ツインテールとゲームで世界を守る。【とりあえず凍結】   作:熊0803

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後編です。前回に引き続きオリガシャット登場。
今回はとあるキャラたちが出てきます。
楽しんでいただければ幸いです。


新たなる戦士登場! 後編

  総二が危機に陥り、愛香がトゥアールからテイルブレスを受け取って出撃したのと同じ頃。

 

 ピピッ

 

「…ん、おっ」

「? どうかしましたか社長?」

「いや、なんでもない。会議を進行してくれ」

 

  陽月学園の制服から黒スーツに青ネクタイの格好に着替え、会議室の奥の席に座っていた俺は不思議そうに訪ねて来た社員にそう返しながら机の下で一見ガラス板のような携帯を見てこっそりと笑った。というのも、愛香がテイルギア対応型ガシャット1号機…《BLUE BEAST LANCER》を手に入れたことを知ったからだ。これならば大丈夫だろう。こっそりとパラドともアイコンタクトを取って小さく頷きあう。

 

  しかしそんな俺たちに構うことなく社員……俺とよく似た目元を持つ中年の男性、我が父こと幻夢コーポレーションゲーム企画部部長、神崎真宗は一つ頷くと会議を続ける。

 

「では次に、ゲーム企画部からの発表に移ります」

 

  それまで会社の株や商品の売れ行き、それにより生じた利益だった話がそれに移った途端、部屋の空気が少し重苦しくなった。当然だ、ここにはたった一人で今もなお世界で愛される無数のゲームを作り出した天才…俺がいるのだから。俺のお眼鏡に叶わなければ企画の時点で絶版になる。

 

「まず最初に、小星作(こぼしつくる)さんどうぞ」

 

  そう言われると坊主頭の社員…アプリゲーム『ジュージューバーガー』開発者こと小星作が一人立ち上がり、手に資料を持ってホワイトボードの前へと進んだ。そしてそこで自らの作り上げた作品をプレゼンテーションし始める。

 

「私が思うに、他社のゾンビゲーってかなりホラー要素で攻めてると思うんですよ。かくいう我が社の『デンジャラスゾンビ』もそれで大ヒットしました。そこで考えたんですーーコミカルなゾンビゲーが、あってもいいんじゃいかって」

「ほう?」

 

  俺は興味深げな声を出す。確かに『デンジャラスゾンビ』は幻夢コーポレーションのゾンビゲームの代表格といって差し支えない大人気ゲームだが、それとは真反対のものと彼はいう。これはかなり期待ができそうだ。父さんや他の社員も同様に興味を惹かれているようで、真剣な様子で耳を傾ける。

 

  そんな俺たちを見て作さんは口元に笑みを浮かべ、資料の中から企画書を取り出すと声高にそのゲームの名前を叫んだ。いったいどんなゲーム名なんだ、ありふれたものではないか?という考えはしかしすぐに打ち砕かれることとなる。

 

「その名も『ボーズ・オブ・テラ』!」

「「「なっ!」」」

「…なるほど、坊主か。それで、肝心の内容は?坊主が経を唱えながら刀でも振り回すとか?」

「いえ、今回のコンセプトは銃火器がメインです。ストーリー的には現代に現れたゾンビを坊主がお経を唱えて成仏させていましたが、お経を唱えるのに時間がかかるので、『南無阿弥陀仏』って言いながら銃火器ぶっぱなした方が早いと気付いた元軍人の主人公の坊主が、ハンドガン片手にゾンビを殺していくって感じですね」

 

  まさかの内容だった。確かにこれまでバイオテロにより生まれたゾンビを銃など様々な武器を駆使して駆逐するゲームは多く存在したが、ここまでぶっ飛んだものはないだろう。コミカル路線で攻めるのに十分な面白さを持っているとこの時点では思った。だからこそ、他の社員はいぶかしげだが俺は結論を下す。

 

