ハイスクールD×D 普通教室のデスサイズ   作:寒桜

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013 [Past and rain]

「――――一護。始めに言っておくけど私たちは人間だ。でも、悪魔や堕天使の存在は少なからず知っている」

 一護たちの先頭を歩く関菜が唐突に語り始める。

「アンタたちみたいに悪魔じゃない、ただの普通の……ただ、そういった裏側の世界に少し触れてしまったというだけの人間」

 関菜は右手横に手のひらを上にする。

 ボンッと何も無いはずの手のひらに火の玉が発生し、そして消えた。

「魔法……いえ、魔術っていえば理解できる? 昔ある魔術師が悪魔の魔力を解析して、人間でも使えるように組み替えた技術。それを更に便利にするよう研究する組織に私と剛賢はいたの。コレはその成果の名残よ。まあ、その組織とも方向性の違いとかで仲違いしちゃって抜けたんだけどね」

「じゃあ、俺が悪魔になったってことも――」

「すぐに気づいたよ。まあ確信したのはそこにいるお嬢さんを見たからだけどね」

 列の最後尾を歩くソーナを見ながら関菜は言う。

「さっきアンタの所に駆けつけられたのは、それ以前に堕天使の気配を察知したからだよ。お前がどうして悪魔になったのかの経緯は知らないが、知り合いの所に危ない奴等が向かったんだ、行くのは当然だろ。――と、着いたな」

 関菜が止まった場所。

 そこはモダンチックなバーだった。

 年季の入った看板は鉄錆に被われ、店の名前が読めない。

 関菜は慣れた手つきでドアを開け店内に入っていく。

 それに続き浦季、剛賢、一護たちが中に入った。

 店内はよくあるクラシックなモノだが、新築のように全てが真新しい。

 飾ってある壷も硝子も椅子も、昨日開店したばかりではないかというような色合いだった。

 外装とはかけ離れた光景に一護が唖然としいると、店のカウンターでサンングラスをかけた、恐らく店長なのだろう男に関菜が話しかけていた。

「ここは私たちみたいに裏の人間がよく来る穴場なの。安心していいわよ、ここに来る人間もそうでないのもお店のルールで不干渉を守っているから攻撃されることはないわぁ」

 してもいけないけど、と剛賢が一護に言う。

 話が纏まったのか関菜が戻ってきた。

「んじゃ一護と浦季はカウンターな。お嬢さんたちはテーブルだ、色々と聞きたいことがあるしな」

 と、無理矢理に一護と浦季をカウンターに押しやり、関菜たちはソーナと椿姫を有無を言わさず連れて行った。

 カウンターに一つ席を空けて一護と浦季は座る。

 コトリと浦季に酒を一護にオレンジジュースを目の前に店長が置く。

 飲めというふうに置かれたそれを浦季は躊躇無く一気に飲み干す。

 咽を酒が下り胃に辿り着いたのか、長い溜息を吐いた後、今まで黙っていた浦季がようやく口をあけた。

「――――本当に悪魔になったんですね」

「……先生」

「黒崎君。君がどうして悪魔になったのかその経緯は聞きません。君にも色々と事情や考えがあったのでしょう。――なので僕の結論は変わりません。変わりませんが少し、昔話をさせて貰ってもいいでしょうか?」

 一護は何も言わずに一度縦に首を動かす。

 浦季はもう一杯注がれた酒をまた一気に飲み干し語り出す。

「――昔、十数年前ですがそこで私はエクソシストという職業についていました。ええ、映画やドラマにでてくるような悪魔祓いで概ね当たっています。私は孤児でしてね、偶然拾ってくれた人が教会――神に仕える組織だったのです。そこで私は悪魔を殺す訓練と洗脳を行われました。神に従う殉教者として何年も殺させるように育てられました。何人もの悪魔を神の教えとして屠り殺し、擦り切れるような生活の中、ただただ戦闘で死ぬまで生きていました。そんな時でしたね。とある任務で悪魔討伐を依頼された私は何時も通り神の――組織の教えとして悪魔を殺しました。そこに恐らく悪魔が捕らえていたのでしょう、ある堕天使が――――【菖蒲】がいたんです」

