あの戦いの後、気を失った俺が目を覚ましたのは日が昇り始めた日曜のことだった。
どうやらまる一日寝ていたらしく、担当医は何か異常が出たかと驚いていたらしい。
菖蒲さんも心配になって、もう一日安静にしろと言っていたけど正直そんな気分でもなかったから、精密検査を受けて異常がないと分かった後直ぐに退院した。
双馬は昨日何事も無く目を覚ましたようで、俺より先に退院したらしい。
――退院する前に病院の屋上に行ったけど、あの戦いの跡はどこにもなかった。
堕天使にうけた傷も跡形も無く消えていたから、本当に現実のことだったのか怪しく思える。
双馬が目覚めたということだから、神器とかいう奴も双馬に戻ったのだろう。
何も言わずにいなくなったのは気に食わないが、 そこまでの仲でもないしそんなものか。
ソーナも気づいたら消えていた。
菖蒲さんに俺たちが合った事件のことを聞いたら、事件ではなく事故ということになっていた。
どうにも俺は雨で足を滑らせた双馬を庇いつつ、階段を落ちたということになっていた。
これもソーナの仕業なのか、それとも元々シトリー・ソーナなんて奴は存在していなく、本当に階段を落ちただけで今までのことが俺の妄想だったのかもしれない。そうだったら泣けてくる。
「一護ちゃーん、皿洗いよろしく~」
「無断で二日もサボったんだ、いつも以上に磨いておけよ」
「うーす」
事故から一週間たったいまでもネチネチと秋宮夫婦にいびられつつ、俺は猫の茶会の洗い場で皿洗いをしていた。
客のピークを過ぎたからか若干の増えた皿が隣に並べられる。
とりあえず、静かに皿を洗っていると、どうにも店内が騒がしい。客の人数は少ないはずだがそれ以上に何か異質な気配が感じた。
「く、黒崎さん! 黒崎さんっ!」
フロアアルバイトとして入っていた同年代の奴が俺に話しかけてきた。
いつもはあまり話しかけないはずの奴が何のようなのか。
「どうした?」
「すっごい美人の女の子たちが君を探しているんだけど、何カツアゲでもしたの!?」
失礼な奴だ。カツアゲなんてしたことねえよ、止めさせて喧嘩になったことはあるけど。
「美人? 女自体に知り合いなんていねえよ」
「うわ悲しい……」
「うるせえ」
「いいから行ってこい、これ以上待たせてイチャモンつけられても適わん。それにそろそろお前の就業時間も終わるだろ」
「関菜さん……」
関菜さんに言われ、渋々洗い場を後にしてアルバイトの後ろを付いていく。
キッチンを出てフロアに向かう途中で頭の中を探るが、女の影なんて何も無いあるとすれば、喧嘩した不良の彼女とかだが、そんなの一々覚えてもいねぇ。
「なあ、どんな奴なんだよ」
「奴じゃなくて女の子ね。えーっと綺麗で髪が長い子が三人に、」
「おい待て、一人じゃねえのか?」
ますます分からなくなってきた。
「一人なんて言ってないよ。黒髪ロングの子が二人、赤髪ロングが一人、あとショートが一人だよ」
「髪型だけじゃわかんねえよ」
「いや皆めちゃくちゃ綺麗でどう言えばいいのか分からないんだよね」
まあ自分の目で確かめてよといいアルバイトの奴はカウンターに隠れてこちらを見てくる。
おい、なんで店長たちもいるんだよ。
「あら? あれがソーナの言ってた彼?」
ふとそんな言葉が俺の耳に入った。
声のした方を見ると確かに赤と黒い長髪の女がいた。
確かに美人だった。
「あらあら、なんだかヤンチャな方のようですね」
「ああいうのがアナタの好みなのかしら?」
「――別に彼の容姿だけで決めたわけではありませんよ」
前に聞いた事のある声が聞こえてきた。
ゆっくりとソファーから立ち上がりこっちを向いてくるセミロングの女の姿は――
「一週間ぶりですね、こちらも忙しくて時間がかかってしまいました。改めてこれからよろしくお願いします、一護君」
――どうやら俺の妄想は現実のことだったらしい。
ようやく、プロローグ編が終了しました。
今後の一護とソーナたちにご期待ください。