 

『ホシノ少佐‥‥貴女とは是非ともお手合わせを願いたいと思っていた‥‥舞台としては役不足だが、ここで決着をつける!』

 

南雲はナデシコに対し個人的な宣戦布告をし、通信を切った。

 

「どうやら一戦交える構えですな、どうします艦長?」

 

「受けて立ちます!総員戦闘配備!艦内警戒パターンA!」

 

艦内に警報が響き、クルー達は戦闘配置につく。

 

「敵戦力判明しました。木連駆逐艦五隻!夜天光一機!」

 

「どうやら味方艦はこの渓谷の東西に分断されているもようです」

 

渓谷の地図が表示され、敵艦と味方艦の配置を確認する。

 

「敵の数は‥‥駆逐艦『やらいぼし』に対して一隻‥‥リアトリス級戦艦『くらかげぼし』には二隻ついています」

 

「‥‥やっかいですな」

 

「二隻とも救出するのは難しいだろう」

 

「‥‥」

 

「‥‥」

 

プロスペクターとゴートの指摘を受け、無言になるルリとジーク。

 

「味方艦にはエステバリスが搭載されていますか?」

 

「偵察用に駆逐艦にもリアトリス級戦艦にも数機ですが搭載されているはずです」

 

「‥‥では、作戦を説明します」

 

ジークはまず、西側にいるリアトリス級戦艦の救出のため西側から接近したが、渓谷の出入り口付近で、エステバリス隊を全機空戦フレームに換装させて出撃させた。

そしてエステバリス隊が向ったのは東側、味方駆逐艦がいる渓谷であった。

ジークはナデシコ本体でリアトリス級戦艦を救出させ、エステバリス隊で駆逐艦救助を命令したのだ。

 

『リョーコさん、多少距離がありますけど、なるべく急いでください!』

 

「わかっているよ。それより、そっちこそ遅れるなよ」

 

『ええ、かならず味方を救ってみせます』

 

「期待しているぜ、艦長」

 

エステバリス隊は渓谷の南から東へ逆時計方向で進んでいくが、その途中で敵の駆逐艦が行く手を塞いだ。

 

「ちっ、急いでいるっていうときに‥‥」

 

前方のお邪魔な敵の駆逐艦の出現にサブロウタは思わず舌打ちをする。

 

「リョーコ、サブ、ここはあたしとヒカルに任せて先へいきな!」

 

イズミとヒカルが目の前の駆逐艦の相手を買って出て、リョーコとサブロウタは全速で敵駆逐艦の脇をすり抜け、味方駆逐艦の元へ急いだ。

その頃、西側にいた味方駆逐艦『やらいぼし』も偵察用のエステバリス一機と共に奮戦していた。

 

「相手も同じ駆逐艦だ!エステバリスがいる分こっちが有利だ!なんとしても包囲網を突破し、味方と合流するのだ!」

 

『おう!』

 

艦橋で艦長は乗員を鼓舞し、士気を高めていた。

しかし、相手の駆逐艦は渓谷の出入り口付近に布陣し比較的動きやすい。

反対に『やらいぼし』は渓谷の中に布陣しているため、動きが制限されている。

そのため敵のリニアキャンノンやミサイルをすべて回避することが出来ず、徐々に損傷を受け始める。

 

「左舷後部に被弾!」

 

「推進力7%低下!」

 

「第五ブロックにて火災発生!」

 

相次ぐ被害報告を聞き、艦長や乗員にも絶望の影が漂いはじめる。

 

「敵駆逐艦の後方より機動兵器接近!敵の援軍かと思われます!」

 

「くっ‥‥ここまでか‥‥総員、退艦準備‥‥」

 

艦長が諦めかけたその時、全方の敵駆逐艦の後部で爆発が起きた。

リョーコとサブロウタが西側の渓谷で敵と味方の両方を確認すると敵は好都合なことにこちらに尻を向けていたため、二人は駆逐艦の機関部にレールガンを打ち込んだのだ。

サブロウタは通信回線を開き、『やらいぼし』に通信をいれる。

 

