ツインテールとゲームで世界を守る。【とりあえず凍結】 作:熊0803
プロローグ〜彼女が生まれた日
ある世界に、
その少年は有り体に言えば天才だった。それも常人ではあり得ないほどの。僅か五歳にて東京大学やオックスフォードなど難関校の修業過程を全て網羅し、六歳にてその才能をなんと、全てゲーム開発につぎ込んだ。彼は生まれたその時より、ある夢を持っていたからだ。『自らの作り出したゲームで、世界中の人々を笑顔にしたい』という夢を。
彼にとってゲームとは、己の命と『とある夢』、そして二人の幼馴染と家族を除けば何よりも価値のあるものであり、それに一生を捧げる覚悟をも持ち合わせていた。その執念の成果か、七歳になる頃には彼の作り出した無数のゲームたちは世界中の人間の元に行き渡り、それに伴い凄まじいまでの利益が彼に転がり込んできた。
だがそれすら正斗は、その人外と言うほかない身体能力で子供が出ることのできるスポーツや格闘技などの大会全てを総なめし、手に入れた優勝賞金とともにゲーム開発の費用に全て費やし、そして彼が十歳になった頃には彼の周りには多くの優秀な人間が寄り集まり、やがてそれは一つの大きな会社と成った。
『幻夢コーポレーション』という名のその会社が建ち、それに属するものたちが次々と増えていく中、彼はそれまで家族と幼馴染、ゲームにのみ向けていた興味を彼らに向け、部下であり彼らの生活を守るため、ゲームに限らず様々なジャンルへと進出していった。その中でそれに最も必要なもの…すなわち優秀な人材を取り込んで行き、やがて幻夢コーポレーションは文字通り世界中余す国なく支社を構える世界有数の企業となった。
現在、十二となった正斗が若き天才社長として君臨している幻夢コーポレーションのキャッチコピーは『鉛筆から人工衛星まで』、モットーは『飽くなき夢と、絶えぬ笑顔を』。そしてやはりというべきか、幻夢コーポレーションで最も利益を出しているのは最初であり、幻夢コーポレーションの原点であるゲーム系列だった。
まず最初に世にお披露目となった家庭用ゲーム、『マイティアクションX』は未だ世界中で根強い人気を誇っている。加えて、無料でDLCとmodを告知無しで不定期配信していた。家庭用ゲームは『マイティアクションX』の他に本格的RPGの『タドルクエスト』があり、アーケードゲームの『バンバンシューティング』と『爆走バイク』。この四つは、『ゲンムコーポレーション』のゲーム四天王と呼ばれている。他にも音楽ゲームである『ドレミファビート』や四人協力狩猟ゲーム『ドラゴナイトハンターZ』、マイティアクションXの進化系であり、二人協力プレイゲームの『マイティブラザーズXX』、その最新版である『マキシマムマイティX』など、数え上げればきりがないほどのゲームたちは世界中で愛されてきた。
そんな、『世界中の人々を笑顔にしたい』という夢をわずか十二年という短すぎる歳月で叶えた正斗は今ーー
●◯●
「…………」
「お、おいマサト、元気出せって!ゲーム大会でまた優勝したんだろ!?」
「そうよ、それなのになんでそんな不機嫌なのよ?」
俺が無言でコントローラーを常人ならば目に負えぬスピードで操作し、大型スクリーンの中のキャラクターを操作して同じく画面の中のドラゴンをフルボッコにしていると、両隣にいる二人の幼馴染兼親友ーーおそらく俺が知る中で世界一のツインテール…頭部の両側面に髪を束ねる女子の髪型のこと…バカこと観束総二と、自分で言うのもなんだが人外レベルの頭脳と身体能力を持つ俺に真正面から互角で殴り合ってくる武闘派少女、津辺愛香が心配そうに声をかけてくる。
改めて自己紹介しよう。俺の名前は神崎正斗、世界有数の大企業幻夢コーポレーションの社長であり、世界一のゲームバカだ。そしてその俺が今いるのは自宅…といっても、常識を遥か彼方へとぶん投げたような超豪邸にある地下スクリーンを使って俺の作り出したゲームの一つ、『ドラゴナイトハンターZ』を二人と一緒にやっている。
