>>>西暦一九四二年六月二十日一四三〇時 極東基地滑走路<<<
「ターニャ・フォン・デグレチャフ少佐、進発する」
編隊訓練を行うため先に飛び立った鳩森機、鷹登機、吹雪機に次いでターニャは空へと駆け上がる。
使用したのはエレニウム九七式だ。精神汚染の恐れのある九五式を最初から使うのはご免被る。模擬戦闘が始まってからでよいだろう。しかし、いかに航空魔導士とは言え人間、「飛燕」や「隼」といった戦闘機と編隊を組まされるとどういうことだろう。
「スゲーな、本当に飛んで行っちまいやがったぜ。しかし司令官、本当に飛ぶだけじゃなくて戦闘もできるのか。アタシには信じられねーぜ」
アデル・ガーランドが急速上昇していくデグレチャフ少佐を見ながら驚きの声を上げる。
「私たちもすぐに飛び立ちませんと。」
横でアデルと対照的に真面目そうなグンヒルド・リュッツオーが声をかける。
「ガーランド少尉、リュッツオー軍曹。メッサーシュミット Bf109Kに搭乗し、4人と模擬戦闘を実施せよ。特に、デグレチャフ少佐は歴戦の勇士だ。誉れ高き銀翼突撃章保持者だ。敵から悪魔と恐れられたエース・オブ・エースだ。優秀なエースパイロットが乗った新鋭の戦闘機と対峙する気でいかなければ撃墜スコアをつけられるのは、君たちだ。心してかかれよ。」
藤堂司令官は二人のドイツ人少女操縦士に檄を飛ばす。
「司令官、わかってるてーの。じゃ、いってくるぜ」
「司令官、いってまいります」
二人が滑走路をかけていく。
「本当にいたのであるな。航空魔導士というのが。ゲーリングが空軍を牛耳っていた時に、対空砲部隊をとられた陸軍が意趣返しに航空機が絡まない航空部隊として設立させたという噂は聞いていたが。本当に人が空を飛ぶとは」
司令官の横にいた最先任小隊長であり作戦参謀を兼ねるエミリア・ユンカース大尉がつぶやきに、それを聞いた藤堂司令官は尋ねる。
「ほう、ユンカース大尉、君は航空魔導士というものを知っていたのか」
「噂レベルの話である。でも、デグレチャフ少佐のことなら聞いたことがあるのである。訓練校時代に士官学校出身者から聞いた『戦場よりもデグレチャフ一号生殿が怖い』というたぐいの話だが、本当にたまには噂にも真実があるのだな」
エミリアが固い表情のまま答える。
「真実が戦場の噂を上回ることもある。ユンカース大尉、模擬戦闘の評価をお願いするよ。セレブリャコーフ少尉、航空魔導士のことについて我々はよくわかっていない適宜説明をお願いするよ」
「はい、わかりました。司令官殿。」
「しかし、本当に飛べても生身で戦闘ができるのか?」
さて、航空魔導士の戦闘能力はこちらではどんなものだろうか?エミリア・ユンカース大尉とセレブリャコーフ少尉とともに遥か上空へと上昇していくデグレチャフ少佐を見上げていた。