コズミックプリキュアS   作:k-suke

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第35話 強く、気高く、恐ろしく(前編)

 

 

 

次元皇帝パーフェクトと名乗る連中が侵略に来て二年。

 

そして今なおドラフターが出現し、街を破壊するといった状況下にもかかわらず、人々はたくましく生きていた。

 

しかし、その生き方にも多種多様あり、真面目に生きている人間ばかりではない。

 

 

悲しいかなそれが人間の強さであり愚かさでもある。

 

 

 

 

 

 

 

 

甲子市内

 

 

 

「オラオラ、もっと手早く金をつめろってんだよ」

 

「変なことすんなよ。ぶっ殺されたくなかったらな」

 

 

とある銀行に覆面をした三人組の男が押し入り、銃やマシンガンで行員を脅していた。

 

 

 

「けっ、これで全部かよ。しけた銀行だ」

 

「まぁいいさ、ずらかるぞ!!」

 

「いただいた金を使ったらまた来てやるよ。じゃあな!!」

 

 

そして挨拶がわりだとでもいうように、マシンガンを乱射してから立ち去って行った。

 

 

 

 

この三人組の銀行強盗は浮かれながら車を飛ばして逃走していた。

 

 

「いやっほーっ!! うまく行ったな」

 

「ああ、これで一年は遊んで暮らせるぜ!!」

 

「おい、もっと飛ばせ。面倒くさいのが来たぞ」

 

 

バックミラーを確認した運転手の言葉に、後部座席にいた二人も後ろをのぞいてみると、当然とでもいうかパトカーが何台もサイレンを鳴らして追跡して来ていた。

 

『そこの車、直ちに停車しなさい!! 繰り返す、そこの車…』

 

スピーカーでがなりたててくるパトカーにうるさそうに顔をしかめて銀行強盗は窓から身を乗り出してマシンガンを撃ち始めた。

 

 

「チッ、ウルセェんだよ」

 

「くたばりやがれ!!」

 

 

 

信号など知ったことかと逃走劇を続ける中、何軒か別の事故も発生していた。

 

 

そうして交差点に何度目かに差し掛かった時だった。

 

 

「ん? おら、どきゃがれ!! 轢き殺すぞ!!」

 

一人の色白の少女が、周りのことなど御構い無しに、交差点を一人静かに渡ろうとしていた。

 

 

強盗の方も一切アクセルを緩めることなく交差点に突っ込んでいき、周りの通行人も含め誰もがその少女が跳ね飛ばされるであろうことを確信し、何人かは思わず目を覆ったて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし直後、雷鳴のような轟音とともに車は急停止した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんなんだよ!? 急に止まるな!!」

 

 

車が急停止し、後部座席から外に放り出されてしまった強盗は打ち付けた全身の痛みに悶えつつも運転手を罵ったが、目の前の光景に目を疑った。

 

 

自分たちの乗っていた車は間違いなく100キロ近い速度で走っていた。

 

 

しかし一人の少女がその車を片手で受け止めていたのだ。

 

そうしている間にも車のアクセルはふかしたままであり、ギャリギャリと音を立てながら回転しているタイヤが、車が停止したわけでないことを雄弁に語っていた。

 

 

「な? な? なぁ!?」

 

あまりにも常識はずれな光景に強盗たちは泡食ってしまっていたが、ややあって正気に戻ると持っていた銃を乱射した。

 

 

 

 

 

 

「こ、この化け物が!!」

 

しかし、その少女は受け止めていた車を軽々と放り投げてひっくり返すと同時に、右手を目の前で高速で動かした。

 

 

「へっ?」

 

 

狙いには自信のあった強盗だが平然と立っているその少女に素っ頓狂な声をあげた。

 

 

「確認する。それで全弾撃ち尽くしたな」

 

その淡々とした言葉とともに開かれた右手からはバラバラと弾丸がこぼれ落ちてきた。

 

 

「ヒィッ!!」

 

 

目の前にいるものが自分たちの理解を超えた化け物であると判断した強盗たちは一目散に逃げようとしたが、ちょうどそこにパトカーが追いついてきたため全員御用となった。

 

