コズミックプリキュアS   作:k-suke

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第10話 強さの意味(後編)

 

 

今を遡ること一週間前

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひの太「ちきしょう… もっと俺にも力があればなぁ… あんな奴をぶっとばせるだけの力があれば…」

 

 

 

ソーラと志夜刑事が出会う少し前のこと、悔し涙を流しながら歩いていたひの太だったが、突然ドスの効いた男の声が響いてきた。

 

 

セーリ「力が欲しいか?」

 

その声に顔を上げると、風船玉のように太った真っ黒な男がいた。

 

 

見るからに不審人物であることに加え、その男の醸し出す得体の知れない空気に、ひの太は本能的に危険を感じ取っていた。

 

 

ひの太「う、うあ…」

 

 

セーリ「怖がることはない。俺が君の望みを叶えてやる。君が許せない奴と戦うための力だ」

 

そう言いながら、セーリは黒光りのするクリスタルを取り出した。

 

 

セーリ「このダーククリスタルを持っていくといい。君に望み通りの力が手に入る」

 

 

その言葉にひの太は恐る恐る手を伸ばして水晶に触れた。

 

すると、そのクリスタルはボオッと黒く光り、溶け込んでいくようにひの太の手の中に消えていった。

 

 

ひの太「えっ? 消えた?」

 

セーリ「このクリスタルが君を受け入れたんだ。君に今大きな力が加わった。その石を拾ってみたまえ」

 

 

セーリの言葉に、ひの太は足元に落ちていた石を拾い上げようとしたが、その石はなんの抵抗もなく握りつぶされ、手の中でパラパラと砂になっていった。

 

 

ひの太「す、すごい…」

 

セーリ「それが君の力だ。その力で望み通りにしたまえ」

 

 

 

そう言い残してセーリは姿を消し、ひの太は一人残されたのだが、やがて小刻みに震えだした。

 

 

ひの太「やった… やったぞ!! 力が手に入ったんだ!! みてろよ〜!!」

 

 

そうしてひの太は先ほどの上級生の元に常軌を逸した速度で駆け出していった。

 

 

セーリ「ふふ、これでよし。新しいプリキュア、キュア・ソーラーか。奴はパワーはあるようだが、まだまだ機敏に動けるほど戦い慣れはしていない。それが付け入る隙よ」

 

 

そんなひの太のことを、近くのビルの屋上から見下ろしながらセーリは満足そうに笑みを浮かべた。

 

 

 

 

そして、案の定ひの太は超感覚で先ほどの上級生の居場所を察知し、問答無用でそれを叩きのめしていた。

 

 

上級生「な、なんなんだよ、お前は? もう勘弁してくれよ〜」

 

ひの太「俺から盗んだ金も返さないで何言ってるんだ? すぐに返せばよかったのに」

 

上級生「だ、だからもう使っちまったんだ。明日持ってくるから!!」

 

 

涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、必死に許しを乞うていた上級生だが、先ほどとは完全に立場が逆転していたひの太は手を緩めなかった。

 

 

ひの太「そんな上手いこと言ってごまかせると思うか!! 返せないなら死んじまえ!!」

 

 

トドメとばかりに大きく拳を振り上げ力の限り殴りつけると、上級生はトラックにでも跳ね飛ばされたかのように何回転もしながら吹っ飛んでいった。

 

 

 

ひの太「すごい… これだけの力があレば怖いモノなんテない!! 俺ハ強ィ、オレはッヨイン田…」

 

 

自分の強さに打ち震えていたひの太だが、だんだんと口調がおかしくなっていき、それに従って全身から黒い蒸気のようなものが噴き出し始めた。

 

 

ひの太「オレハサイキョーダー!!」

 

 

その叫びとともに、全身が完全に蒸気に覆い尽くされ、黒い火花のようなものがスパークすると同時に、巨大な猫のドラフターが誕生した。

 

 

 