 浦季は一呼吸おき、また注がれていた酒を仰ぐ。

 飲み終え空になったコップをカウンターに置き、こちらを見ずに続ける。

「その時僕は菖蒲を、堕天使を逃がしました。何故でしょうね。正直今でも何故逃がしたのかと聞かれると答えに渋ってしまいます。ただ任務が悪魔討伐だったので堕天使は必要なかったのか、既にあの時好きになってしまったのか。とにかく僕は菖蒲を逃がし任務を終えました。それ以来たまに任務などで偶然会ったりし、でも互いに見て見ないフリをしていたんですが、いつの間にか本当にいつの間にかですね。キッカケというキッカケが何だったのか分からない程、気付いたら互いに話すのが普通になっていました。どんなことがあったのか、何処に行ったのかそんな他愛無い話を彼女とするのが楽しくて仕方がなかったんです。そして同時に日々の生活が苦痛に感じてきました。殺し殺され合うという殺伐とした環境を以前は良しとしてきたのが可笑しいと思うくらい僕の心は変化していたんです。でも、それでも僕は悪魔を殺すことを止められませんでした。止められず、逃げることも出来ないまま、幸せと苦痛それを同時に味わい続けた生活は突然終わりを告げました」

 浦季はまた一気に酒を仰ぎまたもう一度、合わせて二杯分の酒を胃に注ぎ込んだ。

 アルコール度数の高い酒だったのか若干体を丸め痙攣する。

「組織にバレてしまったんですよ。堕天使だから、悪魔ではないから殺す必要はないと勝手に思い込み、報告をせずに会い続けた妥当な結果ですよね。何時から怪しまれていたのか組織に後を着けられて、菖蒲と会っている所を襲われました。あ、組織からの逃亡の中に秋宮さんたちに出会ったんですよ。彼女たちも所属していた組織に追われていた所だったようで、なんやかんやで四人で逃げ続ける事になっていました。あれはあれで今となってはいい思い出でしたね。国境を越える為にある闇組織を二つ三つ壊滅させたり、僕や秋宮さんたちを追う組織と死闘を繰り広げたり、その組織の目を欺く為にビル一つ使って偽装死を行ったり。最後には僕も秋宮さんたちも死んだということで組織の手を逃れました。柵のなくなった僕たちは、この町に根を下ろし秋宮さんたちは兼ねてからの喫茶店を、僕と菖蒲は今までの罪を償う為に孤児院を建て今に至ります」

 以上ですと締め括り、浦季は語り終える。

 浦季の説明をゆっくりと飲み込み、目の前にあったジュースを仰ぐ。

「先生、質問してもいいか?」

「どうぞ」

「罪を償う為ってアンタが言ったのはどういう意味だ?」

「言葉通りです。組織では悪魔の殺害と同時に悪魔によって悪魔にされそうになった神器を持つ者を保護する事も行っていました。僕は悪魔専門でしたので最後まで保護した人たちがどうなっていったのか知り得ませんでしたが、好からぬ事になったのは確かでしょう。組織を抜けた結果組織の情報は取りようがありませんが、僕は少しでも組織壊滅の為に、神器の手がかりを追い旅を続けています」

「――じゃあ双馬が神器を持っていたのも知ってたのか?」

「……そうですか。僕は神器の所有に関わらず堕天使や悪魔そして、組織によって居場所を失った子供たちを月空園に向かい入れただけです」

「なら――」

「双馬君と君が堕天使に襲われた事も、君が悪魔になってしまった事も僕はココに来て始めて知りました。――さて質問は以上ですか? 以上なら……君はもう月空園に関わってはいけない。

 ――――出て行きなさい」

 一護は何を言われたのか理解できなかった。

「せ、先生。一体何を――」

「君がもう堕天使に襲われまいが襲われようが、そのせいで月空園に被害が及ぼうが関係ありません」

「じゃあッ!!」

「――――君が悪魔だからです。組織では悪魔と人を確実に見分け、逃さないのように色々な訓練を受けます。そして見分ける一番効率のいい方法が憎悪です。悪魔の気配の逃さず、出会った瞬間殺す。そんな訓練を永遠と受けました。――正直に言うとですね、一護君。今こうやって君と話していることでさえ、自分を抑えるので精一杯なんですよ。しかも一体ではなく悪魔が自分の近くに三人も、殺したくて殺したくて殺したくて仕様がないんです。こればかりは何年経っても影のように離れることができないんです」

「先生」

 カウンターに置かれ握られた浦季の拳の隙間から、肉に爪が食い込んでいるのか血が出ている。

「出て行きなさい。そしてもう、僕に関わらないでください」

「――――」

 一護は何も言わず席を立ち、出口へと歩く。

 ドアに手をかけ、雨の振る外に出ようとした時――

「――――先生、今までありがとな」

 そう言い残し一護は店から出て行った。

 

 

 ■ ■

 

 

