具体的な訓練の方式を指定しない司令官も悪いが、つい、調子に乗ってしまうデグさんも悪いのですよ。
天空へ抜ける一条の光、それは計測機器やセレブリャコーフ少尉の持つ演算宝珠の中継画像だけでなく地上からの見ることができた。
「あはっ、すごいなこれは。いやいや、驚きだ。」
実のところ藤堂司令官がデグレチャフ少佐に編隊訓練を命じたのは、新型魔道具が届いたというのもあるが、本当に戦闘機と編隊を組めるのかということを確認しようと思っていたからであった。
危惧していたのは、フィートではなくメートル単位での高度一万の空を飛ぶ戦闘機と編隊しての高高度での戦闘ができないのではないかということであった。転生前に読んでいた原作小説においてはデグレチャフ少佐は確かに高度一万を超えた空域での戦闘をしている記述はあるものの、あの小説での高度の単位はフィート、メートルに換算すれば高度一万で三千m強、エレニウム九五式に対してシューゲル技師が理論上確実と言っていた高度一万八千ですら五千五百mに過ぎないからだ。
しかしながら、訓練でデグレチャフ少佐が見せた動きは、想定以上であった。訓練とはいえ、出撃数随一のアデル・ガーランド少尉をやすやすと手玉にとるあの姿、戦闘機に対してあの北方ノルデンで行ったとの同じく銃撃を掻い潜り戦闘機に降り立つ動き、こちらに転移する前に見たアニメや小説、コミカライズで何度も見たあの光景が目の前で繰り広げられた。司令官を演じることをひと時忘れ興奮してしまったのも無理はないだろう。
横を見ると、エミリア・ユンカース大尉が、セレブリャコーフ少尉にしきりに、航空魔導士ついて質問しているのが確認できる。彼女もデグレチャフ少佐の凄さを素直に認めたようだ。
「セレブリャコーフ少尉、あれが最新型のエレニウム九五式を使用しての動きか?」
藤堂司令官は興奮を抑えつつ確認した。原作での活動限界高度一万二千を超える高度一万五千での模擬戦闘、そしてあの機動、いかなデグレチャフ少佐とて九五式を使用したと思ったのだ。
だが、セレブリャコーフ少尉は否定する。
「はい、いいえ、藤堂司令官殿。計測機器での反応を見ますと今回の訓練ではデグレチャフ少佐は九七式のみを起動しております。」
「九七式のみ? 先程の新型魔道具の説明からすると今の一連の動きは九五式でないと無理なように思えたが」
「はい、先程の資料はあくまでも二〇三大隊の隊員による試験運用データに基づいて算定された予測値です。少佐の魔力運用効率は私たちより格段に優れており、想定以上の能力を引き出したものかと。流石、私たちの大隊長です。」
「司令官、いかがであったかな」
無線からデグレチャフ少佐の声がした。あれだけの動きをした後だというに呼吸の乱れもない落ち着いた声だ。
「デグレチャフ少佐、素晴らしい、いや、本当に素晴らしい動きだ。新型魔道具の動作確認と戦闘機との編隊行動がとれるかの確認のつもりだったのだが、エレニウム九七式のみで二機相手に瞬く間に撃墜判定をとるとは見事なものだ。トップエース級のアデル・ガーランド少尉の機体にやすやすと降り立ってみせるとは、これで貴官の戦闘能力を疑うものはいないだろう。地上に戻り次第、本訓練を総括しよう。」
ああ、まさにあのデグレチャフ少佐だ。小説を繰り返し読みコミックを揃えBDまで購入して魅入ったあのターニャ・フォン・デグレチャフ少佐の戦闘を画面越しでなく生でその目で見れた。今は司令官だということも忘れ、元の世界の一幼女戦記ファンに戻りそうになるのを抑えるのが精一杯だ。更に声をかけようとしたとき、研究棟の方から白衣の女性、Dr.エリノアがむかっていることに気が付いた。