「…合格。そのゲーム、開発許可を下ろします」

「…社長、よろしいのですか?」

「ああ。こういう斜め上の発想で作り出されたゲームは案外面白くてヒットする。作さんを中心として開発を進めてくれ。他に異論のあるものは?」

 

  公共の場での口調で言いながら見渡せば、会議室の中にいる誰からも異論は出なかった。おそらく訝しげにしていても彼らも見てみたいのだろう。このトチ狂ったゲームがどうなるのか。あと多分、俺が許可を下ろしたからというのも含まれている。そうして、作さんの案は通り『ボーズ・オブ・テラ』は作られることとなった。

 

「あ、ありがとうございます!」

「ああ。それじゃあ今度は私から案を出そう」

 

  ざわっと会議室が揺れる。しかしそれに構わず立ち上がるとスーツ姿のパラドを伴い先ほどの作さんのように前に出て、操作していた透明板からホワイトボードにホログラムを浮かび上がらせる。それはゲームの開始画面であり、片腕を白いデバイスで覆った少年と白い巨人が異形の大群に立ち向かう絵が『HEROMAN』というタイトルとともに描かれていた。

 

「ヒーローマン、とある少年が玩具より生まれたヒーローとともに宇宙からの侵略者と戦うゲームだ。トランスフォーマーズ同様育成型アクションゲームで、しかしこれは時にテンポよく技を発動する必要があるので『ドレミファビート』などをプレイ済推奨だな」

「おお、さすが社長…」

「面白そうだな…」

「褒めても給料は上げないぞ」

 

  俺のジョークにハハハッ!と笑う社員たち。パラドや父さんは苦笑い気味だ。それから他に案がないか聞くが特になかったので、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の開発の進行具合だけ確認するとそれぞれのゲームの開発を早速開発することになった。

 

「お疲れ様、社長」

「ん、おう」

 

  社員たちがみな開発室へ向かう中、一人だけ未だに座って企画書を眺めていた俺にパラドが声をかけてくる。それに振り返って笑顔で答え、書類をまとめて渡すとガラス製の会議机の上に透明板を置く。すると、机の方にホログラムが浮かび上がり無数のファイルが展開された。めまぐるしく文字列を並べていくそれらを瞬時に理解しながら、手元に現れたホログラムのキーボードを使ってトゥアールのある程度の技術提供より飛躍的に進んだ様々なものを完成させていった。

 

「それ、新しいガシャットの設計図?」

「まあな」

 

  ポンポンと近未来的な音を立ててキーボードを叩く俺の右肩にパラドが顎を乗せてきた。ふわりと漂ってきた甘い匂いに内心どきりとするも、それを外側にはおくびも出さずに受け答えして、最後のキーを押す。するとピンッ!という音とともに学校の演説の時のように幾つかの名前がホログラム上に浮かび上がった。それらにはすべて、モノクロのイラストが付いている。

 

 

 ーー《TWINHEAD BONE DRAGON》

 

 骨の積み重なる墓場で泳ぐ、双頭の骸龍。

 

 ーー《PHOENIX THE WOLF》

 

  不死鳥と狼を重ね合わせたかのような姿形をした、ヒーローの死体の山の上に立つ狂狼。

 

 ーー《GOLDEN KING SAVIOR》

 

  青いドレスと銀色の軽装鎧を身に纏う、その手に一振りの長剣を携えた少女。

 

 ーー《BAT MAN》

 

  雨の降る黒雲に包まれた街を睥睨する、黒い戦闘スーツに身を包んだ蝙蝠男。

 

 ーー《HULK》

 

  崩壊した景色の中心で咆哮する怒りの巨人。

 

 ーー《CAPTAIN AMERICA》

 

  その戦闘スーツの胸に星を刻み、手に同じく星を刻み込んだ盾を携えた男。

 

 ーー《HEROMAN》

 

  一人の少年と泰然とした姿勢でその身に赤いOを浮かび上がらせる白いヒーロー。

 

 ーー《KUROMUKURO》

 

  刀を持つ青年とその腕に抱かれる少女、その背後に佇む赤と黒のロボット。

 

 ーー《GARO》

 

