コンコンッ
「どうぞー」
「は、入るね」
ベッドでネットサーフィンをしていると、ノックとともに一人の美少女が入ってきた。
「おお花音。今日も見舞いか?毎日ありがとな」
彼女の名は松原花音。隣に住む幼馴染の美少女だ。
「そ、そんな。ヒロ君を入院させたのは私のせいだし。それに、その…毎日来てて迷惑じゃないかな…?」
「迷惑なんかじゃないさ。毎日花音の可愛い顔を見れるなんてご褒美以外の何物でもない」
「ふぇぇ…」
まず状況を説明しておくと、俺こと船橋大翔は現在入院中だ。というのも花音とデートもとい買い物をして帰っている際、横断歩道を渡っている時に車が突っ込んで来たのだ。その時とっさに花音を突き飛ばし、俺だけが車にひかれることになったのだ。後から警察に聞いた話では、居眠り運転をしていて突っ込んで来たらしい。正直許せることではないが、慰謝料などはしっかりもらったため、これ以上関わるのも面倒だと思い現在はすべて他人任せにしてある。そんなことより、俺は今回の事故で一つだけ犯してしまった過ちがある。それは花音を突き飛ばしたときに、花音が怪我をしてしまったことだ。とっさの反応ができなかった花音は転んでしまい、膝に擦り傷を負ってしまったのだ。それが今回俺が最も悔やんでいることである。
「それより花音、俺の方こそごめんな。花音に傷を負わせてしまって…」
俺は何度も口にした言葉を告げる。いくら花音を守るためとはいえ、突き飛ばすなんて行為をしていいはずがなかった。
反射神経がいい人ならよかったのかもしれないが、相手はあの鈍臭い花音だ。少し考えればわかるはずなのに…
「そ、そんなこと…!ヒロ君は私を守ってくれたんだからきにすることないよ。それに私の傷はもう治ったし…。ヒロ君の方がひどい怪我なんだから私より自分の心配しないとダメだよ?」
はぁ…。なんていい子なんだ。天使、ここに天使がいるよ。
「花音って本当天使だよな。エンジェル花音。それに比べて千聖ときたら…。花音、これ見てくれよ」
「えっ、何?」
俺は自分のスマホに移っている画面を花音に見せた。
そこには千聖からのメッセージが移っている。
『こんにちは。今回は花音を守ってくれてありがとう。大翔ならそのくらいのことやってくれると思っていたわ。私の目に狂いはなかったようで一安心よ。大翔も男の子なんだし、美少女を事故から救うなんて漫画の主人公のような体験ができて嬉しかったでしょ?泣いて喜びなさい。それではお大事に』
「はははっ……」
俺がメッセージを見せると花音は苦笑いをした。
ちなみに千聖というのは俺や花音の友人で芸能人である。花音とは違った系統の美少女であるのだが、俺に対してのツンデレな態度をとる面倒な奴だ。
「ま、まぁ千聖ちゃんはこれでもヒロ君のことを心配してくれてるんだと思う…よ?」
最後が疑問形になってしまっていますよ花音さんや。
まぁ花音の反応を見なくてもメッセージを見れば、何を言いたいのかはわかる。
先ほどのメッセージを訳すなら、
『大翔、花音を救ってくれてありがとう。漫画の主人公くらいかっこよかったわ。私も貴方にそんな風に救われたいわ♡』
ってところだろう。
まったく…いかにもツンデレなやつだ。今度ファミレスで何かおごってもらおう。
「ヒロ君、今日はちょっとお話があるんだけど…いいかな?」
そんな上目遣いでお願いされて断れるやつがいるだろうか?いや、ない。
「どうしたんだ?言ってみろよ」
「う、うん。私ね…ドラムやめようと思うんだ」
俺の耳に響いたその声は、何かを思いつめているような声だった。