『こちら、地球連合軍、第四艦隊所属ナデシコB、副長タカスギ・サブロウタ大尉。駆逐艦「やらいぼし」応答せよ!駆逐艦「やらいぼし」応答せよ!』

 

「ナデシコ?」

 

「友軍だ!」

 

サブロウタの通信を聞き、歓喜の声をあげる駆逐艦『やらいぼし』の乗員達。

通信士は急ぎサブロウタに通信をいれ、現状の確認を急ぎ、艦長へと報告する。

 

「諸君!天は我々に味方した!電子の妖精の加護の元、敵を葬れ!」

 

「「「「「おおおおおおー!」」」」」

 

通信士の報告を聞き、艦長が乗員に援軍が来たことを皆に伝え、再び激をとばし士気が高まる『やらいぼし』に反し、敵の方はというと、突然背後から攻撃を受け、混乱し始める。

 

「背後より敵襲!」

 

「機関室に被弾!推進力低下!」

 

「前方の敵艦が接近してきます!」

 

優勢から一転僅か二機のエステバリスの介入で劣勢に立たされ、混乱を回復する間も無く、敵駆逐艦はエステバリスと『やらいぼし』の攻撃であえなく沈んだ。

エステバリス隊が東側の友軍救出を行っている頃、ナデシコの方でも友軍の救出が行われていた。

 

西側渓谷で孤立したリアトリス級戦艦『くらかげぼし』はエステバリス二機を射出し、敵駆逐艦一隻をエステバリス隊が相手をし、残る一隻を『くらかげぼし』が相手をしていた。

友軍を救うべく急行しているナデシコはイツキがエステバリスに乗り、先行を務め、友軍の元へと急行していた。

その頃、渓谷の北側にて、南雲は愛機『夜天光』に乗り、ナデシコが来るのを待っていた。そんな南雲のもとに通信が入った。

 

「むっ、通信か‥‥?何?‥‥極冠‥‥?‥‥わかったすぐ行く‥‥」

 

味方からの通信を聞き、南雲はナデシコへと通信を入れる。

 

「ナデシコの諸君。私は少々急務ができた‥‥すまんがこの場は失礼する。君たちが生きていればこの決着はまたこの次ということで‥‥では、さらばだ‥‥」

 

ナデシコへの通信を切り、次に渓谷に展開中の味方に通信を入れる南雲。

 

「後のことはお前たちに任せるぞ。我が精鋭たちよ。‥‥相手はあのナデシコだ。いいか、心してかかれ!」

 

『承知しました!!』

 

『ここは我らにお任せください!!』

 

味方の通信を聞き、南雲の乗った夜天光は火星の空高く飛んでいった。

 

西の渓谷で入り口を塞いでいた敵駆逐艦は東側同様、正面に『くらかげぼし』後方にナデシコを相手にするハメになり、奮闘するもあえなく撃沈。

残った駆逐艦もナデシコと救助した宇宙軍艦艇、エステバリス隊の攻撃の前に撃沈もしくは大破し、降伏した。

 

「敵反応消滅しました」

 

ハーリーがセンサーを確認して報告する。

 

「おっしゃ、敵さん全滅っと‥‥」

 

「宇宙軍艦艇は修理のため渓谷にて待機するとのことです」

 

「ふぅ~‥‥なんとかなったな!」

 

「やりましたな、艦長」

 

「まさか、二隻とも救出するとは‥‥」

 

「どうですか?ルリさん艦長の手腕は?」

 

「さすがだと思います」

 

「いえ、救出が上手くいったのもリョーコさん達、エステバリス隊の皆さんの奮闘と友軍の皆さんの賜物ですよ」

 

謙遜しながらも友軍を助けることが出来、一番喜んだのはジーク本人だった。

救助したリアトリス級戦艦『くらかげぼし』、駆逐艦『やらいぼし』は、修理のため、後方の味方補給部隊との合流のため、一時戦線を離れた。

 