  黄金の馬にまたがり、巨大な剣を悪へと振るう黄金の狼騎士。

 

 

  それらをすべて確認し終えるとしっかりと保存し、何重にも厳重なロックをかけてさらに俺以外解析できないパスワード…パラドの遺伝子配列…を設定すると透明板を取りスーツの内ポケットに入れ、早速プロトタイプのガシャットを開発するために我が家の研究室に行こうとした所でーー

 

「おっと、まだ二つほど残っていたな。俺としたことが」

 

  今一度ガラス机に戻り、無数のファイルからある二つのプログラムを取り出して十数分ほどで完成させる。といってもこの二つは作るのに膨大な時間がかかるため、おそらく数ヶ月しないと実現はできないだろう。

 

 ーー《PROJECT:KC》

 

 ーー《GAME DRIVER》

 

  それも同じ工程を経て保存すると、ふと家に帰る前に社内を回ってみるかという気になりパラドの方を向いた。すると彼女は頷き、それを確認して会議室を後に歩き出した。

 

 

 ●◯●

 

 

「絵本を読んで差し上げましょう……おやおや、甘えん坊さんですね」

 

  場所は戻り、テイルレッド。女性を蕩けさせるような甘声での精神攻撃は、いよいよレッドの心にクライマックスを迎えさせようとしている。フォクスギルディはおそるべき敵だった。所詮は偽物…何度そう言い聞かせても、フォクスギルディの強大な意志力に支えられたツインテールはとても紛いの域に治るものではない。後特筆すべきところは、人形相手に確固とした己を保ったまま妄想を繰り広げる克己心だろうか。

 

  これが、心の力。頭のどこかで破壊の威力だけを力と錯覚していたレッドとは壁一つ隔てた場所にフォクスギルディはいる。パラドたちバグスターにより、心の強さを知っていたはずなのに。

 

「こ、ここまでか…俺のツインテールは、こんな奴に負けてしまうのか……!?」

 

  レッドが息も絶え絶えに膝をついたまま、立ち上がることさえできずに絶体絶命になった、その瞬間。

 

「その子を離しなさい!」

 

  突如、稲妻が落ちたような轟音が鳴り響いた。思わずレッドとフォクスギルディが振り返れば、蒼き光が未だ天と繋がったまま二人の前に立ちはだかっていた。『彼女』の顔を見た途端、レッドは体の奥から衝撃を受けたような感覚を覚えた。

 

  トゥアール曰く、認識撹乱装置(イマジンチャフ)にはいくつか効果に違いがあるらしい。短所長所が存在し、例えば初日にトゥアールが使っていたものは存在そのものを虚にするもの。そのため叫んだりすると気付かれやすくなる。

 

  それとは真反対に、テイルギアに搭載されているそれは正体を守るための意識改竄特化型。ステルスとしては使えないが、テイルギア装着者と別の人間を意識下でイコールで結べなくする。よって素顔でも平気なのだ。……しかし、これは元から正体(素顔)を知る者には効果がない。

 

  つまり今しがた目の前に降り立った新たな戦士は他の者からすれば見知らぬ誰かであっても、レッドにとっては違う。いや、もし効果があったとしても彼?彼女?は本能で気がついただろう。

 

「あい……か…?」

 

  それが、青のスーツをまとった戦士が自分の最愛の人ーー津辺愛香だということを。

 

「何者です!?」

「あたしは……」

「いたぞ、あそこだ!……いや待て、今日はパラドクスじゃない!?」

 

  どうやら戦いが長引きすぎたようだ。どこから嗅ぎつけたのか、遠巻きにテレビ局のリポーターやスタッフが控えてカメラも何台か回っている。だが彼女はそれを意にも返さず、強く、雄々しくその名を叫んだ。

 

「あたしはーーテイルブルー!三人目の戦士よ!」

 

  レッドが未だ言うのに戸惑いの残るそのコードネームを、愛香改めテイルブルーはその場にいるすべての人間に向けて叫んだ。迷いのないその堂々とした立ち姿に、一瞬美しいと感じて見惚ける全員。それに構わず、テイルブルーは自分の使命を果たさんがために動き始めた。