最初に一つ言っておくが、俺は決して成金趣味などではない。うちの家族……父こと幻夢コーポレーションのゲーム企画部部長、神崎真宗と母こと幻夢コーポレーションの広報部部長兼現役モデル、神崎嶺奈…が昔から一度豪邸に住みたかったらしく、あれよあれよという間にこんな家が建っていた。まあ、こんな薄気味悪い息子を愛情たっぷり…ていうか過剰投与して育ててくれた二人だ、親孝行できるのならと特に反対しなかった俺も悪いが。
まあそれはともかく、なぜ俺が父さんと母さんへの愛情?が詰まったこの豪邸の地下スクリーンで、側から見てわかるほど超不機嫌そうにゲームをしているか。それには聞くも涙語るも涙、俺からすれば深刻な…だが他人からすれば、あまりにもくだらない事情があるからだ。
ことの発端は二時間前。先ほど総二が言ったように、俺は本日開催されていたゲーム大会へと赴いた。そこで…まあ参加者には悪いが軽く優勝し、いつものごとく声援を浴びたのだが…
『流石パラド社長だぜ!』
どこの誰とも知れぬ輩が放ったこの言葉が、俺の今の態度の原因となっていた。
俺はゲームを作り出すとそれを買う人…すなわち、プレイヤーたちの誰よりも早く一番最初に自分が作ったゲームを遊ぶ。普通はゲームを手に入れて遊ぶのだが、自分でゲームを作って最初に自分で遊ぶというある意味矛盾した行動から、俺はいつしか『パラドクスゲーマー』という通り名をつけられていた。それに社長が混ざり、上記の名前となっている。
だが、この名前が俺はとても気に入っていなかった。それはなぜか?その理由は簡単かつ単純なこと。『パラド』は、もう存在しているからだ。
何を言ってるんだって?そんなのお前なんだから当たり前だろう?違う。そうではないのだ。少しややこしい話になるが、『パラド』は俺であり俺ではない。
『パラド』とは俺が本当の意味で最初に作ったゲームーー『仮面ライダークロニクル』と名付けたそのゲームにて存在する女主人公であり、それと並行して作った『仮面ライダークロニクル』のラストボス…『ゲムデウス』という究極のボスと合わせて俺が初めて作り出したゲームキャラクターなのだ。
あー…で、なんで俺がそのパラドと呼ばれて怒ってるかって話だったな。それは…かなり頭のおかしいことを言うが、俺がパラドを好きだからだ。それはクリエイターとしてとか、ゲームキャラクターだからとかそう言うことじゃない、もっと簡単なこと…つまりは、一人の女性として恋をしてしまった。その恋は今もなお俺の胸にくすぶり続けている。
勿論、トチ狂ってるのはわかってる。そこらに沢山いる世間一般的に『キモオタ』と呼ばれる人種と同じことを言ってるのだということも。あ、これは別にキモオタを卑下しているわけじゃない。彼らは我が社の大事な顧客であり、同じゲーマーなのだから。
おっと、また話が逸れたな。で、そんな自分の作ったゲームキャラクターに恋しちゃってる電波系少年である俺としては、パラドと俺なんかを一緒にしないで欲しかったのだ。当然こんなこと公に言ってるわけがないのではぁ?という反応をされるのだが、仕方がないものは仕方がないのである。
まあ、そんなわけで俺は今、超不機嫌です。
「…マサ、考え事終わった?」
ふと、右隣から可愛らしい声が聞こえてきた。そちらを向けば、世間一般的に見れば超絶が付く美少女が呆れた目でこちらを見ている。それに合わせ、長くて艶やかなツインテールがふわりと揺れる。それに対面に座っている総二の顔がにやける気配がした。このツインテール馬鹿めが。
それはどうでもいいとして、 どうやらこいつらは雰囲気だけで俺が何か考えているのかが昔から分かるようだ。ま、生まれた病院も一緒、家も今の豪邸の前の普通の一軒家だった頃は三軒仲良く横繋がり、しかも四六時中一緒にいるってんだから当たり前っちゃあ当たり前だけど。
あ、ちなみに俺が愛香を好きになるとかそういうのは欠片もありえない。確かに愛香はすっげぇ美人だが俺の中で唯一の攻略対象はパラドだし、そもそも愛香はもう隣にいる親友が俺の手助けで攻略済みだ。もし他人が愛香に言い寄ってこようものなら親友と俺でマリアナ海溝に沈めてやる。
