着任から数日経ったある日のこと。
「おはようございます、提督」
「大淀さん、おはよう。今日はやけに早いね」
「そう言っている提督の方が早いんですが……」
そう言いながら大淀は机に書類を置く。
「これは……」
「大本営からです。鎮守府近海の哨戒任務を開始せよ、との事です」
「遂に来たか……。五月雨と明石を呼んでくれるかな」
「わかりました」
大淀は執務室横の通信室へと入っていく。
それを見送りながら提督は書類を手に取る。
数枚をパラパラと捲り、印鑑を押していく。
そこに、館内放送で呼び出された五月雨と明石が到着する。
「おはようございます、提督」
「こんなに早くからどうしたんです?」
「おはよう、五月雨、明石。実は……」
提督が書類を見せつつ説明をする。
「とうとう出撃ですか……」
「ああ。現在うちで戦闘ができるのは五月雨、君だけだ。頼んだぞ」
「わかりました!一生懸命頑張ります!」
やる気に満ち溢れた表情で五月雨は答える。
それに頷き、提督は明石の方を向く。
「そして、出撃と並行して明石にも頼みたいことがある」
「はい、なんでしょう?」
明石は首を傾げる。
提督はそんな明石に別の書類を差し出す。
「これは……いつもの装備開発と……」
「あぁ、建造計画書だ。我が鎮守府初の建造を行なおうと思う」
「本当ですか!?工作艦明石、全力で建造します!」
キラキラとした表情でそう言う明石。
「あと、建造しながら入渠の準備もしておいてくれ。五月雨がいつ帰ってきても大丈夫なように」
「了解です!それじゃあ、私は早速準備に取り掛かりますね」
「ああ、頼んだ。五月雨と大淀さんはそのまま残ってくれ。このまま出撃ブリーフィングをしよう」
「はい!」
「了解しました」
嬉しそうに部屋を出ていく明石を見送り、提督は部屋中央の机に海域図を広げる。
「今日の出撃はここ、鎮守府近海だ。現在では深海棲艦の目撃情報はないが、なにせ数年放置されていた鎮守府だ。近くに敵がいてもおかしくないだろう」
「それを確認する為の哨戒ですね」
「そういう事だ。今日は主に近海の北方を哨戒してもらう。ただし、あまりに敵が多かったり、強かったりした場合は、離脱を最優先で考えてくれ」
「わかりました」
五月雨はそう答え、海域図を再び確認する。
「大淀さんは、僕と一緒に通信と作戦立案をお願いしたい。やっぱり、現場を知っている人の判断も欲しいからね」
「はい、任せてください」
「よろしく頼むよ」
「あ、そういえば」
五月雨が何かを思い出し、声をあげる。
「ん?どうしたの?」
「そういえば、この海域で確認されていた姫級の深海棲艦はどうなったんですか?」
「他鎮守府からの哨戒情報では最初の確認以降は目撃されていないらしい。それについての再確認も含めての哨戒任務ってことらしい。説明不足だったね、すまない」
提督はそう言って海域図の中で、赤丸に囲まれている海域を指差す。
「この付近の海域が目撃地点だ。こちらからも随時指示は出すが、五月雨自身でも注意していてくれ」
「はい、わかりました」
五月雨の返事を聞き、提督が時計を見ると出撃予定時刻の30分前になっていた。
「よし、出撃概要については以上。次に装備編成だけど……まだ
「あ、昨日の開発で61cm3連装魚雷が完成していますよ」
「じゃあ、それも追加で装備していってくれ」
「わかりました」
「よし、以上でブリーフィングを終わる。五月雨は早速出撃準備を始めてくれ」
「了解しました!」
そう言って敬礼をし、五月雨が執務室を出ていく。
それと同時に、提督と大淀も通信の準備を始めた。
数分後。
五月雨は鎮守府前の埠頭にいた。
『こちら通信室、五月雨、聞こえるか?』
「はい、聞こえます!通信良好です!」
『了解。それでは、ただいまより鎮守府近海哨戒任務を開始する』
「はい!駆逐艦五月雨、出撃します!」
そう言って五月雨は海上へと進んでいく。
『速度は原速を維持。そのまま進んでくれ』
「はい!」
ちなみに、艤装のシステムによって、出撃中の艦娘の視覚情報はディスプレイにて共有される。
提督はそれを見ながら指示を出すことになる。
その五月雨の視界に、黒い影がチラリと映る。
「提督!」
『 ああ、こちらでも確認した。戦闘準備をしてくれ』
「はい!お任せ下さい!」
そう言って、弾丸や魚雷を装填していく。
『敵はこちらに気づいていない。奇襲をかけて早期決着を狙う』
「はい!五月雨、第1戦速に移行します!」
速度を上げた五月雨は敵に近づいていく。
「敵影確認、駆逐イ級です!」
『こちら通信室、こちらも確認完了。敵を殲滅せよ』
「はい!」
イ級が主砲の射程範囲に入ると同時に狙いを定める。
軽く息を吐き、トリガーを引く。
「やぁぁぁぁっ!」
主砲はイ級の腹部に着弾し、煙をあげる。
「追撃します!」
奇襲によって混乱しているイ級の横方向へと移動し、魚雷を発射する。
海中を真っ直ぐ進んだ魚雷は寸分違わずイ級の艦底へと命中する。
黒煙と断末魔の声を上げながらイ級が沈んでいく。
「こちら五月雨。駆逐イ級を撃沈しました」
『こちら通信室、よくやった、五月雨』
「えへへ……初めての戦闘でしたけど、上手く出来て良かったです!」
『初めてでこの出来か、頼もしいな』
提督の声を聴きながら、周囲を索敵する。
「敵影なし。提督、どうされますか?」
『そうだな、初日から無理することもないからね。帰投してくれ』
「了解しました!」
そう答えて、五月雨は来た道を戻り始めた。
久々の更新になります。
そのうち、艤装とかの設定も書いてみてもいいかも。