あの渓谷の戦闘から幾度か無人兵器の接触を受けながらもナデシコはその戦闘にことごとく勝利し、ついに火星極冠遺跡へとたどり着いた。

 

「通信状況回復。極冠遺跡と通信が繋がりました」

 

『あら?お久しぶり‥‥ルリちゃん、元気そうね』

 

「ええ、おかげさまで。イネスさんも‥‥」

 

『まあ、なんとかね』

 

「それより、そっちはどうなっているんだ。」

 

会話に割り込むゴート。

ただ、いつもの表情の中に微かに焦りがある。

 

『敵艦隊が続々と集まっているわよ』

 

「大丈夫なのか?」

 

『今の所はね。ここでの仕事も終わったし、そろそろ逃げ支度の準備かしら』

 

「今向かっているところです。もう少し待っていて下さいよ」

 

『彼らもここを無傷で手に入れたいでしょう。そう無茶はしないわよ。むしろナデシコが来るのを待っているんじゃないかしら‥‥それに‥‥』

 

イネスがまだ追加に何か言おうとしたら、突然通信が切れる。

 

「イネスさん‥‥?イネスさん!?」

 

「駄目です。また、通信妨害です」

 

「艦長、遺跡に急ぎましょう」

 

「ええ」

 

極冠遺跡の上空に展開する火星の後継者の大艦隊。

その中には、南雲の乗る夜天光もいた。

 

「前方の夜天光より通信です」

 

「通信回線を開いて下さい」

 

『ついに、ここまで来たか‥‥ナデシコ。しかしユグドミレニア艦長、ホシノ少佐、今回は今までとは違うぞ!これだけの艦隊を前に、たった一隻の戦艦で挑むだけの度胸があるかな?その艦では我が軍のシステムをハッキングする事はできまい。‥‥もし、その度胸と勇気があるのならここまで来るがいい。私、自ら全力で相手しよう』

 

「望むところです!南雲中佐。我々は必ず勝って遺跡の占拠を阻止してみせます!」

 

『フッ、若いながら勇ましいな。よかろうでは全力でぶつかり合うまでだ!』

 

そう言って南雲は通信を切った。

 

「‥‥ナデシコ、各部問題なし。艦長、指示を‥‥」

 

静かな決意を込めて言うルリ。

 

「‥‥総員戦闘配備!艦内警戒態勢パターンA!エステバリス隊、全機発進準備!」

 

「「「「「「了解!」」」」」」

 

ジーク率いるナデシコと南雲率いる火星の後継者との戦闘が遺跡上空において今その火蓋がきって落とされた。

 

敵艦隊へ前進しながらエステバリス隊を発進させるナデシコB。

その様子を夜天光のコクピットから見る南雲はほくそえみながら叫ぶ。

 

「さすがは、ナデシコ。草壁閣下を破り、私が敵として認めただけはある。‥‥だが、私は負けん!草壁閣下の意志は私が継ぐ!いくぞ、ナデシコ!臆さずかかって来い!私は此処に居るぞ!!」

 

両軍の戦闘は苛烈を極めた。

ナデシコは牽制するかのようにミサイルを広範囲に発射し、艦船にはグラビティーブラストを発射する。

敵もエステバリスや積尸気を前面に展開し、ナデシコを叩きに接近してくる。

ナデシコのエステバリス隊は左右からナデシコに向かう敵を次から次ぎへと撃破する。

そんな中、突如遺跡の中から浮上する三隻の四連筒付木連式戦艦。

 

『ふぅ~‥‥やっと積み荷が回収出来たか‥‥このまま戦闘空域を離脱する、後続の無人艦もちゃんと命令を聞いてくれよ』

 

物資を搭載した四連筒付木連式戦艦は戦場からの離脱を試みる。

 

『中佐!』

 

「なんだ‥‥?今は戦闘の真っ最中だ。邪魔をするな。」

 