…っと、また考え込んでしまった。二人とも辛抱強く待っているようだし、声を出さねばなるまい。
「…まあな」
「おっ、やっと喋ったな」
む、そういえばずっとだんまりを決め込んでいたんだったっけか。いくら不機嫌とはいえ、ゲーム中なのに楽しまないというのはゲームにもこいつらにも不誠実というものだろう。よって、とりあえずは不満を飲み込んでゲームに本気で取り組むことにする。
「ちょ、正斗がマジの時の目してるぞ!」
「やばっ、気をつけなきゃ一人で無双される!」
「ーーさあ、狩りの時間だ」
「ひぃぃぃぃ!決め台詞まで出たぞ!?」
「そーじ、ここは連携で先に仕留めるわよ!」
「りょ、了解!」
結局その時の狩りは俺が勝ち、それから日が暮れるまで遊び倒すと二人は仲良く帰っていった。それを見送った俺はゲームたちを片付け、風呂に向かうのだった。
●◯●
「はぁ…」
数十分後、俺は自室のベッドにダイブすると一つため息をついた。そして、枕元に置いてある一見ガラスの板に見える装置を起動し、そこに収められている写真フォルダを開いて中身を閲覧する。俺のいつもの日課だった。
数万枚に昇る写真を見ていくうち、やがてピタリと俺の手は止まる。そうして俺の目に止まった写真には、ある一人の女性が…いや、キャラクターの画像が収められていた。
まずおよそ10代後半と思われるその女性キャラクターは、平均を超越した美貌を持っていた。整った薄い唇には好戦的な笑みを浮かべ、大きくて綺麗な二つの瞳には遊び心の炎を灯している。その美貌の上には一房アホ毛の跳ねるショートボブの美しい黒髪、体の方はといえば上半身を覆い隠す水色のシャツの下からは平均的で、それでいて彼女の体格にマッチした双丘が自己主張をし、すらりとした両腕をピンクのリブ袖が覆う。その上からは赤、青、黄色のコードが靡く、立ち袖から濃い紫色のリボンが飛び出た黒いコートを纏い、下半身は様々な色のドットが描かれた紫色のズボンを履き、両足にはブーツを履いていた。
「パラド…」
そう、このキャラクターこそが俺の初恋の相手であり、俺史上最初に生まれたキャラクターである『仮面ライダークロニクル』にいる三人の主人公のうちの一人、女主人公パラドだった。
俺はうっとりとパラドの描かれた画像を見つめ、そっと指先で画面を撫でる。だが、そんなことをしても彼女が答えてくれることはない。その覆されることのない事実に唐突に苛立ちを覚え、装置を切ると立ち上がって乱暴に頭をかきむしると、ふと部屋にある鏡を見た。
ーーなんでその時、俺は鏡を見たのだろう。偶然か?それとも、この後に起こったことをなんとなく感じ取っていたのか?それは定かではないが、だが決して間違いなどではなかった。なぜかって?それは、これから証明しよう。
「………え?」
最初に漏らしたのは、呆然とした声だった。鏡の中に映る自分の体に、コンピュータに現れるものとよく似た黄色いノイズが走っていたからだ。両目は赤く輝き、総二や愛香からありえないくらい整っているとよく言われる顔を月明かりだけが照らす薄暗い部屋の中、より強く見せる。
ーードクンッ!!!
「ぎっ……ぁ…!?」
急に、心臓を握りつぶされるような凄まじい痛みを感じた。あまりの激痛に思わず着ていた寝間着を引きちぎると、無駄に逞しく、しかし細く洗礼された肉体があらわになる。そこにもノイズは走り、ノイズの頻度が多くなるにつれ痛みも増していった。
「がっ、ぎぅ、がぁぁあぁあぁああぁああああぁああぁああああぁああぁあああああぁあああぁぁぁぁッ!!!」
新ゲームの発表や演説以外では滅多なことでは大声を出さない俺が、その時だけは家中に響き渡るくらいの絶叫を上げた。全身を引きちぎられ、ぐちゃぐちゃに混ぜあわされて無理やり形を作り直されるような感覚。床の上でのたうちまわり、胸をかきむしる。だが痛みは一向に治らず、むしろどんどん強さを増していった。
やがて我慢の限界に達し、ショック死するかという瞬間ーー
バリィィィンッ!!!