 

「おおお……これはまた、素晴らしい。まさか、もう一人仲間がいようとは!ふふ、この危機…命の際に追い詰められたというのに胸が高なーーへぶっ!」

 

  なにやら体をくねくねさせながら言っていたフォクスギルディを出現させた三叉の青長槍ーーウェイブランスで吹き飛ばすブルー。それによってハッと我に帰り、報道陣は慌ててカメラを構えた。レッドはまだへたりこんでいる。そんなレッドを一瞬ちらりと見て、決意を固めたような目をするとブルーは左腕に装着された手甲から薄緑色に光る石を取り出した。

 

属性玉変換機構(エレメリーション)!」

 

  スライド展開して装甲よりひときわ強く蒼く光るくぼみが露わになり、そこへ宙に浮いた属性玉(エレメーラオーブ)が自動的にマウントされる。カバーが閉じるとブルーの全身も薄緑色に発光した。

 

属性玉(エレメーラオーブ)ーー人形属性(ドール)!!」

 

  言葉にすると同時に、ブルーの属性玉変換機構(エレメリーション)が作動する。結晶化したエレメリアンの魂を操るための特殊装備は遺憾無くその力を発揮し、フォクスギルディのそばに転がっていたレッドの人形が人形属性(ドール)の輝きに包まれて存在感を失ってゆく。最後には顔写真をマネキンに貼り付けただけのような不自然なものとなってしまった。フォクスギルディの視認できるほど強大な妄想も跡形なく消える。

 

「なっ!?」

「作戦ミスじゃないの?人形を使って惑わすならあんたももっと強力な人形属性(ドール)を持ってなきゃ意味ないじゃない」

 

  正確にはフォクスギルディは回収された属性玉の力をレッドらが使えることは知らなかったので完全なイレギュラーなのだが、それを突っ込むものはここにはいない。

 

「……さて。それじゃあ次は、こっちを使って見ましょうか」

 

  そう言ってどこからかブルーは正斗より受け取ったガシャットをカチャリと音をたてながら取り出した。例外なくその場にいた全員が驚く。なぜ、パラドクスのものと似ているものを彼女が持っているのかと。その視線を真っ向から受け止め、それでもなお真剣な顔をフォクスギルディへ向けながらブルーは強くガシャットのスイッチーープレイングスターターを押し込んだ。

 

 

《BLUE BEAST LANCER !!》

 

 

  甲高い音を立てながら基盤が青く発光し、ブルーの背後にラベルに描かれた絵と瓜二つの長方形のディスプレイが出現する。遅れて《GAME-START》の文字も浮かび、周囲に赤い風が吹きゲームエリアが展開されていく。最後に画面から一頭身ほどの赤い長槍を持った鎧が飛び出てきて、ブルーの周りをぐるぐると円形に走る。

 

「な、なんですかそれは!?」

「…ゲームキャラ?」

 

  それを確認し、地面にウェイブランスを突き刺し光とともに属性玉変換機構(エレメリーション)に被さるように現れた差し込み口(スロット)を押し込んで展開するとガシャットを勢いよく差し込んだ!

 

《ガシャット!!》

「第二撃、変身ッ!」

 

  独特なその言葉とともに、胸の前まで持ってきた左腕の手甲を右手で勢いよく叩いた。するとガシャットが完全に組み込まれ、内部にプログラムされた機構が産声をあげる!

