ハイスクールD×D 普通教室のデスサイズ   作:寒桜

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Everyday and new extraordinary.[日常と新しい非日常]
011 [After this]


「――で、いきなり何のようだ」

 時刻は午後五時過ぎ。

 仕事を終え改めて一護は向かい合って座っているソーナを睨み付けつつそう言った。

 場所は喫茶店『猫の茶会』のとあるテーブル席。

 ソーナは静かに紅茶を啜り、椿姫は一護を睨み付けていた。

 一つのテーブルを一護、ソーナ、そして椿姫が使い、残りの二人は隣の空席に移動して貰っている。

 ゆっくりとソーナがカップをテーブルに置き、

「何とは?」

 首を傾げつつとぼけるソーナに一護は額に青筋を立てつつ言う。

「突然人のバイト先に現れて何のようだって聞いてんだよ!」

 若干声を荒立てつつ一護はソーナに言う。

 ガタリとソーナの隣に座っている椿姫が立ち上がりかけるが、ソーナがそれを手で制する。

「貴方の都合を配慮しなかったことはお詫びします。ですが、私たちにも私たちなりの事情があったということを理解してください」

「事情だ?」

「先日――貴方が悪魔になり私と堕天使を倒した件が上に……私の両親にどこからか知られてしまい、その処理に時間がかかってしまったんです」

「おい、その話は――」

 一護は周りを見回しながらソーナの話を止める。

 周囲の客は未だにコチラを興味深くチラチラと見ていた。

 ここで話していい話なのかとソーナに問うと、

「ああ、大丈夫ですよ。今私たちの周囲に変換魔法をかけてあります。周りの人からは私たちが中睦まじく談笑しているようにしか見えていませんから」

 それはそれで問題があるのではないのかと一護は思ったが、今自分が知りたいのはそんなことではないことを思い出す。

「アンタたちが何で、あの後何も言わずにいなくなったこととか、何で事件だった筈のことが事故になっていることとか、色々と聞きたいことが山程あるけどまず――俺は本当に悪魔ってのになっちまったんだな」

 一護はソーナの目を見ながら問う。

「はい」

 ソーナも一護の目から視線を逸らさずにまっすぐに見返し、はっきりとそう言った。

 数秒二人の間を沈黙が支配する。

 先に動いたのは一護だった。

 そうかと溜息をつき、ドサッと椅子に体重を深く預ける。

「それで、悪魔ってのは一体何なんだ?」

「そのままの意味ですよ。太古の昔から人間と契約して魂を奪うことを生業としている種族です」

「まんま漫画みてーな話だな」

「漫画ではありませんよ、真実です」

「じゃあ、あの堕天使ってのもそのまんま――」

「ええ、天使から欲望によって堕ちた存在のことです。私たち悪魔と堕天使は延々と冥界――悪魔と堕天使が住む世界、こちらでは地獄といえば通じるでしょうか、そこの覇権を争って戦いを続けているのです。もちろん天使もいますよ。神の代理者として信徒を導き、穢れを浄化することをしています」

「あー、悪魔が願いを叶えて魂を奪うってことは分かった。じゃあ俺はその契約で悪魔になって生きているってことか?」

「それは違います。あなたを生き返らせたのは契約ではなく"コレ"です」

 ソーナは懐から何かを取り出しテーブルの中央に置く。

 コトリと軽い音をたてて一護の目に映るソレは、白く光輝く小さなモノだった。

「チェスの、駒?」

 大きさも形も一護の知る一般的な駒の形状をしていた。

「ええ、あの晩あなたにも一時的に渡していたモノと同じものです」

 確かにあの時ソーナから駒を渡されていたことを思い出す。あの時は確かルークの駒だったはずだ。

「確かにあの時、キャスリングとかの説明を感嘆にされてコレを渡されたけど、結局アレは一体何だったんだ?」

「『悪魔の駒』通称、イーヴィル・ピースと呼ばれているものです。コレを貴方に使って悪魔に転生させたのです」

「こんなのでか?」

 一護はテーブルの上から駒を掴み繁々と眺める。

「ええ、ここにいる椿姫も貴方と同じく悪魔の駒によって悪魔に転生したのです」

 未だに眼力を緩めずにこちらを睨み続ける椿姫に一護は視線を向ける。

 目が会った瞬間、ふんっと顔を背ける椿姫にイラッとしたが一護は堪えた。

 そんな様子の一護を観察しつつ、ソーナはまた紅茶を啜り、

「まだ色々と知る必要もあるでしょうが、今日はこれくらいにして本題に入りましょうか」

 