「ーーえ?」
ーーふっと、痛みが無くなった。文字通り、何事もなかったかのように。だが、全身を濡らす大量の汗とついさっきまで感じていた死ぬことへの恐怖が、あれが幻などではないと証明している。
「今のは、一体……」
「ーーエム、大丈夫かしら?」
ーードクン。
その声は、確かに俺の耳へと届いた。誰もいないはずの自分の部屋の中に響いた、女神の奏でる音色のような美しい声は、俺の全身に染み込んできた。
ゆっくりと、四つん這いの体勢から顔だけを上げる。その間、ドクンドクンと心臓がやけにうるさかった。今この瞬間だけは、心臓が止まってほしいと心の底から願った。だって、もしかしたらそのせいで『彼女』の声を聞き逃してしまうかもしれないではないか。それは、俺の中で万死に値する行為以外の何ものでもない。
そんなことを考えながら、顔を完全に声のした方向…窓へと向けるとーーいた。そこに、月光に照らされて神々しく佇む、一人の誰かが。
月光が傾き、やがて彼女の姿があらわになる。165センチほどの身長。不思議そうに傾けられた、アホ毛のたったショートボブの髪型。水色のシャツとピンクのリブ袖、赤、青、黄色のコードと立ち袖からたれる濃い紫色のリボンのついた黒コート、ドッド絵の描かれた紫色のズボンと黒ブーツを履いたその少女はーー
「……………パ…ラ、ド……?」
「それ以外の誰に見えるの?私はパラド、貴方が生み出したんでしょ?」
純真無垢そうな表情を美しい顔に乗せて、こちらを覗き込む少女ーーパラド。ずっと恋い焦がれてきた、でも一生出会うことはないと思っていた彼女の顔がすぐ近くにあると思うと自然と感動が心を支配した。それまで感じていた感情全てを投げ捨てて、ただただ感動する。あまつさえ、ボロボロと大粒の涙を流し始める様だった。
「ふ…ぐっ…う、うぅ……!」
「ちょ、なんで泣いてるのさ?もしかして、そんなに私に会えたのが嬉しいの?」
冗談めかした口調で言うパラドに、俺は泣きながら何度もこくこくと頷いた。そうすると、からかうつもりだったのだろう彼女は途端に顔を赤くしてキョロキョロと目線を動かし始める。その癖は、俺が考えついたものだった。それが彼女だと言うことをさらに決定づけた気がして、思わずパラドを抱きしめてしまう。相当気が動転しているようだ。
「え、ちょ、な、なんで抱きつくのっ!?そ、そういうのはちょっと恥ずかしいっていうか、あの、その!」
ああ、懐かしい。そうやって予想外のことが起きるとあたふたする性格も俺が作ったんだったけな。また一つ、彼女の存在を証明することができた。
…でも、そんなことは今はどうでもいい。今はもっと、彼女にいうべき言葉があるだろう。あの時…六歳の時、彼女
「……パラド」
「な、何!?ていうか、いい加減離してくれなーー」
「ーー好きだ」
「……ふぇ?」
そうだ。これが言いたかったんだよ。ずっとずっと、俺はお前のことが…
「好きだ、好きだ、好きだ、好きだ、好きだ」
「え、あの、ま、待って!お願いだからちょっとまっ」
「パラド、俺はお前が、ずっとずっとずっと、好きだった!!!」
「あ、あぅ…え、ぁ…」
できる限りの思いの丈をぶつける。至近距離で、しっかりと、はっきりと誰が聞いててもわかるように。その結果としては、腕に感じるパラドの肌が急激に温かさを増していって、めちゃくちゃ照れている、もしくは怒っていることが確認できた。
…さあ、とりあえずいま考えうる限りのことはしたぞ。それに、彼女はどう答えてくれるのだろうか!?
「……………あにょ、わ、私もしゅき、です」
「!!!」
「だかりゃ、一回、離してくだしゃいぃ…」
「あっ、す、すまん!」
彼女の、パラドからの返答は半分呂律の回っていないオーケーだったーー
●◯●
数分後。完全にぶっ壊れていた俺と恥ずかしさが極限に達していたパラド両方が話をできる状態になると、部屋の電気をつけてベッドの上で向かい合った。
「…えっと、まずごめんパラド。お前に会えたことが嬉しすぎてちょっと狂った」
「……うん、それは見てたら誰でもわかるよ」
「お、おう。…それで、結局のところお前はなんなんだ?」
俺は最初から核心をついた質問をする。これが夢でも幻でも頭のネジがぶっ飛んだ俺の妄想や空想でもないとしたら、彼女は一体なんなのだろうか?