ひの太の変身した猫ドラフターは、自分の強さを誇示するかのように爪を振りかざしてビルを破壊しはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーラ「あのドラフター、昨日ひの太くんが助けてたのとおんなじ模様… まさか!!」

 

 

暴れまわる猫ドラフターの模様を見たソーラは、一体誰がドラフターにされてしまっていたのか即座に推測した。

 

 

 

ソーラ「やめなさい!! こんなことをしても何にもならないよ!!」

 

必死に訴えかけたソーラだが、ドラフターと化してしまっていたひの太に言葉が通じるはずもなかった。

 

 

ソーラ「うわぁあああ!!」

 

雄叫びをあげて振るってきた猫ドラフターの爪にソーラは吹っ飛ばされてしまった。

 

 

 

志夜「大丈夫ですか!?」

 

ソーラ「え、ええ。それより周りの避難を頼みます」

 

 

心配して駆け寄ってきた志夜に周囲の避難を頼むと、ソーラは空を仰いだ。

 

 

 

ソーラ「太陽は出てる… よーし、いっくぞー!!」

 

太陽光線が降り注いだソーラのプラチナブロンドの髪はぼんやりと光り始め、彼女にも力がみなぎり始めていた。

 

 

それを確認するかのように拳を握り締めると両腕を頭の上でクロスさせ力の限り叫んだ。

 

 

ソーラ「モードプリキュア、ウェイクアップ!!」

 

掛け声とともに両腕を大きく開くとソーラの全身は万華鏡のような幻想的な光のオーロラに包まれていった。

 

その光のオーロラを身にまとうかのようにすると、彼女は深緑のフリルのついた黒光りのするドレスのようなコスチュームに変身していた。

 

 

そしてルビーのような真っ赤な瞳で、ドラフターを一睨みすると堂々たる名乗りを上げた。

 

 

ソーラー「光り輝く太陽のかけら キュア・ソーラー!!」

 

 

 

 

ソーラーは変身完了するとともに腰の左右のクロムスティックを取り外した。

 

 

そのまま二本のスティックを柄の部分でくっつけて、一本の棒のようにすると力を込めるようにしてスティック部分に光を纏わせた。

 

 

 

ソーラー「行くよ!! 徹夜で考えた新技、クロムスティック・ブーメラン!!」

 

そうして投げつけたスティックは、光輪のようになって飛んでいき猫ドラフターの体を見事に切り裂いた。

 

 

 

 

 

 

「ギャアア!!」

 

「ギャイン!!」

 

 

 

この二つの悲鳴の種明かしをすると前者が猫ドラフター、後者がソーラーである。

 

 

光輪となって飛んで行ったスティックは確かに猫ドラフターの体を切り裂きダメージを与えることには成功した。

 

 

しかしブーメランとなって戻ってきたときに、ソーラー自身にもそれをキャッチすることができず脳天に突き刺さってしまったのである。

 

 

 

結果、頚動脈のあたりを切り裂かれ真っ黒な煙を蒸気のように噴き出しながら苦しんでいる猫ドラフターをよそに、ソーラーも頭を押さえてフラフラになることになった。

 

 

ソーラー「お、お〜… キャッチ失敗… でもまだまだ…」

 

 

 

なんとかソーラーが正気に戻り立ち直ったのと、猫ドラフターが気力を取り戻したのはほぼ同時だった。

 

 

ソーラー「ひの太くん、今元に戻してあげるからね」

 

 

ソーラーは目の前で両腕を組むと、全身に力を溜め始めた。

 

するとソーラーの全身は輝き始め、やがて光の塊になった。

 

 

 

ソーラー「受けて見なさい、さっき考えた必殺技。プリキュア・フラッシュダッーシュ!!」

 

 

その掛け声とともにソーラーは猫ドラフターに向かって猛スピードで突っ込んで行った。

 

 

 

 

しかし、猫ドラフターは猫特有の俊敏さを持っておりその体当たりはあっさりかわされ、ソーラーは近くに乗り捨ててあったトラックにまともに激突することになった。

 