 ドガッ――

 一護が店から出たと同時に、浦季の横顔を関菜の拳が突き刺さった。

 椅子と共に倒れる浦季に馬乗りになると、関菜は浦季の襟を掴み顔を寄せる。

「――お前! 自分が何をしたか分かってんのか!?」

「……関菜」

「黙ってろ剛賢ッ! この馬鹿には殴って分からせるしかないんだ!!」

「止めろ関菜ッ!!」

 いつもの口調から外れた怒号に関菜は強張る。

 そんな関菜を剛賢はいつもの穏やかな表情で、浦季を掴む関菜の手を外す。

「……ゴメン」

「いいわよ。アナタが殴らなかったら私が殴り殺してたと思うし」

「そうか。――あの子達は?」

 一緒に座っていたテーブルを見るとソーナたちの姿がない。

 何処だと聞いてはいるが推測はつく。

「大丈夫でしょ。あの子たちの他にも私たちの協力者が一護ちゃんについているみたいだし」

 

 

 ■ ■

 

 

「一護君!」

 雨の中、濡れる事を気にせず歩き続ける一護を追うソーナと椿姫。

 声につられソーナの方を振り向く一護。

 その表情を見た瞬間ソーナはかける言葉が見当たらなかった。

 大丈夫なのか、これからどうするのか。

 言いたい事が山のようにあるが、それが言えるほどソーナの心は年相応に強くはなかった。

「悪ぃ、今日はもう一人にしてくれねえか。話はまた今度するから」

「お前そんなことが――!」

 怒鳴る椿姫をソーナが手で制した。

 懐から財布を取り出し数枚札を取り出し、一護に手渡す。

「分かりました、今日は帰ります。少ないですがこれでビジネスホテルにでも泊まってください」

 受け取りを拒む一護に無理やり持たせると、一護に頭を下げソーナと椿姫は魔方陣の中に消えた。

 

 

 ■ ■

 

 

 雨の中あてもなく一護は歩き続ける。

 帰る場所もなく行く場所もない、月空園に帰るわけにもいかず、ソーナの言うとおり何処かのビジネスホテルに泊まろうと、市街へ向かおうとすると前から、誰かが近づいてきた。

「雨の中傘もささずにって、お前は家出少女かよ」

「――――アンタは」

 

 

 ■ ■

 

 

 町から若干離れたところにある古びた小さな洋館。

 明治時代に建てられたであろうモダン仕立ての家は、周りに生えた木々と合わさり違和感を打ち消していた。

 年季の入った外観と同じく、内装も埃と傷だらけだ。

 雨風をしのぐ筈のガラスは所々破れて意味を成していない。

 オンボロとふさわしい、人の気配のない洋館の内部に人の気配があった。

 一護ともう一人背の高い男性が対面するようにボロボロのソファーに座っていた。

「どうよ、風呂に入ったからサッパリしただろ」

「あ、ああ」

「服はまあ、俺のお古だから文句は勘弁してくれ」

 男性はそう言い、入れたコーヒーを啜る。

「なあ、アザゼルさん」

 一護も目の前に置かれたコーヒーを口にし、男性アザゼルに問う。

「お前が思っている通りだよ」

 アザゼルは一護が言い終わるよりも先に言う。

 それ以上喋ることはなく静かに時間が過ぎる。

「まあ、今日は色々あっただろうし詳しいことはまたにしてくれ。この家は俺のアジトみたいなもんだから、好きに住んで使って構わねえよ」

「えッいや、ちょっと待ってくれ!」

 ソファーから立ち上がりリビングから出て行くアザゼルを、止めようと後を追いかける一護。

「部屋も好きに使っていいぞ、もう何年も使ってねえから電気は止められてっけど、早めに使えるよう手配はしておくぜ」

「いやだから、何で俺がココに住むって事で進んでんだよ!」

「何でって、お前行く宛あんのか?」

「それは……」

「別にずっと住めっていってんじゃねえよ。此処で落ち着いてゆっくりとこれからのことを考えればいいっていってんだよ。ガキん頃から面倒見てんだ、いまさら遠慮すんじゃねえよ」

「アザゼルさん、アンタ……」

「まあ、こんな所に人が住むには若干掃除が必要だろうけどな」

 キキイと廊下を走る鼠が二人を通り過ぎ、壁の隙間に消える。

 ポンと一護の肩を叩く。

「まあ頼むわ」

「オイ……!」

 

 

 ■ ■

 

 

