ソーラ「ここは… ゴミでいっぱいだけど…」
河内「スクラップ置き場か… さっきの自転車はどこにいったんだ?」
自転車を追ってたどり着いたスクラップ置き場だが、一面に粗大ゴミが所狭しと並べられた場所のせいもあり見失ってしまっていた。
ラン「でもなんかもったいないわね。まだまだ使えそうなのこんなにいっぱい捨てて…」
志夜「気をつけてください。何か異様な雰囲気です。ただのスクラップ置き場とは思えないほど…」
どこか圧迫感を感じた志夜刑事が警戒するように進言した瞬間、周囲のスクラップが一斉に飛びかかってきた。
河内「なあっ!?」
ソーラ「くっ!! クロムスティック!!」
突然のことに河内警部たちは必死に顔を覆ったりして身を防ぎ、ソーラはクロムスティックを取り外してスクラップを叩き落としていった。
河内「くそっ!! ここは危険だ、一旦退避!!」
その判断には全員異論もなく、飛んでくるスクラップを必死にかわしかわし、なんとか逃げ出した。
すると今度はスクラップ置き場に捨ててあったスクラップ全てが、まるで意思を持ったようにうごめきだし、やがて一箇所に集まると巨大な人型の怪物へと変貌した。
ソーラ「くっ、ドラフター!! やっぱりあいつらの仕業ね!!」
舌打ちをする間も無く、スクラップドラフターはスクラップでできた巨大な拳を振り下ろしてきた。
河内「うぉおおお!!」
志夜「きゃあああ!!」
ソーラ「あっ、刑事さん!! ランちゃん!! ぐずぐずしてられないか!!」
やるべきことをわかっていたソーラは、両腕を頭の上でクロスさせ力の限り叫んだ。
ソーラ「ソーラーエネルギー全開!! モードプリキュア、ウェイクアップ!!」
掛け声とともに両腕を大きく開くとソーラの全身は万華鏡のような幻想的な光のオーロラに包まれていった。
その光のオーロラを身にまとうかのようにすると、彼女は深緑のフリルのついた黒光りのするドレスのようなコスチュームに変身していた。
ソーラー「光り輝く太陽のかけら キュア・ソーラー!!」
変身したソーラーは、スクラップドラフターの攻撃をかわして一気に懐に飛び込んだ。
ソーラー「こっちだってね、特訓してるんだから。そうそう簡単には!!」
その言葉通り、急加速もブレーキも以前よりはるかにうまくできており、その姿を見た志夜刑事も嬉しそうだった。
志夜「やりますね、前はブレーキもろくに効かなかったのに。指導した甲斐がありました」
そうして懐に飛び込んだ勢いのままキックを炸裂させようとしたソーラーだったが
(助けて〜)
ソーラー「えっ!?」
目の前のドラフターから聞こえてきた弱々しくも助けを求める声に攻撃を躊躇してしまった。
無論、スクラップドラフターはその隙を見逃さずソーラーをはたき落した。
ソーラー「うわっ!!」
叩きつけたところを踏み潰さんとしてきたスクラップドラフターから、なんとか逃げたソーラーは耳の感度を最大にあげると同時に、ルビーのような赤い両目を光らせた。
ソーラー「このドラフター、何かおかしい。探って見ないと…」
ソーラーの目には、遠藤博士の改良により望遠、暗視機能の他、サーモグラファーなどが新たに追加されていた。
その機能と数十倍の聴覚をフルに使用したところ、ソーラーは驚くべきことに気がついた。
(助けてくれ〜!!)
(苦し〜い!!)
(痛いよ〜!!)
(ここから出してくれ〜!!)
ソーラー「こ、このドラフター、全身のスクラップに生命反応がある… まさか!!」
そのソーラーの驚愕の声を聞いた河内警部たちも事情を察し絶句した。
河内「ま、まさか… 行方不明になった連中なのか?」
志夜「だ、だとしたら… 全身に人質を取ってるということに…」
ラン「そんな…」
皆が身じろぎひとつできないでいる中、スクラップドラフターは雄叫びをあげるとソーラーに殴りかかってきた。
ソーラー「う、うわっ!!」
スクラップドラフターの動きそのものは、その巨体と相まって鈍重であり、今のソーラーにしてみれば難なくかわせるものなのだが、それ以上に厄介な状態になっているのを痛感していた。
ソーラー「まずい。迂闊に攻撃してスクラップを破壊したら取り込まれてる人達まで死んでしまう… これじゃブレストフラッシャーも撃てない…」
ソーラーの必殺技ブレストフラッシャーは、破壊力こそ絶大だがエネルギー消耗が激しすぎる上、何より威力そのものも大きすぎるという欠点がある。
実際、前の戦いで使用した際には半壊していたとはいえ工場を一つ吹っ飛ばしてしまい、避難が早かったおかげで人的被害が出なかったことが奇跡に近い状態であった。
そんな光線を撃てば、当然ドラフターもろともに人質のようにスクラップに取り込まれている人がどうなるかは推して知るべしである。
ソーラー「えぇいまずい… このまま手を出せないとドラフターが究極成長しちゃう」
スクラップドラフターの攻撃を余裕を持って避け続けていたソーラーだが、実際に追い詰められているのは彼女の方であった。
ドラフターにしてみれば、ソーラーを倒すことができなくても時間を稼ぎ続けることができれば良いのであり。その危険性は彼女が一番よく知っていた。
ソーラー「何か、何か方法は…」