 

《ガッチャーン! レベルアーップ!!》

《穿て棘槍! 我は番犬!! 投げ打つは因果逆転の槍!!! BLUE BEAST LANCER !!!》

 

  猛々しい太鼓や銅鑼で構成された音楽とともにパラドクスのように一定の言葉が流れ、ブルーが胸の前で両腕を一度クロスして勢いよく腰だめに構えると鎧が飛び上がって分裂し、肩、両太もも、腰、両足に装着され、ウェイブランスの石突と赤槍の石突が連結され長大な両刃の槍と化す。

 

  そうしてテイルブルー:ビーストゲーマーレベル2は誕生した。

 

「ふぅん…いいじゃない、これ」

 

  新たな力を確かめるように何度か拳を握り、開いてという動作をし、やがて頷き倍の長さになった四メートル強のウェイブ・ボルグを手に持つと一気に加速し、旋風を巻き起こしながらマネキンと化したレッドのフィギュアを雄叫びを上げて破壊した。

 

()()()()()のレッドを真似するなぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

  意味を知る者からすれば…いや、知らないものが聞いてもアブノーマルな惚気とともに砂糖細工のように砕ける人形。それを見て崩れ落ちるフォクスギルディ、おおっ!とざわめく報道陣。それを背に顔だけ振り返り、ブルーはレッドに向かってウインクをした。

 

「!」

 

  ようやく、自分の意思を取り戻すレッド。そうだ、恐怖と最愛の人を戦いに巻き込んだ罪悪感で動けないでいる場合ではない。彼女は自分のために戦場に飛び込んでくれたのだ、ならば最後までその初陣を見届けなくてはいけない。

 

「お、おのれ…!ですが、どうやらその装甲を抜いたツインテール属性自体はレッドより弱いようですね!ならば先にあなたの属性力(エレメーラ)を頂くまで!手始めにそのデカリボン、頂戴いたします!」

「冗談!」

 

  左右の双房をまとめる、アンテナのように鋭利なリボンをピンと指で弾くと槍を分離し、ガシャットを左腕から取り出すと腰のビーストゲーマーの鎧に取り付けられていたスロットーーキメワザスロットに差し込む。そうするとスロットについているボタンを押した。

 

《ガシャット! キメ技!》

「フィニッシュはキメ技で決まりよ!オーラーピラーーー!」

「ぐおおっ!?!!?」

 

  円柱型に変化した水流ーーブルーのオーラーピラーがフォクスギルディの体を捉える。ブルーはウェイブランスを逆手にするとフォクスギルディに対して全力で投槍し、二重にその体を縛り付ける。それが終わると赤槍も逆手に構え、キメワザスロットのボタンをもう一度押す!

 

「がはっ!!?」

《BEAST! CRITYCAL STRIKE!!!》

「くらいなさい、せあぁぁぁぁぁっ!!!」

 

  覇気のある叫び声とともに放たれた次元を穿つような神速の棘槍は寸分たがわず、フォクスギルディの胸を刺し貫いた。バチバチッ!と放電し始めるフォクスギルディの体。

 

「ぐああああ!!……は、最後に…夢を!ーーまた、服を着ないで…風邪をひいーーっ!?な、なるほど!リボンにそんな使い方、がああああああああああ!!」

 

  フォクスギルディは満足げに笑い、爆散した。おそらく、最後まで彼奴の脳内のレッドは服を着ていなかったことであろう。

 

《ガッシューン…》

 

  フォクスギルディの属性玉(エレメーラオーブ)を回収するとブルーはキメワザスロットからガシャットを引き抜く。すると各所に纏っていた鎧と二本の槍は虚空へと消えた。ブルーはガシャットをみてありがとね、と小さく呟くと、レッドに近づいて立たせてあげる。

 

「大丈夫?そー……レッド」

「あ、ああ…良かったのか?」

「うん。だってレッドの隣はあたしって、そう決まってるんだもん!」

 

  ふわりと笑うブルーに、見惚れるレッド。ああ自分はなんていい彼女を持ったのだろうと感動していると、わらわらと報道陣がこちらに近づいてきていた。それを素早く察知し、今一度属性玉変換機構(エレメリーション)を使って今しがた手に入れたばかりの髪紐属性(リボン)を発動し、リボンを重力から解きはなつための巨大な翼に変形させてレッドを抱えて飛び立った。

 