 

 ■ ■

 

 

「それで、どうでしたか? 実際に彼と会ってみての感想は」

「そうねぇ……」

 喫茶店からの帰り道、ソーナは隣を歩くリアスに聞く。

 リアスは腕を組み数秒考え込む姿勢をした後、

「正直、『期待外れ』といったところかしら。堕天使を討伐したという力量も入れても、その武器となった神器も失ったようだし」

「だから言ったのですソーナ様。今からでも遅くはありません、あの男の駒を抜き取りに戻りましょう!」

 ソーナとリアスの数歩後ろを歩く椿姫が、その背後に炎を燃え上がらせ言う。

「ねえ、ソーナ。彼女どうしたの?」

「実は私たちが堕天使との戦闘をしている時、椿姫は別の神器の世界に捕らわれていたらしく、役に立たなかった自分に節目を感じているらしいのです……」

「ああ、だから貴女と共に戦った彼を目の仇にしているのね」

「それにあの男は馴れ馴れし過ぎます! まだ会って間もないのにましてや主である筈のソーナ様をよもや呼び捨てにするとは……!」

「あれは私がそれでいいと言ったのですよ。でしたら椿姫もそうしてみますか?」

「なっ――!? そ、そんな恐れ多いことが!」

「あらあら」

「そういえばリアスの意見は聞きましたが、まだ二人の感想を聞いていませんでしたね」

「ただの役立たずですっ!」

「そうですねぇ、確かにリアスの言う通り少々話から過大評価していたところもあるでしょうが、彼頭は回るほうではないかと思いましたわ」

「それは、何故?」

「まだ悪魔になって日が浅いのにも関わらず、ちゃんとコチラの話を全て否定するのではなく、しっかりと話を聞く姿勢をとっていましたし」

 まあ魔力も高いとはいえないですけど、と朱乃は締める。

「あら、男嫌いの朱乃にしては甘い評価ね」

「率直な感想を述べただけですわ」

「まあ、彼を悪魔にする際に同情が入っていなかったといえば嘘になりますね」

 ソーナは初めて一護と会ったあの夜を思い出す。

 あの雨の中、死に掛けているのにも拘らずコチラを見上げていたあの目、とても死の淵にいるとは思えないほどの強い意志をソーナは見た。

「でもリアス、私は彼が今後チームには欠かすことのできない存在になると確信していますよ」

「へえ、それは何故かしら?」

 出血死を免れない程の血を流しながらも、他人を優先していた姿を脳裏に浮かべ、ソーナはコチラに視線を向ける三人に言う。

「私は私の顔色を伺うだけの下僕を集める気はありませんから」

 

 

 ■ ■

 

 

「――で、一護ぉ。あの美人さんたちは何だったんだよ。何やら楽しそうに話してたじゃないか」

 猫の茶会の一席、ソーナたちの帰った後一護も帰ろうとしたところを、秋宮夫妻にとっ捕まり尋問にかけられていた。

「何でもねえよ! つーか剛賢さんたち店どうしたんだよ!」

「そんなことより一護ちゃんのことよねぇ。で、どうなの? あの赤い髪の子? それとも眼鏡をかけたショート黒髪の子?」

「おっ! まさか全員とか!?」

「そんなの不純よおおおお!」

「うるせえっ!!」

 ぎゃあぎゃあと本人を抜きに盛り上がる二人に怒鳴りつつ一護はさっきソーナに言われたことを思い出す。

 

 

