日の暮れた病院。
一般病室にいる一護は寝転がり、天井を見上げていた。
病室に飾られているアナログ時計の針は十一時を指し、同室の患者は全員寝静まっていた。
だが、一護だけは寝れずの夜を過ごしていた。
何故か目が以上に冴え、患者たちの寝息が良く聞こえてくる。
寝過ぎたかとも考えたがどうにもそれが原因ではないらしい、目が覚めてからどうにも体が重い。気分が悪いというわけではないが、どうにも落ち着かない気分が続く。
「くそっ」
何度目か忘れた悪態を吐き病室を抜ける。
水でも飲んで落ちつこうと部屋を抜けてすぐ、ガゴンと何か不気味な物音が聞こえた。
音が聞こえた方向は丁度一護が部屋を出た右側からつまり別室から聞こえてきた。
誰か別の患者が自分と同じように部屋を抜け出しているのかと思ったが、それにしてはやけに大きな音だった。まるで耳近くで聞いた程の。
もしこの物音が自分が考えていたものではなかったとしたら、そう患者がベットから倒れたものとすれば、と考え一護は物音がした方向へ歩き始めた。
薄暗い廊下を足元のLEDライトがほのかに照らすタイルカーペットの上を一護は進む。
一部屋、一部屋静かに扉を開き中を確認していくと、ある部屋から人の会話が聞こえてくる。
声は二つどちらも若い女の声だ。部屋までは50メートル程離れていたが一護には鮮明に聞こえた。
「――――ではやはり」
「――――ええ、間違いないでしょうね」
話は佳境を過ぎたのか抽象的な所しか出てこない。
深夜の病院で灯りもつけずに何を話しているのか怪しさ交じりに一護は近づいた。
「――――ならばアレは?」
「――――恐らく彼が所有していると考えるのが妥当かと」
「――――そんな事が……」
「――――確信はありませんがこれだけは言えます」
部屋の前まで歩いた一護はふと壁にかかっていたネームプレートを見た。
そこには見知った昼に一度訪問した時に見た名前が飾られている。
「――――このままでは鬻葉双馬(ひさはそうま)は永遠に目覚めることはありません」
「なっ!?」
「――誰だッ!」
とっさに声を出してしまったが構わず一護は部屋に突入した。
扉を開けた途端、長髪の眼鏡を掛けた女が驚いた表情をした。
予期せぬ来訪者に動きを止めそのまま一護が自分の横を通り過ぎるのを見逃してしまった。
一護は女を無視しもう一人の声の主に詰め寄る。
双馬が寝ているベットの隣、そこに昼間一護に頭を下げた支取蒼那が一護を見つめ立っていた。
「おい、今言ったことはどういうことだ」
「……はて、何の事でしょうか?」
「――――っ! 惚けんじゃねえ! さっきお前らが言ってた双馬が目覚めねえってのはどういうことだって言ってんだよ!!」
「……少し声のボリュームを落としましょうか?」
溜息交じりに眼鏡の位置を直しながら蒼那は一護に注意した。
「テメッ!」
そ知らぬ顔が無視されたと思い一護は蒼那の胸倉を掴もうとし、
「……そこまでだ。それ以上前に進めば首が無くなると思え」
後ろにいた女が一護の首筋に剣を突き立てていた。
「椿姫お止めなさい」
「ですがソーナ様」
「私は止めろと言ったのです……彼は仲間なのですよ」
「……はい」
ゆっくりと一護の首から剣を抜き、椿姫は後ろに下がった。
だが警戒は解かないのか一護へ剣呑な目付きで睨む。
「椿姫が失礼しました」
蒼那は昼と同じように頭を下げ謝罪をした。それに毒気を抜かれた一護はああ、と曖昧な返事しか出来ない。
そんな一護を放置して蒼那は右手を何もない宙へと浮かべる。
と、上に向けた手のひらから青白く光るナニカが現れ次の瞬間消えた。
「これで外部への漏洩は無くなりました。――――さて、何からお話しましょうか?」
取り合えず話をする気はあるようで蒼那は備え付けられていた椅子に腰を下ろした。
蒼那が一護にも座るように進めるが一護はそれに答えずに言う。
「何で双馬が目覚めないって言ったのかだ」
「この子の中の一部が欠けてしまっているので不完全な状態で昏睡していると言っているのです」
「あ、え? ……欠けている、だと?」
「ええ、昨夜あなた達が堕天使に襲われた時、この子の中にあった神器が失われています」
「堕天使? 神器? ちょっと待ってくれアンタ何も言って……!?」
「忘れましたか? あの夜の事を思い出してください、記憶の枷はすでに解けかけているはずです」
「おい本当に何を――――」
そこまで言って一護の脳裏にとある光景がフラッシュバックする。
血の海に沈み、雨の中沈む自分を見下ろす黒い影。
憎悪に塗れた顔で今度は立つ自分を倒れたまま睨む黒翼を持つ女。
「――――うぁ……」
昼間から霞のかかっていた光景が鮮明に浮かび上がってくる。
剣で胸を指された痛みも不意に襲い掛かる。
胸を手で押さえるが胸には指された痕もなく無傷だった。
「どうやら思い出したようですね」
胸と額を押さえる一護に蒼那は言う。
「今のは……」
「昨夜あなたが本当に経験した現実です」
「なん……だと……!?」
「本来ならもう少し時間を置いて説明をしようと思っていましたが、致し方ありませんね。椿姫」
「はい」
呆けたままの一護を後に立ち上がった蒼那と椿姫は二人横並びに立つ。
と、いきなり二人の背から黒い翼が現れた。
昨日の女とは違う羽で被われた翼ではなく、皮膚で造られた蝙蝠のような翼。
人の身では決して有り得ないモノを備えた二人に、あの女と同じく異質なモノであることを理解する。
そして肉質で形成されたそれは、昨日見たの翼とは別の迫力を一護は感じた。
「お、お前たちは一体……」
「私たちは悪魔。そして昨日のあれは堕天使。大昔から人と同じくこの世に幾千夜と生きる者です」
今回ようやく原作キャラとのまともな絡み合いができました。
感想待ってます。