もっとも

 

 

「お、おまわりさん!! 助けてくれ!!」

 

「あ、謝る!! 金は返す!! これからは真面目に働く!! なんでもする!! だから助けてくれ!!」

 

 

いつのまにか姿を消した得体の知れない少女への恐怖から、半ばパニック状態になっており、自分から捕まりに行ったと言った方がしっくりきたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間後 遠藤平和科学研究所

 

 

 

居間の電話のベルが鳴り響く中、ダイーダが地下の研究室から駆け上がってきた。

 

 

ダイーダ「もしもしもしお待たせしました。遠藤平和科学研究所です」

 

河内『おお、その声ダイーダか』

 

 

電話の向こうから聞こえてきた嬉しそうな声にダイーダもまた、嬉しそうに声をあげた。

 

ダイーダ「あっ、河内警部。どうしたんですか今日は」

 

河内『ああいやな。ソーラのやつにちょっと礼を言っときたくてな』

 

ダイーダ「ソーラに? あの子が何か?」

 

河内『ああ、一時間ほど前に銀行強盗をとっ捕まえてくれてな。名前も名乗らず去って行ったっていうが、まぁ彼女に間違いないだろうからな。 銀髪に色白の髪の女の子で、ちょっと着崩してたがモデルが着るようなセンスのいい服着てたっていうんでな』

 

 

 

その河内警部の言葉にダイーダは首をかしげた。

 

ダイーダ「変ですね。ソーラなら今日はランの検診の付き合いで病院に行ってるんですけど」

 

河内『? そりゃ確かに妙だな。事件現場は病院とは正反対のはずだしな』

 

ダイーダ「ただの人違いじゃないんですか?」

 

 

河内『いや。犯人たちが言うには色白で銀髪の中学生ぐらいの女の子だったそうだ。化け物みたいなパワーで車をひっくり返したり、弾を手づかみにしたとか言っててな。誰も信じちゃいないが、まぁそんな女の子なんて一人しかいないだろうと思ってな』

 

ダイーダ「まぁそうかもしれませんが…」

 

そんな会話をしていると居間に備え付けてあったマイナスエネルギー検知器が尋常でないレベルの警報を鳴らした。

 

 

河内『な、なんだぁ!?』

 

その音は電話口の河内警部の耳にも伝わるレベルであり素っ頓狂な声をあげた。

 

 

リーフ「なになにどうしたの?」

 

遠藤「何事じゃ!! このマイナスエネルギーは!!」

 

 

この強烈なマイナスエネルギーと先ほどの河内警部の話から、ダイーダはあることを連想し青くなった。

 

ダイーダ「!! ま、まさか… あの子が!! 警部すみません切ります」

 

リーフ「? どうしたのダイーダちゃん?」

 

慌てて電話を切ったダイーダにリーフはキョトンとして尋ねたが、ダイーダの表情はいつになく真剣だった。

 

ダイーダ「リーフ、急いで準備して!! すごく嫌な予感がする」

 

 

 

 

 

 

 

甲子市 市民病院

 

 

 

未だ松葉杖をついているランの定期検診に一緒に来たソーラだったが、検診を終え、病院から出たところでたまたま同じように検診に来ている豪とその母親と鉢合わせしていた。

 

 

ソーラ「えーっと、こんにちは。私ソーラって言います。豪くんにはいつも…」

 

人懐っこい笑顔とともにお辞儀をしたソーラだったが、豪の母は険しい表情でそれを切って捨てた。

 

 

豪母「挨拶は結構です。もうウチの子と関わらないでください!!」

 

豪「なっ、母さ…」

 

 

絶句している豪をよそに、さらにまくしたてて言った。

 

 

豪母「成績が落ちるだけぐらいならまだしも、こんな大怪我して死にかけるなんて。これもそれもみんなあなたたちみたいな人と関わったからでしょ!! ランちゃんまでこんな目に合わせて… もう私達と関わらないでください!!」

 

豪「ちょっ、ちょっと!! 別に俺たちが怪我したのって姉ちゃんたちのせいじゃ…」

 