「おおっ、これ空飛べるのね」

「…なあ愛香、そのテイルギアって」

「うん、トゥアールのよ」

「…そっか。ならトゥアールのぶんまで、俺たち三人が頑張ってこの世界を守らないとな!」

「うん!」

 

  そんなやりとりをしながら、二人は笑いながら大空を舞うのだった。

 

 

 ●◯●

 

 

  しばらく社内をぶらぶらとしていると、やがてある一室の前で足を止める。『対ハッキング防止室』とプレートの固定された金属製の扉を開ければ、総二の部屋と同じくらいの大きさのスパコンや様々な機器が多く置かれた部屋が現れた。

 

  しかしひときわ大きなパソコンのある一部だけは畳張りになっており、そこには計三人の男女がいる。二人いる男のうち少年の方はパソコンにかじりつき、残りの二十代前半くらいの優しそうな青年は大人びた雰囲気の女性が同じくパソコンの中で何かをやっているのをじっと見つめていた。

 

「やあ、小磯夫妻に池沢くん。楽しくやっているようだね」

「「「っ!?」」」

 

  いきなり後ろから声をかけられたことに驚いたのか、三者三様に驚きの表情を浮かべてこちらに振り返る。と、その一瞬の隙を突くように女性の操作していたパソコンからポンッ!というか音が鳴った。

 

〈ラブマシーン さんがこいこいしませんでした。得点の総取りになります。ラブマシーン さんの勝ちです〉

「あーっ!?」

 

  機械的な音声にがっと両腕でパソコンを掴み、顔を寄せる女性。しかしもう結果は変わらないようで、がっくりとうなだれた。その背中をさすり、ドンマイという青年。その少ない情報から何を誰とやっていたのかを大体察し、罪悪感がこみ上げてきた。

 

「…おや、すまない。花札をやっていたのか」

「…いえ、大丈夫です。それより社長、どうしてここに?」

 

  落ち込んでいる女性の代わりに青年ーー幻夢コーポレーションサイバー対策部門部長小磯健二(こいそ けんじ)は俺に問うてくる。それに肩をすくめながら、社員の様子見だと言うとなるほどといった様子でもう一人の少年ーーサイバー対策部長副部長池沢佳主馬(いけざわ カズマ)の方も頷いた。

 

「で、今は何勝何敗だ?」

「えっと、20戦中13勝7敗です。ですよね夏希さん?」

「…うん」

「なるほどな…どうやら随分と負けているようじゃないか。ええ?ラブマシーン」

 

  女性ーー幻夢コーポレーション広報部副部長小磯夏希(こいそなつき)の操作していたパソコンの中に目線を向ければ、ハートの装飾のある冠に大きなギザギザ歯のマスク、複雑な青い模様の走る黄金の盤を背負ったオレンジ色の大きな体を袈裟で覆い隠した対サイバーテロ撃退用自立成長型AI、通称〝ラブマシーン〟はシシシッ!と笑った。言葉を発さずとも楽しんでいるのがありありとわかるラブマシーンに、思わず苦笑が漏れる。

 

「それじゃあ、次はオレとやろうぜラブマシーン」

 

  いつの間にやらいつもの格好に早変わりし、ゲームをする時の口調になっているパラドがパソコンの前に座るとラブマシーンはその三白眼をパチパチと瞬かせ、しかしすぐにまたシシシッ!と笑ってゲームを動かした。

 

  こうなるとしばらくやっているから終わるまで待っている間小磯夫妻のほうと会話をすることにする。畳の上に向かい合って座った。

 

「ご親戚は元気か?」

「はい。この前も翔太兄の愚痴を電話で聞かされてました」

「えと、私は由美子おばさんたちの愚痴だったかな?」

「なんだ、愚痴三昧だな」

 

  笑う夫妻。とはいえ、小磯夏希さんの家族は皆人の役に立つような仕事をしていると聞く。そのぶん、ストレスも溜まりやすいのだろう。

 