「――ック」

 深夜、浦季たちの戦闘場所から若干離れた場所に火傷を負ったスルーヴァがいた。

 あの瞬間、浦季(偽者)が爆発した刹那、スルーヴァは持っていた魔力全てを使い身を守った。

 堕天使の魔力を持ってしても、全ての熱量と破壊力を防ぐのは不可能だったらしく、焦げ爛れた皮膚が雨に触れ痛みを生む。

「あの人間ども……! まさかあんな『モノ』を持っているとは。――――リーニアとオルトロは逝ったか」

 ッチと舌打ちをし、スルーヴァは闇に消えていく。

「まあいい。面白い情報が手に入った。それにどうせこのことを知っている者の口を塞ぐ手間が省けたんだ、大負けではなかったとしよう」

「――――そうですか」

「――ッ!?」

 自分以外いる筈のなのに声がした。

 背後から聞こえた声に振り向いた瞬間、自分が地面に叩きつけられたことに気づく。

 火傷がアスファルトに削られ、新しい激痛が襲う。

 痛みを堪えながら、自分を叩き付けた者を見ようと顔を上げる。

「貴様たちは――ッ!」

 スルーヴァを抑えていたのは剛賢、そして見下ろすように関菜、ソーナ、椿姫がいた。

「あの爆発でアンタのような堕天使が死ぬのは無理だろうからな、このお嬢ちゃんに頼んでアンタがいたであろう周辺を見張っていたんだよ」

「さて、アナタには聞きたいことがあるので正直に答えてください」

「答えないと、結構痛い目にあうわよぉ~」

 岩のようにビクともしない剛賢の腕を振りほどくのは不可能と知ると、スルーヴァは力を抜きなすがままになる。

「一体何をだ?」

「今日アナタが襲った黒崎一護の情報をアナタは何処で知りましたか」

「――――ああ、それなら前にお前たちを襲った堕天使に聞いたのさ。脅して聞いたといえばいいかな」

「黒崎一護そして双馬君の神器について知っているものはアナタ以外にいますか」

「……いない。その聞いた堕天使も私が情報を聞き出した後殺した。知っているのはもう私しかいない」

「何故、黒崎一護を襲ったのです。神器を狙っているのなら双馬君を狙えばいいはずを」

「単純に興味があった。他人の神器を自在に操る悪魔。捕らえてバラせばいい研究になると思ったんだ」

 研究という単語が出た瞬間、剛賢がスルーヴァを捕らえている腕に力が入る。

 痛みに呻くスルーヴァを無視し、関菜は剛賢に聞く。

「どうだ?」

「大半は本当のようね。でも堕天使を殺したってのは嘘。殺してはいないがそれに近い状態、それかもう手出しが出来ない状態にしたようねぇ」

「――――なっ!?」

「ん? ああ、剛賢は人体関係に精通しててな。人が嘘つく時の癖や様子が脈拍や眼球の動きから分かるんだとさ」

「――ッチ!!」

 舌打ちと同時にスルーヴァの体が輝き出す。

「――ッ! 剛賢腕を離せっ!」

「――え!?」

「しま――――」

 一瞬浦季がしたのと同じような光景がソーナたちを包む。

 刹那、スルーヴァの肉体が爆発し、その場を莫大な熱量が襲う。

 結界を張っていたとはいえ、その結界自体を破壊しかねないほどの熱量と威力は、内部の存命する存在全てを滅するに十分な威力があった。

 煙幕が晴れ、内部が鮮明になるとそこには傷一つない四人の姿があった。

 関菜を先頭に後ろにソーナたちを庇うように立つ。

「い、一体何が!?」

「あの堕天使自爆したんだよ。これ以上情報は流さないか」

「好きねぇー。身内も敵もそういうの」

「でも、これで一護君たちが襲われる心配はないようですね」

「ああ、だろうね。さっき知り合いから連絡があって一護を保護したんだと。明日会ってあげな。浦季はもう梃子でも会わないみたいだし」

 そうですかと言いソーナは関菜たちに頭を下げる。

「ソーナ様!?」

「――話じゃあ、アンタ相当な悪魔の名家の次期頭首なんだろ? そんな悪魔が人間に頭を下げるモンじゃないだろ」

「家は関係ありません。これは仲間を救ってくれた方に対する正当な礼儀というものです」

「関係あるわよぉ~。そういった柵は何処に至って着いてくるものよぉ。だから、あまり人の目があることろでは正しくてもするもんじゃないわ」

「今はお二人しかいませんので」

「ハア。こんな堅物委員長キャラじゃあ一護も苦労するな」

「あら結構いいコンビになると思うけど?」

「そうかー?」




これで浦季たちの出番は終わりです。
当分出てくることは無いでしょう。

今回も一護たちの出番はあまり出すことはできませんでした。
つ、次は必ず!
次回はようやく改まった一護とソーナの話を書いていくつもりです。
そろそろまた別の原作キャラも出していきたいですね。
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