それだけ言い捨てるともうソーラと同じ空間に豪を置いておきたくないというように、必死に言い訳をしている豪を連れて病院へと入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

豪の母親に言われたことが堪えたかソーラは病院を出たところで塀にもたれかかってうなだれていた。

 

ラン「げ、元気出してよソーラさん。ソーラさんは何にも悪くないって私も豪もわかってるし、ああいう考えをする人もいるってことだけわかっておけば…」

 

 

ソーラ「…でもさ。あの時は他に助けられなかった人が大勢いることも確かだし。頑張ってきてうまくやれてたつもりだったけど、本当につもりだったのかなぁ…」

 

 

ラン「あ〜…(おじいちゃんならうまく言えるんだろうけど…)」

 

 

ずっとソーラのことをそばで見てきたランには、彼女がどれだけ必死になって戦ってきたかよくわかっている。

 

しかし、自虐のスパイラルに陥りかけているソーラを説得するには、ランではまだまだ力不足であり何とも言えない沈黙があたりを支配した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜♪〜♫〜♪〜〜♪〜♫〜♪〜♫〜♫〜♪〜♪〜♪〜

 

 

 

 

 

 

 

その暗い沈黙を破るかのように、どこからともなく美しくも物悲しさを感じるメロディーが流れてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーラ「ん? なにこの音? なんか冷たい感じがするけど…」

 

ソーラがぽつりと感想をもらす傍ら、ランは嫌という程聞き覚えのあるメロディーに真っ青になり始めた。

 

 

ラン「こ、この曲… ま、まさか…」

 

ソーラ「どうしたの? ランちゃん」

 

 

青くなって震え始めたランに驚いていると、コツコツと足音が響き何者かがゆっくりと近づいてきた。

 

 

ソーラ「えっ?」

 

 

足音のした方に振り返った時、ソーラは言葉を失った。

 

 

その何者かは、透けるような白い肌をしたプラチナブロンドのロングヘアの少女であり、何より自分に瓜二つの姿をしていたからである。

 

ソーラ「わ、私そっくり… あ、あなたは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…確認する。お前がキュア・ソーラーか。コズミックプリキュアもくだらんものを」

 

ソーラ「にゃにぃ〜!!」

 

だが、そんなソーラを嘲笑うと、その少女は無表情ながらも小さくランに向かって微笑みかけた。

 

 

「久しぶりだなラン。こうして会合するのはこの世界の経過時間で1年と9ヶ月と16日ぶりか」

 

ラン「ゆ、ゆうさん… い、いつ帰って…」

 

「回答する。3日と9時間18分前だ。何者かがこの世界をよその次元と繋げた跡を辿って帰ってみたが、データにあった町並みと随分様変わりしていたのでな。検索に時間がかかった」

 

 

ソーラ「ね、ねぇ。この人ランちゃんの知り合い? どうして私にそっくりなの?」

 

 

 

 

 

そのソーラの質問に、ランは青い顔で絞り出すように必死に説明を始めた。

 

 

 

ラン「こ、この人は四季ゆうさんって言って… お、お父さんの作ったロボットで…」

 

ソーラ「!! それって魔法つかいプリキュアが戦ったことがあるって言ってた!!」

 

ゆう「肯定する。二人でなければ戦うこともできず、いざ戦っても相手にもならんやつらだったがな」

 

共に戦ったこともある魔法つかいプリキュアを、みらい達のことを吐き捨てるように悪し様に告げたゆうにソーラはカチンときた。

 

 

ソーラ「ふざけないで!! あなたに間違えられて私ひどい目にあったかだからね!! いい迷惑だったんだから!!」

 

しかし熱くなっていくソーラとは対照的に、ゆうは冷めたようにそれでいて不満げに返した。

 

 

ゆう「否定する。私が貴様に似ているのではない。貴様が私を模して作られているだけだ」

 

 

 

 

 

 

ラン「ふ、二人とも落ち着いて!! ゆ、ゆうさんもソーラさんのお姉さんになるんだし… あのドラフターを作ってくるセーリやパーリとかいうやつらもいるから」

 

 