『す、すみません。』

 

「‥‥まあいい、話せ。何があった?」

 

『はっ、例のジャンパーが見つかったという連絡が‥‥』

 

「なに!?‥‥わかった。私もそちらに行く。諸君らはここを守ってくれ」

 

『はっ!!』

 

「では、武運を祈る。」

 

部下からの連絡を聞いて遺跡の中に降下していく夜天光。

 

「‥‥南雲の夜天光は遺跡の中に消えました!今のうちに遺跡上空の敵を一掃します!」

 

夜天光が遺跡の中へと入っていくのを確認したジークがナデシコ、エステバリス隊に状況を報告し、チャンス到来の如く敵を一掃し始める。

特に戦場から逃げようとしている木連戦艦に攻撃を集中させる。

暫くし、 南雲の夜天光と旧木連戦艦『かんなづき』、そしてそれらを護衛するかのように十数機の積尸気が浮上してくる。

 

『ああ、あいつ戻ってきたよ』

 

『パンジー休す、ね』

 

『やるだけの事はやってやるさ』

 

「皆、無事か?」

 

『はっ、中佐が戻られるまで、なんとか持ちこたえました‥‥ですが‥‥』

 

「むっ?‥‥これは、まずいな‥‥私のいない間に我が軍勢がこれはどの被害を受けているとは‥‥おのれ、ナデシコ!こうなれば私一人でも‥‥!」

 

『お待ち下さい、中佐。ここにいた艦隊は、かのような痛手を被りましたが、同志の中には落ち延びた者もおります!ここで中佐が戻られなければ、残された我らはどうなりますか?!何とぞここは拳を収めて下さい』

 

「くっ‥‥!?‥‥わかった。生存者にも告げよ。全軍、極冠遺跡から撤退するとな‥‥」

 

『はっ!!』

 

次々と遺跡の空域から離脱する、火星の後継者残党軍の部隊。

 

『なんだぁ?あいつ逃げていくぞ』

 

『えっ、なんで?!』

 

『‥‥』

 

『‥‥もっとも、今向かってこられたら、ちとやばかったかもな』

 

『‥‥とにかく、遺跡の占拠は阻止出来ました。イネスさんの保護を優先しましょう。戦闘直後ですみませんが、エステバリス隊はイネスさんの捜索をして下さい』

 

『『『『了解』』』』

 

「ゴートさんもエステバリス隊に同行してイネスさんの捜索をして下さい」

 

「了解しました、艦長」

 

イネス捜索に行ったサブロウタ、ゴートの連絡を待つナデシコ。

 

「下に降りた捜索隊からの連絡は?」

 

「まだありません。‥‥イネスさん、大丈夫でしょうか?」

 

皆がイネスの安否を心配している中、ようやく捜索に出ていたサブロウタ達から連絡が入った。

 

「サブロウタさん、イネスさんは見つかりましたか?」

 

『それが、彼女どこにもいませんよ。』

 

「えっ?」

 

『隈無く探したが見つからんのです。』

 

「‥‥敵に連れ去られた‥‥という事ですか?」

 

『いや、そうとも言えないようです。ここに残っていた所員の話によると、敵も捜索隊を出していたらしい。』

 

「でも、彼らも発見できなかった‥‥?」

 

『ええ、ナデシコとの戦闘が始まると引き上げたと言っています。』

 

『おそらく我々が到着する以前に、ここを脱出したのでしょう。』

 

「でも、どこにです?」

 

『わかりません。‥‥とりあえず、一端ナデシコに戻ります』

 

「了解」

 

「行方不明‥‥ですか‥‥?」

 

ルリは、心配げにつぶやいた。

一体イネスはどこへ行ってしまったのだろうか?