 

そして当然そのトラックは大爆発を起こし、ソーラーは吹っ飛ばされる羽目になった。

 

ソーラー「あ… ぐぅ…」

 

 

トラックの爆発に巻き込まれた… というより爆発を引き起こしたソーラーは相当のダメージを受けてしまっていた。

 

そんなソーラー目掛けて、猫ドラフターは獲物を狙う獣の目で牙と爪を振りかざして襲いかかっていった。

 

 

ソーラー「そ、そうはいくか… モードディヴィジョン!!」

 

その掛け声とともにソーラーは四人に分身した。

 

 

 

 

ソーラー「こ、これで、少しは時間を…」

 

 

撹乱して時間を稼げると思ったソーラーだが、その期待は見事に裏切られ、猫ドラフターの攻撃に本体が吹っ飛ばされ、分身も消滅した。

 

 

ソーラー「なんで本物がわかったの〜!?」

 

 

 

 

情けない悲鳴とともに吹っ飛んでいったソーラーを上空から見て、セーリは嘲るような呆れたような感想を漏らしてた。

 

 

セーリ「バカかあいつは? あれだけ色が違っていれば誰でも見分けがつくだろうが」

 

 

 

この感想通り、四人になったソーラーの髪の色は、本体が銀、後の三人がそれぞれ赤と青と黒である。

 

しかもロングヘアであるため、子供でも一発で見分けがつこうと言うものである。

 

これは立体映像投影装置として搭載されていたシステムであるが、もともと実験用であったため動きの確認用にわざと色が違って投影されているのである。

 

まぁこれに気がつかなかったソーラーの方にも問題があるのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先ほどから自爆に近い形でダメージを受け続けたソーラーはボロボロになってしまっており、猫ドラフターは自分の力を確かめるように彼女を爪で嬲り始めた。

 

 

ソーラー「うあっ… があっ…」

 

 

まさに猫にいたぶられるネズミのような格好になってしまい、傍目にもわかるほど弱り切ってしまっており、今にも機能が停止しそうだった。

 

 

 

セーリ「フッ、歯ごたえのないやつだ。これであいつが消えればドラフターの究極成長も、この世界を暗黒に染めるのも容易い」

 

 

そんなソーラーを見て、セーリは作戦の成功を確信していた。

 

 

 

 

志夜「危ない!!」

 

 

ソーラーをいたぶるのにも飽きたかトドメを刺そうとした猫ドラフターに対して、避難誘導をある程度終えた志夜が何発か発砲した。

 

 

無論、当然倒すまでには至らなかったが弾丸は皮膚を貫通し、それなりに痛かったらしくドラフターも悲鳴をあげていた。

 

 

 

ソーラー「あ、ありがとうございます。よし…」

 

一時的に攻撃が止んだため、なんとか体勢を立て直せたソーラーは志夜に感謝しつつ転がるようにして一旦距離をとった。

 

 

 

しかし、猫ドラフターの俊敏さは相当なものであり、ダメージが回復したかと思うとすぐさま突進してきた。

 

 

ソーラー「くっ、まずい。避けられない」

 

 

避ける余力などもはやなく、身構えたソーラーだったが突然猫ドラフターの動きが止まった。

 

 

ソーラー「…えっ?」

 

志夜「止まった…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

セーリ「? どうした?」

 

 

突然のことに皆が疑問に思う中、猫ドラフターは苦しそうに呻き声を出し始めた。

 

 

志夜「あの怪物、ミラービルに映った自分の姿に戸惑ってる…?」

 

 

志夜のポツリとつぶやいた言葉が聞こえたのか、ソーラーは事態を理解した。

 

 

ソーラー「そうか!! ひの太くん、思い出して!! あなたが強くなりたかったのは、守りたかったものがあったからでしょう!! こんな風に何かを壊したかったんじゃないはずよ!!」

 

 

