ハイスクールD×D 普通教室のデスサイズ   作:寒桜

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The Lost Swords and Diabolos Gate. [失った力と悪魔の門]
000 [The Lost]


 空がある。

 青く澄み渡った空が広がっている。空の色に染まるかのように白い雲が散りばめられ、その下には枯れ果てた山岳部が連なる。

 荒野。

 荒れた大地が広がる地上。

 大地に風が吹かれた。

 風は強さを増し、大地をめくり雲を消し去った。

 暴風と化した風が大地を襲い、空へと貫く巨躯な柱があった。空は赤く染まり荒野を照らす。

 数秒、柱が消えると、赤く染まった空と地上は元の色を取り戻し、また静寂が世界に広がる。

 柱が消えた場所には穴があった。

 穴。

 あまりにも深く、あまりにも巨大な穴は何もない虚空を広がらせる。

 虚空には二つのものがあった。

 一つは白だ。全ての物を染め、全ての存在の頂点に君臨する為に全ての物を犠牲にした白。名を藍染惣右助。大罪の死神。崩玉によって創られた破面を引き入れ、霊王を抹殺へと向かった彼は一人の死神代行によってその道を砕かれつつあった。

 そしてもう一つは、黒だ。白と相対するように全てを呑み込む黒。その色は深く、穴のように底を見せない。彼の名は黒崎一護。特徴的な茜色の髪は黒く染まり、短髪だった長さは女性のように腰まで伸びていた。

 白は叫ぶ。

 己の上を行く力を持つ者を、超越者として存在する自分を更に超えている者を。

 その姿はまるで幼子のよう。自分の力では適わない事を認めず、駄々をこねるように。

 黒は何も言わない。

 ただただ目の前の敵を見詰めたまま、右腕でを振り上げた。

 この戦いに終止符を討つために。

 仲間の元に返る為に。

 

「――――無月」

 

 振り下ろされた右腕から膨大な月牙が放たれる。それは月牙であり、黒崎一護でもあった。彼の霊圧の全てを含んだ月牙は大地を斬り、空をも斬り裂く。

 光さえも月牙は呑み込み、世界は夜の闇を生み出した。

 圧倒的。

 白は黒に呑まれ、その身を裂かれる。彼の胸。心を失った虚を彷彿とさせるその孔の中心部には彼を主と認めた意志を持つ物質、崩玉があった。

 崩玉は、たとえ主の身が裂かれ崩れ落ちようともそれは未だに存在し続けた。

 超高濃度の霊圧の中であろうと崩玉は、主を失った崩玉は無抵抗のまま月牙を受けていた。

 拮抗かのように見えた状態は唐突に終わりを迎える。

 硬質な岩を砕いたような鈍い音が崩玉から発しられ、全身を亀裂が走る。

 

 

 ――――終わった。

 

 

 崩玉の崩れ行く末を見た一護はそう心の中で呟いた。

 終わり。

 それは彼等の勝利でもあり、友との別れでもあった。

 誰よりも近くで共に戦い、誰よりも分かり合えた魂の分身。それは無月を放った代償であり、自らが選んだ選択だった。しかし、だからといって納得のいえる結末ではない。

 それは斬月も同じだった。

 誰よりも一護を護る為に、彼に刃を向け闘った。だかそれでも彼は退かなかった。己の世界が水の下に沈もうと、歩みを止めた足をまた踏み出し前へと進めた。その姿こそが斬月の知っている黒崎一護であった。

 

 

 

 ――――だからこれでいい。

 

 

 

 薄れ崩れ行く中、斬月はそう想った。これから一護と共に戦うことは出来ずとも、今彼を護ることができた。

 だからいい。

 これからは闘いを忘れ、霊を忘れ、己を忘れ、平穏に生きて欲しい。

 ……私が殺してしまう前に。

 そう斬月は祈り、

 

 

 ――――願ってしまった。

 

 

 超々高密度の霊圧の中で崩れながら、崩玉はその願いを見つけた。

 

 圧倒的なエネルギーの本流を発生させたことで、極地的に空間に歪が生じ出す。

 世界というのは一つの容であり、何も付与することのできない不可侵の域だ。

 現世、尸魂界、虚圏、地獄。

 どの世界もある一定の方法を用いないことには、移動も影響も与え及ぼすことは出来ない。

 しかし、世界の存在に影響を及ぼす可能性、あるいはそうであるべき規定は何であるのかは不明である。

 もし、既存の世界に現象を与えるのであれば、極端な条件を満たす必要がある。

 現実世界の境界の弱体化。

 一護は無月を放ったことで、その境界の歪みを生ませてしまった。

 超越者としての力。

 それを代償として造られた無月には、境界自体のバランスを崩れさせるに足る威力があった。

 

 『崩玉』とは願いを導くモノ。

 それは対象者自身の実力によって作用する。藍染はその力を使い、彼は超越者へとなった。

 

 ――ならば、既に超越者として存在を超えた彼や斬月ならばその力はどこまで昇るのだろう。

 

 己を破壊した者への敬意か報復か、崩玉は斬月の願いを導いた。

 

 

 

 

 

 

 月牙が止み、大地には深々と遥か彼方まで伸びる傷跡以外、何もなかった……

 

 

 

 

 

 

 ■ ■

 

 

 

 

 雨が降っている。

 一人の男が雨の中、肩膝を着いて蹲る。

 そんな男に一組の男女が駆け寄っていた。

「――――――っ!」

 豪雨の為に三人の声は雨に掻き切れ、聞き取れない。

 男は二人に手にしていたモノを渡す。

 女性が何かを言う前、男は役目を終えたとばかりに地に伏した。

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