状況では、火星の後継者残党軍に捕まった訳ではなさそうだ。

彼女はA級のジャンパー‥‥

コハクの様にボソンジャンプで逃げ切ることは出来る。

もしかしたら、火星の後継者残党軍の調査隊が来る前にボソンジャンプでどこかにジャンプした可能性が高い。

でも、どこへジャンプしたのか見当もつかない。

ボソンジャンプはジャンプアウトのイメージがあやふやだとどこか別の時代に飛ばされてしまう。

イネス本人がまだアイちゃんの頃、アキトのボソンジャンプに巻き込まれて、あやふやなイメージのせいで過去の火星の砂漠へボソンジャンプした経緯がある。

もっとも今のイネスはA級のジャンパーなので、そんなミスはしないだろう。

しかし、行方不明というのは、少々厄介だ。

いつ、どこで、敵の手中に落ちてしまうのか分からない。

火星の後継者残党軍の鎮圧の他に厄介ごとが増えてしまった。

 

火星の遺跡での戦闘が終わりナデシコ艦内に宛がわれた自室にいるゴートはアカツキに経過報告をしていた。

 

「イネス・フレサンジュの保護に失敗しました。‥‥現在、彼女の消息は不明です‥‥」

 

『そいつは困ったなぁ~‥‥まさか、敵の手に落ちたってことはないよねぇ~?』

 

「それは、無いと思いますが‥‥」

 

『そうか‥‥まぁ、とりあえず捜査は続行してくれ。それと火星の後継者は、どうやら木星プラントを使って戦力を増強しているようなんだよねぇ~。ナデシコで行って片づけてくれるかなぁ?』

 

「了解しました」

 

『じゃ、よろしく』

 

そそくさと通信を切るアカツキ。

 

   

ネルガル本社 会長室

 

アカツキの側に立つ白い学ランを着た一人の男がいた。

月臣元一朗‥‥元木連優人部隊少佐。木連で起きた≪熱血クーデター≫の中心人物で秋山、白鳥の親友でもある。

クーデターの後、行方不明となっていかが、ネルガルの裏の世界のエージェントとなる。

二年前テンカワ夫妻を火星の後継者の手から救い、先の反乱の時は、政府機関の中枢を強襲した火星の後継者の襲撃部隊を説得した。

その彼がアカツキに問いかける。

 

「よろしいのですか?フレサンジュの所在を彼らに教えなくて‥‥」

 

「全ては、予定通りだよ。ナデシコにはもうしばらくピエロを演じてもらおう。それよりクリムゾンの動きはどうなっている?」

 

「本格的に行動を開始した模様です」

 

「いよいよ、こわーいお嬢様のお出ましかな?」

 

アカツキの前に、一枚の空間ウィンドウが表示され、そこには一人の人物の詳細が表示される。

空間ウィンドウには顔写真と共に次のように記載されていた。

 

氏名:シャロン・ウィードリン

性別:女性

年齢:25歳

身長:167cm

出身地:オーストラリア

髪:ブロンド

役職:クリムゾングループ取締役、クリムゾングループ法務部長、クリムゾン技術開発研究所顧問。

父:リチャード・クリムゾン

母:マーガレット・ウィードリン

性格:自尊心が強く、自己中心的。

その他:アクア・クリムゾンとは異母姉妹。

現在のポストは祖父である、ロバート・クリムゾン会長の推挙によるところが大きい。

父親のリチャード・ウィードリンとは不仲。 (ウィードリン姓を名乗っているのも、そのためらしい。)

 

ゴートが自室でアカツキに連絡を入れている最中、ルリ達ブリッジクルーはイネスの安否を心配しつつ、出航準備を行っていた。

 

「それにしてもイネスさん、どこいっちゃったんでしょうね」

 

「さてね‥‥どこに居るんだか‥‥」

 

「ハーリー君、相転移エンジン出力を確認」

 

「‥‥あっ、ハイ‥‥。現在出力七十二%、発進準備作業続行中‥‥」

 

「作業終了後、ただちに発進します」

 

ナデシコの航海はまだまだ続きそうである。

 

 

 

・・・・続く

 




ではまた次回。
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