五月雨は走って鎮守府の正面玄関へ向かった。
扉を開け門の前へ向かうと、丁度遠くに軍の移送車両が見える。
「ま、間に合った……」
深呼吸をし、息を整えて車の到着を待つ。
やがて門の前に止まった車の扉が開き、中から1人の艦娘が降りてくる。
「
聞きなれない言葉で挨拶をする薄水色の髪をした小柄な少女が、そう言って敬礼をする。
挨拶の意味がわからず戸惑う五月雨だが、すぐに気を取り直し、敬礼と挨拶を返す。
「どー……?あっ、こんにちは!私は五月雨です!よろしくお願いしますね!」
「こちらこそ、よろしく。……それで、私はどうしたら?」
少し微笑んだ響は、そう言って五月雨を見る。
「今から執務室に案内します。その後に、私が鎮守府内を案内しますね」
「了解した。よろしくお願いする」
「はい!」
五月雨は響を先導するように歩き出す。
響は物珍しそうに鎮守府の廊下を見渡している。
「響ちゃんはこの鎮守府が初の着任なんですよね?」
「うん、艦娘の適正があるのがわかったのも、ほんの数ヶ月前でね。……あと、敬語はやめてくれないかい?私の方が後輩だし、歳もそんな変わらないから、こそばゆい感じがするよ」
「あ、うん……いつもの癖で……」
少ししゅんとする五月雨に、響が笑いかける。
「普通に喋ってくれた方が、私も嬉しいな」
「わかった。じゃあ、普通に話すね?」
「ありがとう」
そんな話をしているうちに、執務室の前に到着する。
「……少し、緊張するね」
「提督は優しい人だから、大丈夫だよ」
五月雨は扉をノックする。
「どうぞ、開いてるよ」
中から返事が聞こえたのを確認し、五月雨が扉を開く。
「失礼します。提督、新人艦娘が到着しました」
「着いたかい。通してくれ」
提督がそう言い、五月雨が響を部屋に招き入れる。
響は提督の机の前に行き、敬礼する。
「駆逐艦響、一三〇〇より着任になります。よろしくお願いします」
緊張している響をみて微笑み、提督が答える
「よろしく。暫くは訓練や演習が主になると思うけど、数日もして慣れてきたら五月雨と一緒に哨戒任務に着いてもらうよ」
提督は続けて言う。
「あと、僕に対しては皆と同じように接してくれて構わないよ。あまり堅苦しくても疲れるだろうからね」
「うん、わかったよ、司令官。これからよろしく」
響はそう言って敬礼を解く。
「じゃあ、今日は五月雨に鎮守府内を案内してもらって、その後はゆっくり休んでくれ。遠くから来て疲れているだろうし」
「了解」
響の返事に提督は頷き、五月雨の方を向いて言う。
「じゃあ、早速案内を頼むよ、五月雨」
「はい、了解しました!」
相変わらず目線は合わせないまま、五月雨が答える。
少し寂しそうな表情をして、提督は作業に戻る。
「じゃあ、響ちゃん、行こっか」
「あぁ、うん……」
五月雨は響の手を引いて執務室を出る。
そのまま、工廠、食堂に行き、寮舎の案内を始めた時に、響が五月雨に聞く。
「五月雨は、司令官の事が苦手なのかい?」
「え、えぇ!?なんでそう思うの!?」
「いや、目も合わせないし、なんかよそよそしい感じがして」
目を左右に泳がせながら、五月雨が言う。
「そ、そんなこと、無いと思うよ……?」
そんな五月雨を見て、響が寂しそうに言う。
「結構、避けられる側は、辛いんだよ」
「え……?」
五月雨が驚いたように響を見る。
響は五月雨の方を見て言う。
「私は他人の目線やら態度やらを見抜くのが得意なんだ。誤魔化せるとは思わない方がいい」
「う……うぅ……」
得意気に微笑む響と、誤魔化しきれず悔しそうにする五月雨。
「とはいえ、ただ苦手って訳でも無いみたいだね」
「うん……」
「そうだな……本当は、司令官の事が好きだけど、気恥ずかしくて顔を見れない、ってところかい?」
「うぇ!?す、すす、好き!?」
顔を真っ赤にする五月雨。
それを見て、響はくすりと笑い、言う。
「どうやら、無自覚だったみたいだね。悪いことをした」
「好き……私が、提督を……好き……」
固まったまま、うわ言のように呟く五月雨。
「ふふっ……五月雨、できれば早く立ち直って欲しいかな」
「はっ!そ、そうだ!まだ案内の途中だった!」
我に帰る五月雨に、響が謝る。
「まぁ、私のせいで中断させてしまったからね。すまない」
「ううん、大丈夫。ありがとう」
予想外の感謝の言葉に、響が戸惑う。
「あ、ありがとう?」
「うん」
再び歩き出しながら五月雨が言う。
「ずっと自分の感情がわからなくて、モヤモヤしてたんだ。響ちゃんのおかげで気づけたから」
「なるほど……」
響は納得し、再び微笑む。
「こりゃまだまだ、先は長そうだね」
「ん?響ちゃん、何か言った?」
「いいや、なんでもないよ」
そう言って、五月雨の隣に並び歩く響。
やがて響の自室に到着する。
「ここが響ちゃんの部屋になるから」
「うん、
「今日はゆっくり休んでね」
「そうするよ。あと、改めてよろしく」
「うん、よろしく。じゃあ、また後でね」
そう言って五月雨は響と別れる。
執務室に向かって歩きながら、繰り返す。
「好き……好きかぁ……そっかぁ……」
桃色に頬を染めながら嬉しそうに呟く五月雨だった。
「それで、提督?」
「はい」
「執務が終わったからって何をしていたんですか?」
「プラモデルを……作っていました」
「今週中にやる書類は何枚残っていますか?」
「30枚くらいです」
「もう終わらせられる書類もありますよね?」
「はい」
「……提督」
「……はい」
「人々の安全を守る為に戦う鎮守府の代表である貴方が!仕事をサボってどうするんですか!」
「すみません……」
「はぁ……絶対に遊ぶなとは言いませんが、出来るものは早めに終わらせてください。その分対策も早く出来るんですから」
「はい」
「……ちなみに、何を作ってたんですか」
「……ガンダム」
「艦船じゃないんですか!」
最後にちょっとしたギャグみたいなものを挟んでみました。
登場させてほしい艦娘がいましたら、遠慮なくコメントしてください!