 ■ ■

 

 

「――今後私たちの世界、冥界で生活する気はありませんか?」

「はあ?」

「あの堕天使の言っていたことを全て鵜呑みにするつもりはありませんが、彼女が単独行動で今回の事件を起こしていたのは確かなようです。ですが、貴方は悪魔になって日が浅い。もしも別の堕天使に発見された際、神器もない貴方が対抗できる術は無い。ですから貴方の安全を考えて今後冥界で生活する気はあるかと聞いているのです」

「それは……悪ぃけど無理だ。こっちにも都合があるしガキ共の面倒もしなくちゃならねえ」

「ですからです。双馬君に神器が戻った際、無断でしたが彼に術を施させていただきました」

「な――!?」

「効果は神器の覚醒と気配を抑える些細なものです。これで他の堕天使や悪魔に感ずかれる可能性は低い」

「じゃあ何の問題もないんじゃ」

「ですが、何が神器の覚醒の呼び水になるか分かりません。最悪、確率は微細ですが貴方と共に生活するだけで目覚める可能性もあります」

「――――」

 黙る一護にソーナは静かに席を立ち上がる。

「まあ、この一週間堕天使も何も事を起こさないようですから、もうしばらく様子を見てもいいかもしれません。また一週間後ここに来ます……そのときに答えを聞かせてください」

 

 

 ■ ■

 

SIDE FALLEN ANGEL

 

 

「がああああああああああああああっ!!!」

 ある寂れた協会の祭壇。

 その上を背に黒い翼を生やした人物が蹲っていた。

 砕けたステンドグラスから入る月明かりがその姿を照らした。

 その人物は一護が殺した筈の堕天使だった。

 あの瞬間。

 一護の攻撃を手持ちのグール、そして偶然手に入れた死に掛けの闇龍を盾にしてなんとか逃げ果せていたのだった。

 堕天使は祭壇を殴り続け雄たけびを上げ続ける。

「クソクソクソがぁ! あのクソ悪魔ども! よくもよくもよくもよくも私の神器たちを!!」

「ふん……無様だな」

「誰だ!」

 堕天使が声のした方を睨みつける。

 そこにはもう一人、祭壇の上に立つ堕天使と同じく、背に黒い翼を生やした女が長椅子に座っていた。

「貴様、スルーヴァ! 何しにここに来た!」

「私だって貴様なんぞに会いたくはなかったわ!」

 そう吐き捨てスルーヴァと呼ばれた堕天使は封書を投げ渡す。

「読め。すれば私がここに来た意味も分かるはずだ」

「これは――!?」

 堕天使はスルーヴァから渡された封書を開き中にあった紙を読む。

「無断での神器収集、組織に提供された神器の横領、そして神器回収失敗の失態。これだけやらかしておいて上が黙っている筈がないだろう」

「スヴェーデンでの待機命令!?」

「まあ数年は監禁だろうな。役立たずの貴様にはお似合いだ」

「バカな!?」

「バカな? バカは貴様だ! 手持ちのグールそして支給された人口神器全てを失い、片腕欠損それでその処罰。堕天使の人数が少ないとはいえ甘いとしかいえん」

「まさかこれはアザゼル様が……!」

「バカな上に阿呆が付くか。貴様のような末端にあのお方が手を下すまでもないわ!」

「違う……これはあのお方が……やはり私にはのその力がある……」

 ブツブツとつぶやく堕天使を冷めた目で見下しスルーヴァは言う。

「流石に神器一つ収集できない奴の言い訳は聞くに堪えん。質ばかりにこだわるからそういう目に会うんだ」

「違う、私は間違っていない……そうだ、まだあの神器程度でも無理だったんだ……まだだ、まだ上の神器が必要なんだ。攻撃も防御も関係なく、強力な神器が!」

 未だに独り言を呟く堕天使を放置しスルーヴァは協会から出て行く。

「お前を斬ったという悪魔に興味が出た。貴様は精々無意味に手に入らない神器に夢を見ていろ――――レイナーレ」

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