そのソーラーの言葉に猫ドラフターは一層苦しみ出し、先ほど投げたスティックにより傷ついた部分から再び黒い煙を噴き出し始めた。

 

 

 

ソーラー「よし、今だ!!」

 

 

ソーラーはクロムスティックを一本構えてスティック部分に電撃を纏わせると同時に、グリップを強く握りしめ光のエネルギーを注入した。

 

それによりクロムスティックはただの電磁警棒から光輝くスティックへと変化した。

 

 

 

ソーラー「やぁあああ!!」

 

そしてそのまま大ジャンプしてスティックを首元の傷に力の限り突き立てた。

 

 

すると猫ドラフターは、スティックを突き刺されたところから光の火花を飛び散らして断末魔の悲鳴をあげた。

 

 

そしてソーラーがスティックを引き抜くと、猫ドラフターは吹き出した火花を全身に浴びながら倒れこみ、大爆発を起こして木っ端微塵に吹き飛んだ。

 

 

 

 

セーリ「くそっ!! ここまできて失敗か」

 

失敗に終わったことを悟ったセーリは舌打ちとともに引き上げて行った。

 

 

 

 

 

ソーラー「痛た!! たたた…」

 

 

爆発に吹き飛ばされ地面に叩きつけられたソーラーの目の前に、刺々しい金属の玉のようなものがゴトリと降ってきて地面に転がった。

 

 

その金属の塊は少しずつ溶けるように形を変えていき、最終的には元どおりひの太の姿へとなって行った。

 

 

ソーラー「よかった… 元に戻ったんだ…」

 

 

 

 

 

 

 

そして一週間後  つまり現在

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーラ「こないだの戦いで身に染みたよ。強くなるのにただ力があればいいってわけじゃない。ちゃんと自分の力で強くならなきゃ意味がないんだって」

 

志夜「そういうことです。だからこそ私たちだって日々訓練してるんですから」

 

 

 

あの戦いの後、ソーラはまず体の動かし方を覚えるべきだと反省し、志夜に色々相談した。

 

 

そして志夜の勧めで、時間を見ては色々と武術のトレーニングをしてもらっている。

 

 

河内「まぁ、そういうことだな。っと、今日のところはそろそろ切り上げろ。あんまり詰め込み過ぎても意味はないからな」

 

 

遠藤「うむ、日々コツコツと己を鍛え上げていく。学問に王道なしと言うが、それは運動の面でも同じことじゃ」

 

志夜「じゃあまた四日後ね。お疲れ様でした」

 

ソーラ「はい、ありがとうございました」

 

 

 

 

そうしてソーラを含め、遠藤博士たちが研究所へ引き上げる中、回復したひの太を見かけた。

 

 

もっとも以前の上級生とは違う他のだれかに絡まれているところだったが。

 

 

 

「だーかーらー、ちょっと金貸してくれっていってんだ」

 

ひの太「やだ!! これは猫のエサ代なんだ。おまえなんかに貸すお金じゃない!!」

 

 

堂々言い放ったひの太に、上級生は一瞬ひるんだが

 

 

「生意気言ってんじゃねぇよ!!」

 

 

イラついたようにひの太に殴りかかった。

 

 

遠藤「コラ、やめんか!!」

 

ソーラ「いい加減にしなさい!!」

 

 

そういって駆け込んできた遠藤博士とソーラを見て、やばいというように上級生は逃げ出して行った。

 

 

 

 

ひの太「イタタ…」

 

殴られたところが多少痛むのか、顔を顰めていたひの太にランは心配そうに声をかけた。

 

 

ラン「大丈夫? んもう無理するから…」

 

ひの太「平気さこれぐらい。力なんかなくても、逃げたりしないって決めたから」

 

 

ひの太の言葉を聞いて、ソーラは嬉しそうに微笑んだ。

 

ソーラ「そうだよね。簡単な方向に逃げないで、精一杯頑張り続けられることが強さなのかもね。私も頑張るから、一緒に頑張ろう!!」

 

 

 

 

続く

 

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