焦りつつもスクラップドラフターの全身を改めてサーチしたソーラーが、なかなか突破口を見出せない中、ランがあることに思い当たった。
ラン「待って… こいつの全身がスクラップなら、核にされた人はどうなってるの?」
それを聞き、ハッと気がついたソーラーは改めてスクラップドラフターの全身をスキャンし始めた。
ソーラー「見つけた!! 核はあそこね。 全身がスクラップなら核のまま変化してない。周りのスクラップさえどかせられれば…」
攻略法を見抜いたソーラーは気力を取り戻し、クロムスティックを両手に飛びかかった。
ソーラー「下手にスクラップを破壊すれば、中に捕らえられてる人が死んじゃう。攻撃は最小限にしないと…」
特訓の成果があってか、ソーラーのスティック捌きは的確なものであり、ピンポイントで目標のスクラップだけを壊すことなく、うまく剥がして叩き落としていった。
しかし、当のスクララップドラフターがそんな状況で黙っているはずもなく、核の一部が露出したところで、ソーラーをはたき落した。
ソーラー「うわぁっ!!」
はたき落とされたソーラーの目には、ドラフターがようやく露出させた核を再び覆おうとスクラップを引き寄せている光景が映った。
ソーラー「まずい!! 急いで核を取り除かないと!!」
ソーラーはクロムスティックを構えたものの、そこで一瞬考え込んだ。
ソーラー「…核だけを取り除くには、これしかない。でも、特訓はしたけど、こんなハードな技がうまく狙いをつけられるか…」
その逡巡の間にも、スクララップドラフターの核は刻一刻とスクラップに覆われ始めており、回復など時間の問題であった。
ソーラー「くっ!! やるしかない!!」
覚悟を決めたソーラーはスティックを両手に構えて高速きりもみ回転しながら突っ込んでいった。
ソーラー「喰らえ!! プリキュア・ドリルドライバー!!」
そのドリルのような攻撃でスクララップドラフターの核は見事にえぐり抜かれた。
志夜「や、やった…」
核を失ったことでスクラップドラフターは体を維持できなくなり、ガラガラと崩壊していった。
一方、あまりの高速回転で突っ込んでいったためか、ソーラーは姿勢制御がうまくできなくなり空中でバランスを崩した。
結果、えぐりとった核を放り投げる格好になり、ソーラー自身もくるくると回転しながら地面に激突しそうになった。
ソーラー「な、なんの…!!」
それでもなんとか地面に激突寸前体勢を立て直して着地し、即座にスティックに力を込めて光のエネルギーを注入した。
ソーラー(くっ、無茶な姿勢で着地したから膝と腰が破損した。でも…)
そうして空中に放り出した核に狙いを定めると、痛みをこらえつつも雄叫びとともに大ジャンプしてスティックを突き刺した。
セーリ「チッ、まずいな。あいつもだんだんと強くなっている。戦略を少し見直すか」
敗北を確信したセーリは、結末も見届けず立ち去っていった。
事実、スティックを突き刺された核は光の火花を吹き出しており、その勢いが収まっていくと同時に、ゆっくりと元の産廃業者へと姿を変えていった。
当然、スクララップドラフターが浄化されたことで、スクラップに捕らえられていた人たちも無事に解放されることになった。
もっとも
河内「なんとかなったが…」
志夜「この飛び散ったスクラップの山の処理の方が大変そうですね…」
あたり一面に飛び散ったスクラップを見回し、引きつりながらそうつぶやくしかなかったが。
数日後 遠藤平和化学研究所
ラン「ただいま…」
なんとなくぐったりしたような声とともに帰宅したランを、遠藤博士が心配そうに迎えた。
遠藤「おお帰ったか。どうした疲れたような声を出して」
ラン「え? そりゃ疲れるわよ、あのバカ山のせいで!!」
ソーラー「えっ? あの子また何かあったの? ドラフターの力のせいで、どこか体に異常でも?」
無茶をした反動で破損したボディの修復がようやく完了したソーラが、不安そうに尋ねると、ランは力なく返事をした。
ラン「それがさぁ、自分が無駄に捨てたゴミに取り込まれたりなんかしたからか、あいつもさすがに反省したみたいで物を大切にするなんて言い出したんだけど…」
遠藤「良いことではないか。それの何がいかん?」
キョトンとした遠藤博士にランは大きなため息とともに続けた。
ラン「方向性が問題なのよ。壊れたシャーペンは何にも書く必要がない時に使えるとか、穴の空いた上履きを学校に行きたくない日に履けるとかわけわかんないこと言い出してそれを周りに押し付け出してさ…」
それを聞いたソーラの不安は増したらしく、真剣な顔になっていった。
ソーラ「やっぱりドラフターの力の影響かな。きちんと調べたほうがいいかも…」
ラン「心配することないわよ。根本的にズレてるやつなだけだから…」
その頃、自宅の庭で自転車を丁寧に扱っている肉山くんの姿があった。
肉山「よし、この少し塗装の剥げた自転車は自転車に乗りたくない時に使える。乗りたい時に使うための自転車はまた買って貰わなくっちゃ」
河内「あそこまで懲りん子供も珍しいな…」
志夜「全くです…」
事後の様子を確認して回っていたこの二人も、肉山くんの言動には呆れ顔でため息をつくしかなかった。
続く