俺の疑問を最もだと思ったのか、パラドはふむと考え込むとゆっくりと語り出した。
その後の話を要約すると、こうだ。
まず、俺たち人間はみんな
で、その属性力の正体は個人個人の趣味嗜好…つまりは、本能的に備わっている普通の愛、例えば家族愛とか友愛以外にその人が信念をかけて愛するものが属性力となり、やがて結晶化して
まあとにかく、人間はそういう現在の科学では存在を確認できないエネルギーのようなものを自分の中に保持しているらしい。使いようによっては人間が滅びない限り半永久的なエネルギーとなる、というのはパラドの言葉だ。だが、そういうものには必ずメリットデメリットがある。そのデメリットというのがパラド…というか、それに属するもののようだ。
そいつらの名はエレメリアン。人間の負の
とまあ、こんな感じだ。…であるならば、パラドは俺の負の属性力から生まれたエレメリアンということになるが………あ、ちなみにエムという呼び名は昔俺がよく使っていたゲーム名で、マサトだからエムという安直なものだ。
「ああ、私は違うから」
「え、そうなの?」
「うん。だって私、エムの正の属性力が強すぎて実体化したんだもん」
「…なるほど。つまりは、良性のエレメリアンだと?」
「そういうことになるねー」
にしし、とそう言って笑うパラド。ああ、マジで可愛い。もうこれ見ただけで一ヶ月は余裕で不眠不休で仕事できるわ。
「私はエムの属性力…〝
「いや、何も問題はない。むしろあれくらいでやっとお前に会えたんだ、むしろ安すぎるな」
「っ!そ、そういうことあんまりいうのは、ちょっと照れるかなー?」
「うむ、それはそれで良さそうだな」
「…もー!エムのバカー!」
真っ赤な顔をしてぽかぽかと殴ってくるパラド。いやお前、それも可愛いからな!むしろダメージの代わりに俺のメンタルとSAN値が回復しちゃってるから!そろそろマックス突破しちゃう。
「こっ、こほん!とにかく、そういうことだから。これからよろしく、エム!一緒にいっぱいゲームしようね!」
「おう、望むところだ!」
ニカッと笑いながら差し出された手を、俺はしっかりと握る。するとパラドも握り返してきて、またニシシっと笑った。うん、やっぱ癒されるわ。
…あ、そういえば。
「パラド、さっきの話のことなんだが…?」
「っ!…う、うん……」
それまで俺の考え出したとおり元気全開だったパラドは、急に赤面してもじもじとし始めた。そしてしばらく視線を右往左往させ、人差し指同士をつんつんと付き合わせていたものの、すぐに意を決したような表情をこちらに向けてくる。自然、俺も姿勢を正した。
「……私がね、現実に顕現したのはちゃんとした理由があるの。それは二つあってね、一つはエムと楽しくゲームをすること。もう一つは……」
「一つは……?」
「えっ、と、うぅ……えいっ!」
小さな声とともに、いきなりパラドがこちらに飛びかかってきた。思わず抱き止めれば、その隙を狙っていたのだろう、唇に柔らかい感触を得た。ぴしっと俺の体は固まる。
「……ん〜、ぷはっ!」
……………え。あ、え?俺、今……パラドと…
「えへへ…キス、しちゃったね?」
恥ずかしげに、パラドは微笑む。俺は頭が大混乱し、今度はこちらがあたふたと慌てることとなった。当然だろう、大好きな女の子にいきなりそんなことされたらテンパるに決まってる。
だが、そんな俺に御構い無しにパラドは言葉を続けた。
「私が顕現したもう一つの理由………それはねエム、あなたのことが好きだから。作り出してくれた父親としてとかそういうんじゃなくて、あなたが好きなの。だからどうしても会いたくて、出てきちゃった」
「っ!」
「へへ……エム、大好き!」
大好き、ダイスキ、だいすき……
俺の中で、その一言が延々とこだました。気がつけば、パラドを押し倒している。そして慌てる彼女に、今度はこちらから口付けをした。それにとどまらず、我ながら結構いやらしい手つきで全身を弄る。
「あ、や、ふっ…ん、ちゅ、ぢゅるっ…んっ!」
「ん…む、ふ…クチュ、ちゅるる!」
艶かしい音を立てながら、舌をからみ合わせる。しばらくすると息が苦しくなってきたので、一度顔を離した。お互い荒い息を吐いて、赤く上気した顔でお互いを見合う。
「はぁっ、はぁっ…!」
「ふぅ、ふぅ……ね、エム、ほんと、に、このまましちゃう、の?」
「……ごめん。ほぼ、初対面みたいなもんなのに。でも、もう我慢できないっ……!」
「……うん、そだよ、ね。私も、だよ。だから…いいよ。でも、優しくしてね…?」
「…善処する!」
…そのあと俺たちが何をしたかは、ご想像にお任せしよう。ただ、激しく愛を深めたとだけ言っておく。
だが俺は、何も知らなかった。この数年後、まさかあんな事に巻き込まれるなんて。
はい、前書きの通りかなりぶっ飛んでますね。
感想をいただけると嬉しいです。