「佳主馬くんはどうだ?」

「……別に、特に何も。あえて言うなら健二さんたちのイチャイチャ具合がひどかった」

「「ちょっ!」」

「ははっ、そうかそうか!まあ、仕事に差し支えのない範囲なら全く構わないよ。これからもこの会社を守ってくれ」

「「「はい!」」」

 

  そんな感じで楽しく会話をしながら、やがてパラドたちが花札をするのに飽きるまで言葉を交わし、終わると今度こそ自宅へと帰るために地下駐車場へと向かう。その一角に停めてある車に近づくと、どこからともなく一人の男が現れてドアを開けた。

 

「ご苦労、『緒川慎次』さん」

「いえ、これが仕事ですので」

 

  俺とパラドが乗り込むと運転席に入り、我が家に向かって車は移動し始める。その道すがら、緒川慎次さん…運転手兼幻夢コーポレーション所属の諜報員……とも小磯夫妻のように会話を交わした。

 

「娘さんは元気かな?」

「はい。よく小磯さんの娘さんと一緒に遊んでいます。あまり家族の時間が取れないので助かっています」

「…必要ならば休暇を出すぞ?」

「お心遣い感謝します。ですが今のところ、それは無用そうですね」

「そうか。必要ならすぐにいってくれよ。あまり働きづめになるのもよくない」

「はい。ありがとうございます、社長」

 

  …それにしても、小磯夫妻といい緒川さんといい。俺は本当に優秀で良い〝仲間〟に恵まれている。彼ら彼女らは全て俺の夢に共感してくれた人たち、絶対にアルティメギルから守らなくてはと、新たにそう決意するのだった。

 

 

 ●◯●

 

 

 再び、翌日の神崎邸の食堂にて。

 

『いやーツインテイルズもこれで三人、ますます期待は高まるばかりですね!』

『そうですねー』

 

  今日も今日とてどこのテレビ局もツインテイルズの事ばかり。特集されているのは怪物にいじめられてへたり込む総二と颯爽と現れた愛香の姿だ。世界中から声援が送られ、各国首脳からも「あの少女たちへの支援を惜しまない」というメッセージが届いているらしい。

 

  トゥアールと相談し、ブルーについてもある程度の情報開示を行なった。加えて客観的に見ても美少女に違いない見た目とスレンダーな体型に露出の激しい服、あとフォクスギルディの時の発言で評価はうなぎのぼりといったところである。

 

『それでは、今回は特別ゲストに来ていただいています。彼女の意見も聞いて見ましょうか。よろしくお願いします、『ポッピーピポパポ』さん』

『ポピッ♪ おはよう、ポッピーピポパポだよ!よろしくねみんな!』

 

  コメンテーターに紹介を受け、テレビに映ったのはピンク色のショートの髪にスピーカーや音符をあしらった派手なドレスを着た美少女。現在アイドルとして絶賛人気中、同時に俺から生まれたバグスターの一人、『ポッピーピポパポ』だ。

 

『ポッピーピポパポさんは〝幻夢事務所〟所属ですが、ツインテイルズについて何か知っていることはありますか?』

『うーん…あっ、それじゃあちょっとだけ情報を開示します!あのエレメリアンの時ブルーちゃんも言ってたけど、レッドちゃんとブルーちゃんはプライベートでもラブラブだよっ♪特にブルーちゃんは乙女で可愛いんだから!』

「「ぶふっ!」」

 

  ざわざわと揺らめくスタジオ、吹き出す総二と愛香。特に愛香など、昨日帰ってきたあと自分の大胆発言に相当恥ずかしさを感じたらしく、追い打ちという形となった。パラドはぷるぷると笑いをこらえている。

 

『二人が小さい頃から知っていて、私の大切なお友達だからパラドクスちゃんも合わせて三人とも応援よろしくね♪』

 

  そう言ってカメラに向かいピースし笑うポッピーピポパポに、全員テレビを見ながら苦笑するのだった。

 

 

 

 




はい、このような感じでブルーは穏便に収まりました。
ヒーローマン…古いですよねぇ。作者は大好きなのですが。特にジョーイ×リナが。
感想をいただけると嬉しいです。
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