俺には幼馴染がいる。幼稚園の頃から一緒で、小学校から今の中学校まで一緒。
家はそれなりに近いから、よく一緒に遊んだりもしている。
そんな幼馴染の名前は村雨。変わった名前なのだがちゃんと女の子だ。
俺の贔屓目無しに見ても村雨は美少女だし、この学校で一番かわいいと思う。と言うか、ミスなんたらみたいなコンテストがあっても絶対村雨なら一番をとると思う。事実、先輩から後輩まで村雨に告白してフラれたと言うのを聞いたし。
村雨は偶に意地悪な所はあるけど、基本的に優しいし、思慮深いしお世話さんな所もあるから村雨の事を嫌っている人は誰も居ないと思う。
俺はそんな大人気な村雨さんと、幼馴染と言う間柄だからよく一緒に居たりする。だから、よく友達に『お前ら付き合ってるだろー』とか『美男美女同士でお似合いだぜ』とか『リア充轟沈しろオラァン!!!』とか言われる。
俺と村雨が付き合ってる?ははっ、そんなわけあるか!!
第一に、俺も村雨も異性の友人の中で一番仲が良いし、色々と分かり合っている仲だ。ある種依存なのかも知れないけど、気心が知れてるから一緒にいて一番安心できる仲ではある。
確かに村雨と一緒に映画を見に行ったり、プールや海に行ったり、ボーリングやゲーセン、場合によっては遊園地にもいったりするが、そんな事友達同士なら当たり前だろ?
確かに休日が被ったら、よく村雨から遊びに行こうと誘われたりするし、他の人を誘ったら何故か断られたり、ドタキャンされる事がよくあるせいで結果的に二人きりになる事が多いけど、別におかしなことは無い筈だ。友達同士なら二人っきりで遊ぶのもおかしくない。
第二に俺は別に美少年じゃない。村雨に見合うレベルの容姿かと言われたら絶対に違う。それぞれのレベルの男子が二十人集まっててその中に俺が紛れて居たら良くて中の下と言った容姿だ。
俺ですら美少女だと認める村雨の容姿には到底及ばない。
頭だってよくないし、運動は大して出来ない。殆どなんでも出来る村雨には及ばない。
第三に村雨には好きな人が居ると言う事を何処かの噂で聞いた。
何故か野郎共に『それはお前の事だろ!!』とよく言われるが、別に村雨からアプローチを受けた記憶も無いし、好きだと言われたのは幼稚園に通ってた頃だか小学校に通ってた頃だかの気がする。流石にそのころの発言を本気には今の俺はしない。そのころはよく母さんに『ママ大好きっ!!』って言ってた頃だし。
小学校中学年の頃から、村雨からよく『女の子に対する作法』として色々と教え込まれたが村雨が言ってたしその通りなのだろう。
だから、俺は村雨からアプローチを受けてないし、好きだという事も直接言われてないと俺が言うのも当然の帰結だろう。
こう言うと野郎共からは割と本気のヘッドロックを極められて痛いし、女子の視線が呆れだったり、変にきらきらしてたりしてて怖いので、最近は言わないようにはしてる。俺とて死にたくはない。
というわけで、俺と村雨は付き合ってないし、お互いに恋人は居ない。幼馴染として、村雨に良い恋人が出来る事を祈っている。
と、そんな事を考えている内にホームルームが終わった。クラスメイト達にまた明日と声をかけながら教室を去り、下駄箱で靴を履き替えて校門に向かう。校門の前では、村雨が待ってくれていた。
「待たせたか?」
「ううん。村雨のクラスも終ったばっかりだから待ってないわ」
ふんわりと笑みをうかべながら村雨は言っているが、村雨のクラスの担任と違って、俺のクラスの担任は他所のクラスより五分も長くホームルームをやっている。
ちょっとした嘘をついて気を悪くしないようにしてくれる村雨は相変わらず優しい。
「そうか。じゃあ、帰るか」
「うん。今日も勉強頑張りましょ!」
村雨の手をとってその手を握りながら帰路につく。村雨が教えてくれた『女の子に対する作法』だ。他の女の子にやると困惑する子もいるから、やる子は選ばないといけない。取りあえず、村雨は大丈夫。と言うか、教えてくれた本人だし。
村雨の態度も別に変わったものじゃない。互いの家が近いし、俺達は受験生だから学校帰りはいつも村雨の家に寄って一緒に勉強する。ちょっと前まで友達を誘ってそれなりの人数で一緒にやろうともしたのだが、絶対に断られるから最近は誘ってない。
不思議な事と言うほどでもない。他の人と勉強したいのだろうし、一人の方が勉強が捗る人もいるのだろう。
これでわかったと思う。
なっ?俺と村雨は付き合ってないだろ?
イメージは村雨が積極的過ぎて、距離感を麻痺させてしまったので外堀を埋めつつ挽回しようとしてる幼馴染