「おいおい、司令官、吾輩をおいて随分楽しそうなことをしていたようじゃないか。面白い反応に興味を惹かれてね。で、先程の光の柱はなんだい。まさか今日到着するとかいうドイツの航空魔導士の仕業かね?」
いつもは研究室にこもっているDr.エリノアは、元は綺麗であっただろう銀髪を掻き上げながら聞いてきた。
「おや、Dr.エリノア。あなたが外に出てくるとは珍しい。今のは、今日着任したデグレチャフ少佐の光学術式だよ。おそらくだがその威力はどの戦闘機から放たれる火力よりも強力だろう。後で、今日のデータをそちらに渡そう。」
しかし、なぜかDr.エリノアは曇った表情まま、あきれたという口ぶりで言い放つ。
「藤堂司令官、いまさら言うことでもないと思うが、フーファイターは神出鬼没なのだよ。そして、昨今、出現頻度も増えている。そんな状況で先程の光学術式だっけ、派手なものを天上に向けた放ったらどうなると思うかね?」
Dr.エリノアの指摘はもっともだ。やはり、デグレチャフ少佐と会って浮ついていたようだ今後は気を付けようと思ったその時、基地に警報が鳴り響く。遅かったようだ。
「言わんことではないか司令官。呼び寄せてしまったようだね。今後新実験をするようなときは吾輩と相談したまえ。フーファイター研究の第一人者として、可能な限り隠蔽できるような環境を用意するよ。」
Dr.エリノアはそれだけ言うと、薬品で汚れた白衣を翻し研究棟の方へ戻っていた。
「司令官、大変なのである、かなり近い位置に出現している。北西方向より本基地に接近中四八〇遅くとも六〇〇以内には本基地上空に到達する見込みなのである」
エミリア・ユンカース大尉が、状況を報告する。
やむを得ないな、訓練直後であるが仕方がない。上空へ無線で呼びかけることとする。
「四八〇!今から発進させても間に合わないな。しかなたがない。デグレチャフ少佐、鳩森小隊長、鷹登少尉、吹雪准尉。フーファイターが出現した。北西方向より当基地に向かっている。直ちにこれを迎撃せよ。なお、ガーランド少尉、リュッツオー軍曹、両名の機体は訓練弾しか積んでのだったな。直ちに、帰投せよ」
これに対して、デグレチャフ少佐の声が無線から響き渡る。
「司令官殿、他の部隊で対応すべきでは。我々は訓練のための編成、連携などに問題があると言わざるをえませんが。」
「残念ながら出現位置が悪い。敵は最短で四八〇以内に基地上空に到達する。基地からの戦闘機を出撃させての迎撃は不可能、故に今から出撃しても回避は困難と判断する。可及的速やかに後援を送る。後援到着まで遅滞防御に努めて欲しい。」
もっともな意見だが、今は無理だ。頑張ってもらうしかない。でも、リップサービスぐらいはしておこう。
「とはいえ、デグレチャフ少佐、貴官には後衛を頼む。鳩森小隊はこう見えても連携は本基地で一番といって差し支えない。実際の戦闘を観戦するつもりで十分だ」
おまけコント3:コラボイベントをデグさん
デグさん「なぜ、私がフランソワ共和国など救わねばならない。敵国だぞ、取り逃がしたド・ルーゴ将軍のいる国だぞ」
作者「いえ、フランソワではなく、フランスです。」
デグさん「貴様、私がこの世界に来たタイミングを知っているだろう。本編では南方に飛ばされたようだが、あちらでも、自由共和国と戦っているのだろう」
作者「あ、読まれたのですか存在Xから渡された小説。」
デグさん「ああ、やはり気になってな。後ろの歴史概略図を。でも、もう燃やしたぞ。不愉快だ」
作者(中身を読んで、すれ違いに気付いたかもな、この反応・・・)