ヒートアップしだした会話をなんとか落ち着かせようとしたランだったが、完全に逆効果になった。

 

ゆう「妹? 否定する。そんなものなど私を模しただけのガラクタ人形でしかない」

 

 

ソーラ「なっ!?」

 

いきなりの侮辱の言葉に驚きカッとなったような声をあげたソーラだが、ゆうはそれを無視してさらに続けた。

 

ゆう「それにあんな程度の連中なら既に私が処分した。そんなこともまともにできんとは、貴様程度など多様な世界にいた有象無象のプリキュアの一人でしかない。いや、ランや豪を傷つけた時点で貴様などそれ以下だ。薄汚い偽物が」

 

ソーラ「い、言いたい放題言って…」

 

 

ゆう「宣告する。私は一人でいい。消えろ、偽物」

 

その淡々とした宣告とともに、ゆうは一瞬で距離を詰めソーラを殴り飛ばした。

 

 

ソーラ「ガハッ、な、なにすんのよ!!」

 

突然のことに当然の声をあげたソーラだったが、ゆうもまた当然と言うように返した。

 

 

ゆう「回答する。私はプリキュアを破壊する死神である。貴様が曲がりなりにもプリキュアを名乗っているならば、それもまた破壊する理由になる」

 

 

ソーラ「ふざけたことを!! もう我慢できない、やってやろうじゃないの!!」

 

ゆうの態度に完全に頭にきたソーラは、両腕を頭の上でクロスさせた。

 

 

 

ソーラ「モードプリキュア、ウェイクアップ!!」

 

掛け声とともに両腕を大きく開くとソーラの全身は万華鏡のような幻想的な光のオーロラに包まれていった。

 

その光のオーロラを身にまとうかのようにすると、彼女は深緑のフリルのついた黒光りのするドレスのようなコスチュームに変身していた。

 

 

ソーラー「光り輝く太陽のかけら キュア・ソーラー!!」

 

 

 

ソーラーは変身と同時にスティックを両手に構えて突っ込んで行った。

 

 

ソーラー「クロムスティック!! ウォオオオリャアア!!」

 

しかし、ゆうはそんな攻撃をあっさりいなし、ソーラーを地面にはたき込み、そのまま蹴り飛ばした。

 

 

ゆう「嘲笑する。やはり偽物、この程度か」

 

ソーラー「ば、バカにすんな!! 今のは準備運動よ!!」

 

 

激昂したソーラーを見て、ゆうもまた完全に戦闘態勢に入った。

 

 

ゆう「了解した。ならばこちらも対抗のため、武装の安全装置を解除する。 偽物が、本物の強さを見せてやる」

 

 

淡々と告げると、ゆうは左手を親指・人差し指・中指の三本を立てて前に突き出した。

 

ゆう「チェインジ!!」

 

 

そう叫ぶと、突き出した左手の指を立てたまま、手の甲を内向きにして顔の前へと横向きに持って行き、人差し指と中指の間から赤い右目を光らせた。

 

ゆう「スイッチ・オン!!」

 

 

次の瞬間、黒い電流のようなものが火花をあげてゆうの全身を走り、一瞬ののちにその姿は変わっていた。

 

 

彼女の姿は、フリルのない落ち着いたデザインのロングスカートの黒一色のドレスとなっており、同じく黒一色の肘まである手袋とブーツを着用していた。

 

 

その黒さは抜けるような色の白い肌やプラチナブロンドのロングヘアと相まってより一層黒く、そしてどこか美しく光を放っていた。

 

 

死神という形容がしっくりくるその姿と、以前にも増しての強烈なプレッシャーにランもソーラーも気圧された。

 

 

ラン「あ… う… キュ、キュア・デッド…」

 

ソーラー「くっ、それがあんたの本気ってこと」

 

 

「肯定する。バトルスタイルコードネーム、キュア・デッド」

 

 

その静かな名乗りとともに左手に黒い靄のようなものを纏わせると、それを大鎌へと変化させ、冷たく宣告した。

 

 

 

 

 

 

デッド「破壊する。ターゲット、キュア・ソーラー」

 

 

 

 

 

続く

 

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